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第3編 障害者施策の実施状況 第1章 第5節 4

第1章 障害のある人に対する理解を深めるための基盤づくり

第5節 障害を理由とする差別の解消の推進

4.障害者差別解消法の施行に関する取組

(1)障害者差別解消支援地域協議会体制整備事業

障害者差別解消法第17条において、国及び地方公共団体の機関は、相談事例等に係る情報の共有・協議を通じて、各自の役割に応じた事案解決のための取組や類似事案の発生防止などを行うネットワークとして、「障害者差別解消支援地域協議会」(以下「地域協議会」という。)を組織することができるとされた。

地域協議会は、全国一律の内容で組織されるものではなく、各地域の実情に応じた取組を主体的に行うものであることから、その設置を促進するために「障害者差別解消支援地域協議会体制整備事業」(以下「体制整備事業」という。)を内閣府で進めている。

具体的には、平成25年度に「障害者差別解消支援地域協議会体制整備事業の実施に係る同協議会の設置・運営暫定指針」(以下「暫定指針」という。)を内閣府政策統括官(共生社会政策担当)の「障害者差別解消支援地域協議会の在り方検討会」(以下「在り方検討会」という。)で示し、平成26年度からは、障害者差別解消に関する条例を既に制定している又は制定に向けて動いている地方公共団体と協力して取組を実施し、その効果や影響を在り方検討会において検証してきた。

また、平成26年度には4つの地方公共団体(岩手県、千葉県、埼玉県さいたま市、千葉県浦安市)、平成27年度には8つの地方公共団体(鹿児島県、神奈川県湘南西部圏域、新潟県新潟市、兵庫県明石市を追加)の協力のもと、各地域において地域協議会の「モデル会議」を開催し、相談体制の整備や機関連携の課題など、障害者差別の解消の推進に資する取組について協議を行った。

このモデル会議を開催した地方公共団体では体制整備事業の「中間報告会」を開催し、協議内容を関係機関と共有するとともに、内閣府において「最終報告会」を開催し、全国の地方公共団体及び関係団体に対してモデル会議の成果を報告した。

さらに、地域協議会の設置を検討する地方公共団体に対し、在り方検討会の構成員などを「アドバイザー」として派遣(平成28年度:全国23か所)し、設置に向けた課題整理などを支援することで設置を後押ししている。

こうした一連の取組を受け、より多くの地方公共団体で地域協議会の設置に向けた取組が進むよう暫定指針を改訂して「障害者差別解消支援地域協議会の設置・運営指針」(以下「設置・運営指針」という。)を策定するとともに、「障害者差別解消支援地域協議会設置の手引き」(以下「設置の手引き」という。)を作成した。

障害者差別解消法の施行から半年が経過した平成28年10月1日時点では、全ての都道府県及び政令指定都市で地域協議会を設置済み又は平成28年度内に設置予定となっている。一方、その他の市町村では、設置済み又は同年度内に設置予定の団体は3分の2程度であり、設置の方針が未定の団体も2割程度見られるなど、団体の規模によって設置の状況に差が見られるところである。

このため、内閣府政策統括官(共生社会政策担当)の下に、在り方検討会を発展させた「障害者差別解消支援地域協議会の設置等の推進に向けた検討会」(以下「設置等推進検討会」という。)を新たに開催し、8地方公共団体(三重県、大阪府、山口県、東京都八王子市、神奈川県湘南西部圏域、兵庫県明石市、岡山県総社市、福岡県北九州市)から、地域協議会の設置及び運営に当たっての工夫、課題等についてヒアリングを行った。その後、設置等推進検討会における議論を経て、地域協議会の設置・運営等に係る課題等を整理し、設置・運営指針及び設置の手引きを一本化して、「障害者差別解消支援地域協議会の設置・運営等に関するガイドライン」を取りまとめた。

これらを活用して、各都道府県の協力を得つつ、引き続き、一般の市町村を中心に地域協議会の設置及び効果的な活用に向けた働きかけを行っていくこととしている。

(2)地域フォーラム等

内閣府では、障害者差別解消法の理解促進と円滑な施行を目指し、啓発活動を実施してきた。具体的には、「障害を理由とする差別の解消に向けた地域フォーラム」を平成28年度は全国15か所で開催し、神奈川県でのフォーラムには加藤勝信内閣府特命担当大臣が参加し、地域における取組の促進と気運の醸成を図った。この他、法の趣旨や内容について周知を図るためのリーフレットやポスターを作成している。

また、障害者差別解消法に基づく合理的配慮などの具体例を収集・整理し、データ集として「合理的配慮サーチ」を内閣府のホームページで公開している。この合理的配慮サーチでは、利用者の要望に応じた情報提供ができるよう、検索機能のほか、障害種別ごと、生活場面ごとに具体例を一覧できる仕組みを構築しており、今後も具体例を追加して内容の充実を図ることとしている。

さらに、障害者差別解消法附則第7条に定める検討等に資するため、障害を理由とする差別等について争われた裁判例について調査を行い、論点、判旨等を整理した上で内閣府のホームページで公表した。

障害を理由とする差別については、国民一人ひとりの障害に関する知識・理解の不足、意識の偏りに起因する面が大きいと考えられることから、障害者差別解消法の実効性ある施行のため、各種啓発活動に積極的に取り組む必要がある。国民各層の関心を高め、障害に関する理解と協力を促進することによって、建設的対話による相互理解を通じた合理的配慮の提供が、広く社会に浸透することが期待される。

(3)主務大臣等による行政措置

事業者における障害者差別解消に向けた取組は、主務大臣の定める対応指針を参考にして、各事業者により自主的に取組が行われることが期待される。

しかしながら、事業者による自主的な取組のみによっては、その適切な履行が確保されず、例えば、事業者が法に反した取扱いを繰り返し、自主的な改善を期待することが困難である場合など、特に必要があると認められるときは、主務大臣又は地方公共団体の長等は、事業者に対し、報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告をすることができるとされている(平成28年度は主務大臣等による行政措置の実績なし)。

■図表3-1-2 障害者差別解消法に関する経緯
■図表3-1-3 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法<平成25年法律第65号>)の概要
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