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共生社会政策ホーム > 障害者施策トップ > もっと詳しく > 障害者施策に関する調査等 > 平成23年度 障害者差別禁止制度に関する国際調査 > 第1章 1990年障害のあるアメリカ人法(2008年改正) 第I節 雇用


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第1章
1990年障害のあるアメリカ人法(2008年改正)

以下は、1990年障害のあるアメリカ人法(ADA)の現行の条文であり、2008年障害のあるアメリカ人法の改正に係わる法律(2009年1月1日施行)(P.L. 110-325)による改正を含むものである。ADAは当初、一般法律の形式で制定されたが、後に合衆国法典に再編、発行された。合衆国法典は編と章に区分され、主題別に法律を分類している。制定当初の本法の第I、II、III及びV編は合衆国法典第42編第126章に分類され、第12101条から開始されている。制定当初の本法第IV編は、合衆国法典第47編第5章に分類されている。この分類により、条番号の体系に変化が生じたため、以下の目次では、分類後の条番号及び見出しの後に、制定当初のADAにおける条番号をカッコに入れて記載している。

第42編 公衆衛生及び福祉

第126章 障害のある個々人にとっての機会均等

第12101条 事実認定及び目的

(a)事実認定 連邦議会は、以下の各々を認定する。

(1)身体的又は精神的な障害は、人が社会のあらゆる面に完全に参加する権利をいかなる意味でも損なうものではないが、身体的又は精神的な障害のある人々の多くは、差別によって、そうした参加から排除されてきた。障害の記録のある人々又は障害があるとみなされている人々も差別の対象となってきた。

(2)歴史的に、社会は障害のある個々人を孤立させ隔離する傾向にあり、ある程度の改善は見られるものの、そのような形での障害のある個々人に対する差別は、なお深刻かつ広範囲にわたる社会問題であり続けている。

(3)障害のある個々人に対する差別は、雇用、住宅、公共施設、教育、交通機関、通信手段、娯楽、施設化、保健サービス、投票、公的サービスへのアクセスといった緊要な分野においても繰り返されている。

(4)人種、肌の色、性別、出身国、宗教、年齢に基づく差別を体験してきた個々人とは異なり、障害に基づく差別を体験してきた個々人は、かかる差別を是正する法的請求権を持たないことが多い。

(5)障害のある個々人は継続的にさまざまな形での差別に直面しており、そのなかには、露骨かつ意図的な排除、建物、交通機関、通信手段などの障壁による差別的効果、過度の保護を伴う規則及び政策、既存の設備や慣行に対する修正の欠如、排他的な適格性基準と指標、隔離、より質の低いサービス、プログラム、活動、利益、職務又はその他の機会が含まれる。

(6)国勢調査データ、世論調査その他の研究により、集団として見た場合の障害のある人々が、我が社会において劣等な地位を占めており、社会的、職業的、経済的、教育的に深刻な不利を被っていることが実証されている。

(7)障害のある個々人に関する国家の本来の目標は、こうした個々人のために、機会の均等、完全な参加、自立生活、経済的自足を確保することにある。

(8)不公正かつ不必要な差別と偏見の持続的な存在は、障害のある人々に対し、平等な立場で競争する機会、及び我々の自由な社会にしかるべき名声がある、その平等な機会の追求を否定するものであり、依存や非生産性の結果として合衆国に何十億ドルの不必要な費用を課している。

(b)目的 本章は、以下を目的とする。

(1)障害のある個々人への差別の撤廃に向けて、明確かつ包括的な国家命令を定める

(2)障害のある個々人への差別に対処する明確で強力な一貫性のある実施可能な基準を定める。

(3)本章に定める基準を障害のある個々人のために実施するうえで、連邦政府が中心的な役割を果たすことを確保する。

(4)障害のある人々が日常的に直面している差別の主要な分野に対処するために、憲法修正第14条の実施及び商業の規制を含めた、連邦議会の広範な権限を発動する。

第12101条の注:2008年ADAの改正に関する法律の事実認定及び目的(Pub.L.110-325、§2、2008年9月25日、122Stat.3553)は、次のように定めている。

(a)事実認定 連邦議会は、次の各々を認定する。

(1)1990年障害のあるアメリカ人法(ADA)制定にあたり、連邦議会は同法が「障害のある個々人への差別の撤廃に向けて、明確かつ包括的な国家的命令を定める」ことを意図し、広範な範囲を定めた。

(2)ADA制定にあたり、連邦議会は、人が社会のあらゆる面に完全に参加する権利をいかなる場合も損なうものではないが、身体的又は精神的な障害のある人々は、偏見や時代遅れの態度により、また社会的及び制度的障壁が除去されていないことにより、そうした参加から頻繁に排除されていることが多いと認定した。

(3)連邦議会はADAに基づく障害の定義が、裁判所による1973年リハビリテーション法に基づく障害者の定義の適用のあり方と整合性をもって解釈されるよう期待していたが、その期待は実現しなかった。

(4)サットン対ユナイテッド航空事件(Suttonv.UnitedAirLines,Inc.,527U.S.471(1999))及びその一連の訴訟における連邦最高裁判所の判決は、ADAによって与えられるものと想定された幅広い範囲の保護を狭め、このため連邦議会が保護しようとした多くの個々人に対する保護を除外した。

(5)トヨタモーターマニュファクチュアリング・ケンタッキー対ウィリアムズ事件(Toyota Motor Manufacturing,Kentucky,Inc.v.Williams,534U.S.184(2002))における連邦最高裁判所判決は、ADAによって与えられるものと想定された幅広い範囲の保護をさらに狭めてしまった。

(6)これらの連邦最高裁判決の結果、下級審は個別の訴訟において、さまざまな実質的に制約を伴う機能障害のある人々を、障害のある人々ではないと不適切に認定してきた。

(7)特に、連邦最高裁判所は、トヨタモーターマニュファクチュアリング・ケンタッキー対ウィリアムズ事件において、「実質的な制約」という用語を、連邦議会が意図していたよりも高い程度の制約を求めるものと解釈した。

(8)連邦議会は、「実質的な制約」という用語を「著しい制限」の意味合いで定義する雇用機会均等委員会によるADA規則は、過度に高い基準を示しており、連邦議会の意図と整合していないと認定する。

(b)目的 本法の目的は以下のとおりである。

(1)ADAに基づいて可能となる幅広い範囲の保護を改めて表明することにより、「差別を撤廃するための明確かつ包括的な国家命令」及び「差別に対処する明確かつ強力な一貫性のある実施可能な基準」を定めるというADAの目標を達成する。

(2)サットン対ユナイテッド航空事件及びその一連の訴訟において連邦最高裁判所が表明した、ある機能障害が主要な生活活動を実質的に制約しているか否かは、軽減措置の改善効果を考慮して判断するという要件を否認する。

(3)サットン対ユナイテッド航空事件において、障害の定義の三項目に基づく範囲に関する連邦最高裁判所の論拠を否認し、ナッソー郡教育委員会対アーリン事件(School Board of Nassau Countyv.Arline,480U.S.273(1987))において、1973年リハビリテーション法に基づく障害の定義の三項目に関する幅広い見解を述べた連邦最高裁判所の論拠を再認する。

(4)トヨタモーターマニュファクチュアリング・ケンタッキー対ウィリアムズ事件において、連邦最高裁判所が示した、ADAに基づく障害の定義における「実質的な」及び「主要な」という用語は、「障害のある個人として適格であると認められるにあたり厳密な基準を求めるために、厳格に解釈される必要がある」、また、ADAに基づいて主要な生活活動を行ううえで実質的に制約されるとみなされるためには、「その個人は、おおかたの人々の日常生活において中心的な重要性をもつ活動をその個人が行うことを妨げる又は著しく制限する機能障害をもっていなければならない」とする基準を否認する。

(5)トヨタモーターマニュファクチュアリング・ケンタッキー対ウィリアムズ事件において、連邦最高裁判所が「実質的な制約」という用語に関して設け、下級審が多数の判決において適用してきた基準は、ADAの対象となるために必要な制限を不適切に高く設けているという連邦議会の意向を表明する。ADAに基づいて提起された訴訟において本来注目すべきことは、ADAの対象となる事業体がその義務を遵守しているか否かであるべきとする連邦議会の意向を表明する。また、ある個人の機能障害が、ADAに基づく障害であるかどうかという問題について、徹底的な分析を求めるべきではないと表明する。

(6)雇用機会均等委員会が、その現行規則のうち「実質的な制約」という用語を「著しい制限」と定義する部分について、本法によって行われた改正を含め、本法と整合するものに改正するよう連邦議会の期待を表明する。

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第12102条 障害の定義

本章で用語は、以下ように使用される。

(1)障害 「障害」という用語は、ある個人について、以下を意味する。

(A)個人の一つ又は複数の主要な生活活動を実質的に制約する身体的又は精神的な機能障害

(B)機能障害の記録

(C)機能障害をもつとみなされること(第(3)項に示すとおり)

(2)主要な生活活動

(A)全般 上記第(1)項において、主要な生活活動とは、身の回りのことを行う、手作業を行う、見る、聞く、食べる、眠る、歩く、立つ、持ち上げる、かがむ、話す、呼吸する、学ぶ、読む、集中する、考える、コミュニケーションをとる、働くことを含む。ただし、これらに限定されない。

(B)主要な身体機能 第(1)項において、主要な生活活動とは、免疫システムの機能、正常な細胞の成長、消化機能、腸、膀胱、神経、脳、呼吸器、循環器、内分泌、生殖機能といった主要な身体機能の働きを含む。ただし、これに限定されない。

(3)機能障害をもつとみなされること

第(1)項(C)において、

(A)ある個人が、実際に身体的又は精神的な機能障害をもつこと、機能障害をもつ、又はもっていると思われることを理由として、その機能障害が主要な生活活動を制約する、若しくは制約すると思われるか否かにかかわらず、本章で禁じられている行為の対象となったことを証明する場合には、その個人は「機能障害をもつとみなされること」という要件を満たす。

(B)第1項(C)は、一時的な又は軽微な機能障害に対しては適用されない。一時的な機能障害とは、実際の又は予想される持続期間が6ヶ月以下の機能障害である。

(4)障害の定義に関する解釈規定

第1項に定める「障害」の定義は、以下に従って解釈される。

(A)本章における障害の定義は、本章に基づき、本章の用語が許容する最大の範囲において、幅広い個々人を対象とするよう解釈される。

(B)「実質的な制約」という用語は、2008年ADAの改正に関する法律における事実認定及び目的に整合するよう解釈される。

(C)ひとつの主要な生活活動を実質的に制約する機能障害が、障害とみなされるためには、その機能障害が他の主要な生活活動を制約することを要さない。

(D)発作性又は寛解期の機能障害は、その機能障害が生じているときに主要な生活活動を実質的に制約する場合には、障害である。

(E)(i)ある機能障害が主要な生活活動を実質的に制約しているか否かの判定は、以下のような軽減措置による改善効果を考慮することなく行われる。

(I)投薬、医療用品、機器又は器具、弱視者用装置(通常の眼鏡又はコンタクトレンズを含まない)、人工義肢及び器官を含む人工装具、補聴器及び人工内耳その他の移植可能な補聴機器、移動補助具、酸素療法用供給機器及び用品

(II)補助技術の活用

(III)合理的配慮又は補助支援又はサービス

(IV)学習による行動上又は適応上の神経学的変容

(ii)通常の眼鏡又はコンタクトレンズによる軽減措置の改善効果は、機能障害が主要な生活活動を実質的に制約しているか否かを判定する際に考慮される。

(iii)本号において、

(I)「通常の眼鏡又はコンタクトレンズ」という用語は、視力を完全に矯正すること又は屈折異常をなくすことを目的とするレンズを意味する。

(II)「弱視者用装置」という用語は、視覚像を拡大、改善、又はその他の方法により補強する装置を意味する。

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第12103条 追加的な定義

本章で用語は、以下ように使用される。

(1)補助支援及びサービス「補助支援及びサービス」には、以下のものが含まれる。

(A)聴覚機能障害のある個々人が聴覚により伝達される内容を利用できるための適格性を有する手話通訳者又はその他の効果的方法

(B)視覚機能障害のある個々人が視覚により伝達される内容を利用できるための適格性を有する代読者、録音されたテキスト又はその他の効果的方法

(C)機器又は装置の取得又は改善

(D)その他類似のサービス又は行動

(2)州 「州」という用語は、諸州であるコロンビア特別区、プエルトリコ、グアム、アメリカ領サモア、米領ヴァージン諸島、太平洋諸島信託統治領、北マリアナ諸島の各州を意味する。

第I節 雇用

第12111条 定義

本節で用語は、以下のように使用される。

(1)委員会 「委員会」という用語は、本編第2000条eの4により設置される雇用機会均等委員会を意味する。

(2)適用対象事業体 「適用対象事業体」という用語は、雇用主、雇用斡旋機関、労働者組織、又は労使合同委員会を意味する。

(3)直接的な脅威 「直接的な脅威」という用語は、他の者たちの健康又は安全に対する著しいリスクであって、合理的配慮により解消できないものを意味する。

(4)被雇用者 「被雇用者」という用語は、雇用主に雇用されている個人を意味する。外国における雇用に関して、この用語は米国の国民である個人を含む。

(5)雇用主

(A)全般 「雇用主」という用語は、当年又はそれ以前の年において20週間以上、各週のうちの各営業日に15名以上の被雇用者を有し、商業に影響を与える産業に従事している人、及びその人の代理人を意味する。ただし、本節の施行日から2年間については、雇用主という用語は、当年又はそれ以前の年において、20週間以上、各週のうちの各営業日に25名以上の被雇用者を有し、商業に影響を与える産業に従事している人、及びその人の代理人を意味する。

(B)例外 「雇用主」には、以下を含まない。

(i)合衆国、合衆国政府に100%保有されている法人、インディアン部族、又は

(ii)第26編第501条(c)に基づき免税措置の対象となる真に私的な会員制の団体(労働者組織を除く)

(6)薬物の不法使用

(A)全般 「薬物の不法使用」という用語は、規制物質法(21U.S.C.801以下参照)のもとで違法とされている薬物の使用、所持又は流通を意味する。この用語には、資格を有する保健ケア専門家の監督のもとで摂取される薬物の利用、又は規制物質法若しくはその他の連邦法の定めに基づき認められたその他の利用は含まれない。

(B)薬物 「薬物」という用語は、規制物質法(21U.S.C.812)第202条の付表I~Vに定義する、規制対象物質を意味する。

(7)人等 「人」「労働者組織」「雇用斡旋機関」「商業」「商業に影響を与える産業」という用語は、本編第2000条eにおける定義と同じ意味をもつ。

(8)適格性を有する個人 「適格性を有する個人」という用語は、合理的配慮を伴って又は合理的配慮なしに、当該個人が保持する又は希望する雇用上の地位の本質的な機能を果たすことのできる個人を意味する。本節において、ある職務の機能のうち何が本質的であるかについては雇用主の判断を考慮し、また雇用主がその職務に関する求人広告及び応募者の面接に先だって文書で職務内容を作成していた場合には、その書面が、その職務の本質的な機能に関する証拠として考慮される。

(9)合理的配慮 「合理的配慮」という用語には、以下が含まれ得る。

(A)被雇用者が利用する既存の設備を、障害のある個々人にも容易にアクセス可能で利用に適したものにすること。

(B)職務の再編成、勤務時間の短縮又は作業スケジュールの修正、欠員職への配置転換、機器又は装置の取得又は改善、考査、訓練教材又は方針の適切な調整又は修正、適格性を有する代読者、通訳者の提供、その他障害のある個々人に対する類似の配慮

(10)過度な負担

(A)全般 「過度な負担」という用語は、(B)項が示す要素に照らして考慮した場合に、著しい困難又は出費を求める行為を意味する。

(B)考慮すべき要素 ある配慮が適用対象事業体に過度な負担を課すか否かを判定する場合、考慮する要素には以下が含まれる。

(i)本章に基づき必要とされる配慮の性質及び費用

(ii)合理的配慮の提供に関わる施設又は諸施設の総財務資源、かかる施設の被雇用者数、その施設の操業におけるかかる配慮の費用及び資源の効果又は影響

(iii)適用対象事業体の総財務資源、被雇用者数から捉えた適用対象事業体の総事業規模、かかる施設の数、種類、立地

(iv)適用対象事業体の操業又は諸操業の種別(かかる事業体の職場の構成、構造、人員の機能を含む)、適用対象事業体のかかる施設又は諸施設との地理的な距離、運用上又は財務上の関係

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第12112条 差別

(a)一般規定 いかなる適用対象事業体も、求人手続、被雇用者の採用、昇進又は解雇、被雇用者の報酬、職務訓練、雇用に関するその他条件及び特権に関して、適格性を有する個人に対して障害に基づく差別を行ってはならない。

(b)解釈 本条(a)において、「適格性を有する個人に対して障害に基づく差別を行う」という用語は、以下を含む。

(1)職務への応募者又は被雇用者を、当人の障害を理由として、当人の機会又は地位に対して不利な影響を与える方法で、制約、分離又は区分すること

(2)適用対象事業体の障害のある適格性を有する応募者又は被雇用者が、本節で禁止する差別の対象となる効果をもつ契約その他の取り決め又は関係に関与すること(かかる関係には、雇用斡旋機関又は紹介機関、労働組合、適用対象事業体の被雇用者に付加利益を提供する組織、又は訓練や実習プログラムを提供する組織との関係を含む)

(3)以下のいずれかの管理基準、指標、又は運用手法を用いること

(A)障害に基づく差別の効果を有するもの

(B)共通の運用管理のもとにある他の者の差別を恒常化するもの

(4)適格性を有する個人が関係又は交際していることが知られている個人についての既知の障害を理由として、その適格性を有する個人に対し、平等な職務又は利益を排除又は拒絶すること。

(5)(A)本来は適格性を有する障害のある個人でかつ応募者又は被雇用者に対し、その者の既知の身体的又は精神的制約に対する合理的配慮を行わないこと。ただし、かかる適用対象事業体が、その事業の運営にとって、かかる配慮が過度な負担となるだろうことを証明できる場合にはこの限りではない。

(B)本来は適格性を有する障害のある個人でかつ応募者又は被雇用者に対し、当該の適用対象事業体がその被雇用者又は応募者の身体的又は精神的な機能障害に対して合理的配慮を行う必要があることを理由として、雇用機会を拒むこと。

(6)障害のある個人若しくはある一定の障害のある個々人の集団を排除する、若しくは排除する傾向を有するような適格性基準、雇用試験又はその他の選考指標を用いること。ただし、適用対象事業体が用いるその規定、基準、試験その他の選考指標が、当該職に職務上関連しており、事業上の必要性と整合していることが示された場合にはこの限りではない。

(7)雇用に関する試験を、感覚、手作業又は発話技能が損なわれた障害のある職務への応募者又は被雇用者に対して実施する場合に、当該応募者又は被雇用者について、その感覚、手作業又は発話技能の損傷を反映するのではなく、かかる試験の目的が測定しようとする技能、適性又はその他の要素を正確に反映するよう、最も効果的な方法で選択及び実施しないこと(ただし、その試験が測定しようとする要素が、これらの技能である場合はこの限りではない)。

(c)外国における適用対象事業体

(1)全般 外国の職場における被雇用者に関して、適用対象事業体が本条に基づく差別に該当する行為を行うことは、本条の遵守によって、適用対象事業体がその職場の立地する外国の法律に違反することになる場合には、本条に基づいた違法とはみなされない。

(2)会社の支配

  (A)推定 雇用主が、外国を設立地とする法人を支配している場合には、その法人で行われている本条に基づく差別に該当する慣行は、その雇用主によって行われているものと推定される。

  (B)例外 本条は、米国人の雇用主の支配下にない外国人の雇用主による外国事業に関しては適用されない。

  (C)判断 本号において、雇用主が会社を支配しているか否かの判断は、以下に基づいて行われる。

 (i)操業の相互関連性

 (ii)共通の経営

 (iii)労使関係の一元管理

 (iv)雇用主と会社の共同所有又は財務上の支配

(d)医学的検査及び調査

(1)全般 本条(a)にいう差別の禁止には、医学的検査及び調査も含まれる。

(2)採用前

(A)禁止される検査及び調査 (3)に定める場合を除き、適用対象事業体は職務への応募者に対し、その応募者が障害のある個人であるか否か、又はその障害の性質又は重さに関する医学的検査又は調査を行ってはならない。

(B)許容される調査 適用対象事業体は、応募者の職務関連機能の遂行能力について採用前の調査を行うことができる。

(3)採用時検査 適用対象事業体は、以下の条件を満たす場合、職務の応募者に対する採用を出した後、その応募者の雇用上の任務が開始される前に、医学的検査を求め、かかる検査結果を採用の条件とすることができる。

(A)入社する被雇用者全員が、障害の有無にかかわらず、その検査の対象となること。

(B)応募者の医学的状態又は病歴について取得した情報が、独立した書式により独立した医学的ファイルに収集及び保管され、機密の医学的記録として扱われること。ただし、以下の場合は除く。

(i)監督者及び管理者は、その被雇用者の作業又は任務における必要な制限、及び必要な配慮について告知を受けることができる。

(ii)緊急の措置を必要とし得る障害である場合は、適時、救急及び安全要員は告知を受けることができる。

(iii)本章の遵守状況を調査する政府職員からの要請がある場合には、関連する情報が提供される。

(C)かかる検査の結果は、本節に沿ってのみ利用される。

(4)検査及び調査

(A)禁止される検査及び調査 適用対象事業体は、被雇用者が障害のある個人であるか否か、又はその障害の性質又は重さについての医学的検査を求めてはならず、また調査を行ってはならない。ただし、かかる検査又は調査が、職務に関連しており、事業の必要性と整合している場合にはこの限りではない。

(B)許容される検査及び調査 適用対象事業体は、職場における被雇用者が利用できる被雇用者保健プログラムの一環として、病歴を含む任意の医学的検査を行うことができる。適用対象事業体は、被雇用者について、職務関連機能の遂行能力を調査することができる。

(C)要件 (B)に基づいて取得された被雇用者の医学的状態又は病歴に関する情報は、(3)(B)及び(C)の要件に従うものとする。

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第12113条 抗弁

(a)全般 障害のある個人を排除する又は排除する傾向のある、又は障害のある個人の職務若しくは利益を拒絶する適格性基準、試験、選考指標を適用したとの主張が、職務に関連しまた事業上の必要性と整合し、本節で要請される合理的配慮を伴ってもその適用内容が達成されないことが示されれば、本章に基づく差別の告発に対する抗弁となり得る。

(b)適格性基準 「適格性基準」という用語には、ある個人が職場における他者の健康又は安全に対する直接的な脅威を与えないという要件が含まれ得る。

(c)矯正前の視力に関する適格性基準及び試験 第12102条(4)(E)(ii)にもかかわらず、適用対象事業体は、ある個人の矯正前の視力に基づく適格性基準、雇用試験又はその他の選考指標を用いてはならない。ただし、その適用対象事業体が用いる基準、試験又はその他の選考指標が、その職の職務に関連しており、事業上の必要性と整合していることが示される場合にはこの限りではない。

(d)宗教団体

(1)全般 本節は、宗教系の法人、結社、教育機関又は、協会が、かかる法人、結社、教育機関又は協会の活動を行うことに関する業務を遂行するために、特定の宗教に属する個々人の雇用を優先することを禁じるものではない。

(2)宗教的信条の要件 本節に基づき、宗教組織は、すべての応募者及び被雇用者が、その組織の宗教信条を遵守するよう求めることができる。

(e)感染症及び伝染病のリスト

(1)全般 保健社会福祉長官は、1990年7月26日から6ヶ月以内に、以下を行う。

(A)食品供給の取り扱いを通じて感染し得るすべての感染症及び伝染病を見直す。

(B)食品供給の取り扱いを通じて感染し得る感染症及び伝染病のリストを公布する。

(C)かかる疾病の感染の形式を公布する。

(D)疾病のリスト及びその感染形式に関する情報を広く公衆に頒布する。
かかるリストは毎年更新されるものとする。

(2)適用 ある個人が、(1)に基づいて保健社会福祉長官が作成したリストに含まれる、食品の取り扱いを通じて他人に感染する感染症又は伝染病に感染しており、合理的配慮によってこれを取り除くことができない場合、適用対象事業体はその個人を、食品の取り扱いを伴う職務に配属すること又は配属を続けることを拒否することができる。

(3)解釈 保健社会福祉長官が公布した感染症や、伝染病、及びその感染形態に関するリストに従い、合理的配慮により取り除くことのできない重大なリスクを他者の健康又は安全に対して与える個々人について、本章のいかなる定めも、その個人からの公衆衛生の保護のために策定された食品の取り扱いに関わる州、郡、地方自治体の法律、条例、規則に優先し、又これらを改正、修正するものとして解釈されてはならない。

第12114条 薬物の不法使用及びアルコール

(a)適格性を有する障害のある個人 本節において、現在薬物を不法使用している被雇用者又は応募者は、適用対象事業体がその使用に基づき行動をとる場合には、適格性を有する障害のある個人には含まれない。

(b)解釈規定 本条(a)の定めは、以下の個人を、適格性を有する障害のある個人から除外するものと解釈されてはならない。

(1)管理下の薬物更正プログラムを成功裏に完了し、現在は薬物を不法使用していない、又はそれ以外の方法で更正を成功させ、現在では薬物をそのように使用していない個人

(2)管理下の薬物更正プログラムに参加しており、現在では薬物を不法使用していない個人

(3)薬物を不法使用していると誤解されているが、実際にはそのように使用していない個人
ただし、適用対象事業体が、(1)及び(2)にあげた個人が現在では薬物を不法使用していないことを確認する意図で、薬物検査を含めた合理的な方針又は手続を採用又は実施することは、本章の違反とはならない。

(c)適用対象事業体の権限 適用対象事業体は、

(1)職場における、すべての被雇用者による薬物の不法使用及びアルコールの摂取を禁じることができる。

(2)被雇用者に対し、職場において、アルコールの影響下にないこと、また薬物を不法使用状態にないことを求めることができる。

(3)被雇用者に対し、1988年職場薬物排除法(41U.S.C.701以降)の要件に則して行動するよう求めることができる。

(4)薬物を不法使用している、又はアルコール依存である被雇用者について、仮にその被雇用者の業績不振又は行動が薬物使用又はアルコール依存に関連している場合でも、当該事業体が他の被雇用者に適用するものと同一の雇用又は職務遂行及び行動に関する適格性基準を適用することができる。

(5)アルコール及び薬物の不法使用に関する連邦規則について、以下を求めることができる。

(A)適用対象事業体の被雇用者が国防総省における規則の対象となる産業に雇用されている場合には、その規則に定める基準を遵守する。適用対象事業体の被雇用者が、その産業における機密に関わる職(国防総省の規則による定義に従う)に就いており、規則がある場合には、その規則を遵守することを含む。

(B)適用対象事業体の被雇用者が原子力規制委員会の規則の対象となる産業に雇用されている場合には、その規則に定める基準を遵守する。適用対象事業体の被雇用者が、その産業における機密に関わる職(原子力規制委員会の規則による定義に従う)に就いており、その職への雇用に適用される規則がある場合には、その規則を遵守することを含む。

(C)適用対象事業体の被雇用者が運輸省の規則の対象となる輸送産業に雇用されている場合には、その規則に定める基準を遵守する。適用対象事業体の被雇用者が、その産業における機密に関わる職(運輸省の規則による定義に従う)に就いており、その職への雇用に適用される規則がある場合には、その規則を遵守することを含む。

(d)薬物検査

(1)全般 本節において、薬物の不法使用を判断するための検査は、医学的検査とはみなされない。

(2)解釈 本節のいかなる定めも、求職者又は被雇用者による薬物の不法使用に関する薬物検査の実施又はそうした検査の結果に基づいた雇用決定を、奨励、禁止又は許可するものと解釈してはならない。

(e)輸送に携わる被雇用者 本節のいかなる基準も、運輸省の管轄下において、本来は合法である以下の各項の実施を、奨励、禁止、制限又は許可するものと解釈してはならない。

(1)安全が重視される任務を伴う職にある当該事業体の被雇用者又はその職への求職者について、薬物の不法使用又はアルコール摂取による職務上の機能障害に関して検査すること。

(2)(1)に定める検査で薬物の不法使用又はアルコール摂取による職務上の機能障害に関して陽性となった人々を、本条(c)の実施において、安全が重視される任務から除外すること。

第12115条 告知の掲示

本節の対象となるすべての雇用主、雇用斡旋機関、労働者組織、又は労使協議会は、求職者、被雇用者及び会員にとってアクセス可能な形式により、本編第2000e-10条に基準する方法で、適用される本章の基準を記載した告知を掲示する。

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第12116条 規則

1990年7月26日から1年以内に、委員会は、第5編第5章第II節に沿って、本節の施行のための規則を、アクセス可能な形式により公布する。

第12117条 実施

(a)権限、救済及び手続 本編第2000e-4条、第2000e-5条、第2000e-6条、第2000e-8条、第2000e-9条に定める権限、救済及び手続は、本節が委員会、司法長官、又は本章若しくは本編第12116条に基づき制定される規則の何らかの定めに違反する障害に基づく雇用差別を申立てる人に対して与える権限、救済、手続である。

(b)調整 本節及び1973年リハビリテーション法(29U.S.C.701以降)に基づき雇用差別を申立てる訴訟に関して執行権限を有する機関は、本節及び1973年リハビリテーション法に基づいて提出される行政不服申立てが、努力の重複を回避し、本節及び1973年リハビリテーション法に基づく同一の要件に関する一貫性のない又は矛盾する基準を課すことを防ぐような形で処理されるよう、手続を策定する。委員会、司法長官、連邦契約遵守プログラム局は、1990年7月26日から18ヶ月以内に、本節及び1973年リハビリテーション法の施行規則において、かかる調整制度を制定する(連邦規則集第28編第42部及び第29編第1691部の委員会、司法長官が定めた共同規則及び1981年1月16日付の委員会及び連邦契約遵守プログラム局のあいだの覚え書き(46Fed.Reg,7435、1981年1月23日)と同様)。


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