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第3編 障害者施策の実施状況 第2章 第1節 2

第2章 社会参加へ向けた自立の基盤づくり

第1節 障害のある子供の教育・育成に関する施策

2.専門機関の機能の充実と多様化

(1)特別支援学校における教育支援体制の整備
ア 障害の重度・重複化への対応

近年、特別支援学校に在籍する幼児児童生徒の障害の重度・重複化が進んでおり、一層きめ細かな対応が求められている。

特別支援学校の学習指導要領等においては、障害の重度・重複化等に応じた弾力的な教育課程が編成できるよう、障害の状態により特に必要がある場合には、各教科の目標及び内容の一部を取り扱わないこととしたり、自立活動を主として指導を行ったりすることができることなど、様々な配慮事項を規定している。また、一人一人の障害の実態に応じた指導を充実するため、個々の児童生徒の実態を的確に把握し、個別の指導計画や個別の教育支援計画を作成することとしている。

障害のため通学して教育を受けることが困難な幼児児童生徒に対しては、教員を家庭、児童福祉施設や医療機関等に派遣して教育(訪問教育)を行っている。平成28年5月1日現在、小学部1,294人、中学部742人、高等部841人の児童生徒が、この訪問教育を受けている。

さらに、医療技術の進歩等を背景に、日常的にたんの吸引等の医療的ケアを必要とする幼児児童生徒への対応が求められている。

平成23年6月に公布された「介護サービスの基盤強化のための介護保険法等の一部を改正する法律」による社会福祉士及び介護福祉士法の一部改正により、平成24年4月から一定の研修を受けた介護職員等は一定の条件の下にたんの吸引等の医療的ケアができるようになったことを受け、特別支援学校等の教員等についても、制度上実施することが可能となった。

これに関して、文部科学省としては、特別支援学校等において安全かつ適切な医療的ケアを提供するために必要な検討を行うため、平成23年10月より「特別支援学校等における医療的ケアの実施に関する検討会議」を開催し、特別支援学校等において医療的ケアを必要とする児童生徒等の健康と安全を確保するに当たり留意すべき点等について整理を行い、都道府県・指定都市教育委員会等に通知した(参照:http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/1314510.htm)。

現在、医療的ケアを必要とする幼児児童生徒が特別支援学校に8,116人、小・中学校に766人在籍しており、文部科学省では、特別支援学校や小・中学校における医療的ケアを必要とする児童生徒の教育の充実を図るため、看護師の配置に必要な経費の一部を補助している。

イ 特別支援学校の教科書

特別支援学校の児童生徒にとっては、その障害の状態等によっては、一般に使用されている検定教科書が必ずしも適切ではない場合があり、特別な配慮の下に作成された教科書が必要となる。このため、文部科学省では、従来から、文部科学省著作の教科書として、視覚障害者用の点字版の教科書、聴覚障害者用の国語(小学部は言語指導、中学部は言語)及び音楽の教科書、知的障害者用の国語、算数(数学)及び音楽の教科書を作成している。

なお、特別支援学校及び特別支援学級においては、検定教科書又は文部科学省著作の教科書以外の図書(いわゆる「一般図書」)を教科書として使用することができる。

ウ 私学助成

私立の特別支援学校、特別支援学級を置く小・中学校及び障害のある幼児が就園している幼稚園の果たす役割の重要性から、これらの学校の教育条件の維持向上及び保護者の経済的負担の軽減を図るため、「私立学校振興助成法」(昭和50年法律第61号)に基づき、国は経常的経費の一部の補助等を行っている。

■図表3-2-4 障害児通所支援・障害児入所支援の体系
支援 支援の内容
障害児通所支援 児童発達支援 日常生活における基本的な動作の指導、知識技能の付与、集団生活への適応訓練、その他の必要な支援を行うもの
医療型児童発達支援 日常生活における基本的な動作の指導、知識技能の付与、集団生活への適応訓練、その他の必要な支援及び治療を行うもの
放課後等デイサービス 授業の終了後又は学校の休業日に、生活能力の向上のために必要な訓練、社会との交流の促進その他の必要な支援を行うもの
保育所等訪問支援 保育所等を訪問し、障害のある児童に対して、集団生活への適応のための専門的な支援その他の必要な支援を行うもの
障害児入所支援 福祉型障害児入所施設 施設に入所する障害のある児童に対して、保護、日常生活の指導及び独立自活に必要な知識技能の付与を行うもの
医療型障害児入所施設 施設に入所する障害のある児童に対して、保護、日常生活の指導、独立自活に必要な知識技能の付与及び治療を行うもの

資料:厚生労働省

(2)療育体制の整備
ア 福祉施設における療育機能の強化

障害のある児童に対しては、できるだけ早期に必要な治療と指導訓練を行うことによって、障害の軽減や基本的な生活能力の向上を図り、将来の社会参加へとつなげていく必要がある。このため、健康診査等により障害の早期発見を図るとともに、適切な療育を実施する体制の整備を図っている。

また、「障がい者制度改革推進本部等における検討を踏まえて障害保健福祉施策を見直すまでの間において障害者等の地域生活を支援するための関係法律の整備に関する法律」(平成22年法律第71号)の公布に伴う児童福祉法の一部改正等により、障害児支援については、身近な地域で支援を受けられるようにする等のため、平成24年4月から知的障害児施設等の障害種別に分かれていた施設体系について、通所による支援を「障害児通所支援」に、入所による支援を「障害児入所支援」にそれぞれ一元化し、障害児支援の強化を図っている。

さらに、学齢期における支援の充実を図るために「放課後等デイサービス」を、保育所等に通う障害児に対して、集団生活への適応を支援するために「保育所等訪問支援」を創設した。

また、在宅で生活する重症心身障害児(者)に対し、適切なリハビリテーションや療育を提供し、日中の活動の場を確保するため、「重症心身障害児(者)通園事業」を実施してきたが、児童福祉法の一部改正により、従来、予算事業で実施していた重症心身障害児(者)通園事業については、平成24年度から法定化され、安定的な財源措置が講じられることとなった。

イ 地域における療育体制の整備

地域で生活する障害のある児童の療育として、児童福祉法に基づく障害児通所支援事業所において指導訓練等が行われている。

また、児童相談所等における相談支援等の施策により、障害のある児童とその家族への支援を行っている。

平成18年4月からは、障害のある児童に対する居宅介護や短期入所などの在宅施策が「障害者自立支援法」(平成25年4月から「障害者総合支援法」)の障害福祉サービスに位置づけられ、財政的な基盤強化が図られている。

平成26年7月には、「障害児支援の在り方に関する検討会」により報告書が取りまとめられ、<1>地域における「縦横連携」を進めるための体制づくり、<2>「縦横連携」によるライフステージごとの個別の支援の充実、<3>特別に配慮された支援が必要な障害児のための医療・福祉の連携、<4>家族支援の充実、<5>個々のサービスの質のさらなる確保が提言された。これらを踏まえ、地域の中核となる児童発達支援センターの地域支援機能を強化するとともに、平成27年度障害福祉サービス等報酬改定において関係機関連携加算の創設等の対応を行っている。

平成27年4月には、放課後等デイサービスについて、支援の提供や事業運営に当たっての基本的事項を定めた「放課後等デイサービスガイドライン」を発出し、放課後等デイサービスの支援の質の向上を図っている。これらにより、障害のある児童が、できるだけ身近な場所で適切な療育を受けられる体制の整備を図っている。

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