第2編 障害者支援の充実に向けた動き 第2節 1
第2節 発達障害者支援法の改正
1.改正経緯
発達障害については、頻度の高い障害であると考えられていたが、発達障害者支援法成立以前は、<1>発達障害のある人に対する支援を目的とした法律がなく、障害者法制における制度の谷間に置かれており、従来の施策では十分な対応がなされていないこと、<2>発達障害は、障害としての認識が必ずしも一般的ではなく、その発見や適切な対応が遅れがちであること、<3>この分野に関する専門家が少なく、適切な対応がとりにくいこと、といった問題点があったことから、発達障害のある人やその保護者は大きな精神的負担を強いられており、その支援体制の確立は喫緊の課題となっていた。このような状況のなか、議員立法により成立した「発達障害者支援法」(平成16年法律第167号)が平成17年に施行されてから、発達障害者に対する支援は着実に進展し、医療、保健、福祉、教育、労働等の現場での取組は年々拡充している。例えば、発達障害者支援センターは、全国すべての都道府県、指定都市に設置されており、ペアレント・トレーニングなどの家族支援を実施する市町村も年々増加している。
また、平成19年に国連総会においてカタール国の提出した議題「4月2日を世界自閉症啓発デーに定める」が採択されたことに伴い、平成20年に日本では「4月2日から8日を発達障害啓発週間とする」ことが決定され、国内各地でシンポジウムやブルー・ライトアップ等の啓発活動を行うことにより、発達障害に対する国民の理解も広がってきている。
一方、発達障害者支援法の施行から10年が経過し、例えば、乳幼児期から高齢期まで切れ目のない支援、家族なども含めたきめ細かな支援及び地域の身近な場所で受けられる支援が必要となってきており、時代の変化に対応したよりきめ細かな支援が求められていた。
さらに、我が国においては、障害者基本法の一部を改正する法律(平成23年法律第90号)や障害者差別解消法の成立といった法整備が行われるなど、共生社会の実現に向けた新たな取組が進められている。
今般の改正は、こうした状況に鑑み、発達障害者の支援の一層の充実を図るため、所要の措置を講じるものであり、「発達障害者支援法の一部を改正する法律」(平成28年法律第64号、以下「本法」という。)が平成28年5月に成立し、同年8月1日から施行されている。