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平成24年版障害者白書

「震災と障害者」<1>障がい者制度改革推進会議の検討から

内閣に設置された「障がい者制度改革推進本部」の下で開催された「障がい者制度改革推進会議」は、平成22年1月から障害当事者を中心として今後の障害者施策の推進について精力的に検討を行いましたが、平成23年3月11日に発生した東日本大震災に関しては、平成23年5月23日と24年1月23日に「災害と障害者」をテーマとして開催し、状況の把握や障害者支援にあたった行政(市)、障害者団体、災害における障害者支援を以前から行っていた団体のそれぞれ中心的な担当者から直接ヒアリングを行いました。また、推進会議構成員は、被災地を視察し、実地調査を行いました。

1 第32回障がい者制度改革推進会議(平成23年5月23日)

震災から約2か月のまでの間、暫定的にとりまとまった被害状況や各構成員が収集した情報等を元に現状の支援方法、今後の災害時の障害者施策について討議を行いました。(内閣府障害者施策ホームページ参照)

(資料):https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/kaikaku/s_kaigi/k_32/index.html

(議事要録)https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/kaikaku/s_kaigi/k_32/giji-youroku.html

2 第37回障がい者制度改革推進会議(平成24年1月23日)

震災から約10か月が経過し、被害状況や避難生活の状況がかなり見えてきた中、行政(市)、支援にあたった障害者関係団体、災害に関する障害者支援を行っているNPO のそれぞれの中心的な担当者を招きヒアリングを行い、併せて推進会議の構成員が、岩手、宮城、福島3県に分かれて実地調査した結果も踏まえ、質疑応答等を行いました。

報告のポイントは、<1>「災害時要援護者」に対する取組について、<2>安否の確認と支援ニーズの把握について、<3>災害直後における障害者支援の仕組みの在り方について、<4>復興に向けた障害者支援の在り方についての大きく4点でした。

以下、ヒアリングに協力いただいた方々からご提出いただいた当日の配布資料を基本的にそのまま掲載し読者の参考に供します。

行政(市町村)の立場からの報告

(南相馬市の取組報告南相馬市健康福祉部長西浦武義氏)

1.「災害時要援護者」に対する取り組みについて

南相馬市の「災害時要援護者名簿」は、高齢者・障害者(要介護度3以上、身体障害者手帳1~2級、療育手帳A)を対象に、個人情報について同意の得られた方(66.94%)を対象に策定し、4,280人の登録がある。

この計画は、民生委員、区長、消防団等に配布してあるが、今回の震災では地域全員の市民が避難となったため、機能しなかった。

南相馬市防災計画が策定されており計画により毎年南相馬市防災訓練が実施されているが避難計画策定や訓練には障害者団体に対しての呼びかけは行っておらず、障害者団体との連携はなかったのが現状である。

対象者の範囲については、目的外利用も考慮し、高齢者・障害者等の範囲としプライバシー保護については、平時は、個人情報保護法等により個人情報が強く守られているので、現行法体系の中では、同意の得られた方のみとした。しかし、今回の災害を受けて、高齢者や障害者等要援護者全員を対象とした要援護者名簿の必要性を強く感じる。

災害時においては、安否確認が必要であるが、確認時に個別支援の必要な方も出てきており、このことからあらかじめ個別支援計画の策定が必要である。今回のJDF(日本障害フォーラム)による調査により得られた、支援の必要な方の情報については、南相馬市で委託する相談支援事業者等と情報を共有し対応する考えである。

2.安否の確認と支援ニーズの把握について

災害時における安否の確認や支援ニーズの把握は、市民の生命と安全を守ることから行政の責任と考える。しかし実施にあっては、障害団体や事業所等と連携し速やかに行動する体制を構築していくことが必要である。

NPO 法人さぽーとセンターぴあ、JDF(日本障害フォーラム)被災地障害者支援センター福島から開示要望があり、「緊急やむを得ないため開示ができないか」という観点から個人情報の開示について検討した結果、南相馬市個人情報保護条例の特例を適用し「障害者の生命、身体及び財産」を守るため開示することが適当との判断により開示した。

入所、通所サービス利用者等の障害福祉サービス利用者については、それぞれの事業所で確認を行ない避難を行ったが、ホームヘルプ等利用者等個人利用者や在宅障害者については当初確認できなかった。

サービスを利用していない障害者のうち、身体・知的障害者については情報開示を行いNPO 法人さぽーとセンターぴあ、JDF 被災地障害者支援センター福島の支援協力により590名の安否確認を行なった。

精神障害者については、精神通院医療受給者を対象に市や県の保健師が精神科治療の継続がなされているかどうかという切り口で、235人(27.7%)対象に安否確認をおこなった。

3.災害直後における障害者支援の仕組みの在り方について

一次避難所は、学校の体育館等がほとんどであり、身体障害者用のトイレがない所や段差があり、バリアフリーとなっておらず障害を持っている方に対応できない避難所が多く課題となった。

南相馬市では、障害者や高齢者に対応できる福祉避難所を設けていなかったことから今後福祉避難所を設けることが課題となっている。

又福島県としても制度がなかったことから県内避難者が体育館等に避難を余儀なくされ避難者が適応できなく自宅や親戚等に移動している状況にあった。今回の災害により国、県等が主体として広域的に制度として福祉避難所の指定が必要である。

避難所にテレビ・インターネット環境を設置するとともに、広報等各種情報紙等により情報提供を行なった。また、食事の提供や布団等の生活支援物資の提供を行なった。

在宅避難者に対しては南相馬市FM 局を設置し災害関連情報を提供するとともに、広報等各種情報紙等により情報提供を行なった。また、在宅者には、不定期ではあるが米等の生活支援物資の提供を行なった。

一般には、公共施設において定期的に物資の提供を行ったが、障害者や車のない市民に対しては、個別に支援を行った。

本市では、市の窓口に保健師を配置し、避難者からの相談にあたっており、更に要請があったところについては、保健センター保健師や社会福祉協議会の介護職がチームを作り巡回訪問等を実施し相談や支援を行った。

また、以前から2ヶ所の指定相談支援事業所に相談業務を委託し緊急避難時を含め相談体制をとっている。

初期の在宅者による周知は、防災無線放送や広報車による放送により行ったが全員に徹底していなかったことや、放射線被害から予防するため窓を閉め切っており、情報が行き届かない多くの市民がいた。

4.復興にむけた障害者支援の在り方について

今回の震災における南相馬市に配備された仮設住宅はバリアフリー仕様のものが無く、入り口の段差の解消等はスロープ等の設置への苦情があったことから後日対応した。バリアフリー仕様の仮設住宅を多く用意することが必要であると思う。

借上げ住宅等については、貸主の同意があれば日常生活用具給付事業で住宅改修を認めている。多くの方がみなし借り上げ住宅を利用している。

南相馬市では現在民間借り上げ住宅4,308戸仮設住宅3,060戸となっている。

今回の震災ではJDF 被災地障害者支援センターふくしま等の団体により支援いただき大きな成果をあげることができたが、スタッフはそれぞれの団体に所属するため、長期の支援には限界がある。集めたデータの管理と活用が課題となる。又JDF の存在すら知らない状況であり平常時から周知が必要となっている。

特に災害時において、命に関わることから障害福祉サービス等の継続的支援が重要である。今回の震災では、震災直後の一時期を除いて、継続できたものと思っている。今回災害時特例として制度化された利用者負担金の免除等新規ニーズについても対応致した。

福祉事業者に対しては、原発事故により施設の除染が必要になったため、市の除染計画に基づき除染を行なうことになっており、また、福祉事業者からの相談に応じて対応しているが介護スタッフがいない、休業により資金ショートがおきている等課題がある。

本市には国のハローワーク、県の相双障害者就労支援センターがあり、この機関により就業支援を行っております。また、本市の地域自立支援協議会に設置する就労支援部会に、ハローワーク、相双障害者就労支援センター、障害者施設等の職員が集い、障害者の就労に向け検討を行なっています。

本市には2ヶ所の指定相談支援事業所があります。今回の震災で相談件数が増えているため、1ヶ所増設し3カ所で対応する予定となっている。

障害者にとって、物的・精神的側面を含め震災前と同じような状況になり更に改善されることが復興である。南相馬市は復興に向けて計画を策定しているが地域に居住する障害者にとっては、地域での支え合い体制が必要である。又早急な入所施設、通所施設及び医療機関の再開が復興と連動している。

復興計画の策定にあたっては、障害者団体の参画が必要であるが、今回の計画策定は各種団体の代表者が参画しているものの、残念ながら当事者や障害団体の構成員は皆無の中で策定しました。今後の計画策定にあたっては、障害者団体や当事者の参画が必須である。

被災者の仮設住宅(南相馬市)

被災者の仮設住宅(南相馬市)

(この写真は、報告で使われたものではありません。)

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