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第4章 相互の理解と交流

第2節 我が国の国際的地位にふさわしい国際協力に係る施策

2.国際協力等の推進

(1)国際協力の基本的な方針

障害者施策は、福祉、保健・医療、教育、雇用等の広範な分野にわたっているが、我が国がこれらの分野で蓄積してきた技術・経験などを政府開発援助(ODA)などを通じて開発途上国の障害者施策に役立てることは、極めて有効であり、かつ、重要である。協力を行うに当たり、対象国の実態や要請内容を十分把握し、その国の文化を尊重しながら要請に柔軟に対応することが大切である。このため、我が国は、密接な政策対話を通じ、対象国と我が国の双方が納得いく協力を行うよう努めている。また、草の根・人間の安全保障無償資金協力、日本NGO連携無償資金協力等の活用を通じたNGOとの連携、青年海外協力隊の派遣など開発途上国の草の根レベルに直接届く協力も行っており、現地の様々なニーズにきめ細かく対応している。

(2)有償資金協力

有償資金協力では、鉄道建設、空港建設等においてバリアフリー化を図った設計を行う等、障害のある人の利用に配慮した協力を行っている。平成26年度においては、インドにおいて1件の障害者配慮に関連した事業計画への援助を決定した。

(3)無償資金協力

無償資金協力においても、障害のある人の利用に配慮した協力を行うとともに、障害のある人のためのリハビリテーション施設や職業訓練施設の整備、移動用ミニバスの供与等、毎年多くの協力を行っている。平成26年度においては、草の根・人間の安全保障無償資金協力により46件の障害者関連援助を、NGO・教育機関・地方公共団体等に対し実施した。また、平成26年度には日本NGO連携無償資金協力により、9件の障害者支援関連事業を実施した。

(4)技術協力

技術協力の分野では、開発途上国の障害のある人の社会参加と権利の実現に向けて、独立行政法人国際協力機構(JICA)を通じて、障害のある人を対象とした取組に加え、開発プロセスのあらゆる分野において障害のある人の参加を支援するために、研修員の受入れや専門家及びJICAボランティアの派遣など幅広い協力を行っている。平成26年度には「障害者リーダーシップ育成とネットワーキング」をはじめ12の研修コースを本邦において実施し、研修員95人を受け入れたほか、専門家16人、言語聴覚士・理学療法士・作業療法士等のJICAボランティア121人の派遣などを行った。また、NGOや大学等をはじめとする市民団体の発意に基づく事業を実施するJICA草の根技術協力事業を活用し、平成26年度には13件の障害と開発関連事業を実施した。

技術協力プロジェクトでは、マレーシア「障害者の社会参加支援サービスプロジェクト(フェーズ2)」を平成24年度より開始し、援助付き雇用の一環であるジョブ・コーチ制度の持続的な実施体制の確立を支援している。同プロジェクトは、平成21年度より3年間実施された「障害者の社会参加支援サービスプロジェクト」を通じて確立されたジョブ・コーチサービスの全国展開を目指しており、既に様々な現地・日系企業において多くの障害のある人がジョブ・コーチによる支援を受けて就労するなど成果を挙げている。併せて、プロジェクトでは障害のある人の社会参加の促進を目的とする人権啓発活動の一環として障害平等研修にも取り組んでいる。同研修では、障害のある人自身が講師となる点が特徴であり、公的機関・民間企業・教育機関などで幅広く実施され、人事研修に組み込まれるなど高い評価を得ている。

また、平成26年3月には、コロンビアにおいて「障害のある紛争被害者のソーシャルインクルージョンプロジェクト」を開始した。同プロジェクトでは、まずは実態把握のための調査を行った上で、障害のある紛争被害者をはじめとする、対象地域に住む全ての障害のある人の社会復帰・社会参加を促進するための活動を行っていく予定である。また、同プロジェクトでは、初めて長期専門家として障害のある人を派遣しており、当事者中心で活動を進めていく重要性を伝えることやロールモデルとなることも期待されている。

さらに、障害のある人の社会参加促進に向けて相手方政府の行政官の能力強化を支援するべく、アドバイザー型専門家がパキスタン、南アフリカ共和国及びルワンダにおいて活動中である。

(5)国際機関等を通じた協力

援助対象国に対する直接的援助のほか、我が国では国連等国際機関を通じた協力も行っている。昭和63年度から国連障害者基金に対して継続的な拠出を行っており、平成26年度には約1万ドルを拠出した。さらに、アジア太平洋地域への協力としては、国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)に対し、日本エスカップ協力基金(JECF)を通じた活動支援を実施しており、平成26年4月には、障害者が主体的に参加する防災に関するアジア太平洋地域会合が日本の支援により仙台市で開催され、多くの障害のある人が発言し、障害のある人中心の会合を実現した。

■ 図表4-2 技術協力の状況(平成26年度)
(1) 本邦研修
2014年度実施研修員受入れコース 95
地域活動としての知的障害者支援 11
障害者リーダーシップ育成とネットワーキング 7
地域に根ざした就労支援による障害者の経済的エンパワメント(A) 1
地域に根ざした就労支援による障害者の経済的エンパワメント(B) 11
地域に根ざした就労支援による障害者の経済的エンパワメント(C) 11
中央アジア地域 障害者のメインストリーミング及びエンパワメント促進 8
アフリカ地域 障害者の自立生活とメインストリーミング 10
ヨルダン 地域に根ざした就労支援による障害者の経済的エンパワメント(A) 6
ヨルダン アクセシビリティ改善 9
パキスタン 障害者社会参加促進ハリプール県行政官能力強化 14
青年研修パキスタン 障がい者支援制度コース 7
(注)課題別研修/国別研修/青年研修の受入人数
(2) ボランティア
121
青年海外協力隊 107
内訳 障害児・者支援 39
理学療法士 41
作業療法士 16
鍼灸マッサージ師 1
ソーシャルワーカー 7
言語聴覚士 1
シニア海外ボランティア 12
内訳 障害児・者支援 9
理学療法士 1
ソーシャルワーカー 1
言語聴覚士 1
日系社会青年ボランティア 2
内訳 ソーシャルワーカー 2
(注)障害児・者支援、養護、理学療法士、作業療法士、鍼灸マッサージ師、ソーシャルワーカー、義肢装具士、言語聴覚士の8職種を障害者支援関連職種とし、新規派遣人数を計上。
(3) 技術協力プロジェクト事業
技術協力プロジェクト 専門家派遣(人) 研修員受入(人) 機材供与(百万円)
事業名
アフガニスタン
教師教育における特別支援教育強化プロジェクト(フェーズ2)
0 18 0
コロンビア
障害のある紛争被害者のソーシャルインクルージョンプロジェクト
3 0 0
マレーシア
障害者の社会参加支援サービスプロジェクト (フェーズ2)
2 7 0
ミャンマー
社会福祉行政官育成プロジェクト(フェーズ2)
1 0 0
パキスタン(個別長期専門家)
障害者社会参加促進アドバイザー
1 0 0
南アフリカ(個別長期専門家)
障害主流化促進アドバイザー
1 0 0
ヨルダン(個別長期専門家)
障害問題アドバイザー
1 0 0
ルワンダ(個別長期専門家)
障害分野アドボカシー及び調整促進アドバイザー
1 0 0
ヨルダン(個別長期専門家)
障害者のアクセシビリティ改善のためのアドバイザー
6 0 0
※前年度からの継続による専門家派遣・研修員受入人数を含む。専門家派遣については第三国人材の派遣及びコンサルタント契約による専門家人数を除く。また、研修員受け入れについては協力相手国内もしくは第三国で実施された研修コース分を除く。
資料:外務省
(4) 草の根技術協力事業(平成26年度障害者支援関連事業)
対象国 案件名
インド インド共和国における視覚障害者の職業教育支援事業
ブータン ソーシャルインクルージョンによる障がい者支援プロジェクト
ブラジル PIPA自閉症児療育学級への支援を通じた自閉症児療育プロジェクト
ブラジル ブラジルにおける障がい者インクルージョンのための園芸療法
ルワンダ キガリ市に居住する障害者へのパソコン講習を通じた収入創出事業
コスタリカ コスタリカ自立生活推進プロジェクト
パキスタン パキスタンラホール市における電動車いす活用による重度障害者の自立生活推進事業
ペルー 障害者自立支援事業(フェイズ2)
南アフリカ共和国 障害者地域自立生活センター設立に向けた人材育成
ラオス ラオス障害者スポーツ振興プロジェクト
ラオス ラオスにおける障がい者の小規模起業支援事業
カンボジア 障がい者雇用を前提としたビジネスモデル構築事業
ベトナム ベトナムでの足こぎ車いすを利用したリハビリモデル開発及び、リハビリ人材育成プロジェクト
■ 図表4-3 日本NGO連携無償資金協力(平成26年度障害者支援関連事業)
(単位:円)
実施国/地域 契約額 事業名
カンボジア 26,275,942 カンダール州における障がい児のためのインクルーシブ教育推進事業
カンボジア  2,487,152 リハビリテーションセンター等に対する障害児用中古車椅子供与による福祉政策向上への支援
ラオス 20,051,258 ラオスにおける持続可能な障害者技能指導員養成と企業によるサポートの促進
タジキスタン 35,040,280 ドゥシャンベ市における障がい児のためのインクルーシブ教育推進事業(フェーズ2)
ベトナム 9,971,406 ドンナイ省、ラムドン省小学校のインクルージョン教育研修システムの構築事業
パレスチナ自治区 43,394,114 聴覚障害の早期発見と支援事業
パレスチナ自治区 22,870,757 ガザ地区における聴力障がい児童及び危険地帯居住児童に対する心理社会的ケア事業(第2年次)
ペルー  3,907,564 ペルー共和国に対する障碍児用中古車椅子贈与計画
ハイチ 37,477,987 カルフール地区における障がい児の就学支援事業
資料:外務省

第3回国連防災世界会議における障害のある人に関する取組

2015年3月14~18日、宮城県仙台市おいて、187か国の国連加盟国の代表、国際機関代表、認証NGO等、約6,500人以上(25名の首脳級含む100名以上の閣僚、国連事務総長、UNDP、世界銀行総裁等)の参加を得て、第3回国連防災世界会議が開催された。

本体会議では、山谷内閣府特命担当大臣(防災)が議長を務め、全体会合、ハイレベル・マルチステークホルダー・パートナーシップ・ダイアログ、閣僚級ラウンドテーブル、ワーキングセッション等が実施され、成果文書として、第2回国連防災世界会議で採択された「兵庫行動枠組2005-2015」の後継枠組となる、「仙台防災枠組2015-2030」及び同枠組の推進を決意した「仙台宣言」が採択された。

また、関連事業として、防災や復興に関するシンポジウム、展示、防災産業展、被災地へのスタディツアー、東北各地へのエクスカーションが実施された。

日本政府は、国連、仙台市とともに、日本財団の支援を得て、本世界会議を「アクセシブル・カンファレンス(障害のある人も苦労することなく会議に参加できる会議)」とすることを目指して、様々な取組を行った。

具体的な取組としては、施設のバリアフリー化、各セッションにおける日本語及び国際手話通訳、スクリーンへの日本語と英語字幕の表示、福祉車両や福祉バスの提供等を実施した。これらの取組により、本世界会議には約200名以上の障害のある人が参加し、関係者からは、今後の国連会議のスタンダードとすべきとの賞賛の声があるなど高い評価が得られた。

また、障害のある人に関する会議以外の一般的な国連の会議においては、これまで障害者グループの代表にステートメントの機会がなかったが、今回初めて全体会合において発言機会が確保され、全盲のタイの国会議員であるモンティアン・ブンタン氏がステートメントを行った。ブンタン議員は、各国が取り組む防災の行動枠組が障害のある人を含めインクルーシブなものであること、障害のある人にも平等なアクセスの保障や、障害のある人の防災政策への積極的関与の重要性に関する主張がなされた。

さらに、本体会議におけるワーキングセッションでは、「障害のある人の積極的参加−あらゆる主体の参加」をテーマに議論がなされたほか、関連事業においても障害のある人をテーマにしたシンポジウム等が開催された。

会議最終日に採択された「仙台防災枠組」においても、障害のある人の重要性について明記され、今後の防災における障害のある人の取組を推進する上で、大きな成果が得られた会議となった。

全体会合におけるブンタン氏のステートメント
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