皆で話し合ってみよう――相談を地域づくりにつなげるために
もし、あなたが次のような相談を受けたとき、どのように対応するでしょうか。
地域の相談機関や地域協議会にどのようにつなぎ、つないだ先の相談機関や地域協議会においてはどのように対応するでしょうか。
以下は、地方公共団体に寄せられた実際の相談事例です。これらをケーススタディとして、相談体制の整備や地域協議会の運営の在り方、相談をまちづくりにつなげていく方法等について考えてみてください。
- 最寄り駅の前の道路に、以前より要望している点字ブロックがなかなか設置されない。
- 飲食店を利用する際、料理を刻み食にする必要があるため、飲食店が提供した料理へのミキサーの使用を事前に打診したところ、一般利用者への配慮などから断られた。
- 公営キャンプ場が、繁忙期は電話の先着順で予約を受け付けている。聴覚障害のため電話ができない旨を電子メールで相談したところ、「電話をかけられる人に代わって予約をしてもらうように」と管理者から返答された。
- 受講していた大学の定期試験において、口頭で回答した内容を代筆する介助者の配置を希望したところ、「民間事業者だから、合理的配慮の提供義務はない」等の返答があった。
- クレジットカードを作るために視覚障害者が家族を伴って店舗を訪れたところ、担当者から「代筆は一切認められない」、「障害者でも特別な対応はできない」と断られた。家族による代筆の対応が可能であることは、事前にコールセンターで確認してあったが、担当者は態度を変えなかった。
- 保護者から「子供の小学校の入学に当たり、教育委員会に就学相談を行ったが、十分な情報提供がなかった」と相談があった。
- 車いすの利用者が、以前利用したことのある飲食店に予約を入れたところ、「障害者は無理だ」と断られた。
- 精神障害のある男性が賃貸物件への入居申込をしたところ、不動産会社から断られたという相談が、相談支援事業所経由で寄せられた。
参考:実際の対応例
以下は、前ページの相談を受けた地方公共団体の実際の対応例です。対応の在り方は、地域の実情や地域協議会の位置付け等によってそれぞれ異なりますが、一つの参考として御覧ください。
- 調整の必要はなく、状況を承知しておいてほしいという主訴であったため、傾聴。後日、相談者から点字ブロックが設置されたという連絡が入る。
- 事業者と共に対応方法を検討。一室を貸切にしてミキサーを使用することで合意。
- 通常の予約方法による対応が困難な場合は、事前に相談を受けるなどの配慮が必要となる旨を管理者にアドバイス。本件に関しては、メール又はファックスでの予約を受けるという合理的配慮が行われた。また、「障害等により電話での予約が難しい方は、事前にご相談ください」という案内が行われるようになった。
- 大学に状況を確認したところ、その大学では対応要領を作成し、CD音源による読み上げ問題、試験時間の延長、別会場での受験等が配慮として想定されていた。しかし、介助者の配置は、過重な負担と判断されていた。大学に対しては、相談者の希望に対応できない場合はその理由を丁寧に説明するよう依頼し、相談者に対しては、大学の取組を説明した。最終的には、相談者自身が社会福祉法人から介助者を派遣してもらい、単位認定試験を受けることとなった。
- 金融庁対応指針等を参照し、利益相反等の不利益が生じないように留意しつつ、取引の性質等に問題がない場合は代筆対応が望ましいことを伝えた。その後、地域協議会において検討を行った。
- 特別支援教育課と連携し、支援者、教育委員会等への聞き取りを行った。就学相談の過程において、直ちに障害者差別につながる事実は確認されなかったため、相談内容について、特別支援教育課に対応を引き継いだ。
- 飲食店側に状況を確認したところ、物理的スペースが限られた店舗への車いす複数台での訪問であり、かつ、予約時間がラストオーダー直前だったため断ったとの説明があった。その後、地域協議会で検討し、事業者・障害者ともにお互いを尊重する意識が必要であるとの結論を得て、今後の啓発活動の柱の一つとした。
- 相談支援事業所の相談を受けた担当者と一緒に、不動産業者に説明し理解を求めたが、なかなか納得してもらえなかった。結局、相談者は別の物件を見つけ入居することになった。