障害者差別解消法の見直しの検討に関する事業者団体合同ヒアリング(10月21日)議事録

令和2年10月21日(水)
15:00~16:01
中央合同庁舎8号館1階講堂

【議事に使用されている資料については「議事次第」のページにまとめて掲載していますのでご参照ください。】

○内閣府 榎本参事官補佐 まず、日本バス協会様、お願いいたします。

○(公社)日本バス協会 稲田業務部・部長 日本バス協会の稲田と申します。よろしくお願いします。
 今回、合理的配慮が義務化されるということでございますが、利用者の方が義務化ということで、より強く意見を主張されるようなことが懸念材料としてはあるのですけれども、義務化ということについては罰則もないし、東京などは条例で既に義務化されているということで伺っておりますし、バスについてはバリアフリー法に基づいて、所要の対応をしているということもございまして、業界としてあまり大きなハレーションを起こすということはないのではないかなとは思っております。
 一方、バスについても車椅子のお客様の乗車をお断りするというような事例もございまして、しっかりやっていかなくてはいけないというところで、引き続き必要な環境整備、バリアフリー車両の導入の推進といったこととともに、合理的配慮に関しては、やはり運転者の指導教育をしっかりやっていく必要があると考えているところでございます。
 また、事例を集めて共有することも必要ではないかと思っているところでございます。
 最後にお願いになって恐縮ですが、環境整備の面でバリアフリー車両の導入でございますが、引き続き国からの支援をいただくとともに、支援の充実をお願いしたいと思っております。
 短いですが、以上でございます。

○内閣府 衣笠参事官 続きまして、全国ハイヤー・タクシー連合会様、お願いいたします。

○(一社)全国ハイヤー・タクシー連合会 熊谷ケア輸送等 統括 全国ハイヤー・タクシー連合会の熊谷と申します。よろしくお願いします。
 タクシーについても合理的配慮の義務化については、別に意見等はございません。
 ある一部が皆様にちょっと御迷惑をかけて、乗車拒否等がありますけれども、今、私どもは研修等を行っており、このままを踏襲していけばよいのかなと思っています。
 先ほどバス協会からありましたけれども、義務化されても、例えば行政指導とか行政処分はないとお聞きしていますので、その点がなければよいと思っています。
 先ほど環境整備の例の中にスロープとかがありますけれども、その辺は以前のセダン型タクシーについては、スロープというのは積むことができません。ただ、今のUDタクシーについては、もう全車配備されています。その辺もすみ分け、セダン型とUDタクシーのスロープについても、いろいろと御意見をいただければと思っています。
 また、UDタクシーは非常に高い車でございますので、もし行政的な補助的なものがあれば、お願いしたいと思っています。
 以上でございます。

○内閣府 衣笠参事官 ありがとうございます。
 続きまして、定期航空協会様、お願いいたします。

○定期航空協会 奥山部長 定期航空協会の奥山と申します。よろしくお願いいたします。
 航空ですけれども、今、加盟社が19社ございまして、全ての会員社において、障害の有無は関係なく、全てのお客様に安心して快適な空の旅を楽しんでいただくということをコンセプトに、日々オペレーションをさせていただいております。
 航空の特性上、乗られるお客様を認識して、予約の段階から最後に到着地に着くまで、サービスを提供させていただいておりまして、昔は電話での予約だったのですけれども、今はウェブもかなり進んできまして、その段階で空港、もしくは機内でお手伝いが必要なお客様にはその旨を入力していただく。もしくは高齢の方が電話で予約の際にも、お手伝いが必要な要件等を確認させていただいて、それを空港や客室乗務員に引き継いで、それぞれのお客様に対するサービスをさせていただいているということを毎日のフライトの中で実施をしておりますので、その辺の配慮は、今のサービスのところでカバーさせていただいているのではないかと考えております。
 これまでの困ったことというところは、今は先ほど申し上げました予約のときのウェブが進んでいますし、あとは設備の面です。例えば大きい飛行機ですと、パッセンジャー・ボーディング・ブリッジがついているところに駐機できて、例えば車椅子のお客様がそこを通っていけばスムーズな搭乗ができたのですけれども、例えば機体が小さくなってしまいますとボーディング・ブリッジがないオープンスポットと呼ばれるバスで移動してとなりますと、そこまで行くのが少し大変だと、そのお客様に御不便をお掛けしていたのですけれども、最近はバスも設備が整ってきていますし、タラップ、飛行機に乗るときの階段にも車椅子を運んでくれるような設備も整ってまいりました。
 あと、昔は機内専用の車椅子というのはなかったのですけれども、それも機内で使う専用の車椅子というのもできてきましたので、昔よりはお客様に御不便なく、そういった飛行機までの御搭乗ですとか、機内ですとか、降りた後の動線も昔よりは快適に過ごしていただけるような環境になってきたのかなと思っております。
 定期航空協会からは以上になります。

○内閣府 衣笠参事官 ありがとうございました。
 続きまして、JR東日本様、お願いいたします。

○JR東日本(東日本旅客鉄道㈱) 阿部次長 JR東日本の阿部でございます。よろしくお願いいたします。まずもって、本日はこのような機会を設けていただきましてありがとうございます。
 初めに、今回見直しが検討されている障害者差別解消法について、当社の取組を若干御紹介させていただきたいと思います。
 まず、当社では全社員向けの接遇マニュアルの中に、現在の法律の趣旨を踏まえた合理的配慮等の必要な知識や、接遇の具体的方法について記載をしておりまして、それをもって全社員教育をするとともに、弊社は約4割の社員が取得していますが、サービス介助士こちらの取得等を通じて当事者の皆様とも意見交換を行っておりまして、合理的配慮の必要性については日頃から理解を深めているところであります。
 また、日々多くのお客様に御利用いただいておりますが、現行の法律の下、乗降の御案内ですとか、分かりやすい御説明ですとか、まず、お客様の御要望をしっかりお伺いした上で合理的配慮を尽くすということを指導して、心掛けているところであります。
 法律に関してですが、そもそもこの法律の制定時に、これは言わずもがなですが、事業者の合理的配慮が努力義務とされたのは、当時の説明からすれば、この法律が幅広い分野を対象とする法律で、障害のある方との関わり方は場面によって様々だということで、民間事業者に関しては努力義務を課して、対応指針によって自主的な取組を促すという整理をされたと認識しています。
 そのうえで、実効性もしっかりと確保しなくてはいけないという点を踏まえ、法律の中で主務大臣が、特に必要があるときには報告ですとか、助言・指導・勧告ができるということで、法律文言の中で実効性も確保される仕組みとなっている旨の説明をこれまでされてきたという理解でございます。
 私どもといたしましては、先ほど御説明申し上げましたとおり、既に今の努力義務の状態でも、事業者として合理的配慮については真摯に取り組んでいる認識でございます。いろいろな議論があり、気運が高まってきた等の状況は十分承知しておりますが、こと法律の改正に関わるお話でございますので、今の法律の前提や背景が大きく変わっていない状況では、私どもといたしましては、今のままで十分役割は果たせているのではないかと、つまり法的義務とする必要性は殊更ないのではないかと考えているところでございます。
 実際、現場においては、毎日いろいろなお客様に対応しています。その中で、先ほども申し上げましたように、できる限りお客様の御要望に沿う形で対応を行っておりますが、鉄道事業は不特定多数のお客様を短時間で対応する必要がございますので、安全上の配慮から、御利用に際して、やむを得ずお時間をいただかなくてはならない場合もございます。つまりお客様の御要望に完全にお応えできないケースというのも、当然発生するという状況になってございます。
 また、鉄道における安全ですとか定時運行のための固有のルールや手順との整合性などの観点に照らし合わせて、お客様の御要望がまれに過重な負担と考えられる場合があることも否めない状況でもあります。
 問題は、この際に合理的配慮ですとか過重な負担について、この間の議論でも出てきておりますが、明確な基準が出ていないということもあり、対応の判断ですとか御要望に添えないことを、お客様に御理解いただくために御説明することついて、事業者として非常に悩む部分も実態としてはございます。
 繰り返しになりますが、合理的配慮ですとか過重な負担に関する判断基準が不明確な現状において法的義務とする場合、事業者と当事者の方との認識の違いによって、現場において不必要な混乱ですとか、場合によっては、本来の趣旨を曲解されて紛争等に発展するリスクもあると考えているところであります。
 それから、この報告書を読ませていただきましたが、事業者からの相談に適切に応じる体制、こちらも今後検討されるという記載がございますが、現時点で、まだその中身が非常に不透明でありまして、相談を受け付けていただける、本当の意味で実効性のある組織を作っていただかないと、結果的に、その義務化による混乱や負担は事業者が負わなければならないと、これは第一線の係員が負うということになってしまいます。それとともに、お客様に対しても御迷惑が掛かってしまうという状況が懸念されます。
 以上のような理由から、私どもといたしましては、現状でも十分機能を果たしていることを前提に、法的義務化に関しては特段の必要はないと考えておりまして、繰り返しになりますが、今でも十分に法のめざすべきところは明確になっているのではないかと思っています。
 ただ、全体の流れの中で法的義務化をするということであれば、先ほどから申し上げているように、合理的配慮の定義ですとか、過重な負担と認められる事項を分かりやすく明確化していただいた上で、事業者の相談を受け付ける実効性のある組織を立てていただいた上で、国民の皆様にも周知徹底していただくことが絶対条件なのかなと思っております。義務化をされる場合については、そういった点も御配慮いただきたいなと考えております。
 JR東日本からは以上でございます。

○内閣府 衣笠参事官 ありがとうございました。
 続きましてJR東海様、お願いいたします。

○JR東海(東海旅客鉄道㈱)前田営業本部・担当課長 JR東海営業本部の前田と申します。このような場を設けていただきまして、誠にありがとうございます。
 合理的配慮の提供の内容と程度というのは多種多様でございます。そういった状況は法施行後3年が経過した現在においても、大きな変化はないと認識しております。このことから、この合理的配慮の義務化の必要性については、私どもは疑問があるものと考えております。弊社では、この法の趣旨に沿って、お体の不自由なお客様への応対に関する教育・訓練等を継続して実施しております。また、この法施行に当たって、関係社員に法の内容だとか応対の方法についても周知を図っているところでございます。こういったことで合理的配慮の提供というのは、法施行後継続して実施しているということが言えます。
 義務化されるということになりますと、どうしてもいろいろな事案が合理的配慮に該当するかどうかというところに焦点が当たってしまうという傾向があるのではないかなと思っております。そうしますと、どうしても法の趣旨とはやや異なる方向に行ってしまうのではないかという懸念がございます。結果としてかもしれませんが、事業者を含めた取組を進めていくことに、なかなか結びつかない可能性があるのではないかと考えております。
 あと、意見ということになるかと思いますけれども、実態として、法と関連づけて、例えば合理的配慮が受けられなかったというようなお客様からの御意見を承ることが、しばしばございます。この合理的配慮は先ほど少し申し上げましたが、双方の建設的な対話によって相互理解を通じて、必要かつ合理的な範囲で柔軟に対応がなされるもののはずなのですが、なかなかそうならない実情もございます。
 先ほど申し上げたとおり、義務化されることによって、相談事案等が増える可能性がございますので、そういったことに向けて、例えば地域の相談窓口の更なる充実等を図っていただけるとよいかと考えております。そういった窓口には中立的な立場に立っていただけますので、対話の促進という双方の建設的な対話による相互理解の促進が図られるのではないかと考えております。
 以上です。

○内閣府 衣笠参事官 ありがとうございました。
 続きまして、JR西日本様、お願いいたします。

○JR西日本(西日本旅客鉄道㈱)福家課長 JR西日本のCS推進部の福家と申します。よろしくお願いいたします。
 まず、当社の取組ですが、障害者差別解消法制定以後も、それ以前からもそうなのですが、やはり高齢者の方とか障害者を始め、様々な方に快適に鉄道を御利用いただくということで取り組んでまいりました。
 特にこの法に関することでしたら、法の趣旨をマニュアルに盛り込み、社員教育を実施しております。
 また、これはJR東日本さんと同様になるのですが、サービス介助士の資格を取得するということで、社員の教育ということに努めているところでございます。
 この度の義務化に当たりましては、やはり懸念というものがあって、そちらをまずお話しさせていただきます。まずは合理的配慮であったり過重な負担のない範囲に関する基準というのですか、こういったものがないことで、障害のある方と認識の違いから、かえってトラブルが増大する懸念があると考えております。こういうことは障害のある方にとっても不本意ではないかなと考えております。
 また、合理的配慮の内容は今と変わらないという前提となっているものの、やはり義務化ということで、障害のある当事者であったり、世間の求める合理的配慮の要求水準が高まるということも懸念点として感じております。
 こういった懸念を解消していくことが、まずは必要ではないかなと思っています。例えば具体的には、合理的配慮であったり過重な負担のない範囲等の定義範囲を示したガイドラインがやはり必要になってくるのではないかなと思います。整備に当たっても、地域や事業者によって環境はやはり変わってきますので、こういった環境を踏まえて検討することはもちろん、これまでも事例を積み上げるという話があったと思います。こういった事例に基づいた、実態に合ったものにしていく必要があるのではないかなと考えています。
 また、整備したガイドラインは作って終わりではなくて、当事者の方を始め、広く周知、理解を求めていく努力が必要であるとともに、こういうガイドラインを設けたとしても、やはりトラブルは発生するものと考えます。そうしたときに、国や自治体の体制整備、JR東日本さんが言われたように、整備して終わりではなくて、実効のあるものということが必要ではないかなと考えております。
 いずれにしましても、義務化というのは大切なことだと思うのですが、義務化することでかえってトラブルが増えたりして、障害のある方とコミュニケーションが取れなくなったりとか、齟齬が生まれてしまうと、この法律の趣旨とは異なってくると感じておりますので、その点を踏まえて検討が必要と考えております。
 以上でございます。

○内閣府 衣笠参事官 ありがとうございました。
 続きまして、日本民営鉄道協会様、お願いいたします。

○(一社)日本民営鉄道協会 滝澤運輸調整部長 日本民営鉄道協会の滝澤と申します。よろしくお願いいたします。
 合理的配慮の義務化の見直しということでございますので、まず、国土交通省において、平成30年度、令和2年度にバリアフリー法の改正がなされておりまして、そういったことを踏まえて、民鉄事業におきましては、ハード・ソフトの一体的な取組に努めているところでございます。
 具体的には、お客様に安心して御利用いただくために、先ほどJRグループさんからもお話がございましたが、社員研修でございますとか講習会の実施、あるいは国土交通省及びJRグループ様とも連携して、駅や車内でのポスターの掲出でありますとか、ディスプレイ等の映像の放映、お困りのお客様に対しましては積極的にお声掛けをするということで、「声かけ・サポート」運動等を実施しているところでございます。
 また、各社の現場においては、列車乗降時に御利用者のサポートでありますとか見守り、あるいは筆談アプリやQRコードといったものを活用して、情報の提供等に努めており、各社の経営環境は異なりますが、現場では可能な範囲内で配慮に努めているという認識でございます。
 そういった中で、どういった問題があるかということを申し上げれば、それぞれの会社の駅等におきましては、当然事業規模、駅の乗降人員等が異なりますから、そういった中で事故等による運行状況でありますとか、あるいは駅の設備などにより、対応には当然に限界があるわけでございまして、こういったときに御利用者の御要望に沿えないケースがあります。  あるいは障害のある方から、鉄道以外のところの対応を求められたり、他社と比較をされて法律を引き合いに出されたりといった場合もあるようでございます。それから、聴覚・知的・精神などの障害者の方は、やはり外見では分かりにくいので、必要なサポートの判断がしにくいというケースもお聞きをしてございます。
 そういった中で、今般、努力義務から義務に見直しをするといったときに想定される懸念でございますが、やむを得ずお客様の御要望に応えられない場合における合理的配慮の違反でありますとか、罰則化が懸念されます。
 また、義務化によりまして、逆に法の範囲及び解釈が狭く制限されるという懸念もございます。そのほか、義務化によって駅の要員でございますとか、当然、勤務体制の整備などが伴うという場合には、経営への影響も懸念がされます。
 こういったことから、まず現場が混乱をしないように、合理的配慮につきましては、やむを得ず時間を要する事象など、どこまでが合理的配慮に該当するのかしないのかを明確にしていただき、相互理解の下に分かりやすい形で十分な周知啓発が必要ではないかと考えます。また、事業者からの相談につきましても、適切に応じていただけるような体制の整備の充実をお願いしたいと思います。
 最後でございますが、事業者にとりまして、やはり過度な負担にならないように留意をお願いしたいところでございます。
 以上でございます。

○内閣府 衣笠参事官 ありがとうございました。
 続きまして、日本地下鉄協会様、お願いいたします。

○(一社)日本地下鉄協会 石島業務部長 日本地下鉄協会の石島と申します。今日はこういう機会をいただきまして、ありがとうございます。
 今も鉄道事業者さん、たくさんの意見というかお話がありまして、地下鉄というのもそう変わったものではないのですが、私どもの会員の中のメインとしては、いわゆる自治体さんの経営している公営の地下鉄がございます。この地下鉄事業者さんたちは、やはり福祉というか、そういう面に関してのプレッシャーというのは民営の事業者さんよりも、より強く感じているということで、今回のこういう件に関しましても、対応はより強くやっているというか、努力しているという状況にございます。
 何度か出ておりますけれども、障害者に限らないで全てのお客様に対して、安全で快適に利用していただくということがモットーでございますので、今回の障害者に対しての対応というのは、より強く考えております。法の施行以来、研修なども充実しておりまして、従前は現場でお客様に対応する方がメインだったのですが、一般のいわゆる内部の部局の方に対しても全員に研修をするという状況になってきております。
 また、障害者団体の方とのお話合いというのも個々にもやっておりますし、地域協議会ができていれば、大体皆さんそこに参加して共に考えるというベースを作っております。
 障害者の個別の対応というのが合理的配慮というところのバックにあると思うのですけれども、そういう要請に対応して様々な工夫をしております。例えば両方向に扉のあるようなエレベーターというのが今普及してきておりますけれども、どちらが開くのかがよく分からないという言葉に対して、壁であるとか床であるとかに第何フロアはどちらが開くのですというのを明示して、お客様が円滑にスムーズに使えるようにするとか、また、車両の行き先表示について、ロービジョンの方が見づらいという声が出てきていれば、それに対しての工夫をしていくことで対応することも行っております。
 今までも何度も出てきておりますけれども、合理的配慮の義務化につきましてですが、端的に申しますと、合理的配慮をどの場面でするのか、どの範囲がそれに該当するのか、それと、過重な負担というのがどこを示すのかとか、そういう基準が今の時点で示されていない、非常に曖昧であるという状況で、事業者と障害者の方との間の会話が成り立たないという状況が生じているのではないか。ですから、その認識を同じにできるような状況にならないと、こういう場面でのトラブルというのは、決して減っていかないのではないかと思っております。
 鉄道事業に限らず交通事業については、合理的配慮にというか、個別のその場面での対応というのは、どうしても人的対応がメインになります。これは経営上についても、かなり厳しい。人を増やしていくという状況にはなりませんので、としますと、事前に対応していくという環境の整備がメインに考えざるを得ないのではないか。
 ただ、そのためには、先ほどの繰り返しになりますけれども、共通の認識を持って建設的な対話が成り立つということでなければ、その環境の整備というところ、それも投資でございますので、こちらに振り替えるということについても、なかなかうまくいかないのではないかということで、ここで言う今度の見直しについては、やはりそういう建設的対話が成立するような、そういう環境の整備、皆さんが共通認識を持てるような、そういう環境の整備を図っていただきたいと思っております。
 そのための手段としての事業者からの相談窓口につきましても、公平で決してどちらかに偏らないような、そういう体制を整備していただきたいと思っております。
 以上でございます。

○内閣府 衣笠参事官 ありがとうございました。
 続きまして、日本旅客船協会様、お願いいたします。

○(一社)日本旅客船協会 須田常務理事 日本旅客船協会の須田でございます。よろしくお願いします。
 私どもの業界の状況を申しますと、事業者さんは1,000社ぐらいございまして、そのほとんどが中小事業者でございます。離島航路などもあり、離島航路は約300ございます。
 現在コロナ関係で経営は非常に厳しい状況でありまして、そういう厳しい状況の中で、この合理的配慮の提供の義務化というものについて、中小事業者が大半を占める私どもの業界の中で、経済的な負担が増えない配慮をお願いしたいというようなことが、まず1点でございます。
 先ほどから、皆さんからも御意見が出ておりますけれども、合理的配慮というのはどこまでが合理的配慮に当たるのかと、その判断が非常に難しいと思いますし、中小事業者に対する過重な負担というのが、これも皆さんが言っておられるように、どこまでが過重な負担なのかどうかというのもあります。
 離島航路事業者のように、補助金を国からいただいている、自治体からいただいているような、事業者も多々ございますので、そういう中で義務化となれば、これは更に厳しい経営状況になってしまうのではないか。できれば、私どもとしては引き続き努力義務でお願いしたいと考えておるところでございます。
 具体的な業の実態を申しますと、旅客船というのは5トンの船から、川下りとか屋形船みたいな船、それから、長距離フェリーみたいな2万トン級の船がございます。そして一船一船、他の公共交通と違いまして船の形が違っております。ですから、ちょっと他の交通事業者の方々とは違うのかなと思っております。そういう小さいところから、本当に何十倍、何百倍という総トン数を抱えているような、これを一律に義務化というのはなかなか難しいのではないかと考えておるところでございます。
 また、実際に船というのは、これも他の交通事業者の方々と違っているのは、停船をして岸壁に船をつけておりましても常に揺れている状況でございます。ですから、身障者、特に車椅子等の方であれば、必ず乗組員が対応しているというのが現実にございます。そういう意味では、ここで言う合理的配慮、人的対応というのは、他のところよりも実際にやらざるを得ないというか、やっておると私どもは認識しておるところでございます。
 困った事例というのは、船の中で、表面的には分からない方、例えば精神障害のある方とか、中には他のお客様に暴力を振るってしまったとか、そういう事例がございます。そういう場合には乗組員が船の運航中ずっと付き添って対応をせざるを得なかったという事例ありました。
 それから、船の航路というのは、1つの自治体で収まりません。例えば北海道から九州沖縄まで航路が通じておりますので、自治体、国土交通省で言いますと、所管の運輸局がそれぞれ違っております。そこでの対応というのが、その自治体により、また運輸局により、その担当者によって変わってきてしまっているところが過去にありました。最近は随分改善されてきておりますけれども、先ほどから相談窓口の一本化という話もございますけれども、適切な相談窓口というか、対応ができるような、そういうところがやはり必要かなと考えております。
 私の方から以上でございます。

3 意見交換

○内閣府 衣笠参事官 ありがとうございました。
 それでは、皆様方からの御意見をいただきましたので、残りの時間で意見交換をさせていただければと思います。各団体の皆様から御発言をいただきましたが、何か追加での御意見や、言い足りなかったこと等がある場合、それから、内閣府に対しての御質問等がある場合など、挙手をいただければと思います。
 日本旅客船協会様、どうぞ。

○(一社)日本旅客船協会 須田常務理事 これは義務化となった場合には、罰則ということは、最終的にはどうなるかというのは、今後どうなのでしょうか。罰則という話については、全く考えていないという話なのでしょうか。義務化についてです。

○内閣府 衣笠参事官 この障害者政策委員会の議論の中では、罰則をもって、そういった実効性を担保すべきといった御意見は特にありませんでした。
 あと、現行法でも不当な差別的取扱いというものは、事業者の方も禁止になっていまして、これは義務なのですけれども、そちらの実効性担保として罰則が別に設けられているわけではありません。このため、今の検討の方向性として、そういった罰則を設けるといった議論が出てきているわけではない、特にやるべきという御意見もない状況です。
 他にございますでしょうか。

○(一社)全国ハイヤー・タクシー連合会 熊谷ケア輸送等 統括 ただ今の罰則がないという意見ですけれども、なければ、先ほどJRさんも言っていたように、このままでよいのではないかと思うのです。

○内閣府 衣笠参事官 今日、お集まりの皆様方は、かなり合理的配慮の提供等に取り組んでいただいていると我々は理解しているのですけれども、一方で、我々の努力不足の面もありまして、合理的配慮自体が、それほど周知がされていないと言いますか、あまり認識もしていないという方々もいらっしゃいます。そうすると、例えば何かしてほしいといったときに、話合いのテーブルになかなか乗ってくれないとか、そういった方も一部いらっしゃるということは、障害者団体の方から聞いているところです。
 そのため、そういったことをすることがやはり必要なのだなということを分かっていただく、はっきりさせていくという意味での義務化というのはあり、罰則を設けて強制的にということでなくても、そういった意味はあるものと考えています。

○(一社)全国ハイヤー・タクシー連合会 熊谷ケア輸送等 統括 単純に今は努力義務になっているのが、義務化ということでよろしいですか。

○内閣府 衣笠参事官 法制的な話は、このヒアリング等も踏まえて具体的に検討していくわけですが、基本的に我々が想定するのは、今努めなければならないというのがしなければならないとなるということで、要件等を変えていくべきというのは、障害者政策委員会の中で、特に何かそういった御意見があったわけではありません。

○(一社)全国ハイヤー・タクシー連合会 熊谷ケア輸送等 統括 あと、事業者からの相談にも対応するとありますけれども、今までは事業者からのそういう相談の窓口はなかったのですか。

○内閣府 衣笠参事官 今でも障害者差別解消法の中で国と地方公共団体は相談・紛争解決の体制整備を図るという義務が規定されており、各自治体、もしくは国の運輸局もそうですけれども、既存の組織等も活用しながらいろいろなところで相談体制を作っています。そのときに、事実上は相談に乗っていただいているとは思うのですけれども、これからはもうちょっとそこをはっきりとさせて、きちんと整備していく必要があるのではないかという、それがこの障害者政策委員会での意見書の内容ということです。

○(一社)全国ハイヤー・タクシー連合会 熊谷ケア輸送等 統括 ということは、今までは利用者からの相談のみであったということですか。一方的に利用者がわーっと言えば、事業者は何も言えない立場だったと。

○内閣府 衣笠参事官 実際上は、相談は事業者からも当然乗っていたと思いますけれども、それははっきりと正面から事業者からの相談に応じるとしているわけではなかったということです。

○JR東日本(東日本旅客鉄道㈱)阿部次長 先ほどの御説明の中で、今回改正に向けて検討しなくてはいけない理由の一つとして、一部の事業者においてはまだまだ認知度が低いという御説明がありましたけれども、認識が低いのであれば、今のこの法律に対して何か致命的な誤りがあるわけでもないので、しっかりと啓発活動をすればよいと思います。
 一方で、とりまとめなどを読むと、障害者権利条約の関わりの中で、これは検討していかなくてはいけないといった話も出ていますけれども、障害者権利条約との関わりの中で言えば、既に我が国として、先ほども御説明申し上げましたように、行政と民間事業者の2つの基準があることについて、この3年間、妥当であるという説明をしてきたわけでありますから、それをまた殊更今変える必要はないのかなと考えています。
 誤解なきように申し上げると、我々は別に反対というわけではなくて、先ほど申し上げましたように法律を議論するのであれば、やはり必要性というのをちゃんと分かるように整理をした上で議論をすべきではないかと考えております。その中で、障害者権利条約との整合性について、内閣府を中心に今まで説明してきたことが成り立たないのだということであれば、そういう説明もちゃんとしていただきたいなと考えております。
 あと、先ほどから申し上げているように、今、我々としては不要だと、今でも十分ではないかと思っていまして、先ほどの啓発が足らないのでしたら啓発をすればよいと思いますし、もし義務化されるのであれば、やはり不備なところは改めた上でお願いしたいというのが私どもの希望でございますので、義務化の流れは不可避だというのであれば、そこだけはしっかりやっていただきたいと考えております。

○内閣府 衣笠参事官 日本民営鉄道協会様、お願いします。

○(一社)日本民営鉄道協会 滝澤運輸調整部長 日本民営鉄道協会でございますが、たびたび恐縮でございます。今、JRさんとか他の協会から御意見もありましたが、国及び自治体は既に義務化がされているわけでございまして、東京都も条例で義務化がされていて、かなりの事業者さんは東京圏に位置をしているので、既にかなり義務化の対象になっている。
 ですので、先ほども出ておりましたが、義務化されたからといって、事業者は更に何かやるというよりも、既にかなり努力はしているので、義務化されても基本的にはその方向性は変わらないのだろうなということでございます。そうすると、なぜ今、努力義務を義務化しないといけないのかという、その根本のところが不明確だなと思います。過去3年間で国及び自治体では、どのような実態であったのか、結果的にどういう課題があるかというのをしっかり整理をされた上で、事業者にも必要なのか、必要でないかという議論も必要ではないかと思います。
 あわせて、先ほどどの事業者、協会からも話がありましたが、義務化されるのであれば合理的配慮について明確な基準を設ける必要があるのではないかという意見がありましたので、事実そういう基準を設ける予定が今はあるのか、お聞きしたい。
 なぜなら、例えば鉄道の場合で申し上げますと、かなり小さな駅、あるいは無人駅というのはたくさんございます。そういったところは当然、すぐにそこに飛んでいけるように管理駅みたいなのがございまして、事前に障害者が連絡をし、それを受けて対応するような形が大半ではないかと思います。そういう場合に何分まで許されるのか、15分ならよいけれども、30分はけしからんということなのか、そういったことが義務化によって相当具体化されて問題になるのではないかと思います。もしそういうことであれば、そういったところはきちんと整理をしていただく必要があると思います。
 また、今、国交省ではバリアフリー化のソフト面にもかなり力を入れてやってございます。既に各事業者はソフト対策を毎年計画し、公表し、実績を報告しろというようなスキームになってございますので、そういったところとの整合性は是非お願いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 以上でございます。

○内閣府 衣笠参事官 内閣府ですけれども、少し補足だけさせていただきます。
 障害者権利条約との関係で申しますと、今までも当然障害者権利条約を批准する前提でこちらの障害者差別解消法というのは制定されているということでありますので、その批准に必要なものは満たしているという前提になっております。ただ、意見書でも書かれていますけれども、障害者権利条約の理念の尊重及び一層の整合性の確保ということで、一層のという観点で義務化ということが、議論としてあるということでございます。
 それから、日本民営鉄道協会様からご質問がありました明確な基準についての今後の取組に関しましては、今までの蓄積も基に、この意見書を踏まえて基本方針の見直しや、基本方針を踏まえた対応指針の見直しを、どこかで行う必要が出てくると思いますので、その中の一つの検討の内容かと思います。
 あと、こちらの意見書で事例の蓄積・共有といったことが、いろいろと言及をされております。基準を一律に示すことがどこまでできるかというと、どうしてもそれを示しきれないものは必ずあるわけでありまして、事例の共有をしていくのも大事な取組と考えております。

○内閣府 難波審議官 失礼いたします。内閣府の審議官の難波でございます。
 大変貴重なお話をいろいろいただきまして、ありがとうございました。
 個別の御指摘等については、先ほど衣笠参事官からも御説明したとおりでありますけれども、これまで努力義務と言われながらも、ちゃんと実際努力して合理的配慮、過重な負担のない範囲ではちゃんとやっていますという事業者がほぼ大勢を占めているという印象を受けておりまして、そういったお立場からすれば、何が変わるのか、逆に何で変えなくてはいけないのかというお考えなり、率直な気持ちが出るのももっともかなという感じもいたしております。
 ただ、先ほど申し上げたとおり、障害者権利条約との一層の整合性を含めた検討をさせていただいております。この機会に事業者の中で更に分けるとか、そういう細かい議論があれば別ですけれども、事業者というくくりになった場合にその一部について、ここだけは努力義務のままというのも、なかなか難しいところもありますので、基本的にはやるなら事業者全体について義務化という前提での検討をさせていただいているところであります。
 ただ、お伺いしていますと、義務化して逆に現場のトラブルが増えるとか、混乱が大きくなるとか、更には建設的対話が逆に進まなくなるとか、そういった御懸念も頂きました。これは我々も不本意ではありますし、法律なり条約が望むところとは真逆の話であります。そういったことにならないようにするということは当然担保することも考えながら検討しなければならないと思います。
 そのためには、恐らく相談の窓口あるいはその機能の整備や強化、基準の明確化や事例の収集・共有、それから、事業者に対する広報・啓発は当然あるにしても、やはり広く国民一般に対する広報・啓発というのも重要かと認識しております。例えば乗車のサポートをしているときに、お待ちいただく他の一般客との関係で現場の対応が困るとか、そういったことも含めて一般客の理解も得ながらやっていく、当然リクエストしている障害者の方にも対応しなくてはいけない、現場はそういう御苦労が非常に多いのだなと最近つくづく感じているところであります。そういったものもセットで検討した上で、どのようにするかということを、しっかりまた議論なり調整をしていきたいと思っております。
 まだ時間はありますけれども、一通りお伺いしての私からのコメントとさせていただきます。どうもありがとうございます。

4 閉会(省略)