第2編 障害者支援の充実に向けた動き 第1節 1
第1節 障害者総合支援法の改正
1.経緯
(1)今回の改正までの経緯
障害保健福祉施策については、障害のある人の地域における自立した生活を支援する「地域生活支援」を主題に、身体障害、知的障害及び精神障害それぞれについて、住民に最も身近な市町村を中心にサービスを提供する体制の構築に向けて必要な改正を行ってきた。
まず、平成15年4月1日から施行された「支援費制度」によって、サービスの在り方をそれまでの「措置」から「契約」に大きく変え、自己決定の尊重や、利用者本位の考え方を明確にした。
続いて、平成18年4月1日から施行された「障害者自立支援法」(平成17年法律第123号)によって、身体障害者及び知的障害者に加え、「支援費制度」の対象となっていなかった精神障害者も含めた一元的な制度を確立するとともに、地域生活への移行や就労支援といった課題に対応し、また、障害のある人が必要な障害福祉サービスや相談支援を受け、自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよう、福祉施設や事業体系の抜本的な見直しを行った。
その後、障がい者制度改革推進会議の下の「総合福祉部会」において、制度の谷間のない支援の提供、個々のニーズに基づいた地域生活支援体系の整備等を図るための検討が、約2年間にわたって行われ、平成23年8月には、当該制度改革に係るいわゆる「骨格提言」が取りまとめられた。
この骨格提言等を踏まえ、「障害者自立支援法」を「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」(以下「障害者総合支援法」という。)とする内容を含む「地域社会における共生の実現に向けて新たな障害保健福祉施策を講ずるための関係法律の整備に関する法律」が成立し、平成25年4月1日から施行(一部、平成26年4月1日施行)された。
また、障害者総合支援法の附則で規定された施行後3年(平成28年4月)を目途とする見直しに向けて、社会保障審議会障害者部会において、平成27年4月から同年12月にかけて計19回の審議を行い、今後の取組について報告書を取りまとめた。報告書に盛り込まれた事項のうち法律改正を要する事項に対応するため、障害福祉サービス及び障害児通所支援の拡充等を内容とする「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律及び児童福祉法の一部を改正する法律案」が平成28年5月に成立した(法律の概要については、図表2-1)。
(2)今回の改正の背景
障害者が地域生活に移行する際の受け皿となるグループホームの利用者数については、平成21年3月は約4万8千人であったが、平成28年3月には約10万2千人となっており、倍増している。これを見ても、地域生活への移行を希望する障害者が増加しているのは明らかである。
また、一般就労に移行する障害者数について、平成21年度は約3,300人であったが、平成27年度には約1万2千人となっており、約3.6倍に増加している。就労に伴い、生活面での様々な課題が生じていると考えられ、この対応が必要である。
さらに、障害福祉サービスを利用する65歳以上の高齢者数は、平成22年5月の約5万3千人から、平成27年3月の約11万7千人と倍増しており、障害者の高齢化への対応も迫られている。
医療技術の進歩等を背景として、NICU(新生児集中治療室)等に長期間入院した後、引き続き人工呼吸器や胃ろう等を使用し、たんの吸引や経管栄養などの医療的ケアを必要とする障害児が増えており、障害児支援のニーズが多様化している。
こうした障害者を取り巻く状況を背景として、今回の障害者総合支援法の改正では、「障害者の望む地域生活への支援」、「障害児支援のニーズのきめ細かな対応」、「サービスの質の確保・向上に向けた環境整備」を主な柱としている。