第2章 障害のある人に対する理解を深めるための基盤づくり 第2節 3
第2節 障害を理由とする差別の解消の推進
3.障害者差別解消法の施行に関する取組等
平成29(2017)年度に内閣府が実施した世論調査の結果によると、障害者に対して差別や偏見があると思う割合は83.9%であった。その一方で、障害者差別解消法を知っている割合は21.9%にとどまっており、障害を理由とする差別については、国民一人ひとりの障害に関する知識・理解の不足、意識の偏りに起因する面が大きいと考えられる。
そのため、全ての国民が障害の有無によって分け隔てられることのない共生社会を実現するためには、障害者差別解消法で求められる取組やその考え方が、幅広く社会に浸透することが重要である。政府においては、同法の円滑な施行に向けた各般の取組により国民各層の関心を高め、障害に関する理解と協力を促進することによって、建設的対話による相互理解を通じた合理的配慮の提供等を促進していく。
(1)合理的配慮の提供等事例集
内閣府では、障害者差別解消法に基づく合理的配慮の提供や環境の整備に関する事例を関係省庁、地方公共団体、障害者団体などから収集し、障害種別や生活場面別に整理した上で、「合理的配慮の提供等事例集」として取りまとめた。
この事例集の活用を通じて、合理的配慮を始めとする障害者差別の解消に向けた取組の裾野が更に広がるとともに、障害者差別解消法に対する国民の理解が一層深まることが期待される。
(2)障害者差別解消支援地域協議会の設置の促進
障害者差別解消法第17条において、国及び地方公共団体の機関は、「障害者差別解消支援地域協議会」(以下「地域協議会」という。)を組織することができるとされている。地域協議会を設置することで、その地域の関係機関による相談事例等に係る情報の共有・協議を通じ、各自の役割に応じた事案解決のための取組や類似事案の発生防止などを行うネットワークが構築されるとともに、障害者や事業者からの相談への迅速かつ適切な対応や紛争解決に向けた対応力の向上などが図られることとなる。
平成29(2017)年度末までに全ての都道府県及び指定都市において設置済みとなっているが、現在未設置の地方公共団体に対しても取組を後押しするため、課題整理などを支援する有識者等を内閣府からアドバイザーとして派遣している(平成29年度は、福島県郡山市、東京都墨田区、東京都日野市、静岡県掛川市、愛知県半田市、滋賀県大津市、広島県呉市、広島県廿日市市へ派遣)。
(3)地域フォーラム
障害者差別解消法について、地方公共団体と連携し、学識経験者、障害当事者、事業者等によるパネルディスカッション等を通じて、地域の障害のある人や関係者の意見を広く聴取し、障害者差別解消法の円滑な施行を目指すとともに、各地域における取組の促進と気運の醸成を図ることを目的とする地域フォーラムを開催している(平成29(2017)年度は、岩手県・盛岡市、福島県、京都府、岡山県、高知県、佐賀県、宮崎県にて開催)。
(4)主務大臣等による行政措置
事業者における障害者差別解消に向けた取組は、主務大臣の定める対応指針を参考にして、各事業者により自主的に取組が行われることが期待される。
しかしながら、事業者による自主的な取組のみによっては、その適切な履行が確保されず、例えば、事業者が法に反した取扱いを繰り返し、自主的な改善を期待することが困難である場合など、特に必要があると認められるときは、主務大臣又は地方公共団体の長等は、事業者に対し、報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告をすることができるとされている(平成29(2017)年度は主務大臣等による行政措置の実績なし)。
【支援要請から支援・配慮までのプロセス】
岡山県立大学では、障害のある学生からの相談について具体的な対応プロセスが構築されており、大学、学生、保護者、支援実施者の合意形成・連携による問題解決が図られている。
(1)支援申請書
岡山県立大学には、福利厚生に資する組織として、学生支援室、学生相談室、学生支援班、保健室が置かれている。障害のある学生から支援要請(相談)を受けたときは、これらの室員・班員が、修学状況のアセスメントと支援ニーズの把握を行いながら、『支援申請書』を学生とともに作成する。
(2)合理的配慮計画案
支援申請書の内容は、まず「支援・配慮一次検討会議」において、合理的配慮の必要性や支援方法の方向性などが検討され、続いて招集する「支援・配慮二次検討会議」において、具体的な支援方法などに関する合理的配慮計画案が作成される。
(3)配慮要請
合理的配慮計画案について、学生支援室長が学生及び保護者との合意形成を図り、合意が得られると配慮の内容を示した『配慮要請』が作成される。この配慮要請は学生支援室長から支援実施者(関係教職員又はピア・サポーター学生)に渡され、合理的配慮の提供や環境の整備などが行われることとなる。
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○通学の支援
大学の最寄り駅が無人駅であったため、鉄道会社の職員によるサポートが難しい状況にあった。そこで、サポートを求める家族や大学が鉄道会社と交渉し、決められた時間の電車であれば、研修を受けた者が電車にスロープを架けて乗車支援できるようにした。(教職員及び学生約30名が研修を受け、毎日の乗車支援を実施している。)
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○固定椅子の撤去
机と椅子が固定された講義室があり、そこへは車椅子で進入できなかったため、一部の固定椅子を撤去してアクセスできるようにした。
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○多目的トイレの改修
既存の多目的トイレは便座、手洗い、手摺りのみがある簡易なものであったため、オストメイト対応トイレに改修した。また、手摺りも可動式にしてアクセシビリティの向上を図った。
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○学内路面の整備
学内の路面が風化により砂利がむき出しの状態になり、車椅子での移動において「振動が強い」「前輪が取られ操作が難しい」「移動に時間がかかる」などの問題が生じたため、低振動ブロックを約200mにわたり敷き詰めて走行路を作成した。
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○研修会の開催
支援実施者の育成を目的として、教職員及び学生を対象に、排泄介助の研修会や岡山県が推進する「あいサポート」研修会を開催。
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○スロープの設置
部室がある棟には階段しか設置しておらず、車椅子で進入できなかったため、スロープを新設した。その他にもパソコン教室のOAフロアやテニスコートの入り口などにもスロープを新設した。