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第5章 日々の暮らしの基盤づくり 第1節 6

第1節 生活安定のための施策

6.福祉用具の研究開発・普及促進と利用支援

(1)福祉用具の普及

福祉用具の公的給付としては、補装具費の支給と日常生活用具の給付(貸与)がある。

補装具費の支給は、身体に障害のある人の日常生活や社会生活の向上を図るために、身体機能を補完又は代替するものとして、義肢、装具、車椅子、盲人安全つえ、補聴器等の補装具の購入又は修理に要した費用の一部について公費を支給するものである。

日常生活用具の給付(貸与)は、日常生活を営むのに著しく支障のある障害のある人に対して、日常生活の便宜を図るため、特殊寝台、特殊マット、入浴補助用具等を給付又は貸与するものであり、地域生活支援事業の一事業として位置付けられ、実施主体である市町村が地域の障害のある人のニーズを勘案の上、柔軟な運用が可能となった。

平成25年度から、「障害者総合支援法」の対象となる難病患者等も、補装具費や日常生活用具給付等事業の対象となった。

なお、身体に障害のある人の使用に供するための特殊な性状、構造又は機能を有する一定の物品の譲渡等については、消費税は非課税とされている。

(2)情報・相談体制の充実

福祉用具の情報については、公益財団法人テクノエイド協会において、福祉用具の製造・販売企業の情報や福祉用具の個別情報にかかるデータベース(福祉用具情報システム:TAIS)を構築しており、インターネットを通じてこれらの情報を提供している。

■ 図表5-15 福祉用具JISの制定・改正・廃止状況
施策年度 施策内容
平成16年度 介護保険法対象品目についてのJIS化調査開始
平成17年度 在宅用電動介護用ベッド(JIS T9254)【制定】
平成18年度 手動車いす(JIS T9201)【改正】
電動車いす(JIS T9203)【改正】
平成19年度 電動立上り補助いす(JIS T9255)【制定】
家庭用段差解消機(JIS T9252)【改正】
平成20年度 移動・移乗支援用リフト関係5規格(JIS T9241-1~5)【制定】
車いす用可搬形スロープ(JIS T9207)【制定】
在宅用電動介護用ベッド(JIS T9254)【改正】
平成21年度 入浴用製品3規格(JIS T9257~59)【制定】
ハンドル形電動車いす(JIS T9208)【制定】
平成22年度 福祉用具―ポータブルトイレ(JIS T9261)【制定】
福祉用具―和式洋式変換便座(JIS T9262)【制定】
福祉関連機器用語[支援機器部門](JIS T0102)【改正】
平成23年度 福祉用具―歩行補助具―歩行器(JIS T9264)【制定】
福祉用具―歩行補助具―エルボークラッチ(JIS T9266)【制定】
平成24年度 福祉用具―歩行補助具―歩行車(JIS T9265)【制定】
福祉用具―補高便座(JIS T9268)【制定】
福祉用具―ベッド用テーブル(JIS T9269)【制定】
平成27年度 福祉関連機器用語[義肢・装具部門] (JIS T0101)【改正】
車いす用可搬形スロープ (JIS T9207)【改正】
移動・移乗支援用リフト2規格 (JIS T9241-1,4)【廃止】
移動・移乗支援用リフト3規格(JIS T9241-2,3,5)【改正】
移動・移乗支援用リフト2規格 (JIS T9241-6,7)【制定】
福祉用具―車いすクッション (JIS T9271)【制定】
福祉用具―車いす用テーブル (JIS T9272)【制定】
福祉用具―体位変換用具 (JIS T9275)【制定】
在宅用電動介護用ベッド(JIS T9254)【改正】

資料:経済産業省

(3)研究開発の推進

少子高齢化が進展する中、福祉用具に対するニーズは高まっており、利用者への十分な選択肢の提供や費用対効果等がより重要な課題となっている。このため、研究開発の推進、標準化や評価基盤の整備等、産業の基盤整備を進め、福祉用具産業の健全な発展を支援することを通じて、良質で安価な福祉用具の供給による利用者の利便性の向上を図っている。身体に障害のある人が使用する福祉機器の開発普及等については、真に役立つ福祉機器の開発・普及に繋がるよう、公益財団法人テクノエイド協会に委託して、「福祉用具ニーズ情報収集・提供システム」を運用し、福祉機器のニーズと技術のシーズの適切な情報連携に努めている。

また、平成22年度より「障害者自立支援機器等開発促進事業」の下、障害当事者側の要望を反映したテーマ募集を行い、各種専門職による評価体制と障害当事者の試験評価を組み込み、試作機器等を実用的製品化するための開発費用の助成を行っている。

さらに、平成26年度より、個別具体的な障害者のニーズを的確に反映した機器開発をスタートさせる機会を設けるとともに、開発中の機器について、実証実験の場を紹介すること等により、適切な価格で障害者が使いやすい機器の製品化・普及を図ることを目的として、「シーズ・ニーズマッチング強化事業」を実施している。

国立障害者リハビリテーションセンター研究所において、「障害者の自立と社会参加ならびに生活の質の向上」を目的としたリハビリテーション支援システム、支援技術、福祉機器に関する研究開発及び評価法の研究開発を行っている。脳から信号を取り出し、それを利用してコミュニケーションや運動の補助などを行うブレインマシン・インターフェース(BMI)技術を用いた障害のある人の自立支援機器等を開発し、これらを基に臨床評価研究を行うなど研究を推進している。

平成22年度から、福祉機器の利活用のあり方に関する研究(障害者対策総合研究事業)を行い、機器開発から普及に至るまでの新たな仕組みの検討を行うとともに、新たな研究領域として、軽度認知症者の自立を支援する福祉機器の研究開発(認知症対策総合研究事業)を行っている。

平成5年度より「福祉用具の研究開発及び普及の促進に関する法律」に基づいて、福祉用具の実用化開発事業を推進している。本事業では、高齢者や障害のある人、介護者の生活の質の向上を目的として優れた技術や創意工夫のある福祉用具の実用化開発を行う民間企業等に対し、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)を通じて研究開発費用の助成を行っている。制度発足以来、平成27年度までに219件のテーマを採択している。

障害のある人を含め誰にとっても、より安心・安全で、また識別・操作等もしやすく、快適な生活用品、生活基盤、システム等の開発を支援する観点から、個々の人間のレベルでの様々な行動を計測し、理解・蓄積することにより、人間と製品・環境の適合性を客観的に解析し、個々の人間の行動特性に製品・環境を適合させる基盤技術の研究開発を実施している。

また、「新健康フロンティア戦略」においては、障害のある人の社会参加を容易にする技術や身体機能の補完・強化技術等の開発を進めることとしている。

(4)標準化の推進

より優れた福祉用具の開発・普及を推進するためには、安全性を含めた品質向上、互換性の確保による生産の合理化、購入者への適切な情報提供に資する観点から、客観的な評価方法・基準の策定と標準化が不可欠である。このため、図表5-16のとおり平成16年度から平成27年度までに日本工業規格(JIS)を活用した福祉用具の標準化を推進した。これにより、介護保険対象の主要な品目についてはおおむね標準化が進んでいる。

一方、高齢者や障害のある人にも使いやすい設計とするためのアクセシブルデザインについて、様々な分野で関心が高まっており、これに関連するJISの作成も進めている。平成27年度までに、JIS Z8071(高齢者及び障害のある人々のニーズに対応した規格作成配慮指針)を含めて37規格を制定しアクセシブルデザインに関する横断的な評価基準等の作成に向けた検討を行っている。また、Z8071の対応国際規格であるISO/IEC ガイド71が平成26年12月に改正されたことを受け、これを反映するべくJIS Z8071の改正作業を進めている。平成26年5月には、 JIS S0021(包装-アクセシブルデザイン-一般要求事項)を改正し、既存の規定である「ぎざぎざ状の触覚記号」による洗髪料(シャンプー)の容器の識別に加え、「一直線状の触覚記号」による身体用洗浄料(ボディソープ)の容器の識別を規定し、製品への普及が始まっている。

さらに、国際規格作成への貢献も積極的に行っており、国際標準化機構(ISO)の福祉用具技術委員会(ISO/TC173)、義肢装具技術委員会(ISO/TC168)、人間工学技術委員会(ISO/TC159)及び包装技術委員会(ISO/TC122)での活動に参加し、ISO/TC173/SC2(用語と分類)では幹事国を、TC173/SC7(アクセシブルデザイン)では議長国及び幹事国を担っている。これらの委員会への日中韓3か国による規格案の共同提案を行い、これまでに10規格が国際規格として発行されている。引き続き、手すり、座位変換形車いす等について、次の提案に向けて3か国での意見調整、規格原案検討を進めている。

アクセシブルデザインについては、平成26年度に、ISO 17069(アクセシブルデザイン-アクセシブル会議の留意事項及び支援製品)と、ISO 24504(人間工学-アクセシブルデザイン-製品及び構内放送設備の音声放送の音圧レベル)が、また平成27年度にはISO 19026(アクセシブルデザイン-公共トイレの壁面の洗浄ボタン、呼出しボタンの形状及び色並びに紙巻器を含めた配置)、 ISO 19027(絵記号を使用したコミュニケーション支援用ボードのためのデザイン原則)と、ISO 19029(アクセシブルデザイン-公共施設における聴覚的誘導信号)が、いずれも日本からの提案で新たに発行された。

■ 図表5-16 『ISO/IECガイド71』に示された7つの分野の考慮事項(マトリックス)
機能・能力区分
配慮領域
感覚能力 身体能力 認知能力 アレルギー
見る、聞く、触る、嗅ぐなど 移動、握力、話すなど 判断、記憶など 接触、食べ物など
老眼・難聴、痺れなど 歩行困難、言語障害など 知的障害、自閉症など
情報 色、文字の大きさ、コントラスト、形状など 位置、レイアウト 絵記号など
包装 色、文字の大きさ、コントラスト、形状など 扱いやすさ、表面材質など 図記号、絵記号 成分表示、表面材質、素材など
素材(材質) 色、コントラスト、形状、表面材質、音響など 扱いやすさ、表面材質など 色、コントラスト、形状など 成分表示、表面材質、素材など
取付け 照明、扱いやすさ、道理に合った手順など 扱いやすさ、表面材質など 色、形状、道理に合った手順 成分表示、表面材質、素材など
ユーザーインタフェース 色、文字の大きさ、レイアウト、扱いやすさ 位置、レイアウト、扱いやすさなど 図記号、絵記号、わかりやすさ アレルギー性や毒性のない材質など
保守・保管・廃棄 扱いやすさ、道理に合った手順など 扱いやすさ 図記号、絵記号、道理に合った手順 アレルギー性や毒性のない材質など
構築環境(建物等) 照明、アクセスルート、音量など 位置、レイアウト、表面材質など 図記号、絵記号、わかりやすい言葉 アレルギー性や毒性のない材質など

資料:経済産業省(注:ISO/IECガイド71の改正を踏まえ、今後対応するJISの改正を進める予定。本図表においても今後改正する予定。)

課題解決型福祉用具実用化開発支援事業

〈平成27年度新規採択テーマ〉

  1. <1> 視覚支援用網膜投影アイウェアの開発
  2. <2> ハンズフリー型ウェアラブル電気式人工喉頭の開発
  3. <3> 軽量で走破性に優れる電動車椅子の前輪とモーターの開発
1.視覚支援用網膜投影アイウェア 2.ハンズフリー型ウェアラブル電気式人工喉頭 3.軽量化を実施するオムニホイール
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