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第2編 全般的推進状況(平成24年度を中心とした障害者施策の取組)

第3章 社会参加へ向けた自立の基盤づくり

第1節 障害のある子どもの教育・育成に係る施策

4.社会的及び職業的自立の促進

(1) 特別支援学校と関係機関等の連携・協力による就労支援

障害のある人が、生涯にわたって自立し社会参加していくためには、企業等への就労を支援し、職業的な自立を果たすことが重要である。しかしながら、近年、特別支援学校高等部卒業者の進路を見ると、福祉施設等入所者の割合が約7割に達する一方で、就職者の割合は約3割にとどまっているなど、職業自立を図る上で厳しい状況が続いている。この背景としては、特別支援学校高等部の整備が進んできたことや、障害の重度・重複化に伴う訪問教育対象者の増加などによる高等部在籍者数の増加の割合に比して、就職者数はほぼ横ばいであるという状況があることなどが考えられる。

障害者の就労を促進するためには、福祉から雇用に向けた施策を進めると同時に、学校から雇用に向けた施策を進めるなど、教育、福祉、医療、労働などの関係機関が一体となった施策を講じる必要がある。

このため、文部科学省では、平成22年6月に、各都道府県教育委員会等に対し、特別支援学校就労支援セミナー等労働関係機関等における種々の施策の積極的な活用を促すなど、厚生労働省と連携した取組を進めている。

また、特別支援学校と関係機関との連携による職業教育の改善に関する研究に取り組んでいる。

(2) 高等教育等への就学の支援

障害のある人がその能力・適性等に応じて高等教育へ進むための機会を拡充するためには、受験機会の確保、必要な施設・設備の整備等につき一層の充実を図ることが必要である。

大学入学者選抜については大学入試センター試験や各大学の個別試験において、点字・拡大文字による出題、筆跡を触って確認できるレーズライターによる解答、チェック解答、試験時間の延長、代筆解答の受験上の配慮がおこなわれている。また、平成25年度大学入試センター試験(平成25年1月実施)から、障害のある入学志願者が出願しやすいよう、希望者に対し、出願前に受験上の配慮の内容を通知することに取り組んでいる。

学校施設については、障害のある人の円滑な利用に配慮するため、従来よりスロープ、エレベーター、手すり、障害者用トイレ等の整備を進めるとともに、障害のある学生が快適な学生生活を送れるよう学習支援体制の充実・強化を図るため、各大学等において教育上の特別の配慮が行われている。

聴覚障害のある人及び視覚障害のある人のための高等教育機関である国立大学法人筑波技術大学は、障害を補償した教育を通じて、<1> 幅広い教養と専門的な職業能力を合わせもつ専門職業人、率先して社会に貢献できる人材の育成、<2> 障害教育カリキュラム及び障害補償システムの開発研究等を行っている。

テレビ・ラジオ放送等のメディアを効果的に活用して、遠隔教育を行っている放送大学では、昭和60年に開学して以来、自宅で授業を受けることができ、障害のある人を含め広く大学教育を受ける機会を国民に提供している。

なお、障害のある学生に対しては、放送授業の字幕放送化の推進や単位認定試験における点字出題や音声出題、試験時間の延長等を行っている。

障がいのある学生の修学支援に関する検討会報告(第一次まとめ)について

障害のある学生の修学支援について、平成20年5月に障害者の権利に関する条約が発効され、これまで、我が国においては、障害者基本法の改正(平成23年8月公布・施行)等の制度整備を行ってきましたが、各大学等においては、障害のある学生の在籍者数の急増に伴い、今まで以上に、受入れや修学支援体制の整備が急務となっています。

こうした状況を踏まえ、今後の高等教育段階における障害のある学生の修学支援の在り方等について検討を行うため、平成24年6月、高等教育局に「障がいのある学生の修学支援に関する検討会」(座長:竹田一則 筑波大学大学院人間総合科学研究科教授)を開催し、同年12月に第一次まとめとして報告を取りまとめたところです。 本報告においては、(1) 大学等における合理的配慮の対象範囲、(2) 合理的配慮の考え方、(3) 国、大学等及び独立行政法人等の関係機関が取り組むべき<1> 短期的課題、<2> 中・長期的課題などについて取りまとめを行い、最後に今後の取扱い・課題をあげています。

本報告を踏まえ、各大学等において障害のある学生の修学支援の充実が図られるとともに、全ての大学等において障害のある学生の修学機会が確保されることが期待されています。

参考:障がいのある学生の修学支援に関する検討会報告(第一次まとめ)について別ウィンドウで開きます

障がいのある学生の修学支援に関する検討会報告(第一次まとめ)概要

「平成24年度(2012年度)大学、短期大学及び高等専門学校における障害のある学生の修学支援に関する実態調査」結果の概要について

独立行政法人日本学生支援機構では、全国の大学、短期大学及び高等専門学校を対象に障害のある学生(以下、「障害学生」という。)の修学支援に関する実態調査を毎年実施している。

平成24年度では、障害学生数は11,768人(全学生数に対する割合0.37%)で前回調査より1,532人増加した。在籍学校数は前回調査より14校減って793校となり、回答校数1,197校の66.2%となっている。また、卒業者数は1,660人で、そのうち進学者は179人、就職者は831人となっている。(グラフ参照)

注: 障害学生…身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳及び療育手帳を有している学生又は健康診断等において障害があることが明らかになった学生。

調査概要及び回収状況

(1) 目的:障害学生の今後の修学支援に関する方策を検討する上で、全国の大学、短期大学及び高等専門学校における障害学生の状況及びその支援状況について把握し、障害学生の修学支援の充実に資する。

(2) 対象:大学(大学院、大学院大学及び専攻科を含む。)、短期大学(部)(大学内に短期大学部を有している場合を含む。専攻科を含む。)及び高等専門学校(専攻科を含む。)

(3) 調査方法:悉皆調査各学校が日本学生支援機構のウェブサイトより調査票をダウンロード。回答を記入後、メール添付にて提出。

(4) 調査期日:平成24年5月1日現在

(5) 回収状況:回答校数1,197校(前年度1,206校)(回収率99.9%(同100.0%))

「平成24年度(2012年度)大学、短期大学及び高等専門学校における障害のある学生の修学支援に関する実態調査」
(3) 地域における学習機会の提供

障害のある子どもの学校外活動や学校教育終了後における活動等を支援するためには、地域における学習機会の確保・充実を図るとともに、障害のある人が地域の人々と共に、地域における学習活動に参加しやすいように配慮を行う必要がある。

公民館や図書館、博物館といった社会教育施設については、それぞれの施設に関する望ましい基準を定めるなど、障害の有無にかかわらず、すべての人々にとって利用しやすい施設となるよう促している。

独立行政法人国立青少年教育振興機構では、体験活動が青少年の健全育成にとって重要な役割を果たしていることを踏まえ、障害の有無にかかわらず、より多くの青少年に体験活動の機会と場を提供できるよう、体験活動事業の実施や指導者養成、施設・設備の整備に取り組んでいる。

(4) 家庭への支援等

教育の機会均等の趣旨及び特別支援学校等への就学の特殊事情にかんがみ、保護者の経済的負担を軽減し、その就学を奨励するため、就学のため必要な諸経費のうち、教科用図書購入費、交通費、寄宿舎居住に伴う経費、修学旅行費等について、保護者の経済的負担能力に応じて、その全部又は一部を助成する特別支援教育就学奨励費が保護者に支給されている。

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