4.社会的及び職業的自立の促進
(1)特別支援学校と関係機関等の連携・協力による就労支援
障害のある人が、生涯にわたって自立し社会参加していくためには、企業等への就労を支援し、職業的な自立を果たすことが重要である。しかしながら、近年、特別支援学校高等部卒業者の進路を見ると、福祉施設等入所者の割合が約6割に達する一方で、就職者の割合は約2割にとどまっているなど、職業自立を図る上で厳しい状況が続いている。この背景としては、特別支援学校高等部の整備が進んできたことや、障害の重度・重複化に伴う訪問教育対象者の増加などによる高等部在籍者数の増加の割合に比して、就職者数はほぼ横ばいであるという状況があることなどが考えられる。
障害者の就労を促進するためには、福祉から雇用に向けた施策を進めると同時に、学校から雇用に向けた施策を進めるなど、教育、福祉、医療、労働などの関係機関が一体となった施策を講じる必要がある。
このため、文部科学省では、平成22年6月に、各都道府県教育委員会等に対し、特別支援学校就労支援セミナー等労働関係機関等における種々の施策の積極的な活用を促すなど、厚生労働省と連携した取組を進めている。
また、特別支援学校と関係機関との連携による職業教育の改善に関する研究に取り組んでいる。
(2)高等教育等への就学の支援
障害のある人がその能力・適性等に応じて高等教育へ進むための機会を拡充するためには、受験機会の確保、必要な施設・設備の整備等につき一層の充実を図ることが必要である。このため、従来から各国公私立大学等に対し、大学入学者選抜実施要項や各種会議を通じて、障害のある入学志願者に対しては、大学入学者選抜の際には、事前の相談体制の充実とともに、障害の種類・程度に応じ、点字による出題、試験時間、試験場の整備等特別な措置をとることなどの配慮を求めている。
なお、それらの趣旨を踏まえ、大学入試センター試験や各大学の個別試験においては、点字・拡大文字による出題、筆跡を触って確認できるレーズライターによる解答、チェック解答、試験時間の延長、代筆解答などの特別な措置を講じている。
学校施設については、障害のある人の円滑な利用に配慮するため、従来よりスロープ、エレベーター、手すり、障害者用トイレ等の整備を進めるとともに、障害のある学生が快適な学生生活を送れるよう学習支援体制の充実・強化を図るため、各大学等において教育上の特別の配慮が行われている。
聴覚障害のある人及び視覚障害のある人のための高等教育機関である国立大学法人筑波技術大学は、<1>障害に適応した実践的な職業人、率先して社会に貢献できる人材の育成、<2>障害教育カリキュラム及び障害補償システムの開発研究等を行っている。
テレビ・ラジオ放送等のメディアを効果的に活用して、遠隔教育を行っている放送大学では、昭和60年に開学して以来、自宅で授業を受けることができ、障害のある人を含め広く大学教育を受ける機会を国民に提供している。また、平成14年4月には大学院文化科学研究科を開設しており、23年度第2学期現在、教養学部及び大学院を併せて約8万6,000人の学生が学んでいる。
なお、障害のある学生に対しては、放送授業の字幕放送化の推進や単位認定試験における点字出題や音声出題、試験時間の延長等を行っている。
(3)地域における学習機会の提供
障害のある子どもの学校外活動や学校教育終了後における活動等を支援するためには、地域における学習機会の確保・充実を図るとともに、障害のある人が地域の人々と共に、地域における学習活動に参加しやすいように配慮を行う必要がある。
公民館や図書館、博物館といった社会教育施設については、それぞれの施設に関する望ましい基準を定め、障害の有無にかかわらず、すべての人々にとって利用しやすい施設となるよう促している。
また、平成19年度より、文部科学省と厚生労働省が連携し、地域社会の中で、放課後等に子どもたちの安全・安心な居場所をつくるため、全国の小学校区での実施を目指し推進を図っている総合的な放課後対策「放課後子どもプラン」を実施している。
独立行政法人国立青少年教育振興機構では、体験活動が青少年の健全育成にとって重要な役割を果たしていることを踏まえ、障害の有無にかかわらず、より多くの青少年に体験活動の機会と場を提供できるよう、体験活動事業の実施や指導者養成、施設・設備の整備に取り組んでいる。
(4)家庭への支援等
教育の機会均等の趣旨及び特別支援学校等への就学の特殊事情にかんがみ、保護者の経済的負担を軽減し、その就学を奨励するため、就学のため必要な諸経費のうち、教科用図書購入費、交通費、寄宿舎居住に伴う経費、修学旅行費等について、保護者の経済的負担能力に応じて、その全部又は一部を助成する特別支援教育就学奨励費が保護者に支給されている。