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第1章 障害者施策の新たな展開

第2節 障害者基本計画(第3次)策定

2.障害者基本計画策定の経緯

(1)初めての長期計画

障害者施策の総合的推進は、昭和45年(1970年)に成立した「心身障害者対策基本法」(平成5年に「障害者基本法」に改正)において示され、その後、国連が定めた1981(昭和56)年の「国際障害者年」を契機として、さらにその推進が図られることとなった。

国際障害者年は、その行動計画(昭和54(1979)年に国連で定められた。)において、各国に様々な取組を勧告したが、その一つが各国の国内長期計画の策定であった。

これらを受けて、我が国では、有識者や当事者による中央心身障害者対策協議会(現在の障害者政策委員会に相当)から昭和57(1982)年1月に意見具申された「国内長期行動計画の在り方」の主旨を踏まえ、同年3月、国際障害者年推進本部(本部長:内閣総理大臣)において「障害者対策に関する長期計画」が策定された。

この計画においては、啓発広報活動、保健医療、教育・育成、雇用・就業、福祉・生活環境の各分野にわたり、その後の我が国の障害者施策の方向と目標が示された。なお、同計画に係る施策その他障害者に関する施策の総合的、効果的な推進を図るため、総理府に昭和57年4月、障害者対策推進本部(本部長:内閣総理大臣)が設置された。(この本部は、後に障害者施策推進本部と改名され、さらに、障がい者制度改革推進本部に引き継がれている。)

(2)障害者基本法に基づく長期計画

平成5年に上記長期計画の後継計画として「障害者対策に関する新長期計画」(平成5年~14年)が、さらに平成14年には、平成5年に改正された障害者基本法(昭和45年法律第84号)に基づく障害者基本計画(第2次)(平成15年~24年)(以下「第2次計画」という。)が策定され、ノーマライゼーションとリハビリテーションの理念の下、国は障害者施策の総合的かつ効果的な推進に努めてきた。(平成5年の障害者基本法の改正により、「障害者対策に関する新長期計画」は同法に基づく障害者基本計画とみなすこととされており、平成14年に策定された基本計画は、障害者基本法に基づくものとしては第2次の計画となる。)

第2次計画においては、我が国が目指すべき社会を、障害の有無にかかわらず、国民誰もが相互に人格と個性を尊重し支え合う「共生社会」とすることを掲げ、各分野において着実な取組が進められてきた。この間、平成16年の発達障害者支援法(平成16年法律第167号)の制定、平成17年の障害者自立支援法(平成17年法律第123号)の制定、平成18年の改正教育基本法(平成18年法律第120号)及びバリアフリー法(高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律。平成18年法律第91号)の制定等、法令面でも進展が見られたところである。

(3)国際社会の動向

第2次計画の期間中、国際社会においては、平成18年に国連において、障害者の権利及び尊厳を保護し、促進するための包括的かつ総合的な国際条約である、障害者の権利に関する条約(以下「障害者権利条約」という。)が採択され、平成20年に発効した。

また、アジア太平洋地域においても、平成14年に滋賀県で開催された国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)ハイレベル政府間会合において採択された「びわこミレニアム・フレームワーク」に基づき、すべての人のための障壁のない、かつ権利に基づいた社会の実現に向けて、地域内の取組が進められてきており、平成24年11月には「アジア太平洋障害者の十年(2013-2022)」の行動計画である「アジア太平洋障害者の権利を実現する仁川(インチョン)戦略」が採択された。

(4)国内の動向

一方、国内においては、我が国は障害者の権利及び尊厳を保護及び促進する観点から、障害者権利条約の意義を認め、起草段階から積極的に参加し、平成19年の署名以降、同条約締結に向けた国内法の整備を進めてきた。

平成23年の障害者基本法の改正においては、日常生活又は社会生活において障害者が受ける制限は、社会の在り方との関係によって生ずるといういわゆる社会モデルに基づく障害者の概念や、障害者権利条約にいう「合理的配慮」の概念が盛り込まれるとともに、国内において障害者基本計画の実施状況を監視し、勧告を行う機関として障害者政策委員会が設置された。また、平成24年には、障害者総合支援法(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律。平成17年法律第123号)が制定された。さらに、平成25年、改正障害者基本法第4条の「差別の禁止」の基本原則を具体化し、障害を理由とする差別の解消を推進することを目的として、障害者差別解消法(障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律。平成25年法律第65号)が制定され、また、雇用の分野における差別の禁止を推進するため、障害者雇用促進法が改正された(障害者の雇用の促進等に関する法律。平成25年法律第46号)。

また、この間、障害者虐待防止法(障害者虐待の防止、障害者の養護者に対する支援等に関する法律。平成23年法律第79号)、障害者優先調達推進法(国等による障害者就労施設等からの物品等の調達の推進等に関する法律。平成24年法律第50号)、成年被後見人の選挙権の回復等のための公職選挙法等の一部を改正する法律(平成25年法律第21号)等が議員立法により制定されている。

これらの法制度整備等を踏まえ、政府は平成25年12月4日に障害者権利条約の締結について国会承認を得た。我が国は平成26年1月20日同条約を批准し、同条約は2月19日に我が国について発効した。

(5)障害者基本計画(第3次)の策定

第2次計画の期間の満了を迎えるに当たり、障害者政策委員会においては、以上のような国際社会の動向、これまでの国内における取組の進展等を踏まえ、平成24年7月以降、新たな障害者基本計画に関する調査審議を行ってきた。その結果、障害者政策委員会は、同年12月17日、「新『障害者基本計画』に関する障害者政策委員会の意見」を取りまとめ、これを内閣総理大臣に提出した。

これを受け、政府においては、障害者政策委員会の意見に示された考え方を踏まえて新たな障害者基本計画の原案を作成し、原案に対する障害者政策委員会の意見の聴取を行った。

政府は、障害者政策委員会の意見及びパブリックコメントにおいて寄せられた意見を踏まえ、障害者基本計画(第3次)(以下「第3次計画」という。)を策定(平成25年9月27日閣議決定)し、障害の有無にかかわらず、国民誰もが相互に人格と個性を尊重し支え合う共生社会の実現に向け、障害者の自立と社会参加の支援等のための施策の一層の推進を図るものとした。

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