小規模な地方公共団体の悩み事――Q&A形式でお答えします
内閣府が実施した障害者差別解消支援地域協議会の設置状況等に関する調査を通じて、地方公共団体の規模が小さいほど地域協議会の設置率が低いことが明らかになりました。
そこで、小規模な地方公共団体における地域協議会の円滑な設置に資するよう、事例集の作成過程で把握された小規模な地方公共団体の「悩み事」と、それに対する回答について、Q&A形式で紹介します。
1. 地域協議会の具体的な設置手順は、どのようなものが考えられるか。
これから地域協議会を立ち上げる場合は、障害者差別の解消に向けて関係者が話し合う仕組みを地域で作るイメージを考えてみてください。障害者の分野に限らず、例えばまちづくりのために機能している枠組みがあれば、それを核として立ち上げることも考えられます。
地域協議会の設置までに必要となる具体的な検討事項としては、次のようなものが考えられます。なお、決裁等の必要な手続が終わり、地域協議会を立ち上げたら、名称とメンバーをインターネット等により公表する必要があります。
○地域協議会の行う事務
- 情報共有をメインにしたり、紛争解決をサポート(後押し)したり、自ら紛争の解決に乗り出したり、様々なスタイルが考えられます。
○設置形態
- 近くの自治体と連携して立ち上げることもできます。
- 障害者自立支援協議会など、既存のネットワークに地域協議会の機能を上乗せして立ち上げることもできます。
○メンバー
- メンバー構成はもちろん、性別や障害種別のバランスも大切です。
- 既存のネットワークを活用する場合は、メンバーの追加や変更が必要かどうか検討する必要があります。
- 就任を固辞された場合、オブザーバー参加してもらう方法もあります。
○事務局の運営方法
- 複数の自治体で事務局を運営する場合は、どのような分担や持ち回りとするのか、あらかじめ決めておくことが重要です。
- 地域の民間団体と協働して事務局を運営することもできます。
⇒参考:ガイドライン「3 地域協議会はどうやって立ち上げるのですか?」
2. 地域協議会は他の会議体と独立して設置しなければならないのか。障害者自立支援協議会等と共同で開催することはできるのか。
地域協議会は、必ずしも他の会議体と独立した形で設置する必要はありません。障害者自立支援協議会をはじめとする既存の会議体を活用し、共同で開催することも可能です。
⇒参考:事例1、2、4、6、11
3. 障害保健福祉圏域で協議会を立ち上げる場合など、地方公共団体だけでは事務局運営に不安がある場合、地域協議会の運営事務を民間事業者等に委託することは可能か。
障害者の権利擁護に積極的な社会福祉法人やNPO法人、障害者団体連絡協議会等の地域の民間団体に事務局の運営事務を委託したり、これらの民間団体と協働して事務局を運営することも可能です。
ただし、委託を行う場合は、地域協議会の適切な運営が担保されるよう、履行体制等を十分に確認する必要があります。
⇒参考:事例6
4. 地域に弁護士がいないが、地域協議会のメンバーには必ず弁護士を入れなければならないのか。
地域協議会には法曹関係者の参画を得ることが望まれますが、法曹関係者は弁護士に限られるものはなく、司法書士や人権擁護委員をメンバーに加える選択肢もあります。
それでも法曹関係者の選任が困難な場合は、議題の内容等に応じ、必要な場合にオブザーバーとして参加してもらう方法も考えられます。
⇒参考:事例1、5、7
5. 地域協議会の設置は、個別の相談事案への対応を主眼とするものか。
個別の相談事案への対応に関する協議を行うことも可能ですが、事例等の共有・分析や、紛争解決の後押し等の事務が中心になることが想定されます。
6. 障害者等から相談を受けた際、地域協議会での協議状況を含め、対応状況(途中経過)を説明する必要があるか。
透明性の確保や相談者の不安払拭の観点から、相談者に対応状況を情報提供することは有効です。そのためには、相談の受付から事案終結までの流れをフロー図にして「見える化」すると説明しやすくなります。こうしたフロー図の作成も、地域協議会における検討テーマとなります。
また、相談対応を行った事案については、対応結果の如何にかかわらず地域協議会へ報告することも効果的です。対応結果を地域協議会の場で検証することで、合理的配慮や建設的対話のアイディアの蓄積が進み、地域の相談対応力の向上が期待されます。
7. 地域協議会で個別の相談事案の検討を行う場合、一定の様式を整備する必要があるか。
地域協議会で検討を行うかどうかにかかわらず、障害者差別に関する相談を受け付ける際は、一定の様式を整備することが効果的です。なお、様式には、個人情報の取扱いに関する同意欄を盛り込むことが望まれます。
⇒参考:事例2、4、6
8. 広報啓発活動やマニュアル作成の効果的な進め方はあるか。
効果的な広報啓発活動や障害者差別の解消に向けたマニュアル、あるいは前述した相談対応におけるフローの作成については、地方公共団体だけで対応するのではなく、地域協議会を活用することも有効です。地域協議会の意見を反映することで、より内容を深めることが期待できます。
⇒参考:事例2、4、8、9、10、13
9. 民間事業者に合理的配慮や建設的対話を広げていくにはどうすればよいか。
事業者における合理的配慮や建設的対話を広げていくための効果的な手法として、事業者間で情報を水平展開することが考えられます。
具体的には、障害者や事業者向けのアンケートやヒアリング、地域協議会における意見交換等を通じて、場面ごとの合理的配慮や建設的対話の具体例を集積し、研修会やシンポジウムで発表する方法や、先駆的な取組を実践している事業者等を研修会やシンポジウムへ招聘して報告を求め、同業の他事業者に参加を呼びかけるといった方法等が考えられます。
⇒参考:事例3、8、10、12、13
10. 広報啓発活動を複数の地方公共団体が広域で実施することは可能か。
効率的な訴求を行う観点から、複数の地方公共団体が協働し、広域で広報啓発活動を展開することは効果的と考えられます。
広域で地域協議会を設置している場合、地域協議会の場で重点的に実施すべき研修・啓発の分野・内容や、効果的な周知・発信の在り方等について検討することも有効です。