2 国内調査 2.3

2.3 調査方法

障害者差別解消法の施行状況に関する地方公共団体、事業者の取組の現状、運用実績、効果、課題、考えられる対応方策等の分析を行うため、上記調査項目1)~6)の観点を中心に、文献資料や報道、各種団体のウェブサイトなどを通読して情報収集し、分析を行う。また、先進的な取組を行っていると思われる組織を対象に現地を訪問し、聞き取り調査を行った。

1)障害者差別の解消に関する条例を制定しており、かつ、同条例で障害者差別解消法とは異なる「差別」の定義を用いている地方公共団体における同条例の運用の実態調査

調査項目1)については、条例で障害者差別解消法とは異なる「差別」の定義を用いている地方公共団体を対象に調査を実施した。手順としては、地方公共団体の条例を通読しその全体像を把握した。また、「差別」に関する記述方法を類型化したうえで、障害者差別解消法施行前に成立したものと、後に成立したものとに分けて整理した。条例には、障害者差別解消法が定めていない分野・事象について、独自の内容を規定して補足する役割があり、法の施行前と後では、異なる課題が生じている可能性があると考えたためである。
 訪問調査は、「障がい又は障がいに関連する事由を理由として…」という形式で間接差別を指すと思われる「差別」の定義をしている条例を2017年10月に制定した福岡県にて行い、文献調査の結果をふまえ、当該定義や分類の考え方、制度の運用実態・工夫、具体的効果、今後の課題等に関する聞き取りを行った。

2)障害者差別の解消に関する条例を制定しており、かつ、同条例で紛争解決のための独自の権限を定めている地方公共団体における同権限の運用の実態調査

調査項目2)については、条例で紛争解決のための独自の権限を定めている地方公共団体を対象に調査を実施した。  法務省人権擁護局から公表された「平成29年における『人権侵犯事件』の状況について(概要)29によると、2017年に法務省が人権侵犯事件として救済手続を行った障害者に関する事案の件数275件のうち、234件が法律上の助言を行ったり、関係行政機関や関係ある公私の団体等を紹介したりするなどの「援助」によって終結したという報告が公表されている。
 このことからも、地方公共団体に寄せられている差別に関する相談や、相談された事案を解決するための体制としては、主務大臣制に基づく分野別の紛争解決のための体制とは別に、助言等による軽微な事案解決のための権限が求められており、各条例に記述されていると考えられる。
そこで、現地調査としては、北海道と横浜市を訪問し、紛争解決のための独自の権限の運用の実態・工夫、事業者等の見解、具体的な効果・影響、今後の課題等について聞き取り調査を実施した。

3)障害者差別の解消に関する条例を制定しており、かつ、同条例で事業者に合理的配慮の提供を義務付けている地方公共団体における同条例の運用の実態調査

調査項目3)については、条例で事業者の合理的配慮を義務付けている地方公共団体を対象に調査を実施した。まず、事業者への合理的配慮を義務付けている地方公共団体のウェブサイトや文献資料、各種報道を通して情報収集を行った。また、2018年10月に事業者の合理的配慮を義務付ける条例を施行した東京都を訪問し調査を行った。ここでは、条例制定過程における事業者団体とのやり取りや、運用実態、工夫、見解・取組、具体的効果、今後の課題等に関する聞き取り調査を行った。

4)障害者差別の解消の推進に係る施策の定量的な効果測定を実施している地方公共団体における同効果測定の運用の実態調査

調査項目4)については、障害者差別の解消の推進に係る施策の定量的な効果測定を実施している地方公共団体を対象に調査を実施した。訪問調査を行ったすべての地方公共団体にて、障害者差別の解消の推進に係る施策の定量的な効果測定に関する運用実態や工夫、見解・取組、具体的効果、今後の課題等に関して聞き取り調査を行った。

5)事業者による合理的配慮等の促進に向けた独自事業を実施している地方公共団体における同事業の運用の実態調査

調査項目5)については、条例で事業者の合理的配慮等の促進に向けた独自事業を実施している地方公共団体を対象に、それら地方公共団体のウェブサイトや文献資料、各種報道を通して情報収集を行った。
 また、2017年9月に障害を理由とする差別の解消に向けた取組についても規定した条例を施行し、同時に「障がい者が暮らしやすい社会づくり事業補助金」の交付を開始した鳥取県を訪問し調査を行った。鳥取県に対しては、当該条例の検討過程における事業者団体とのやり取りや、運用実態、工夫、見解・取組、具体的効果、今後の課題等に関する聞き取り調査を行った。

6)障害者差別の解消に関する条例を制定しており、かつ、相談対応や事案解決における基礎となる考え方をまとめたガイドラインを作成している地方公共団体における同ガイドライン運用の実態調査

調査項目6)としては、障害者差別の解消に関する条例を制定しており、かつ、差別に関する相談対応や事案解決における基礎となる考え方をまとめたガイドラインの有無について調査を実施した。また、訪問調査を行ったすべての地方公共団体に対して、相談対応や事案解決における基礎となる考え方をまとめたガイドラインの有無、ガイドラインがある場合にはその内容について調査した。

なお、これらの調査項目の内容や背景は相互に関連しており、わかりやすく調査結果を示すため、本報告書では調査項目1、3、2、5、4、6の順で調査結果と考察を記述する。


29 平成29年における「人権侵犯事件」の状況について(概要)~法務省の人権擁護機関の取組~, http://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken03_00214.html

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