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第3章 社会参加へ向けた自立の基盤づくり > 第2節 雇用・就労の促進施策 > 2.総合的支援施策の推進

平成24年版障害者白書

平成23年度を中心とした障害者施策の取組

第3章 社会参加へ向けた自立の基盤づくり

第2節 雇用・就労の促進施策

2.総合的支援施策の推進
(1)障害のある人への地域における就労支援

障害のある人の就労支援の充実と活性化を図るため、雇用・福祉・教育の一層の連携強化を図ることとし、ハローワークを中心とした関係機関とのチーム支援や一般雇用や雇用支援策に関する理解の促進、障害者就業・生活支援センター事業、トライアル雇用事業、ジョブコーチ等による支援などを実施している。

これらを踏まえ、障害福祉計画において、福祉施設から一般就労への年間移行者数を23年度までに1万人とすることとしている。

ア ハローワーク

就職を希望する障害のある人に対しては、ハローワークで、求職の登録の後にその技能、職業適性、知識、希望職種、身体能力等に基づき、ケースワーク方式による職業相談を実施し、安定した職場への就職・就職後の職場定着を支援している。

このため、ハローワークの障害のある人の専門窓口では、障害のある人の就職支援を専門に担当する就職促進指導官を配置し、個々の障害特性に応じたきめ細かな職業相談を行っている。また、ハローワークが中心となり、福祉施設等の利用者をはじめ、就職を希望する障害のある人一人ひとりに対して、ハローワーク職員と福祉施設等の職員等がチームを結成し、就職から職場定着まで一貫した支援を実施している。

<1> ハローワークを中心とした「チーム支援」

福祉施設利用者や特別支援学校卒業(予定)者等の一般雇用への移行を図るため、ハローワークが中心となって、福祉、教育等の関係機関からなる「障害者就労支援チーム」を作り、就職に向けた準備から職場定着までの一貫した支援を行う「チーム支援」を実施している。

平成23年度からは、障害者雇用の専門的知識を有する就職支援コーディネーター(障害者支援分)を活用し、地方自治体、医療機関なども含めた地域の関係機関との連携体制の更なる強化を行い、継続的な支援を実施することで、福祉・教育からの一般雇用への移行を促進している。

<2> トライアル雇用

障害のある人の取組が遅れている事業所では、障害者雇用に取り組む意欲がありながら障害者雇用の経験が乏しいために、障害のある人に合った職域開発、雇用管理等のノウハウがなく、躊躇する場面がある。また、障害のある人本人についても仕事内容に対する不安等を持っている場合があるため、ハローワークでは、障害のある人の雇用のきっかけづくりを目的とした短期の試行雇用(トライアル雇用事業)を実施し、その後の一般雇用への移行の促進を図っている。

後期5か年計画では、トライアル雇用を通じた一般雇用への移行を進めるため、トライアル雇用終了者の移行率を80%以上にすることを目指しており、平成23年度の移行率は86.9%となっている。

イ 地域障害者職業センター

独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構により各都道府県に1か所(そのほか支所5か所)設置・運営されている。地域障害者職業センターでは、ハローワークや地域の就労支援機関との連携の下に、身体に障害のある人、知的障害のある人はもとより、精神障害のある人、発達障害のある人、高次脳機能障害のある人等他の機関では支援が困難な障害のある人を中心に、専門職の「障害者職業カウンセラー」により、職業評価、職業指導から就職後のアフターケアに至る職業リハビリテーションを専門的かつ総合的に実施している。

後期5か年計画では、以下の支援により、地域障害者職業センターの支援対象者数を24年度までの累計で12.5万人とすること等を目指すこととしており、平成23年度までに11.6万人となっている。

(ア)職業評価及び職業リハビリテーション計画の策定

地域障害者職業センターでは、個々の障害のある人の特性を把握した上で、その者がどのような能力を有し、またどのような支援を行えば就労可能となるのかといった見極めを行う職業評価を行っている。また、その評価の結果をもとに、必要な職業リハビリテーションの措置を明らかにする職業リハビリテーション計画を策定し、それに基づき支援を行っている。平成23年度の職業リハビリテーション計画の策定数は、24,745件となっている。

(イ)障害のある人の就労の可能性を高めるための支援(職業準備支援)

ハローワークにおける職業紹介、職業訓練、職場実習、ジョブコーチによる支援等、就職に向かう次の段階に着実に移行させるため、障害のある人一人ひとりのニーズに応じて、基本的な労働習慣の体得、社会生活技能の向上等、就職、復職、職場適応に向けた準備性を高めるための支援(職業準備支援)を実施している。平成23年度の支援対象数は、2,146人となっている。

(ウ)障害のある人の職場適応に関する支援(職場適応援助者(ジョブコーチ)支援事業)

就職又は職場適応に課題を有する知的障害、精神障害のある人等の円滑な職場適応を進めるため、事業所にジョブコーチを派遣し、障害のある人に対し職場適応や、事業主に対する職場における職務創出等の支援を行っている。

後期5か年計画では、平成24年度における支援終了後の定着率80%以上及び平成23年度までにジョブコーチ5,000人を養成することを目指すこととしており、平成23年度職場定着の状況(平成22年10月~平成23年9月までに支援を終了した者のうち、支援終了後6ヶ月経過時点での定着状況)は、87.4%であった。また、24年3月時点のジョブコーチの養成者数は、4,591人となっている。

(エ)精神障害のある人等に対する総合雇用支援

精神障害のある人及び事業主に対する雇用支援を強化するため、主治医等の医療関係者との連携の下、新規雇入れ、職場復帰、雇用継続のそれぞれの段階における総合的な支援を実施している。

特に、休職中の精神障害のある人及びそれを雇用している事業主に対して、円滑な職場復帰支援(リワーク支援)を進めている。精神障害のある人に対しては、職場復帰に向けた生活リズムの立直しや集中力・持続力の向上等の支援を行うとともに、事業主に対しては受け入れ体制の整備についての助言・援助等を実施している。

後期5か年計画では、在職中に精神障害のある人となった人等について、地域障害者職業センターの実施する精神障害者総合雇用支援による復職支援及び雇用継続支援終了後の復職・雇用継続率を75%以上とすることを目指すこととしており、平成23年度は、84.0%となっている。

(オ)地域の就労支援機関の助言・援助

各地域における障害者就業・生活支援センターや就労移行支援事業者等の地域の関係機関で就職に結びつく効果的な支援が行われるよう、具体的な支援方法についてのアドバイスや支援ツールの利用法等について助言・援助を行っている。

また、障害のある人への雇用支援が、医療・福祉等の分野から連続して効果的に行われるよう、職業リハビリテーションに携わる人材の育成を図るため、ジョブコーチの養成研修、障害者就業・生活支援センターの就業支援担当者及び発達障害のある人の就業支援担当者に対する研修、職業リハビリテーション実践セミナーなどを実施している。

ウ 障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターでは、障害のある人の職業生活における自立を図るために、福祉や教育等の地域の関係機関との連携の下、障害のある人の身近な地域(24年4月現在315箇所)で就業面及び生活両面における一体的な支援を行っている。

例えば、就業やそれに伴う日常生活上の支援を必要とする障害のある人に対し、就職に向けた準備支援(職業準備訓練、職場実習のあっせん)や求職活動等の就業に関する相談、健康管理や住居、年金等の生活に関する相談などを行っている。また、必要に応じ、ハローワークや地域障害者職業センターなどの専門的支援機関と連絡を取り合い、支援を引き継ぐなど適切な支援機関への案内窓口としての機能を担っている。

平成24年度からは、個々の支援対象障害者に対して適切な相談支援及び専門機関への紹介を行うことができるよう、専門的知見を有した有識者を委嘱し、障害者就業・生活支援センターの就業支援担当者に対し助言を行えるよう機能強化を図った。

なお、障害者就業・生活支援センターについては、支援を希望する障害のある人ができる限り身近な地域で支援を受けることができるよう、後期5か年計画等で、全障害保健福祉圏域への設置を目標として掲げている。

平成24年度は、障害者就業・生活支援センターによる就労系サービスの利用に関するアセスメント及びその後の相談支援事業者との協議等に係る課題を検討・整理するため、モデル事業を実施することとしている(全国で10か所)。

(2)障害特性に応じた雇用支援策

ア 精神障害のある人への支援

精神障害のある人については、近年、ハローワークにおける新規求職者数が急激に伸びてきている。このため、障害特性に応じたきめ細かな支援や民間企業に対する雇用管理ノウハウの提供などの支援を積極的に実施し、一層の雇用促進を図ることが必要である。

そこで、ハローワークの専門窓口では「精神障害者雇用トータルサポーター」などの専門職員による個々の障害特性に応じたきめ細かな相談支援を行っている。

また、民間企業に対しては、一定程度の期間をかけて、段階的に就業時間を延長しながら常用雇用を目指す、精神障害者等ステップアップ雇用奨励金や精神障害のある人が働きやすい職場づくりを行った民間企業に対する奨励金(精神障害者雇用安定奨励金)の支給などを行っている。

さらに、平成23年度から、「精神障害者雇用トータルサポーター」について従来のカウンセリング等の業務に加え、精神障害のある人に関する事業主の意識啓発から就職後のフォローアップ等の事業主への働きかけも行うこととした。

これに加えて、平成21年度から平成22年度にかけて、精神障害のある人の雇用及び職場定着のノウハウを構築するためのモデル事業を実施し、精神障害者を初めて雇用する等の企業(10社)が精神障害者を受け入れ、雇用管理等の事例収集を行った。平成23年度はこのモデル事業の成果として事例集を作成するとともに、事業主等を対象にしたセミナーを全国6ブロックで開催し、精神障害のある人の雇用管理に関するノウハウの普及を図った。

そのほか、精神障害のある人の更なる雇用促進には、医療機関等を利用している精神障害のある人についても治療・社会復帰支援段階から就職を意識した支援を実施していく必要がある。このため、医療機関等を利用している精神障害のある人等を対象に、職業準備性や就職意欲を高め就職に向けた取組みを行えるよう、ハローワークの職員が医療機関等(精神科病院・診療所・精神保健福祉センター、保健所、障害福祉サービス事業者)を訪問し、就職活動の知識や方法についてガイダンス(「ジョブガイダンス事業」)を実施している。

なお、精神障害のある人については、これら各般の取組を通して、その雇用促進を一層図ることとしており、後期5か年計画では、56人以上の規模の事業主で雇用される精神障害のある人を、平成25年の障害者雇用状況報告で1.5万人にすることを目指しており、平成23年6月1日現在で1.3万人となっている。

イ 発達障害のある人への支援

発達障害のある人についても、精神障害のある人同様に、近年ハローワークにおける新規求職者数が増加しており、その雇用の促進を図ることが必要となっている。後期5か年計画でも、これまで必ずしも十分支援が提供されてこなかった高等学校や大学の生徒や学生も含めた、発達障害のある人への支援を推進することとしている。

そのため、ハローワークでは、発達障害のある求職者に対する職業紹介を行うに当たっては、地域障害者職業センターや発達障害者支援センターと十分な連携を図り、対応している。なかでも、発達障害などの要因によりコミュニケーション能力に困難を抱えている求職者について、専門の支援員(就職支援ナビゲーター(発達障害者等支援分))によるきめ細かな就職支援を実施する「若年コミュニケーション能力要支援者就職プログラム」を平成19年度から5カ所の労働局で実施し、平成24年度は39労働局で実施している。

また、平成21年度には、発達障害のある人をハローワークの職業紹介により新たに雇い入れ、雇用管理に関する事項を把握・報告する事業主に対して助成を行う発達障害者雇用開発助成金を創設し、その雇用促進を図っている。

さらに、「発達障害者就労支援者育成事業」として、支援関係者等の発達障害者支援のための基盤作りのために、全国10ブロックで発達障害のある人の就労支援者及び当事者等を対象としたセミナーを開催するほか、平成22年度から事業所で発達障害のある人を対象とした職場実習を実施し、発達障害のある人の雇用のきっかけづくりを行う啓発事業を実施している。

後期5か年計画でも、これまで必ずしも充分に支援が提供されなかった高等学校や大学の生徒や学生も含めた、発達障害のある人への支援を推進することとしている。

ウ 難病のある人への支援

ハローワークでは、障害者手帳の有無にかかわらず、就労支援の必要な難病のある人に対して、難病相談・支援センターとの連携による就労支援も行っている。

また、平成21年度からは、難病のある人をハローワークの職業紹介により新たに雇い入れ、雇用管理に関する事項を把握・報告する事業主に対して助成を行う「難治性疾患患者雇用開発助成金」を創設し、その雇用促進を図っている。

平成19年には難病のある人の就労実態の調査及び障害状況に応じた雇用管理のあり方等の調査研究の成果として、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が「難病(特定疾患)を理解するために~事業主のためのQ&A~」、「難病のある人の雇用管理・就業支援ガイドライン」を作成している。さらに、平成23年には労働関係機関だけでなく、保健・医療・福祉関係機関、患者団体等の幅広い関係者の共通認識を促進するため「難病のある人の就労支援のために」を同法人が作成し、ハローワークをはじめとした就労支援機関等で、難病のある人の就労支援に活用している。

エ 在宅就業への支援

<1> 在宅就業支援制度

自宅等で就業する障害のある人(在宅就業障害者)の就業機会の確保等を支援するため、これらの障害のある人に直接又は在宅就業障害者に対する支援を行う団体として厚生労働大臣の登録を受けた法人(在宅就業支援団体(平成24年5月現在で20団体))を介して業務を発注した事業主に対して、障害のある人に対して業務の対価として支払われた金額に応じて、障害者雇用納付金制度で、在宅就業障害者特例調整金(常用雇用労働者数200人以下の事業主については在宅就業障害者特例報奨金)を支給する制度を創設し、18年4月から運用を開始している。

平成23年度には、在宅就業支援制度について、事業主及び地方自治体への当該制度周知のためのリーフレットを送付するとともに、現在在宅就業支援団体として活動している事例等を交え制度を紹介するセミナーを実施し、その活用促進を図った。

さらに、平成24年度には、就業機会の確保・提供のほか、職業講習、就職支援等を行い、在宅就業障害者を支援する団体のうち在宅就業支援の効果が高いと見込まれる団体に対し、その活動に要した費用の一部を助成することにより、在宅就業障害者の就業機会の向上とその定着を図っている。

後期5か年計画では、本制度を活用して、就業機会の拡大が図られるよう、在宅就業支援団体を平成24年度までに100団体にすることを目指している。

<2> 就労支援機器等の普及・啓発

最近のIT の進歩により、従来、障害のある人が就労困難と考えられていた職業であっても、IT 機器を利用することにより、就労の可能性が高まってきている。このため、障害のある人の職域拡大に資することを目的として、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構で、障害のある人や事業主のニーズに対応した就労支援機器に関する情報提供、貸出事業等を通じて、その普及・啓発に努めている。

(3)「障害者に係る欠格条項」の見直し

「障害者に係る欠格条項」とは、資格・免許制度等において障害があることを理由に資格・免許等の付与を制限したり、障害のある人に特定の業務への従事やサービスの利用などを制限・禁止する法令の規定のことであり、平成11年8月にはその見直しの促進を図るため中央省庁再編前に設置されていた旧・障害者施策推進本部において「障害者に係る欠格条項の見直しについて」を決定し、16年6月には、対象とした63制度すべての見直しが終了している。

一方、欠格条項の見直しにより、障害のある人の資格取得等の機会が実質的に確保されるためには、教育や就業環境など必要な条件整備を併せて推進する必要があることから、「障害者施策推進本部」における「課長会議」の下に、「資格取得試験等における配慮推進チーム」(障がい者制度改革推進本部の設置(平成21年12月8日閣議決定)に伴い廃止)を設け、全省庁横断的に、資格取得試験等における障害への配慮のあり方について検討を行い、平成17年11月、「資格取得試験等における障害の態様に応じた共通的な配慮について」を「課長会議」で決定し、国が直接実施する資格取得試験等において、共通的に対応すべき配慮事項として示している。

(4)就労に向けた各種訓練の推進

国立障害者リハビリテーションセンター自立支援局においては、就労を目指して、就労移行支援、就労移行支援(養成施設)を実施しており、就労に必要な知識・技能を獲得させるため、障害のある人の特性に合わせた様々な訓練を行っている。

就労移行支援では、主として身体障害のある方を対象に、各種訓練や職場実習をとおして、働くための力を高める支援、職場開拓、就職活動支援、職場定着支援等を実施している。

就労移行支援(養成施設)では、視覚に障害のある人を対象に、あん摩・マッサージ・指圧師、はり師、きゅう師の資格を取得するために必要な学習の提供及び就労のための職場開拓や就職活動支援、フォローアップ等を実施している。

就労に向けては、知識・技能の獲得もさることながら、就職や開業後の人間関係形成の観点から対人技能の獲得も重要であることから、職場実習や臨床実習等の場面を通した支援を行っている。

また、発達障害のある人の就労支援については、青年期発達障害者の地域生活移行への就労支援に関するモデル事業(平成20年~22年度)の結果をもとに、平成24年度から発達障害者就労移行支援普及・定着化事業を開始し、事例の蓄積を行うこととしている。

(5)障害のある人の創業・起業等の支援

生活福祉資金貸付制度は、低所得世帯、障害者世帯等に対し、資金の貸付けと必要な援助指導を行うことにより、その経済的自立及び生活意欲の助長促進並びに在宅福祉及び社会参加の促進を図り、安定した生活を送れるようにすることを目的に、都道府県社会福祉協議会を実施主体として運営されている。本制度の資金種類の1つとして、「福祉資金」が設けられており、障害者世帯が生業を営むのに必要な経費や技能習得に必要な経費等の貸付を行っている。

(6)障害者の就労支援にあたっての農業部局との連携

障害者就労施設において、農園芸活動が行われてきており、稲作や野菜・果樹・花き栽培、畜産(養鶏、養豚)、農産加工から販売等幅広い分野で取り組まれているところである。

福祉関係者からは、このような取組をさらに推し進めるにあたっては、障害者の指導に際して、さらに農業知識を得たい、生産量の安定・確保・拡大を図りたい、販路を拡大して経営を安定したい、障害者の工賃アップを図りたいとの要望や農業関係者から農業分野全般について具体的な知識、技術の伝授を受けたいとの要望があるところである一方、農業関係者からは、高齢化や過疎化により減り続けている農業従事者を確保したい、障害者の雇用促進という社会的要請に貢献したいとの意向があるが、障害者に適した業務が分からない、どのような環境整備が必要か分からない等といった不安もあるとの声がある。

このため、厚生労働省と農林水産省で連携し、都道府県において、管内農業部局と連携をとり、福祉関係者と農業関係者の互いの制度の理解促進を図ることを目的に、ホームページの作成による情報提供や啓発活動、研修会等を開催すること、また、具体的な就労継続支援事業と農業との連携にあたっては、施設外就労による取組も有効であることから、請負契約の締結等にも留意しつつ、取組を推進するよう、周知している。

なお、この事業については、平成24年度からの「工賃向上計画支援事業」においても対象とすることとしており、農業の専門家の派遣などを推進することとしている。

(7)職場での適応訓練

ア 職場適応訓練

障害のある人に対し、作業環境への適応を容易にし、訓練修了後も引き続き雇用されることを期待して、都道府県知事又は都道府県労働局長が民間事業主に委託して実施する訓練で、訓練生には訓練手当が、事業主には職場適応訓練費(2万4,000円/月)が支給される(原則、期間6か月以内)。また、重度の障害のある人に対しては、より訓練期間、支給期間を長くし(1年以内)、職場適応訓練費を上積み支給(2万5,000円/月)している。

イ 職場適応訓練(短期)

障害のある人に対し、実際に従事することとなる仕事を経験させることにより、就業への自信を持たせ、事業主に対しては対象者の技能程度、適応性の有無等を把握させるため、都道府県知事又は都道府県労働局長が民間事業主に委託して実施する訓練で、訓練生には訓練手当が、事業主には、職場適応訓練費(960円/日)が支給される(期間2週間以内)。また、重度の障害のある人に対しては、より訓練期間や支給期間を長くし(4週間以内)、職場適応訓練費を上積み支給(1,000円/日)している。

(8)資格取得試験等における配慮

司法試験及び司法試験予備試験においては、試験の公正かつ適正な実施に資するため、障害者の有する障害の要因をできる限り排除し、学力を公正に評価するために必要な範囲で措置を講じている。具体的には、視覚障害者に対する措置として、パソコン用電子データ又は点字による出題、解答を作成するに当たってのパソコン(ワープロ)の使用、問題集・答案用紙の拡大、試験時間の延長等を、肢体障害者に対する措置として、解答を作成するに当たってのパソコン(ワープロ)の使用、答案用紙の拡大、試験時間の延長等を認めるなどの措置を講じている。

司法書士試験、土地家屋調査士試験及び簡裁訴訟代理等能力認定考査においては、その有する知識及び能力を答案等に表すことについて障害のない人と比較してハンディキャップを補うために必要な範囲で措置を講じている。具体的には、弱視者に対する拡大鏡の使用や記述式試験の解答を作成するに当たってのパソコン(ワープロ)の使用を、また、試験時間の延長を認める等の措置を講じている。

(9)福祉施設等における仕事の確保に向けた取組

後期5か年計画において、国は公共調達における競争性及び公正性の確保に留意しつつ、福祉施設等の受注機会の増大に努めるとともに、地方公共団体等に対し、国の取組を踏まえた福祉施設等の受注機会の増大の推進を要請することとされており、これを踏まえ、官公需(官公庁の契約)を積極的に進めるため、各府省の福祉施設受注促進担当者会議を開催し、更なる官公儒の促進を依頼するなどの取組を行うとともに、平成20年に地方自治法施行令を改正し、地方公共団体の契約について随意契約によることができる場合として、地方公共団体が障害者支援施設等から、クリーニングや発送作業などの役務の提供を受ける契約を追加する措置を講じた。

また、平成20年度より障害者の「働く場」に対する発注促進税制を創設し、企業に対して当該税制の活用を促すことなどにより、障害者の仕事の確保に向けた取組を推進している。

(10)職業能力開発の充実

ア 障害者職業能力開発校における職業訓練の推進

一般の公共職業能力開発施設において職業訓練を受けることが困難な重度の障害のある人については、障害者職業能力開発校を設置し、職業訓練を実施している。

平成24年4月1日現在、障害者職業能力開発校は国立が13校、都道府県立が6校で、全国に19校が設置されており、国立13校のうち2校は独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構に、他の11校は都道府県に運営を委託している。

障害者職業能力開発校においては、入校者の障害の多様化が進んでいることを踏まえ、個々の訓練生の障害の態様を十分に考慮し、きめ細かい支援を行うとともに、サービス経済化、IT 化の進展等に対応して、職業訓練内容の充実を図ることにより、障害のある人の雇用の促進に資する職業訓練の実施に努めている。

イ 一般の公共職業能力開発施設における受入れの促進

障害のある人の雇用を促進し、職業の安定を図るためには、障害のある人及び労働市場のニーズに対応した職業能力開発の実施が不可欠である。

このため、都道府県立の一般公共職業能力開発施設において、知的障害や発達障害のある人を対象とした訓練コースの設置を促進し、受講機会の拡充を図っている。

また、可能な限り一般の公共職業能力開発施設において、障害の有無にかかわらず職業訓練が受けられるよう、ノーマライゼーションの観点から、自動ドア、スロープ、手すり、トイレの整備等、施設のバリアフリー化等を推進している。

ウ 民間の能力開発施設における能力開発

障害のある人の能力開発を図り、その雇用の促進と安定に資するため、納付金による助成金を財源として民間の能力開発施設の設置促進を図っており、平成24年4月までに全国で19か所設置されている。訓練施設については、身体に障害のある人を対象とするもの12施設(うち視覚障害のある人対象2施設)、知的障害のある人を対象とするもの10施設、精神障害のある人を対象とするもの3施設となっている(複数の障害を対象としている施設あり)。

エ 障害の態様に応じた多様な委託訓練

雇用・就業を希望する障害のある人の増大に対応し、障害のある人が居住する地域で職業訓練が受講できるよう、居住する地域の企業、社会福祉法人、特定非営利活動法人、民間教育訓練機関等を活用した障害の態様に応じた多様な委託訓練(以下「障害者委託訓練」という。)を各都道府県において実施している。

障害者委託訓練は、主として座学により知識・技能の習得を図る「知識・技能習得訓練コース」、企業の現場を活用して実践的な職業能力の向上を図る「実践能力習得訓練コース」、通校が困難な人などを対象とした「e-ラーニングコース」、特別支援学校高等部等に在籍する生徒を対象とした「特別支援学校早期訓練コース」及び在職障害者を対象とした「在職者訓練コース」の5種類があり、個々の障害特性や企業の人材ニーズに応じて多様な支援を行うことが可能な制度である。平成23年度から新たに、職業意識の啓発や就職に要する職業能力の付与等を行う座学訓練と企業における実習を組み合わせた障害者向けの日本版デュアルシステムを導入した。障害者委託訓練の受講者は年々増加している。なお、委託訓練修了者の就職率については、平成22年度は43.8%であり、後期5か年計画において、24年度に50%となるよう目標設定した。

オ 地域における職業能力開発の推進

平成18年度から、教育、福祉、医療等の実施主体である政令指定都市を委託先として障害者職業能力開発プロモート事業を実施し、特別支援学校や福祉施設等を含む障害者職業能力開発のネットワークを構築するとともに、職業能力開発に係る相談・情報提供、潜在的職業訓練ニーズの把握と職業訓練の受講促進等を行ってきたところである。平成22年度からは、地域における障害者職業能力開発促進事業として、実施対象を都道府県にも広げ、政令指定都市のほか、都道府県の資源も有効活用するとともに、企画競争により委託先を選定して実施することにより、これまで以上に障害のある人の態様・希望や企業ニーズに対応した効果的・効率的な職業能力開発を推進している。

カ 発達障害のある人に対する職業訓練

平成20年度から、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が運営する吉備高原障害者職業能力開発校及び中央障害者職業能力開発校において、発達障害のある人を対象とした職業訓練を本格実施するとともに、他の障害者職業能力開発校においても、発達障害のある人の入校促進を図った。

特に、平成19年度から実施している都道府県立の一般公共職業能力開発施設における発達障害のある人を対象とした訓練コースについては、23年度は7道府県で実施し、職業訓練の受講機会の拡大を図った。

キ 障害のある人の職業能力開発に関する啓発

<1> 全国障害者技能競技大会(愛称:アビリンピック)の実施

全国障害者技能競技大会は、障害のある人の職業能力の開発を促進し、技能労働者としての自信と誇りを持って社会に参加するとともに、広く障害のある人に対する社会の理解と認識を深め、障害のある人の雇用の促進を図ることを目的として、アビリンピックの愛称の下、昭和47年から実施している。

平成22年度には、神奈川県で第32回大会が開催(10月15日~17日)され、24年度には長野県で開催される予定(国際アビリンピックが開催される年は開催しないため、平成23年度は実施せず。)。

<2> 国際アビリンピックへの日本選手団の派遣

国際アビリンピックは、昭和56年の「国際障害者年」を記念して、障害のある人の職業的自立意欲の増進と職業技能の向上を図るとともに、事業主及び社会一般の理解と認識を深め、更に国際親善を図ることを目的として、昭和56年10月に第1回大会が東京で開催され、以降おおむね4年に1度開催されている。

平成23年9月には、韓国(ソウル市)で第8回大会が開催(9月25日~30日)され、日本からは16種目の職業技能競技及び職業技能基礎競技に計31名の選手が出場し、金賞を2人、銀賞を4人、銅賞を7人が獲得したほか、5人が特別賞を受賞した。

(11)雇用の場における障害のある人の人権の確保

全国の法務局・地方法務局及びその支局では、雇用の場における障害のある人に対する差別的取扱い等の人権侵害の疑いのある事案を認知した場合には、事案に応じた適切な措置を講じるなどして、人権侵害による被害の救済及び予防を図っている。

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