第3編 障害者施策の実施状況 第2章
第2章 社会参加へ向けた自立の基盤づくり
1.障害のある子供の教育・育成に関する施策
障害のある子供の能力や可能性を最大限に伸ばし、自立し社会参加するために必要な力を養うため、一人一人のニーズに応じた、きめ細かな教育を行う必要がある。このため、特別支援学校や小・中学校の特別支援学級においては、特別の教育課程や少人数の学級編制の下、特別な配慮により作成された教科書、専門的な知識・経験のある教職員、障害に配慮した施設・設備等を活用して指導が行われている。また、通常の学級においては、通級による指導のほか、習熟度別指導や少人数指導などの障害に配慮した指導方法、支援員の活用など一人一人の教育的ニーズに応じた教育が行われている。
平成28年5月1日現在、特別支援学校及び小・中学校の特別支援学級の在籍者並びに通級による指導を受けている幼児児童生徒の総数は約45万人、このうち義務教育段階の児童生徒は約38万7千人であり、これは同じ年齢段階にある児童生徒全体の約3.9%に当たる。
【主な施策等】
<特別支援教育の推進>
- (1) 文部科学省では、障害のある児童生徒が使用する教科用特定図書等の普及を図るため、できるだけ多くの弱視の児童生徒に対応できるよう標準的な規格を定めるなど、教科書発行者による拡大教科書の発行を促しており、平成28年度に使用された、小・中学校の学習指導要領に基づく検定教科書に対応した標準規格の拡大教科書は、ほぼ全点発行されている。
また、教科書発行者が発行する拡大教科書では学習が困難な児童生徒のために、一人一人のニーズに応じた拡大教科書などを製作するボランティア団体などに対して、教科書デジタルデータの提供を行っている。この他、通常の検定教科書において一般的に使用される文字や図形等を認識することが困難な発達障害等のある児童生徒に対しては、教科書の文字を音声で読み上げるとともに、読み上げ箇所がハイライトで表示されるマルチメディアデイジー教材等の音声教材がボランティア団体等により製作されており、文部科学省において必要な調査研究等を行うなど、その普及推進に努めている。 - (2) 障害のある児童生徒の情報活用能力を育成するとともに、障害を補完し、学習を支援する補助手段として、情報通信技術(ICT)などの活用を進めることが重要であるため、文部科学省では、平成26年度より、「先導的な教育体制構築事業」において、クラウド等の最先端の情報通信技術を活用し、学校間、学校・家庭が連携した先導的な教育体制を構築するための実証研究を、特別支援学校も含めて行っている。
- (3) 独立行政法人国立特別支援教育総合研究所において、障害のある子供の教育に関する実際的・総合的な研究活動を行うとともに、それを核として、研修事業や情報収集・発信、理解啓発活動等を一体的に実施するなど、幅広い事業や活動を展開。
<地域・学校における支援体制の整備>
- (4) 平成28年6月に発達障害者支援法の一部改正が公布され(同年8月施行)、発達障害児がその年齢・能力に応じ、かつその特性を踏まえた十分な教育を受けられるよう、可能な限り発達障害児が発達障害児でない児童と共に教育を受けられるよう配慮することや、支援体制の整備として個別の教育支援計画・個別の指導計画の作成推進、いじめの防止等のための対策の推進等が規定された。
- (5) 発達障害のある子供への支援は、教育、医療、福祉、保健、労働関係機関等の連携が重要であることに鑑み、文部科学省と厚生労働省の両省主催で「発達障害者支援関係報告会」を毎年開催。
- (6) 幼稚園から高等学校段階までの校内支援体制整備として、文部科学省では、特別支援教育の体制整備を推進するため、関係機関との連携、学校への巡回相談や専門家チームによる支援、研修体制の整備・実施等の経費の一部を補助し、特別支援教育の充実を図っている。また、公立幼稚園、小・中学校及び高等学校に在籍する障害のある子供をサポートする「特別支援教育支援員」の配置に係る経費が各市町村に対して地方財政措置されている。
- (7) 文部科学省では、発達障害を含め、障害のある幼児児童生徒への特別支援教育を推進するため、キャリア教育・就労支援等の充実、発達障害の可能性のある児童生徒に対する支援、教職員の専門性向上、学習上の支援機器等教材の開発・普及等に関する事業を行っている。
<障害児保育の推進>
- (8) 平成27年度より施行した子ども・子育て支援新制度は、①障害のある児童等の特別な支援が必要な子供を受け入れ、地域関係機関との連携や、相談対応等を行う場合に、地域の療育支援を補助する者を保育所、幼稚園、認定こども園に配置、②新設された地域型保育事業について、障害のある児童を受け入れた場合に特別な支援が必要な児童2人に対し保育士1人の配置を行うこととしている。
<放課後児童クラブにおける障害のある児童の受入推進>
- (9) 共働き家庭など留守家庭の小学生に対して、放課後等に適切な遊びや生活の場を与える放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)は、療育手帳や身体障害者手帳を所持する児童に限らず、これらの児童と同等の障害を有していると認められる児童も含めて可能な限り障害児の受入れに努めている。
障害児の受入れを行っている放課後児童クラブは、年々、着実に増加しており、平成28年5月現在で、全23,619クラブのうち約55%に当たる12,926クラブにおいて、33,058人を受け入れている状況である。
また、障害児を受け入れるに当たっては、個々の障害の程度等に応じた適切な対応が必要なことから、障害児を1人以上受け入れている放課後児童クラブに専門的知識等を有する職員を配置するために必要な経費を補助している
加えて、平成27年度からは、消費税財源を活用して、障害児5人以上の受入れを行う場合について、更に1名の専門的知識等を有する職員を配置するために必要な経費の上乗せ補助を行っており、放課後児童クラブの利用を希望する障害児が放課後児童クラブを適切に利用できるよう支援している。
<特別支援学校における教育支援体制の整備>
- (10) 特別支援学校の学習指導要領等においては、障害の重度・重複化等に応じた弾力的な教育課程が編成できるよう、障害の状態により特に必要がある場合には、各教科の目標及び内容の一部を取り扱わないこととしたり、自立活動を主として指導を行ったりすることができることなど、様々な配慮事項を規定している。また、一人一人の障害の実態に応じた指導を充実するため、個々の児童生徒の実態を的確に把握し、個別の指導計画や個別の教育支援計画を作成することとしている。
障害のため通学して教育を受けることが困難な幼児児童生徒に対しては、教員を家庭、児童福祉施設や医療機関等に派遣して教育(訪問教育)を行っている。平成28年5月1日現在、小学部1,294人、中学部742人、高等部841人の児童生徒が、この訪問教育を受けている。 - (11) 特別支援学校の児童生徒にとっては、特別な配慮の下に作成された教科書が必要となる。文部科学省では、従来から、文部科学省著作の教科書として、視覚障害者用の点字版の教科書、聴覚障害者用の国語(小学部は言語指導、中学部は言語)及び音楽の教科書、知的障害者用の国語、算数(数学)及び音楽の教科書を作成している。なお、特別支援学校及び特別支援学級においては、検定教科書又は文部科学省著作の教科書以外の図書(いわゆる「一般図書」)を教科書として使用することができる。
<学級編制及び教職員定数>
- (12) 公立の特別支援学校及び小・中学校の特別支援学級においては、障害の状態や能力・適性等が多様な児童生徒が在籍し、一人一人に応じた指導や配慮が特に必要であるため、「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律」(昭和33年法律第116号)(以下「義務標準法」という。)に基づき、学級編制や教職員定数について特別の配慮がなされている。
① 学級編制
1学級の児童生徒数の標準については、数次の改善を経て、現在、公立特別支援学校では、小・中学部6人、高等部8人(いわゆる重複障害学級にあってはいずれも3人)、公立小・中学校の特別支援学級では8人となっている。
② 教職員定数
公立の特別支援学校における児童生徒数が増加していることや障害が重度・重複化していることに鑑み、大規模校における教頭あるいは養護教諭等の複数配置や、教育相談担当・生徒指導担当・進路指導担当及び自立活動担当教員の配置が可能な定数措置を講じている。
また、平成29年3月の義務標準法の一部改正により、平成29年度から、公立小・中学校におけるいわゆる通級指導など特別な指導への対応のため、10年間で対象児童生徒数に応じた定数措置(基礎定数化)を行うこととしている。
<教職員の専門性の確保>
- (13) 特別支援教育担当教員の養成は、現在、主として大学の特別支援教育関係の課程等において行われている。また、幼稚園、小学校・中学校及び高等学校の教員養成においても、教職に関する科目において、「障害のある幼児、児童及び生徒の心身の発達及び学習の過程」について取り扱うこととしているほか、特別支援教育について学ぶ科目を開設している大学もある。
また、教員免許更新制における免許状更新講習においても、必修領域の事項の一つである「子どもの発達に関する脳科学、心理学等における最新の知見(特別支援教育に関するものを含む。)」の中で特別支援教育に関する内容を扱うことが規定されている。
<特別支援教育の関係機関等>
- (14) 国立特別支援教育総合研究所は、インターネットを通じて、通常の学級の教員を含め障害のある児童生徒等の教育に携わる幅広い教員の資質向上の取組を支援するための研修講義の配信や特別支援学校教員の免許状保有率の向上に資する免許法認定通信教育を実施している。
また、全ての学校をはじめとする関係者に必要かつ有益な情報を提供するため、インターネットを活用し、発達障害に関する情報提供等を行う「発達障害教育情報センター」、合理的配慮の実践事例の掲載等を行う「インクルーシブ教育システム構築支援データベース」及び支援機器等教材活用に関する様々な情報を集約した「特別支援教育教材ポータルサイト」などにより情報発信を行っている。
<特別支援学校と関係機関等の連携・協力による就労支援>
- (15) 障害者の就労を促進するためには、教育、福祉、医療、労働などの関係機関が一体となった施策を講じる必要があるため、文部科学省では、厚生労働省と連携し、各都道府県教育委員会等に対し、就労支援セミナーや障害者職場実習推進事業等の労働関係機関等における種々の施策を積極的に活用することや、福祉関係機関と連携の下で就労への円滑な移行を図ることなど障害のある生徒の就労を支援するための取組の充実を促している。また、特別支援学校高等部や高等学校等において、労働等の関係機関と連携し障害のある生徒の就労支援を行う就労支援コーディネーターの配置など福祉や労働等の関係機関と連携しながらキャリア教育・就労支援を充実するための研究に取り組んでいる。
<高等教育等への修学の支援>
- (16) 障害のある人が障害を理由に高等教育への進学を断念することがないよう、修学機会を確保することが重要である。大学入試センター試験や各大学の個別試験において、点字・拡大文字による出題、筆跡を触って確認できるレーズライター(ビニール製の作図用紙の表面にボールペンで描いた図形や文字がそのままの形で浮き上がるため、描きながら解答者が筆跡を触って確認できる器具)による解答、文字解答・チェック解答(専用の解答用紙に選択肢の数字等を記入・チェックする解答方式)、試験時間の延長、代筆解答の受験上の配慮を実施している。また、平成28年度大学入試センター試験(平成28年1月実施)から、障害のある入学志願者によりきめ細やかに配慮する観点から、拡大文字問題冊子について、14ポイント版に加え、22ポイント版も作成した。
<施設のバリアフリー化の促進>
- (17) 学校施設の整備については、障害のある幼児児童生徒が支障なく学校生活を送るために障害の種類や程度に応じたきめ細かな配慮を行うよう、文部科学省では、学校種ごとの学校施設整備指針において、施設の計画・設計上の留意点を示している。このほか、学校施設のバリアフリー化に関する基本的な考え方や計画・設計上の留意点を示した「学校施設バリアフリー化推進指針」を策定するとともに、具体的な取組を事例集として取りまとめている。
さらに、公立学校施設におけるバリアフリー化の取組に対する支援の一つとして、エレベーターやスロープなどのバリアフリー化に関する施設整備について国庫補助を行っている。
また、私立の特別支援学校並びに小・中学校の特別支援学級において、障害に適応した教育を実施する上で必要とする設備の整備を学校法人が行う場合に、国がその一部を補助している。補助対象となる設備には、立体コピー設備、FM等補聴設備、VOCA(音声表出コミュニケーション支援装置)、携帯用防犯ベル、スクールバスなどがある。
2.雇用・就労の促進施策
障害のある人の就労意欲が高まっている中で、障害のある人の就労を通じた社会参加を実現し、障害のある人が地域社会で、自立していきいきと暮らせるよう、障害者雇用対策の一層の充実を図っていく必要がある。また、障害者施策の基本理念である、すべての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現のためには、職業を通じた社会参加が重要である。この考え方の下に障害者雇用対策の各施策を推進している。
【主な施策等】
<障害者雇用の現状>
- (1) 現在、身体に障害のある人又は知的障害のある人を1人以上雇用する義務がある民間企業(常用雇用労働者数50人以上)については、毎年6月1日時点の障害者雇用の状況を報告することになっている。平成28年の報告結果は次のとおり。
平成28年6月1日現在、障害のある人の雇用状況は、障害のある人の雇用者数が13年連続で過去最高を更新し、474,374.0人(前年同日453,133.5人)となるなど、一層進展している。障害者である労働者の実数は386,606人(前年同日366,353人)となった。
また、民間企業が雇用している障害のある人の割合は1.92%(前年同日1.88%)。法定雇用率を達成した企業の割合は、48.8%と依然として半数に満たない状況であった。なお、雇用されている障害のある人の数については、すべての企業規模で前年の報告より増加した。
国・地方公共団体の状況として、国の機関(法定雇用率2.3%)に在職している障害のある人の割合、勤務している障害のある人の数はそれぞれ2.45%、7,436.0人であった。都道府県の機関(法定雇用率2.3%)は2.61%、8,474.0人であり、市町村の機関(法定雇用率2.3%)は2.43%、26,139.5人であった。国、地方公共団体等ともに、勤務している障害のある人の数は前年同日の報告より増加した。
<障害者雇用対策>
- (2) 国及び地方公共団体の機関については、民間企業に率先垂範して障害のある人の雇入れを行うべき立場にあることを踏まえ、厚生労働省は国及び地方公共団体の各機関の任命権者に対し、計画的な採用を図るよう要請を行っている。すべての公的機関は、毎年6月1日現在の雇用状況を発表するとともに、未達成である機関については、障害のある人の採用に関する計画を作成しなければならない。また、その計画が適正に実施されていない場合には、厚生労働省は国及び地方公共団体の各機関の任命権者に対し、計画が適正に実施されるよう勧告を行っている。
平成28年6月1日現在の障害のある人の雇用状況では、国・地方公共団体で勤務している障害のある人は前年よりも増加しているものの、特に都道府県等の教育委員会では、未達成である機関が多くみられることから(法定雇用率未達成である都道府県教育委員会は47機関中12機関)、厚生労働省は未達成機関に対し、指導を行っている。 - (3) 障害者雇用促進法は、障害者雇用率制度に加え、障害のある人の雇用に伴う事業主の経済的負担を調整するとともに、障害のある人の雇用を容易にし、社会全体として障害のある人の雇用水準を引き上げるため、障害者雇用納付金制度を設けている。この制度では、法定雇用率未達成の民間企業(常用雇用労働者数100人超)から納付金を徴収するとともに、一定水準を超えて障害のある人を雇用している民間企業に対して、障害者雇用調整金、報奨金を支給している。 このほか、障害のある人を雇い入れるために施設、設備の改善等を行う事業主等に対する助成金の支給や在宅就業障害者に仕事を発注する事業主に対する在宅就業障害者特例調整金等の支給を行っている。
- (4) 国では、民間企業が無理なく、かつ積極的に障害のある人を雇用できるよう、身体に障害のある人や知的障害のある人、精神障害のある人を継続して雇用する労働者として雇い入れる民間企業に対して助成する「特定求職者雇用開発助成金」、業務に必要な援助や指導を行う職場支援員を配置する民間企業に対して助成する「障害者職場定着支援奨励金」(平成29年度から「障害者雇用安定助成金(職場定着支援コース)」に統合)、障害のある人を雇い入れたり、継続して雇用するために必要な職場の環境整備等を行った場合に費用の一部を助成する障害者雇用納付金制度に基づく助成金等を支給している。
- (5) 厚生労働省では、9月の「障害者雇用支援月間」に障害のある人を積極的に多数雇用している事業所、障害者の雇用の促進と職業の安定に著しく貢献した団体、職業人として模範的な業績をあげている障害者に対し、厚生労働大臣表彰を行っている。(平成28年度は24の事業所、1名の障害者雇用等に貢献した個人、15名の働く障害者を表彰)
- (6) 障害のある人を雇用する民間企業に対し、税制上の各種の特例措置を講じている。障害のある人の一層の雇用促進につながるよう、平成29年度税制改正では、心身障害者を多数雇用する事業主が事業用施設等を取得した場合の不動産取得税の減額措置及び固定資産税の課税標準の特例措置の適用期限の2年延長等を行った。
- (7) 平成25年6月に「障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律」が成立し、平成28年4月より雇用分野における障害のある人への差別が禁止され、合理的配慮の提供が義務化されることとなった。厚生労働省では、リーフレット・ポスター等を作成して周知に努め、平成29年2月に合理的配慮事例集(第三版)を公表した。
<障害のある人への地域における就労支援>
- (8) 障害のある人の就労支援の充実と活性化を図るため、雇用・福祉・教育・医療の一層の連携強化を図ることとし、ハローワークを中心とした関係機関とのチーム支援や、一般雇用や雇用支援策に関する理解の促進、障害者就業・生活支援センター事業、トライアル雇用、ジョブコーチ等による支援などを実施している。
- (9) 障害者就業・生活支援センターでは、障害のある人の職業生活における自立を図るために、福祉や教育等の地域の関係機関との連携の下、障害のある人の身近な地域(平成29年4月現在332箇所)で就業面及び生活面の両面における一体的な支援を行っている。平成28年度には、職場定着支援の強化を図るため、ジョブコーチとして多くの障害者の支援に携わり、障害者の職場定着支援に関する豊富な知識と経験を有する「主任職場定着支援担当者」等を増員し、センターの定着支援機能の強化を図った。
<福祉的就労から一般就労への移行に向けた支援>
- (10) 障害者が地域で自立した日常生活又は社会生活を送るための障害者の就労支援として、次の取組を行っている。
①就労移行支援
一般就労を希望する65歳未満の障害者には、できる限り一般就労をしていただけるように、就労移行支援事業所では、生産活動、職場体験その他の活動の機会の提供等、必要な支援を行っている。
②就労継続支援A型
雇用契約に基づき、継続的に就労することが可能な65歳未満の障害者に対し、生産活動その他の活動の機会の提供、その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練を行うとともに、一般就労に向けた支援や職場への定着のための支援等を行っている。
③就労継続支援B型
通常の事業所に雇用されていた障害者であって、その年齢、心身の状態その他の事情により、引き続き当該事業所に雇用されることが困難となった者、就労移行支援によっても通常の事業所に雇用されるに至らなかった者、その他の通常の事業所に雇用されることが困難な者につき、生産活動その他の活動の機会の提供、その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練を行うとともに、一般就労に向けた支援や職場への定着のための支援等を行っている。
<障害特性に応じた雇用支援策>
- (11) 精神障害のある人については、障害者基本計画(第3次)では、50人以上の規模の事業主で雇用される精神障害のある人を、平成29年の障害者雇用状況報告で3.0万人にすることを目指しており、平成28年6月1日現在で4.2万人となっている。精神障害のある人の雇用管理をテーマに、事業主等を対象に開催するセミナーを平成28年度は全国10ブロックで開催した。
- (12) 発達障害のある人への支援については、平成28年度から全国10か所のハローワークにおいて、発達障害などの要因により、コミュニケーション能力に困難を抱えている求職者について、セミナーや個別の職業相談などを実施している。また、発達障害のある人をハローワーク等の職業紹介により新たに雇い入れ、雇用管理に関する事項を把握・報告する事業主に対して助成を行う「発達障害者・難治性疾患患者雇用開発助成金」(平成29年度から「特定求職者雇用開発助成金(発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース)」)による助成を実施している。さらに、「発達障害者就労支援者育成事業」として、平成28年度は全国8ブロックで発達障害のある人の就労支援者及び当事者等を対象としたセミナー等を開催した。
- (13) 難病のある人への支援については、ハローワークに「難病患者就職サポーター」を配置し、症状の特性を踏まえた就労支援や在職中に難病を発症した患者の雇用継続等の総合的な就労支援を行っている。また、事業主に対して助成を行う「発達障害者・難治性疾患患者雇用開発助成金」による助成を実施している。平成28年度には事業主や就労支援に取り組む関係機関における必要な共通認識を促進するため、難病患者の雇用管理に資するマニュアル「難病のある人の就労支援のために」を改訂し、難病のある人の就労支援に活用している。
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(14) 在宅就業への支援
①在宅就業支援制度
自宅等で就業する障害のある人(在宅就業障害者)の就業機会の確保等を支援するため、これらの障害のある人に直接又は在宅就業障害者に対する支援を行う団体として厚生労働大臣の登録を受けた法人(在宅就業支援団体(平成29年1月現在で22団体))を介して業務を発注した事業主に対して、障害のある人に対して業務の対価として支払われた金額に応じて、障害者雇用納付金制度で、在宅就業障害者特例調整金(常用雇用労働者数100人以下の事業主については在宅就業障害者特例報奨金)を支給する制度を運用している。
②就労支援機器等の普及・啓発
従来、障害のある人が就労困難と考えられていた職業であっても、IT機器を利用することにより、就労の可能性が高まってきている。このため、障害のある人の職域拡大に資することを目的として、高齢・障害・求職者雇用支援機構において、障害のある人や事業主のニーズに対応した就労支援機器に関する情報提供、貸出事業等を通じて、その普及・啓発に努めている。
<障害のある人の創業・起業等の支援>
- (15) 経済産業省では、地域経済を活性化させるため、産業競争力強化法(平成25年法律第98号)の認定市区町村(平成28年12月現在で1,275市区町村)において、新たに創業を行う者に対して、その創業等に要する経費の一部を助成し、新たな需要や雇用の創出等を促す取組を行っており、障害のある人も活用できる制度となっている。
<障害者の就労支援にあたっての農業部局との連携>
- (16) 農林水産省では、障害者等のための福祉農園の開設・整備等の取組を支援しているほか、全国の地方農政局等に行政、福祉、農業等の関係者で構成する「障害者就労の促進ネットワーク(協議会)」を設置し、セミナーを通じて優良事例や施策の紹介などを行っている。
一方、厚生労働省では、農業分野に取り組もうとする就労継続支援B型事業所等に対して、農業分野の専門家を派遣し、農業に関する知識・技術の習得や6次産業化の推進に向けた助言・指導を行うとともに、都道府県において農業に取り組む就労継続支援B型事業所等が参加する農福連携マルシェ(市場)の開催を支援している。
また、農林水産省と厚生労働省とが連携して「『農』と福祉の連携プロジェクト」を推進し、農業関係者と福祉関係者との相互理解を深めるための農福連携セミナーや農福連携推進フォーラム(平成29年3月24日開催)の開催、有楽町駅前での農福連携マルシェの開催に取り組んだ。
<職業能力開発の充実>
- (17) 一般の公共職業能力開発施設において職業訓練を受けることが困難な重度の障害のある人については、障害者職業能力開発校において、職業訓練を実施しており、平成29年4月1日現在、障害者職業能力開発校は国立が13校、都道府県立が6校で、全国に19校が設置されている。
- (18) 全国障害者技能競技大会(愛称:アビリンピック)は、障害のある人の職業能力の開発を促進し、技能労働者としての自信と誇りを持って社会に参加するとともに、広く障害のある人に対する社会の理解と認識を深め、障害のある人の雇用の促進を図ることを目的として昭和47年から開催されており、 平成28年度には、山形県で第36回大会が開催(10月28日~30日)された。