1 国外調査 1.1

1.1 調査の目的

 我が国は国連障害者権利委員会に平成28年6月に政府報告を提出し、審査を待つ段階にある。令和元年9月に実施された国連障害者権利委員会第13回事前作業部会において、我が国に対する事前質問事項の検討が行われ、今後、我が国は発表される事前質問事項への回答を国連障害者権利委員会へ提出することが求められる。
 我が国に対する審査は来年度中の実施が予想されるが、審査への対応の参考とするため、平成25年度以降、国連障害者権利委員会における主要国の審査プロセスの資料調査を行い、各国に対する審査のポイント等を分析してきた。本調査はそれらの先行調査の成果を踏まえ、我が国に対する審査への適切な対応に資するため、今年度中に審査を受ける諸外国における条約実施状況と、国連障害者権利委員会における審査の動向を把握する。

 これまでの調査結果等から、国連障害者権利委員会が作成する事前質問事項や総括所見の構成及び内容は、各国の市民社会等から提出されるパラレルレポートの内容に加えて、これまでに国連障害者権利委員会が発表した一般的意見の内容に強く影響を受けていることがうかがえる。
 そこで、本調査では、それぞれの国に関して市民社会等から提出されたパラレルレポートの内容と、発表されている一般的意見の内容を軸として、今年度中に進行する審査プロセスにおける論点を整理・分析し、総括所見等の論点や勧告の内容が何に基づいて形成されているかについて明らかにする。

 また、これまでの審査において、国連障害者権利委員会が審査対象国のどのような対応を問題視、あるいは評価してきたかを把握することは、立法、並びに政策制定をはじめとした、障害者権利条約への今後の対応に大きく資するものである。そのため、これまでの調査の対象となった国に対する総括所見の内容を改めて振り返り、勧告内容の比較を行い、それぞれの国に対する論点の相違点、及び共通点を調査・分析する。

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