障害者差別解消法の見直しの検討に係る障害者団体ヒアリング(10月28日)議事録

令和2年10月28日(水)
15:00~16:26
中央合同庁舎8号館1階講堂

【議事に使用されている資料については「議事次第」のページにまとめて掲載していますのでご参照ください。】

○内閣府 衣笠参事官 それでは、順番に御発言をお願いしたいと思います。
 まず、全国「精神病」者集団様、お願いいたします。

○全国「精神病」者集団 桐原運営委員 全国「精神病」者集団の桐原です。
 全国「精神病」者集団は1974年に結成した精神障害者個人・団体の全国組織です。
 障害者差別解消法の見直しが障害者権利条約の趣旨を鑑みたものになるように、次のような点に留意されますよう意見を申し上げます。
 差別の定義は、直接差別、間接差別、関連差別、合理的配慮の不提供の4類型としてください。
 挙証責任については、差別を受けた側がその事実を挙証するのではなく、差別をして告発をされた相手方に対して、差別していないことを挙証させていくようなものにしてください。
 法律の中に各則を設けて、具体的な場面を想定した差別の禁止を定めたものを作ってください。
 民間事業者による合理的配慮については、義務化をしてください。
 具体的にどのような合理的配慮を提供するのか、事業者に対しても相談できる窓口を設置してください。合理的配慮の提供に関する事業者への普及啓発を行ってください。
 裁判外紛争解決機能なのですけれども、行政から独立した裁判外紛争解決の仕組みを作り、調整・調停を行う権限を持たせるなどして、法律の実効性を担保してください。その構成メンバーは、障害当事者団体、法律家、福祉専門家等と明文によって規定してください。
 できれば、それはパリ原則に基づく国内監視機関の設置をして、その国内監視機関として障害に基づく差別への対応を可能とするための当該裁判外紛争解決機能と連動した体制を構築するようにしてください。
 相談体制については障害者が地域で身近なところで安心して相談できるように、当事者が構成メンバーに加わったものにしてください。裁判外紛争解決が平行線となり、打ち切るほかなくなった場合は、裁判に向けた支援・相談といったことができるようにしてください。
 裁判規範性というものがありますけれども、この法律は平行線になってしまった場合、基本的に泣き寝入りするほかないという問題があります。資料6「団体提出資料:(一社)日本ALS協会」で日本ALS協会が後半で事例を書いていらっしゃるのですけれども、僕もこれに非常に感銘を受けたのですが、東京都は一応義務化されているにもかかわらず、事業者がやらないと言い続けてしまえば、結局のところ、せっかく法律ができたというのに差別され、かつ泣き寝入りを余儀なくされることになってしまうという事態だと思います。これでは本末転倒なので、司法救済等で、泣き寝入りを余儀なくされるのではなく、実効性をきっちり担保してほしいと思っています。裁判規範性のある規定を設けるようにしてほしいです。
 現在、障害者差別解消法の対象は行政機関、民間事業者となっていますけれども、立法府や司法府についても対象にしてください。
 障害者政策委員会の中では、僕たち精神障害の団体というものは実際には入っていない状態になっています。確かに精神障害がある有識者や、ピアサポーターの職能研修機関に所属している精神障害の当事者の方は専門委員の方にもいらっしゃいますけれども、病院の患者自治会や地域の患者会、自立生活センターの当事者スタッフなど、幅広い精神障害者によって構成された団体に所属する精神障害当事者はいないので、私たち全国「精神病」者集団を始めとする精神障害当事者の団体を代表するような精神障害者を障害者政策委員会の中に入れてください。
 地方公共団体の対応要領作成ヒアリングについても、精神障害当事者が入っていないため、実際の事例集でも「ゆっくり話すようにする」とか、「穏やかな口調で話をする」など、精神障害のニーズとして蓋然性のないものが散見されるので、精神障害当事者が参画をした上で、再検討、修正を行うようにしてください。
 最後に、この見直しがなかなか思うように進まなかったとしても、見直しに向けて引き続き継続的に検討を繰り返して、特に障害者権利条約第39条に基づく勧告を受けた場合には、障害者団体の参画の下で、勧告に基づく現状の問題点の把握を行って、法律の見直しを始めとする必要な措置を講じてください。
 よろしくお願いします。ありがとうございました。

○内閣府 衣笠参事官 ありがとうございました。
 続きまして、全日本難聴者・中途失聴者団体連合会様、お願いいたします。

○(一社)全日本難聴者・中途失聴者団体連合会 新谷理事長 全日本難聴者・中途失聴者団体連合会理事長をしております新谷です。よろしくお願いいたします。
 障害者政策委員会での議論を踏まえて、3点意見を述べさせて頂きます。
 1番は、差別について、障害者権利条約と同様の定義規定を障害者差別解消法にも盛り込むべきだと考えております。
 御存じのように、障害者権利条約は差別の定義を「障害に基づくあらゆる区別、排除又は制限」として、その差別の中には合理的配慮を含む、あらゆる形態の差別を含むとしております。
 これに対して、障害者基本法、それを受けた障害者差別解消法も「何人も、障害者に対して、障害を理由として、差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない」と規定しているだけで、差別の内容に関する規定の条文を持っておりません。
 障害者政策委員会の議論にありますように、確かに差別類型を細かく議論していけば、いろいろな課題が出てくると思いますけれども、法律に一定程度の内容の規定がないことは差別をする側、差別を受ける側に差別についての考え方のずれを生んで、無用な混乱を招いているのではないかと思います。
 そういう意味で、差別についての最大公約数的な定義として、「障害に基づく差別とは、障害に基づくあらゆる区別、排除又は制限であり、障害に基づく差別には、あらゆる形態の差別を含む」という障害者権利条約の定義規定を障害者差別解消法にも盛り込むべきではないかと思います。
 2点目の事業者による合理的配慮の提供については、障害者権利条約との一層の整合性の確保を図るという観点から、努力義務の規定を法的義務の規定に改めるべきと考えます。
 現在の障害者差別解消法は合理的配慮の提供について、行政機関と事業者のいずれにおいても、合理的配慮の提供について、「過重な負担」の抗弁が許されております。これに加えて、事業者の合理的配慮提供義務を努力義務に緩和することの理由は非常に乏しいのではないかと思います。
 合理的配慮については、障害者差別解消法の基本方針が「合理的配慮を求める側・提供する側の相互理解を前提としている」と書いてありますので、合理的配慮の提供に関する無用な文言の争いを避ける意味から、また、実質的な取組を前進させる意味から、事業者においても法的義務として、その後の具体的な事例においての適切な調整は過重な負担の要件の中の議論で調整が可能ではないかと思います。それが2点目です。
 3点目は、障害者差別解消法の改正と同時に、障害者差別解消法の基本方針の改正も障害者政策委員会で議論して、一定の方向を出すべきではないかと思います。
 障害者差別解消法は全文26条にとどまっていて、実質的な規定を基本方針の記述に委ねているところが非常に多いように思います。今回の法改正に当たっては、基本方針の必要な改正も併せて議論すべきと考えます。
 以下、2点例示をします。1点目として「不当な差別的取扱いの基本的な考え方」ということが基本方針に書かれていますけれども、基本方針は「不当な差別的取扱いとは、正当な理由なく、障害者を、問題となる事務・事業について本質的に関係する諸事情が同じ障害者でない者より不利に扱うことである」と難しい書きぶりをしています。要するに障害者と障害者でない者の差別は、本質的な事項での不平等な取扱いといいますか、異なった取扱いと読み取れるように書いてあります。その取扱いが本当に本質的な意味での不平等なのか、それとも付随的な意味での不平等なのかという議論はなかなか難しいと思います。それぞれの立場から本質的だ、本質的でないという議論があり得るわけですから、あえて法律の規定を超えて基本方針にこういう新しい条件を書き込むことの良し悪しについて、もっと議論を進めるべきだと思います。
 2点目の例は「合理的配慮の提供が必要となる範囲」ということで、基本方針は「行政機関等及び事業者の事務・事業の目的・内容・機能に照らし、必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られる」と書いています。これは言い換えれば、本来的な業務に付随するもの以外であれば、合理的配慮の提供義務はないと読めるわけですけれども、例えば私たちが会社で勤務しておりまして、会社の業務が終わった後、飲み会的な打合せをやろうではないかという話があったら、これは本来的な業務に付随するのか、付随しないのか。私たちの場合、アルコールが入った飲み会でも話す内容が聞こえなければ困ってしまうのです。そういうときに情報保障が欲しいと言っても、これは業務外だと言われてしまうと、いろいろな意味でかなり差別的な対応になると考えます。
 もう一つ、合理的配慮の提供での大きな問題は、合理的配慮の提供は「事務・事業の目的・内容・機能の本質的な変更に及ばない」範囲だけなのだということです。合理的配慮を提供することによって、事務・事業の本質的な目的から変わってしまうということであれば、合理的配慮の提供は必要ではないのだという書き方をしているわけです。こういうことが法律ではなくて、基本方針に書かれているというのは大きな論点ではないか。基本方針が法律を超えた規定をすることの是非については、障害者政策委員会なりで十分議論すべき事項だと考えております。
 以上、団体からは3点です。

○内閣府 衣笠参事官 ありがとうございました。
 続きまして、DPI女性障害者ネットワーク様、お願いいたします。

○DPI女性障害者ネットワーク 藤原代表 DPI女性障害者ネットワークの藤原と申します。
 今日は発言の機会をありがとうございます。
 まず、結論から申し上げますと、障害女性の複合差別解消に向けて、事業者の合理的配慮の義務化は必須であると考えます。
 私どもは昨年のヒアリングで、国及び地方公共団体は障害女性が障害及び性別によって複合的な差別を受けることを認識し、その実態を把握し、差別解消に向けた適切な措置を取らなければならないという文言を障害者差別解消法に入れるということを求めました。そして、障害者差別解消法の基盤となる障害者基本法においても、遠からずまた改正が必要であるということを述べました。こうしたヒアリング、議論を経て出ました障害者政策委員会意見を尊重して、実現していくことが求められると思います。
 では、障害女性の複合差別になぜ事業者の合理的配慮の義務化が必要なのかという理由を3点申し上げます。レジュメも書いておりますので、御覧ください。
 1つ目なのですけれども、今、このコロナ禍にあっては、より弱い立場の者に一番影響があります。今までの大災害などからもそういうことが証明されているわけなのです。それで、女性ネットは、今年4月30日に首相と男女共同参画担当大臣、そして局長に宛てて要望書を提出いたしました。
 その第1項目に、DVとか性被害が増大する可能性が高いので、相談窓口などに障害のある女性が十分にアクセスできるような措置を採ってくださいということを要望しました。これは普段から例えば相談窓口が電話とか対面でしかやっていないので、聴覚障害のある方がアクセスできないとか、車椅子だから入れないので無理ですと断られたということが多々あったのです。
 でも、レジュメに挙げた視覚障害の女性は出産のための入院を断られたのですけれども、別の病院ではきちんと御本人の希望を聞いて、レジュメに書いてあるような、様々な合理的配慮といった細かい配慮がなされました。ですので、こういった建設的対話を進める上でも義務化は必須であると考えます。
 2点目です。既に御存じのように、東京都は合理的配慮の義務付けを行っていますけれども、その東京都が障害者政策委員会のヒアリングにおいて、義務化の影響で事業者からの関心が高まって、相談が8倍に増えたという報告がありました。そして、第三者がそこに介入して建設的対話を進めることが重要であると考えますということを発言されました。
 女性ネットに最近寄せられた事例なのですけれども、都内に住んでいる若い障害女性が産婦人科クリニックに行ったそうなのです。そうしたら、スロープがなくて入れなかった。でも、彼女はその病院の方に東京都は義務なのですよということをお伝えしたところ、病院が都に連絡をして、次に行ったときにはスロープがちゃんと付いているという適切な処置がなされたそうです。
 彼女が言うには、この話は女性ネットにだから話せたのだ、特に若い女性にとっては、産婦人科というところに行くだけでもすごく勇気が要る、ハードルが高いことです。たとえ相談窓口に守秘義務があるといっても、やはり自分から電話するとかはなかなかしづらいです。こういうよい事例があったということも、自分と分かる形では人前ではなかなか言えないのだということを話してくれたのです。ですので、こういった意味でも障害のある女性にとって、義務化は必要であると考えます。
 最後の3点目ですけれども、同じく東京都では障害女性の配慮についてもより踏み込んだ書き込みがなされています。そのために、性別統計も取っています。それで見ますと、女性の相談は男性の相談よりも10ポイント以上少なくなっているのです。この理由も先ほど申し上げた女性のように、すごく内容がセンシティブである、だから言いに行けないというのも一つありますけれども、もう一つは、障害のある女性の置かれている背景、状況です。
 女性は別に障害のある、ないにかかわらず、文句を言わずに、かわいがられるようにということであるとか、自分のことをあまり主張しないようにということを言われて育ってきます。それにプラスして障害者であるということで、健常者にかわいがられるように、逆らわないようにと育てられるのです。そうなると、その両方を常に言われている障害のある女性にとっては、こうしてくださいということをなかなか言い出せない状況があります。私の身近な障害女性でも、お世話になっているから言えませんということを言われるのですけれども、そういう刷り込みとかがあると、言わないようにさせられてしまう、思い込まされてしまうというのがあります。
 こういった背景なんかをきちんと認識した上で、エンパワーメント教育であるとか研修を行うこととか、情報提供、そして広報といった課題があると同時に、地方公共団体においても相談とか紛争解決の仕組みを作ることであるとか、国においてはワンストップ相談です。やっと勇気を出して電話したのに、また他のところにたらい回しにされて、またつらいことを話さないといけないということでは安心して電話できませんので、やはりそういった体制の整備も同時に求められると思います。
 今年は障害者権利条約の第1回目の審査がなくなってしまいましたけれども、それを控えた今だからこそ、実現に向けて合理的配慮の義務化は必要ですし、2030年達成目標のSDGsは「誰一人取り残さない」というスローガンがありますので、これを進めていくためにも、ぜひ合理的配慮の義務化で障害者政策委員会意見の尊重を行っていくべきだと考えます。
 以上です。ありがとうございました。

○内閣府 衣笠参事官 ありがとうございました。
 続きまして、日本ALS協会様、お願いいたします。

○(一社)日本ALS協会 岸川常務理事・事務局長 日本ALS協会の岸川と申します。
 今日はこのような場にお呼び頂きまして、ありがとうございます。
 では、意見を述べさせて頂きます。3点ほどあります。
 1つは「●」のところですけれども「事業者による合理的配慮の提供の義務化について」です。ここに色で貼っているのは、内閣府作成のリーフレットに沿って書かせて頂きました。
 合理的配慮の提供については義務化をすべきだと考えております。というのは、合理的配慮の提供においては、もともと負担が重すぎない範囲で対応という前提条件があります。
 もう一つ、批准した条約との整合性を当然確保する必要があります。
 それから、障害者雇用促進法においては、事業主などの合理的配慮の提供は義務となっております。
 ということから、障害者差別解消法においても、合理的配慮の提供を努力義務のままにしないで義務化するということは当然の流れと考えますので、早急にやって頂ければと思います。
 次に「障害者基本法・障害者差別解消法の障害者の定義について」です。
 ALSという難病者の立場から述べさせて頂きます。
 まず、障害者基本法31条の中に、難病に関わる障害者に対する施策をきめ細かく推進するように努めなければならないという記載もあります。そういう中で、第2条の障害者の定義に難病患者が入っていないということは、矛盾ではないのですけれども、少し法律の中で整合が取れていないということが見てとれますので、次から明記して頂きたいと思っております。
 次に、障害者差別解消法ですけれども、Q&Aで難病も含まれるということがありますが、これも実際の法律の中に定義として明記して、整合を取るべきだと考えております。
 最後ですけれども、3点目の「紛争解決の手段について」には、困ったときには相談してくださいというのがありますが、まず、障害者差別解消法の中で、司法救済がないということは、結局、解決できなかったら差別されても諦めるしかないという流れになってしまいますので、ぜひとも司法救済の相談と裁判規範性のある規定を入れてくださいということでお願いしたいと思います。
 この発言の前提は下の方に*で囲んでおりますけれども、意見が寄せられております。案外多いケースではなかろうかと思っております。
 以上です。

○内閣府 衣笠参事官 ありがとうございました。
 続きまして、日本肝臓病患者団体協議会様、お願いいたします。

○日本肝臓病患者団体協議会 古川幹事 日本肝臓病患者団体協議会の古川と申します。
 今回のヒアリングにお声掛け頂き、ありがとうございます。
 また、日頃より国の肝炎対策を進めてくださっていることに御礼申し上げます。
 私たちはウイルス性肝炎を中心とした肝臓病の患者団体ですが、ウイルス性肝炎の他に自己免疫性の肝臓病もサポートしていまして、私もその患者の一人です。
 障害者の中に難病も含まれているということで、今日はその立場から意見を述べたいと思います。
 なお、事前に提出した資料がありませんので、口頭での発表とさせて頂きます。
 肝臓病の中には、ウイルス性肝炎は患者が多いので有名ですけれども、それ以外にも自分の免疫が肝臓や胆管を攻撃してしまうことで起こる自己免疫性の病気があります。病名で言うと原発性胆汁性胆管炎、自己免疫性肝炎、原発性硬化性胆管炎という3つで、この3つともが指定難病となっています。それぞれに病態や特徴が異なっていて、薬を飲むことで病状が安定している患者も多いのですが、病状が不安定だったり、肝硬変まで進んでいる患者もいます。中でも、原発性硬化性胆管炎は他の2つの病気に比べると治療が難しく、20代を中心として若い患者も多いという特徴がありまして、生活面のうち、特に就労については大きな課題となっています。
 本日の議題である事業者による合理的配慮の提供について、労働や雇用の分野に関しては、障害者雇用促進法に定めることとなってはいますが、私たち自己免疫性の肝臓病患者にとっては、特に就労に関することで社会的障壁を感じる場面が多いため、そのことについて意見を述べさせて頂きたいと思います。
 自己免疫性の肝臓病は、疲れやすかったり、体調に波があったり、定期的な通院が必要なことが多いのですが、病状がある程度安定していて、業務内容や勤務時間の調整などの配慮を受けることができれば、一般の事業所で十分に働けます。今年は新型コロナウイルス感染症によってリモートワークが急速に普及しましたが、私たち患者の間でも在宅勤務を経験してみて、体力的な負担が減ったという実感があります。多様な働き方が可能だという認識が社会に広がったことで、事業者の配慮の取組が進むのではないかと期待しています。
 事業者による合理的配慮の提供について、障害者差別解消法では努力義務ですが、障害者雇用促進法では義務となっています。ところが、実際には、私たち患者は社会的障壁による就労面での困難さを抱えているという実態があります。
 私たちの団体に患者から寄せられる相談では、体調の問題から仕事の量を減らしたいが、偏見を恐れたり、遠慮があったりして職場に言い出しにくいという悩みが多く聞かれます。無理をして体に負担がかかっていたり、いっそ仕事を辞めてしまおうかという考えも耳にします。また、就職活動や転職活動で病気のことを伝えると、採用の次の段階に進むことができなくて、仕事がなかなか決まらなかったという経験談も少なからず聞いています。最近では、検査のための通院の頻度が増した時期に、職場から理解を得られなくて、話がこじれて退職をしてしまったという事例もありました。
 合理的配慮の適切な提供のためには、双方の建設的対話が求められていますが、それには専門的な知識を持つ仲介役、第三者のサポートが重要だと考えています。就労に関しては難病患者就職サポーターや、ジョブコーチなどによる支援の充実を望んでいます。
 また、障害者手帳に関してですけれども、肝機能障害ではある程度まで進行した肝硬変でないと認定されないため、手帳を持っていない患者のほうが圧倒的多数となっています。例えば障害者雇用率の算定の対象に難病患者も加えるという検討をするなど、合理的配慮の提供が適切になされるような環境整備を併せて進めて頂きたいと思います。
 以上です。ありがとうございました。

○内閣府 衣笠参事官 ありがとうございました。
 続きまして、日本高次脳機能障害友の会様、お願いいたします。

○(特非)日本高次脳機能障害友の会 片岡理事長 日本高次脳機能障害友の会理事長の片岡と申します。皆様、よろしくお願いいたします。
 また、今日はこのような場にお呼び頂きまして、本当にありがとうございます。感謝申し上げます。
 当団体は合理的配慮の義務化は必須であるということを前提に、お配り頂いた資料にもありました建設的対話の促進、事例の共有、相談体制の充実という点にスポットを絞って資料を作成させて頂きました。
 高次脳機能障害は、例えば事故や脳卒中などの脳のアクシデントによって、人を人たらしめている機能が障害されるというような障害ですので、症状はかなり多岐にわたります。主に言われていますのは注意障害、記憶障害、遂行機能障害、社会的行動障害と言われる障害があります。特に社会的行動障害における社会的に問題とされる行為・行動は多岐にわたっております。
 まず、どのような困難事例があるかということを参考にして頂きたくて、中島八十一先生の「社会的行動障害がもたらす生活のしづらさ」という知見から一部抜粋した社会的行動障害の問題となる行動を記載させて頂きました。
 まず、暴言暴行・自傷などの行為が挙げられます。病院や役所などで怒鳴ったり、怒ったり、何度も警察に通報されるという事例があります。
 公共交通機関などで車内マナーの悪い人たちに大声で怒鳴りつけるとか、いわゆるハイパーモラルと言われるような症状があります。
 あるいは、脱抑制と言いまして、抑制が絶たれた状態で、感情とか、そういう情動的な部分が表に立って、理性で抑えている前頭葉の機能が少し抑制されることで脱抑制が起こる。しきりに非理性的行動があったり、欲しいと思ったものを我慢できずにずっとお金を散財し続けるといった症状があります。また、飲食関係においても、制限なく食べるとか、購入前のお菓子をお店の中で食べてしまったりというケースも確認されております。
 もちろん触法行為もありまして、万引きや銀行強盗未遂で裁判になったといった事例もある状態です。
 他の認知機能との関係としまして、こだわりが強くて落ち着きがないとか、急に道路に飛び出して器物を破損するとか、たくさんのことを言われると処理ができずに困惑する、パニックになるというケースがあったり、被害的な、妄想的なようなものを抱くようなケースがあったりします。
 私たち当事者・家族団体、あるいは支援者から、これらの世間に周知されている困難事例に加えて、日頃の中からの声を抜粋したものがあるのですけれども、美術館とか映画館など静かにすることを求められるような環境下においては、いつスイッチが入って大声で怒鳴ってしまうか分からないような人たちをなかなか連れていきにくいという声があったり、あるいは高次脳機能障害は一見普通の障害がない人と同じような外見に見えますので、見えづらい障害とも言われております。障害があることが相手になかなか分かってもらえなかったり、あるいは障害が軽いと思われてしまうことにストレスを抱える。
 あと、度々問題を起こして、飲食店やパチンコ店など複数のお店で出入り禁止になったり、問題を起こした際にも、当事者家族を含め、障害の症状を説明させてもらえなかったり、説明できなかったりするケースもあるということが挙げられます。
 あと、行政手続において、担当者が当事者の発言のみをうのみにして、当事者家族が思ってもいないような手続結果になってしまうという声が上げられている現状があります。
 こういった現状に対しまして、合理的配慮の提供を当事者・家族団体として強く望んでいるわけなのですが、具体的には問題が発生したときに間に入ってくる支援者の必要性、それから、高次脳機能障害はかなり長期間にわたって継続した支援が必要ですので、粘り強い関わりのできる支援者の育成の必要性、それから、障害された認知機能及び心理面への配慮、あと、社会全体に対する高次脳機能障害の正しい理解の普及などが具体的に挙げられます。
 一方で、誰もがなる可能性のある障害と言われる一方で、高次脳機能障害の問題行動への対応は確立されている状況とは言えなくて、必要とされる合理的配慮について明確でない、あるいはライン引きができないということも承知しております。しかしながら、問題が起こった場合に、高次脳機能障害に対する合理的配慮を相談・検討できる場の確保、アクセシビリティの確保を強く希望いたします。
 以上でございます。

○内閣府 衣笠参事官 ありがとうございました。
 続きまして、日本弱視者ネットワーク様、お願いいたします。

○日本弱視者ネットワーク 白井代表 日本弱視者ネットワークの白井と申します。よろしくお願いいたします。
 当団体は1977年にできた弱視当事者の集まりの団体になります。今年の5月までは「弱視者問題研究会」と言っておりましたが、改名いたしまして「日本弱視者ネットワーク」となりました。よろしくお願いいたします。
 意見書を読み上げさせて頂きます。
 「1.民間企業の合理的配慮の義務化の必要性」についてです。障害者差別解消法で民間企業の合理的な配慮の提供は義務化すべきと考えます。理由は2つあります。
 第1の理由は、私たちの生活は国や地方自治体の行政サービスだけでは成り立っておらず、日常生活を安全かつスムーズに、文化的でより心豊かな人生を送るためには、民間企業による障害者への調整や配慮が必要不可欠であるということです。
 大学教育を例に取っても、国公立大学の合理的配慮は義務規定、私立大学は努力義務となっており、本来、どこの大学に進学しても、保障されるべき教育を受ける権利や、法の下の平等について法的に格差が生じています。障害児の進路を決める試験においても、国や自治体が実施する入学試験や就職試験における配慮は義務ですが、民間が主催する入学試験や資格試験、検定試験は合理的配慮が努力義務ということです。
 最近「自助、公助、共助」ということも言われております。アメリカではADAやリハビリテーション法によって差別が禁止されていますので、例えば民間企業から市販されているスマートフォンにもアクセシビリティ機能が標準整備されたと言われています。
 障害の有無にかかわらず、誰もが分け隔てられない共生社会を目指す上で、障害者への配慮は国も、自治体も、民間企業も同列にし、日本がこれから目指すべき社会像を障害者差別解消法の中でも明確にすべきだと考えます。
 第2に、他の法律や条例との整合性を考えなければならないということです。障害者雇用促進法では、雇用における民間企業の合理的配慮は義務規定になっています。
 しかし、人生の中で重要な場面は雇用だけではなく、育児、教育、移動、情報保障、余暇、介護など様々な場面があります。また、幾つかの自治体では、既に義務規定となっていますが、自治体ごとにばらつきがあるのも、本来はおかしなことです。
 2番目は「環境整備と合理的配慮の関係」についてです。第5条で環境整備の努力義務が定められていますが、よりスムーズにユニバーサルな社会を実現するには、環境整備こそ義務化すべきと考えます。
 個人への合理的配慮を根拠に、国や自治体、民間企業に配慮を申し出たとしても、1人のためにそこまでできないとか、過重な負担と言われてしまいかねません。その前に、多くの障害者が共通に必要とするバリアフリー的な環境整備が標準的に進められていれば、ほとんどの場合、十分に使いやすいものになるでしょうし、個別の調整が必要だとしても、それは比較的容易な調整で済むと考えられます。
 例えばハード面で考えると、点字ブロック、スロープ、エレベーターなどは相当なコストを要します。1人の障害者が合理的配慮を根拠にそれをお願いしたとしても、実現するのはかなり難しいのではと推察します。しかし、その後に2人目、3人目の来訪者があるかもしれませんし、そもそもアクセスが不可能ということで諦めている障害者も潜在しているかもしれません。
 ソフト面では、紙面上の活字を読むことが難しい視覚障害者やディスレクシアと呼ばれる発達障害者、ページをめくることが困難な寝たきりや上肢障害者にとって、紙をそのまま渡されても自力でスムーズに読むことはできません。点字や拡大版、音声を用意するのは難しいにしても、アクセシブルな電子データさえ準備して頂ければ、障害者本人でも点訳や拡大、スクリーンリーダーによる読み上げも可能な時代になっています。つまり、プレーンテキストをベースにした「One Source,Multi Use」ということです。
 これらの整備や調整は一朝一夕には難しいと思いますが、日本社会が将来目指すべき方向が法制度上示されていれば、大規模改修や資料作成時に意識していってもらえるようになると考えます。
 3番目は「差別の定義の明文化」についてです。障害者への差別とは、障害を理由として不当な取扱いと合理的な配慮の不提供ということですが、これが障害者差別解消法では明確になっていません。第2条に加筆して頂けますようお願いいたします。
 4番目は「障害を理由とする差別に関する紛争の防止又は解決に関する仕組みの明確化と周知」についてです。自治体ごとに障害を理由とする差別に関する紛争の防止、または解決の仕組みや機関が設けられていますが、どこに相談したらよいのか分からない、そういう機関があるのを知らなかったという声を時々耳にします。機関名を統一する、ポータルサイトをつくるなど、より一層分かりやすくして頂き、周知に努めて頂けますようお願いいたします。
 ありがとうございました。

○内閣府 衣笠参事官 ありがとうございました。

3 意見交換

○内閣府 衣笠参事官 それでは、各団体の皆様から御説明を頂きましたので、残りの時間は更に御意見のある方などに御発言を頂く時間、もしくは御質問等の質疑の時間ということにしたいと思います。
 挙手を頂きましたら、指名をさせて頂きます。その上で御発言をお願いいたします。
 なお、会場の都合で4時半までの時間となりますので、その点を踏まえまして御協力もお願いいたします。
 それでは、どなたか追加の御意見、もしくは御質問などはございますでしょうか。
 では、DPI女性障害者ネットワーク様、どうぞ。

○DPI女性障害者ネットワーク 藤原代表 ありがとうございます。藤原です。
 一昨年だったかと思うのですが、内閣府の男女共同参画局の方でDVの相談のシェルターに関する調査を行われて、その検討会に参加させて頂いたのです。私たちも今回発言させて頂くに当たって、相談窓口での合理的配慮のことなどを集めたいと思ったのですけれども、やはりとてもセンシティブで、私たちの中でも共有されていない部分がありまして、なかなか難しかったというのがあるのです。
 でも、一昨年行われた調査などがありますので、そのときは報告書を作成するという話だったのですが、まだ委員である私の元に届いていないので、その辺を共有されていらっしゃるのかどうかということをお聞かせ願えないでしょうか。

○内閣府 衣笠参事官 事務局ですけれども、その調査についての情報までは私どもの担当のところには来ていない状況ではあります。

○DPI女性障害者ネットワーク 瀬山氏 介助の者なのですけれども、藤原さんが参加していらした検討会の名称が「内閣府配偶者暴力相談支援センター等における取組事例集検討会」というもので、2018年度に行われていたものです。

○DPI女性障害者ネットワーク 藤原代表 藤原です。
 そういった検討会ですので、また情報を共有して頂いて、もし何かありましたら、連絡頂ければと思いますので、よろしくお願いします。

○内閣府 衣笠参事官 分かりました。
 もしそういう報告書があれば、情報共有してほしいという趣旨でしょうか。

○DPI女性障害者ネットワーク 藤原代表 藤原です。
 はい。もちろんそうですし、障害者差別解消法の方においても、男女共同参画局と障害者施策が同じ内閣府であっても、連絡とかをどこまで取られているのかなと。
 障害女性の課題は、どうしても縦割り的になってしまう中の谷間に落ちてしまうという問題がありますので、そういった局間での連絡なり、情報共有をぜひ進めて頂けるようお願いしたいと思います。
 以上です。

○内閣府 植草企画官 企画官の植草と申します。よろしくお願いします。
 今頂いた御意見は大変重要なことだと思います。
 一点、報告書につきましては、男女共同参画局の暴力対策課に連絡を取らせて頂き、然るべき者から連絡をさせるように取り計らいたいと思います。
 また、連携の件については、我々も障害者基本計画をもって全体を進める立場でもございます。同じ役所内ですので、連絡を取りつつ、きちんとやっていきたいと思います。
 よろしくお願いします。

○DPI女性障害者ネットワーク 藤原代表 ありがとうございます。よろしくお願いします。

○内閣府 衣笠参事官 その他に何か御意見などはございますでしょうか。
 全国「精神病」者集団様、どうぞ。

○全国「精神病」者集団 桐原運営委員 全国「精神病」者集団の桐原です。
 意見書の9に関わる部分で、精神障害当事者の参画に関する部分について、追加で意見と質問があります。
 障害者基本法に明文化された地方公共団体の合議体で、障害者施策推進審議会といった名前で運用されているものについては、身体、知的、精神でそれぞれ委員がいるか、いないかというのは実態を把握されていたと思うのですけれども、他方で、対応要領の作成時に、どこにヒアリングをしたかといったところまでは把握はしていなかったと思うのですが、可能であれば、そういったことについても把握して頂きたいです。
 実際にそれは把握が可能かどうかについても、何か課題とか、可能であるかとか、もしそういったことがあったら教えてください。
 よろしくお願いします。

○内閣府 衣笠参事官 障害者基本法に基づく合議制の機関については、以前そういった実態も把握していたこともあります。
 ただ、対応要領につきましては、参画をした上で策定したのかどうかなど、そこまでは調査していない状況です。
 自治体に対して調査をするときには、先方の作業量であるとか、もしくは必要性といったことを総合的に判断しながらやっているところでありまして、次年度以降どうするかなどは御指摘を踏まえつつ検討はしたいと思います。
 総合的な判断ということの中で行っていくものでありますので、そこは御了承頂ければと思います。

○全国「精神病」者集団 桐原運営委員 全国「精神病」者集団の桐原です。
 御回答ありがとうございます。
 先ほどの日本高次脳機能障害友の会の方からのヒアリングのときにも、自分たちはこういった症状を抱えていて、具体的にどうしていいかといったことについては、一般化したことは言えないけれども、そういうものを知っている人たちが関わることは重要という話があったと思います。
 当事者がどれだけ実態的に参加しているかといったことが中身を作っていく上では非常に重要になってくると思うので、ぜひ前向きに検討して頂けるとうれしいです。
 ありがとうございます。

○内閣府 衣笠参事官 その他に御意見等はございますでしょうか。
 では、どうぞ。

○全国「精神病」者集団 山田運営委員 全国「精神病」者集団の運営委員をしております、山田と申します。
 普段は東京の大田区で活動させて頂いております。
 今回、資料3「団体提出資料:全国「精神病」者集団」で全国「精神病」者集団としての意見書を出させて頂きましたけれども、5番、6番に関連して、事例を少し提供したいと思います。内閣府の障害者政策委員会の資料の11ページの「相談・紛争解決の体制整備について」というところにも鑑みたお話かと思います。
 2018年に東京都障害者差別解消条例が施行されました。都条例では、障害者差別解消法の上乗せとして相談機能の充実ということが図られました。その一つとして、あっせん機能等が整備に至りました。
 その機能を活用して、とある事案について申立てをしたことがありました。いわゆる裁判外手法だということで、早期妥結という方向性が行政や調整委員会という第三者機関から示されました。しかし、結果としては、1年以上かかってその事案についてのあっせんという方向が示されたということがありました。
 これについては、差別だということで訴えている側の負担がありました。今後は、そういったケースがないように、速やかに一定のあっせんという方向が示されるとよいかと思っております。
 他方で、あっせんに向けて、第三者委員会として調査委員会がヒアリングを行ったのですが、結論からすると、相手方と顔を合わせて対面で話す機会が一度たりともつくられることがありませんでした。法がいうところの建設的対話ということを踏まえると、第三者の法律家や障害者団体の構成員の同席のもと然るべき話合い、あっせん後の方向性の確認をすることが重要と思っております。
 そういった在り方が障害当事者目線からすれば、不十分な状況もあるので、これまでの地方の事例蓄積も踏まえて今後検討して頂ければと思っております。
 重ねて、障害当事者の立場に寄り添うサポートをするためには、相談体制については、障害がある人が積極的に参画する在り方が必要かと思います。
 また、精神障害者も含めて多様な障害者による相談体制の構築を進めて頂きたいと思っております。
 以上です。

○内閣府 衣笠参事官 ありがとうございます。
 その他に何か御意見等はございますでしょうか。
 では、全日本難聴者・中途失聴者団体連合会様。

○(一社)全日本難聴者・中途失聴者団体連合会 新谷理事長 全難聴の新谷です。
 先ほど日本弱視者ネットワークの方から意見がありましたが、環境整備と合理的配慮の関係について、私どもは感覚系の障害なので、弱視の方と同じように以前からこの関係についてはいろいろな問題を提起していました。
 その大きな原因は、例えば障害者総合支援法という福祉法は、対象を基本的に個人に限定している、個人に対する支援だということで、いろいろな取決めがされている。その中で、環境の問題は、例えば私たちは情報保障で問題にすることが多いですが、いろいろな人がアクセスする場での情報保障の不足というのは、個人の救済というよりも、場全体の環境整備の問題になってくるという面が非常に多くあります。初めて法律として障害者差別解消法が第5条に環境整備をうたって、7条、8条の合理的配慮と区別したのは画期的な一つの取組だと思います。
 ただ、そこが意図的に環境整備と合理的配慮をきちんと位置づけてやったのかどうかというのはかなりクエスチョンがつき、第5条の書き方も、合理的配慮を提供するための環境整備という複雑な書き方になっていると理解しています。
 環境整備の問題はバリアフリー法が非常に大きくクローズアップしていますが、バリアフリー法では差別ということはあまり前面に出てきていないと思います。福祉法は個人が対象、バリアフリー法はバリアフリーという環境が対象、という観点をうまくリンケージするのは、障害者差別解消法みたいな法律の中できちんと整理しないと、谷間の問題が随分出ているのではないかと思います。
 弱視の方が指摘されている、例えばプラットホーム整備をバリアフリー法でやるのか、それとも一つの差別なのだと見るのかでは、取組の緊迫度が違うと思います。プラットホームの今の状態は差別なのだとなれば、これの取組をそんなゆったりやられたら困るという話になると思います。その辺の議論も障害者政策委員会の中でぜひやってほしいのと、もっと言えば、バリアフリー法の取組をもっと多層的な取組にして、単なる物理的な、あるいは情報のバリアフリーではなくて、困っている人に対する差別の問題という面からもバリアフリー法の改正議論も進めてほしいと感じます。

○(一社)全日本難聴者・中途失聴者団体連合会 小川理事 全難聴の小川です。
 同じく、教えて頂きたいことが一つあります。
 全難聴の要望の2番目の合理的配慮の提供に関するところなのですけれども、現在、法では合理的配慮の提供については、民間は努力義務となっています。ただ、一昨年、東京都では差別解消条例で民間も法的義務ということになっています。民間も義務付けになっています。
 そこで教えて頂きたいのは、これは東京都に聞くべきかもしれませんが、東京都で民間も法的に義務付けたことによって何か不都合が起きているのかどうか。1300万人も人口がいる東京都で法的に義務付けたことによって不都合が起きていないのであれば、これは全国に広げるべき後押しになるのではないかと思うのですけれども、そうした状況を何か御存じでしたらば、教えて頂きたいと思いました。
 以上です。

○内閣府 衣笠参事官 内閣府ですけれども、東京都は条例で義務化しておりまして、そうしたこともありましたので、障害者政策委員会で東京都からヒアリングもさせて頂いたという経過もあります。
 そのときのヒアリングの内容としましては、先ほどどなたかが仰っていましたが、相談件数はかなり多くなったという実態はあるということでありますが、何か不都合というか、そういったことが様々に生じたということまでの御報告はなかったと認識しております。
 以上です。

○(一社)全日本難聴者・中途失聴者団体連合会 小川理事 分かりました。ありがとうございます。

○内閣府 衣笠参事官 他にはよろしいでしょうか。

○DPI女性障害者ネットワーク 藤原代表 女性ネットの藤原です。
 今回が最終かと思うのですけれども、このヒアリングの内容が公開されるということまでを最初にお聞きしたのですが、その後のスケジュールはどのように考えておられるのか、教えて頂ければと思います。
 先ほど言われたように、私たちは今まさに差別に直面していて、早急の課題だと思いますので、その点も踏まえて、ぜひスケジュールもきちんと教えて頂ければと思います。
 よろしくお願いします。

○内閣府 衣笠参事官 今日お集まり頂いた趣旨は、障害者政策委員会の意見書で、事業者による合理的配慮の提供の義務化について、関係各方面の意見等を踏まえつつ、義務化を検討すべきということが示されておりますので、その関係各方面の御意見等を踏まえるというプロセスとして、まさにお伺いしているということになります。
 今後はその結果を踏まえて、法制面、要は法改正をするかどうかも含めて、我々として最終的にどういう対応をするかの検討をさせて頂くということになります。
 仮に義務化をするなどで法改正をするということになれば、そのスケジュールとしましては、政府全体の様々な総合判断が入る余地もあるので、はっきりと断言はできないものですから、申し上げられることとしましては、最も早ければ次の通常国会に改正案を提出することが可能性としてはあり得るといったことになります。
 いずれにせよ伺った御意見を踏まえて、政府側としての検討をさせて頂くということになります。

○内閣府 衣笠参事官 どなたかありますか。
 では、DPI女性障害者ネットワーク様、どうぞ。

○DPI女性障害者ネットワーク 藤原代表 ありがとうございます。
 そうなりますと、今回のヒアリングに関しては、聞くのはこれで終わりでということで、聞いた分に関しては公開するということまでになりますか。

○内閣府 衣笠参事官 今回の結果につきまして、実は今回、障害当事者側の団体だけではなくて、事業者側の団体もヒアリングをさせて頂いています。その結果も含めて公表するという前提で実施していますので、公表はさせて頂くことにしています。
 ただ、そのタイミングとか方法につきましては、まだはっきりと申し上げられないので、いつ、どういうやり方でというのはもう少し整理をさせて頂いてから公表するということになります。

○DPI女性障害者ネットワーク 藤原代表 ありがとうございます。
 では、公表されますよということは私どものほうにも連絡が来て、それを見て初めて私たちも見られるという感じになるのでしょうか。

○内閣府 衣笠参事官 公表する前に、内容の確認はさせて頂くのではないかと思います。皆様のそれぞれの御発言の内容ということなので、恐らく事前にどこかで確認させて頂くことになると思います。

○DPI女性障害者ネットワーク 藤原代表 分かりました。
 では、それはいつになるかはまだ分からないという状況ですね。

○内閣府 衣笠参事官 はい。まだはっきりと申し上げられない状況です。
 ただ、いずれにせよ、我々はそれを材料にして検討作業を進めていきますので、あまり長い時間をかけてということは想定していないのですけれども、今回、多くの団体にヒアリングをさせて頂いていますので、2~3日でというレベルではないので、少し時間は頂かないと事務的に対応が難しいと思っています。
 あと、実態としましては、我々もいろいろと伺いましたので、当然検討の方は公表プロセスとは同時並行的にやらせて頂くということになります。

○DPI女性障害者ネットワーク 藤原代表 では、検討というのは、障害者政策委員会はなしに、内部での検討ということなのですか。

○内閣府 衣笠参事官 障害者政策委員会の方向性は既に頂いておりますので、我々はそれを踏まえて検討をさせて頂くということです。
 ただ、その際には、関係各方面等の意見等を踏まえて検討することとされていますので、検討をする上で、頂いた御意見も踏まえながら、かつ基本的な方向性として障害者政策委員会の意見書を踏まえて検討させて頂くということになります。

○DPI女性障害者ネットワーク 藤原代表 ありがとうございました。よろしくお願いいたします。

○内閣府 衣笠参事官 全国「精神病」者集団様、どうぞ。

○全国「精神病」者集団 桐原運営委員 全国「精神病」者集団の桐原です。
 公表の仕方についてみたいな話は、具体的には決まっていないということと理解したのですけれども、例えば今回、僕らは意見書を用意してきたのですけれども、こういったものも普通にウェブ上で見られるような形で公表するのか、それとも取りまとめみたいな形でまとめられたものだけが公表される感じになるかとか、その辺の想定みたいなものはありますでしょうか。

○内閣府 衣笠参事官 そういったことも含めて、今まさに整理をしようということです。

○全国「精神病」者集団 桐原運営委員 そうしますと、私たち自身の一次資料になりますので、できるだけこのヒアリングの意見書の書面を用意したものを公表できるようにして頂けると嬉しく思います。

○内閣府 衣笠参事官 そこは重々踏まえて検討させて頂きます。
 日本ALS協会様、どうぞ。

○(一社)日本ALS協会 岸川常務理事・事務局長 ALS協会の岸川です。
 ちょっと毛色は違うのですけれども、我々の協会でいろいろな制度を利用して療養しているのですが、地域によって制度の利用の仕方がそれぞれ違ってきます。それは地域によって制度についての理解とか、その辺が様々なので、そういうことで手厚いところ、薄いところというまだら模様のような状況になります。
 この中で、資料1の4ページ目の一番下のところに「各地域の取組を更に促すとともに」と書いてありますので、これは非常にいいことかと思いまして、今後、そういう取組の中で、全国一律で同じような理解が進むようにということで、進めて頂けるようにお願いしたいと思います。
 以上です。

○内閣府 衣笠参事官 ありがとうございます。
 その他はよろしいでしょうか。  全国「精神病」者集団様。

○全国「精神病」者集団 山田運営委員 ありがとうございます。全国「精神病」者集団の山田です。
 合理的配慮をめぐっては、法的な義務というところで様々な懸念が上がっているところも漏れ聞くところなのですけれども、一方で、先進的な取組として研修や啓発的な活動も、改めて注目されているところかと思います。
 各団体にて様々な取組があるところかと思うのですが、精神障害の領域では、見た目ではなかなか分かりにくいとか、非常に課題も重いところがあります。私たち当事者団体として研修プログラムの開発などもこの間進めてまいりました。
 例えばそのような障害者団体が開発したプログラムを含めて、今後、内閣府として何か統一的な情報発信をして頂けたら良いと思っています。現状のその辺りについてのお考えや、研修プログラムに期待をするところも含めて、今後の方向性についてお考えがあればお聞きしたいと思いました。
 よろしくお願いいたします。

○内閣府 衣笠参事官 内閣府ですけれども、今の研修というのは、一般の方々に理解を促進するための研修といった意味でございますか。

○全国「精神病」者集団 山田運営委員 さようでございます。
 精神障害ということについての理解を社会モデル的な観点でしっかりと促す、合理的配慮についてもなぜ大切かということについて御理解を深めて頂くという趣旨の研修になります。

○内閣府 衣笠参事官 我々としましても、周知啓発の強化はかなり大事だろうと思います。残念ながら我々の取組不足もありまして、合理的配慮の趣旨の周知等がまだ進んでいない、十分ではないという面もありますので、今後は周知啓発の強化をやっていきたいということを考えています。
 障害者政策委員会の意見書の中でも、周知啓発の強化は何度も言及されているところでもありますので、そうしたことも背景にございますけれども、そのために、我々としては例えば来年度の概算要求では周知啓発を強化できるような予算を要求させて頂いております。その内容としましては、各種の理解の促進のための材料にも使って頂けるようなものとして、例えばホームページをつくるといったことを考えております。
 予算の査定等は今後進んでいきますのでどの程度かという話はありますが、今の我々のスタンスとしては、ご指摘の点も含めて啓発を強化できるようなインフラもつくりたいと考えているということです。

○全国「精神病」者集団 山田運営委員 分かりました。ありがとうございます。

○内閣府 衣笠参事官 では、日本弱視者ネットワーク様。

○日本弱視者ネットワーク 白井代表 日本弱視者ネットワークの白井です。
 まず、お礼から申し上げたいと思います。
 私がここに参加するに当たり、配慮事項が書いてあった中で、拡大文字版の資料は必要ですかというものがあったので、そこに「はい、必要です」ということでお返事を差し上げたところ、お電話を頂いて、どのぐらいの大きさの文字でどんなフォントで作ればいいですかということをお聞き頂いて、本当にその通りのものを作って頂いたのです。
 私は障害者政策委員会でも情報保障をする側として見ていたのですけれども、実はこういうことをして頂けると思っていなかったので、どうもありがとうございました。情報保障についていろいろなことを努力されているのは存じ上げているのですけれども、1人のためにしっかりこういうことをしてくれるのだなということに気が付かされまして、どうもありがとうございました。
 それと、このヒアリングの内容なのですが、障害者政策委員会の委員の方々には伝わるものなのでしょうか。書面で行くでも、まとめたものが行くでもいいのですけれども、これは内閣府に伺って頂いて、そこでまとめてしまうだけなのか、それとも障害者政策委員会の委員の方々にもきっちり行くものなのかということが伺いたかったのです。
 以上です。

○内閣府 衣笠参事官 内閣府ですけれども、何らかの形で障害者政策委員会の委員の方にも共有はさせて頂くつもりです。

○日本弱視者ネットワーク 白井代表 白井です。
 ありがとうございました。

○内閣府 衣笠参事官 よろしいでしょうか。  では、16時30分までということでありましたので、これをもちましてヒアリングを終了させて頂きたいと思います。
 最後に、審議官から一言申し上げます。

○内閣府 難波審議官 内閣府の審議官の難波でございます。
 改めまして、本日はお集まり頂き、また、大変活発に、熱心に御意見等を頂きまして、ありがとうございました。
 若干のコメントを申し上げたいと思います。多数の事業者の方、当事者の方にいろいろとお伺いして、非常に大所高所の条約あるいは条例等との整合性を踏まえた御意見も頂きましたし、また、身近な生活の中で発生している事例を踏まえた御意見、要望等も頂いております。
 障害者と言った場合に、外見で分かるような障害の方をイメージしがちですけれども、そうではない障害のある方もおられて、またその内容も多様であるといったことについて、特に認識をまた大変深めることができたと思っております。日常生活の中で、そういった方々が恐らくいろいろな障壁を感じて御苦労されているということも多少なりとも想像することはできました。
 ちなみに事業者側の方に伺ってみましても、真面目な、誠実な事業者の方はそういう見て分からない障害者の方にどう接したらいいのかというのを真剣に悩んでおられるということも伺っているところであります。
 そういったところをつなぐものとしての建設的な対話、相談の体制、あるいはその前提としてのいろいろな周知啓発といったものもセットでしっかり取り組んでいくことで、少しでも問題の解決につなげていくことが大事だろうということも思いました。それも含めて、法改正と併せて検討を深めて、適切な結論が出るようにこれからまた取り組んでまいりたいと思ったところでございます。
 改めまして、本日は皆様に感謝を申し上げまして、また引き続きの御理解と御協力をお願い申し上げてコメントに代えさせて頂きたいと思います。
 どうもありがとうございました。

4 閉会(省略)