第2節 障害者の状況(基本的統計より)
1.全体状況、年齢階層、発生年齢・原因
(1)障害者の全体的状況
ア 3区分の概数
ここでは、身体障害、知的障害、精神障害の3区分による厚生労働省の調査から基本的な統計数値を掲載する。
身体障害、知的障害、精神障害の3区分で障害者数の概数を見ると、身体障害者366万3千人、知的障害者54万7千人、精神障害者323万3千人となっている。
これを人口千人当たりの人数で見ると、身体障害者29人、知的障害者は4人、精神障害者は25人となる。複数の障害を併せ持つ者もいるため、単純な合計数にはならないものの、およそ国民の6%が何らかの障害を有していることになる。
なお、精神障害者については、身体障害者や知的障害者のような実態調査が行われていないため、医療機関を利用した精神疾患患者数を精神障害者数としていることから、一過性の精神疾患のために日常生活や社会生活上の相当な制限を継続的には有しない者も含まれている可能性がある。
調査の概要
○身体障害児・者実態調査(厚生労働省)
在宅の身体障害児・者を対象とした調査であり、5年ごとに実施。全国の国勢調査区から無作為抽出した調査地区内に居住する身体障害児・者及びその属する世帯を対象に調査。
○知的障害児(者)基礎調査(厚生労働省)
在宅の知的障害児・者を対象とした調査であり、5年ごとに実施。全国の国勢調査区から無作為抽出した調査地区内に居住する知的障害児・者のいる世帯を対象に調査。
※「身体障害児・者実態調査」と「知的障害児(者)基礎調査」は統合され「生活のしづらさなどに関する調査(全国在宅障害児・者等実態調査)」として、平成23年12月に実施された。平成24年度中に、厚生労働省ホームページで結果公表の予定。
○社会福祉施設等調査(厚生労働省)
全国の社会福祉施設等を対象に、施設数、在所者・従事者の状況等を調査するもので、毎年実施。10月1日時点での全数調査。
○患者調査(厚生労働省)
病院及び診療所を利用する患者について、その傷病の状況等の実態を明らかにし、医療行政の基礎資料を得ることを目的とした調査であり、3年ごとに実施。全国の医療施設から層化無作為に抽出し、調査日にその医療施設で受診した全ての患者を対象に調査。
イ 施設入所・入院の状況
障害別に状況を見ると、身体障害における施設入所者の割合2.4%、精神障害における入院患者の割合10.3%に対して、知的障害者における施設入所者は23.4%となっており、特に知的障害者の施設入所の割合が高い点に特徴がある。
(2)年齢階層別の障害者数
ア 身体障害者
在宅の身体障害者357.6万人の年齢階層別の内訳を見ると、18歳未満9.3万人(2.6%)、18歳以上65歳未満123.7万人(34.6%)、65歳以上221.1万人(61.8%)であり、70歳以上に限っても177.5万人(49.6%)となっている。
我が国の総人口に占める65歳以上人口の割合(高齢化率)は調査時点の平成18年には20.8%であり、身体障害者ではその3倍以上も高齢化が進んでいる状況にある。
65歳以上の割合の推移を見ると、昭和45年には3割程度だったものが、平成18年には6割まで上昇している。このことは、年齢階層ごとの身体障害者の割合の違いに関係している。身体障害者の割合を人口千人当たりの人数で見ると60歳代後半で58.3人、70歳以上では94.9人となっている。このように、高齢になるほど身体障害者の割合が高いことから、人口の高齢化により身体障害者数は今後も更に増加していくことが予想される。
イ 知的障害者
在宅の知的障害者41.9万人の年齢階層別の内訳を見ると、18歳未満11.7万人(28.0%)、18歳以上65歳未満27.4万人(65.5%)、65歳以上1.5万人(3.7%)となっている。身体障害者と比べて18歳未満の割合が高い一方で、65歳以上の割合が低い点に特徴がある。
65歳以上の割合の推移を見ると、平成7年から平成17年までの10年で2%台から3.7%へ増加している。知的障害は発達期に現れるものであり、発達期以降に新たに知的障害が生じるものではないことから、身体障害のように人口の高齢化の影響を大きく受けることはない。一方で、調査時点である平成17年の高齢化率20.8%に比べて、知的障害者の65歳以上の割合が5分の1以下の水準であることは、健康面での問題を抱えている者が多い状況を伺わせる。
ウ 精神障害者
外来の精神障害者290.1万人の年齢階層別の内訳を見ると、20歳未満17.3万人(6.0%)、20歳以上65歳未満180.8万人(62.3%)、65歳以上91.5万人(31.5%)となっている。調査時点の平成20年の高齢化率22.1%に比べ、高い水準となっている。
65歳以上の割合の推移を見ると、平成14年から平成20年までの6年間で、65歳以上の割合は27.2%から31.5%へと上昇している。
(3)障害種類別の障害者数
ア 身体障害者
在宅の身体障害者の障害種類別の内訳を見ると、視覚障害31.5万人(8.8%)、聴覚・言語障害36.0万人(10.1%)、肢体不自由181万人(50.6%)、内部障害109.1万人(30.5%)となっている。
障害種類別の年次推移を見ると、視覚障害、聴覚・言語障害、肢体不自由はほぼ横ばいであり、内部障害の増加率が高い。平成8年から18年までの10年間の推移を見ても、内部障害の占める割合は21.2%から30.5%へと増加している。このことは、障害の発生原因や発生年齢とも関係しており、人口の高齢化の影響が内部障害の増加に影響を及ぼしているといえる。
イ 精神障害者
外来の精神障害者の疾病別の内訳を見ると、「気分(感情)障害(躁うつ病を含む)」101.2万人(34.7%)、「統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害」60.8万人(20.8%)、「神経症性障害、ストレス関連障害及び身体表現性障害」58.4万人(20.0%)、「てんかん」21.2万人(7.2%)、等となっている。
平成14年度からの6年間の外来患者数の傾向を疾患別に見ると、「統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害」はほぼ横ばいで推移しているのに対し、「気分(感情)障害(躁うつ病を含む)」は1.5倍近い伸びを示している。
ウ 精神障害者の入院・外来の構成割合
精神疾患の疾患別に入院・外来の構成割合を見ると、入院では「統合失調症、統合失調型障害及び妄想性障害」が6割近くを占めているのに対し、外来では「気分(感情)障害(躁うつ病を含む)」や「神経症性障害、ストレス関連障害及び身体表現性障害」の割合が高くなっている。
(4)障害の発生年齢及び原因
ア 身体障害の発生時の年齢
在宅の身体障害者(18歳以上)について、障害の発生時の年齢分布を見ると、40歳代以降の発生が6割強を占めており、65歳以上の発生に限っても24%程度ある。
障害種類別で見ると、視覚障害、聴覚・言語障害、肢体不自由ともに3割から4割程度が40歳までに生じているのに対し、内部障害では40歳以前の発生は13%程度に過ぎず、大半が40歳以上で生じている。これは、内部障害では中高齢期に生じた心臓や腎臓等の臓器の疾病に起因する障害が多いことによる。
イ 身体障害の原因
在宅の身体障害者(18歳以上)について、障害の原因を見ると、疾病や事故の割合が高いが、不明や不詳も多い。疾病の中では、感染症や中毒性疾患以外の疾患の割合が高く、生活習慣病や原因不明の疾患等によっても障害が発生している。また、事故の中では労働災害が交通事故を若干上回っている。
また、在宅の身体障害児(18歳未満)では、不明が最も多く、以下出生時の損傷、その他、不詳、疾病、事故の順になっている。
ウ 精神障害の発生時の年齢
外来の精神障害者の精神科初診時の年齢を見ると、20歳未満が41.0%を占め、40歳以上は20.1%となっている。
疾患別に精神科初診時の年齢を見ると、統合失調症では20歳未満が56.2%を占め、40歳以上は6.2%に過ぎないことから、在学中の発病などにより、就職経験もなく社会生活への適応に困難を有する者も多いことがうかがわれる。これに対して、統合失調症以外のうつ病等の疾患では20歳未満が29.3%に止まる一方、40歳以上が30.7%を占めており、社会生活上の実績を築き上げてきた後に社会生活への適応に困難を生じている者が多いことがうかがわれる。
調査の概要
○精神障害者社会復帰サービスニーズ等調査(厚生労働省)
平成15年度に厚生労働省が社団法人日本精神科病院協会に委託して実施した調査。精神障害者の立場から各種サービスの把握を目的として、医療機関の外来・入院患者、精神障害者社会復帰施設の入所者を対象に実施した抽出調査。