第3章 社会参加へ向けた自立の基盤づくり 第2節 2
第2節 雇用・就労の促進施策
2.総合的支援施策の推進
(1)障害のある人への地域における就労支援
障害のある人の就労支援の充実と活性化を図るため、雇用・福祉・教育・医療の一層の連携強化を図ることとし、ハローワークを中心とした関係機関とのチーム支援や、一般雇用や雇用支援策に関する理解の促進、障害者就業・生活支援センター事業、トライアル雇用、ジョブコーチ等による支援などを実施している。
ア ハローワーク
就職を希望する障害のある人に対しては、ハローワークの専門窓口で、求職の登録の後にその技能、職業適性、知識、希望職種、身体能力等に基づき、ケースワーク方式による個々の障害特性に応じたきめ細かな職業相談を実施し、安定した職場への就職・就職後の職場定着を支援している。
① ハローワークを中心とした「チーム支援」
就職を希望する障害のある人の一般雇用への移行を図るため、ハローワークが中心となって、障害者就業・生活支援センター、地域障害者職業センター、就労移行支援事業所、特別支援学校、医療機関等の関係機関からなる「障害者就労支援チーム」を作り、就職に向けた準備から職場定着までの一貫した支援を行う「チーム支援」を実施している。
② トライアル雇用
事業所が障害のある人を短期の試行雇用の形で受け入れることにより、障害のある人の適性や業務遂行可能性を見極め、障害のある人と事業主の相互理解を促進すること等を通じて、常用雇用への移行を促進する障害者トライアル雇用事業を実施している。
イ 地域障害者職業センター
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構により各都道府県に1か所(そのほか支所5か所)設置・運営されている地域障害者職業センターでは、ハローワークや地域の就労支援機関との連携の下に、身体に障害のある人、知的障害のある人はもとより、精神障害のある人、発達障害のある人、高次脳機能障害のある人など、他の機関では支援が困難な障害のある人を中心に、専門職の「障害者職業カウンセラー」により、職業評価、職業指導から就職後のアフターケアに至る職業リハビリテーションを専門的かつ総合的に実施している。
① 職業評価・職業指導及び職業リハビリテーション計画の策定
障害のある人個々の就職の希望等を把握した上で、職業評価・職業相談を行い、これらを基に就職及び就職後の職場適応に必要な支援内容等を含む職業リハビリテーション計画の策定を行っている。
② 障害のある人の就労の可能性を高めるための支援(職業準備支援)
障害のある人に対して、就職又は職場適応に必要な障害特性や職業上の課題の把握とその改善を図るための支援、職業に関する知識の習得のための支援及び社会生活技能等の向上のための支援を行っている。
③ 障害のある人の職場適応に関する支援(職場適応援助者(ジョブコーチ)による支援事業)
就職又は職場適応に課題を有する知的障害、精神障害のある人等が円滑に職場適応することができるよう、就職時のみならず雇用後においても事業所にジョブコーチを派遣し、障害のある人に障害特性を踏まえた直接的かつ専門的な支援を行うほか、事業主に対して、雇用管理に必要な助言や職場環境の改善の提案等の援助を行っている。
また、安定した雇用継続を図るためのフォローアップも行っている。
なお、地域障害者職業センターのジョブコーチ以外に、社会福祉法人等に所属し事業所に出向いて支援を行う訪問型ジョブコーチ、企業に在籍し同じ企業に雇用されている障害のある労働者を支援する企業在籍型ジョブコーチがいる。
④ 精神障害のある人等に対する総合雇用支援
精神障害のある人及び事業主に対して、主治医との連携の下、新規雇入れ、職場復帰、雇用継続のそれぞれの雇用の段階に応じた専門的な支援を総合的に行っている。
特に、休職中の精神障害のある人及びその人を雇用する事業主に対しては、円滑な職場復帰に向けた支援(リワーク支援)を進めており、精神障害のある人に対しては、生活リズムの立直しや集中力・持続力の向上等の支援を行うとともに、事業主に対しては、職場の受け入れ体制の整備等についての支援を行っている。
⑤ 地域の就労支援機関に対する助言・援助
各地域における障害者就業・生活支援センターや就労移行支援事業所等の関係機関において、より効果的な職業リハビリテーションが実施されるよう、職業リハビリテーションに関する技術的事項についての助言や支援方法に係る助言や援助を行っている。
また、ジョブコーチの養成研修や関係機関の職員等の知識の習得、技術等の向上のための実務的研修を行っている。
ウ 障害者就業・生活支援センター
障害者就業・生活支援センターでは、障害のある人の職業生活における自立を図るために、福祉や教育等の地域の関係機関との連携の下、障害のある人の身近な地域(平成30(2018)年4月現在334か所)で就業面及び生活面の両面における一体的な支援を行っている。
例えば、就業やそれに伴う日常生活上の支援を必要とする障害のある人に対し、就職に向けた準備支援(職業準備訓練、職場実習のあっせん)や求職活動等の就業に関する相談と、健康管理や住居、年金等の生活に関する相談などを行っている。また、必要に応じ、ハローワークや地域障害者職業センターなどの専門的支援機関と連絡を取り合い、支援を引き継ぐなど適切な支援機関への案内窓口としての機能も担っている。
近年、雇用される障害のある人の数が増加する中で、定着支援の取組の重要性が高まっており、センターの業務実績を見ると、就職件数、雇用者数の伸びにしたがって、企業からの相談の半数を定着支援が占めており、また、就業時点で就労支援機関の支援を受けていない障害者に対する定着支援を求められるなど、定着支援の比重が増している。センターでは、事業主に対し、本人の障害特性や症状・能力等についての助言や関係機関と連携した支援を行うほか、就職後に生じる課題の予測と実際に生じた際の事前準備、センター職員による定期的な職場訪問及び電話連絡等を通じ、本人が現在抱えている悩み、課題及び事業主や上司・同僚等の意見等を把握し、問題が発生しないよう未然に対応をしている。
平成29(2017)年度には、職場定着支援の強化を図るため、ジョブコーチとして多くの障害のある人の支援に携わり、障害のある人の職場定着支援に関する豊富な知識と経験を有する「主任職場定着支援担当者」を増員するとともに、精神障害のある人に対する支援経験を有するなど精神障害のある人の支援に特化した担当者及び企業における人事管理や障害者雇用の経験を有するなど事業主からの雇用相談や雇用管理支援に対応する担当者をモデル配置するなど、センターの定着支援機能の強化を図った。
(2)福祉的就労から一般就労への移行等の支援
障害のある人が地域で自立した日常生活又は社会生活を送るための基盤として就労支援は重要であり、障害のある人の就労支援として以下の取組を行っている。
ア 就労移行支援について
一般就労を希望する障害のある人が、できる限り一般就労が可能となるように、就労移行支援事業所では、在宅就労も含めて生産活動、職場体験等の活動の機会の提供その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練、求職活動に関する支援、その適性に応じた職場の開拓、就職後における職場への定着のために必要な相談、その他の必要な支援を行っている。
イ 就労継続支援A型について
雇用契約に基づき、継続的に就労することが可能な障害のある人に対し、生産活動等の活動の機会の提供及びその他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練を行うとともに、一般就労に向けた支援や職場への定着のための支援等を行っている。また、就労継続支援A型事業所における就労の質を向上させるため、平成29(2017)年4月に改正した指定障害福祉サービス等基準に基づき、事業所の生産活動の収支を利用者に支払う賃金の総額以上とすることなどとした取扱いを徹底し、安易な事業参入の抑制を図るとともに、基準を満たさない事業所に経営改善計画の提出を求めることにより、事業所の経営状況を把握した上で地方公共団体が必要な指導・支援を行うことを通じ、障害のある人の賃金の向上を図ることとした。
ウ 就労継続支援B型について
通常の事業所に雇用されていた障害のある人であって、その年齢、心身の状態その他の事情により、引き続き当該事業所に雇用されることが困難となった者、就労移行支援によっても通常の事業所に雇用されるに至らなかった者、その他の通常の事業所に雇用されることが困難な者につき、生産活動その他の活動の機会の提供、その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練を行うとともに、一般就労に向けた支援や職場への定着のための支援等を行っている。また、事業所の経営力強化に向けた支援、共同受注化の推進等、就労継続支援B型事業所等における工賃の向上に向け、官民一体となった取組を推進している。
エ 就労定着支援について
平成28(2016)年度の障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)の一部改正により、就労移行支援事業所等を利用し、一般就労に移行した障害のある人に対して、一般就労に伴い生じる生活リズムの乱れや給料の浪費などの生活面の課題に対応できるよう、家族や関係機関との連絡調整等の支援を一定期間にわたって行う新たなサービスを創設した。
オ 平成30(2018)年度障害福祉サービス等報酬改定(以下「報酬改定」という。)について
障害のある人がその能力を十分に発揮し、地域で自立した生活を実現することができるよう、報酬改定において、一般就労への定着実績や工賃実績等に応じた報酬体系を構築し、就労系障害福祉サービスにおける工賃・賃金の向上や一般就労への移行の更なる促進が図られるよう見直しを行った。
(3)障害特性に応じた雇用支援策
ア 精神障害のある人への支援
精神障害のある人については、近年、ハローワークにおける新規求職者数が急激に伸びてきており、その専門窓口では「精神障害者雇用トータルサポーター」などの専門職員による個々の障害特性に応じたきめ細かな相談支援を行うとともに、精神障害のある人に関する事業主の意識啓発から就職後のフォローアップ等の働きかけを行っている。
また、民間企業に対しては継続雇用する労働者へ移行することを目的に、週の所定労働時間10時間以上20時間未満から一定程度の期間をかけて、週の所定労働時間を20時間以上とすることを目指す「トライアル雇用助成金(障害者短時間トライアルコース)」の支給などを行っている。
なお、精神障害のある人については、これら各般の取組を通して、その雇用促進を一層図ることとしており、障害者基本計画(第3次)では、50人以上の規模の事業主で雇用される精神障害のある人を、平成29(2017)年の障害者雇用状況報告で3.0万人にすることを目指していたが、平成29年6月1日現在で5.0万人となっており、達成した。
イ 発達障害のある人への支援
発達障害のある人についても、近年ハローワークにおける新規求職者数が増加しており、その雇用の促進を図ることが必要となっている。そのため、ハローワークでは、発達障害のある求職者に対する職業紹介を行うに当たっては、地域障害者職業センターや発達障害者支援センターと十分な連携を図って、対応している。なかでも、発達障害などの要因によりコミュニケーション能力に困難を抱えている求職者について、専門の支援員(就職支援ナビゲーター(発達障害者等支援分))によるきめ細かな就職支援を実施する「若年コミュニケーション能力要支援者就職プログラム」を実施している。
平成29(2017)年度は全国10か所のハローワークにおいて、発達障害などの要因により、コミュニケーション能力に困難を抱えている求職者について、小集団方式によるセミナーやグループワークなどを通じた職場でのコミュニケーションスキルなどの付与や、個別の職業相談などを実施した。
また、平成30(2018)年度よりハローワークに発達障害者雇用トータルサポーターを新たに配置し、カウンセリング等の求職者支援や事業主が抱える発達障害のある人等の雇用に係る課題解決のための個別相談等を実施している。
さらに、発達障害のある人をハローワーク等の職業紹介により新たに雇い入れ、雇用管理に関する事項を把握・報告する事業主に対して、「特定求職者雇用開発助成金(発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース)」を支給することにより、その雇用促進を図っている。
そのほか、「発達障害者就労支援者育成事業」として、支援関係者等の発達障害者支援のための基盤作りのために、平成29年度は全国8ブロックで発達障害のある人の就労支援者及び当事者等を対象としたセミナーや交流会を開催し、発達障害のある人の雇用のきっかけづくりを行う啓発事業を実施した。
ウ 難病のある人への支援
ハローワークでは、障害者手帳の有無にかかわらず、就労支援の必要な難病のある人に対して、難病相談支援センターとの連携による就労支援も行っている。平成25(2013)年度からは、ハローワークに「難病患者就職サポーター」を配置し、難病相談支援センターと連携しながら、就職を希望する難病患者に対する症状の特性を踏まえたきめ細かな就労支援や在職中に難病を発症した患者の雇用継続等の総合的な就労支援を行っている。
また、難病のある人をハローワーク等の職業紹介により新たに雇い入れ、雇用管理に関する事項を把握・報告する事業主に対して、「特定求職者雇用開発助成金(発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース)」を支給することにより、その雇用促進を図っている。
さらに、難病患者の雇用管理に資するマニュアル「難病のある人の就労支援のために」(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が平成28(2016)年に改訂)を活用し、ハローワーク等において、難病のある人の就労支援を行っている。
エ 在宅就業への支援
① 在宅就業支援制度
自宅等で就業する障害のある人(在宅就業障害者)の就業機会の確保等を支援するため、これらの障害のある人に直接又は在宅就業障害者に対する支援を行う団体として厚生労働大臣の登録を受けた法人(在宅就業支援団体(平成29(2017)年6月現在で22団体))を介して業務を発注した事業主に対して、障害のある人に対して業務の対価として支払われた金額に応じて、障害者雇用納付金制度で、在宅就業障害者特例調整金(常用雇用労働者数100人以下の事業主については在宅就業障害者特例報奨金)を支給する制度を運用している。
② 就労支援機器等の普及・啓発
従来、障害のある人が就労困難と考えられていた職業であっても、IT機器を利用することにより、就労の可能性が高まってきている。このため、障害のある人の職域拡大に資することを目的として、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構において、障害のある人や事業主のニーズに対応した就労支援機器に関する情報提供、貸出事業等を通じて、その普及・啓発に努めている。
〈事例1〉運輸業における聴覚障害のあるドライバーの活躍事例
スマートフォン等の活用により、聴覚障害のある人も大型トラックのドライバーとして活躍することができる。
手話のできる社員がいない中、聴覚障害のある社員の採用時は、手振りや筆談により対応していたが、業務の指示内容が本人に伝わっているか等、コミュニケーションが課題となっていた。そこで会社用のスマートフォンを整備した。SNSのグループをつくって、出勤状況の確認、点呼、体調管理、情報交換等のコミュニケーションを図っている。
さらに、管理職とスマートフォンで直接相談できるような体制とした。営業所内や配送先などでのコミュニケーション手段として、電子メモパッドも有効に活用している。
聴覚障害者標識を表示した名刺の作成や、聴覚障害のあるドライバーが初めて配送に行くときには幹部が同行して顧客に挨拶をするなど、顧客先にスムーズに理解してもらえるようにし、本人の精神的負担の軽減を図っている。
〈事例2〉就労支援機器を活用した中途視覚障害者の職場復帰事例
病気により視覚に障害が残った職員の雇用継続に当たり、これまでの業務の継続が難しかったため、就労支援機器の貸出制度やジョブコーチ支援を活用し、業務の切り出しを行うことで新たな担当業務での職場復帰を実現した。
視覚障害があってもパソコンを活用すれば可能な業務が数多くあり、スキルは支援機関で学ぶことができる。事業所では、中央障害者雇用情報センターの就労支援機器の貸出制度を活用し、拡大読書器、画面読み上げソフト、画面拡大ソフトなどを整備した。
職場復帰後は、職場内の各部署から提案された事務について、ジョブコーチから効率的な作業方法の提案などを受け、業務内容を整え、本人への支援も同様に進めた。仕事上の悩みや困っていることをジョブコーチに聞いてもらい、事業所の担当者と連携しながら具体的な解決案へとつなげた。
〈事例3〉重度身体障害者の在宅雇用事例
通勤が困難であるため働くことができなかった重度身体障害のある人がICTを活用し在宅にてイラストデザイン等の業務を担当している。
在宅で業務を行う環境を整備するため、作業療法士・家族と連携し、身体負担を軽減できる姿勢へ改善した。さらに、在宅社員のスキルアップのために、WEB会議システムを活用したOJTを実施している。また、フレックスタイム制を導入することで、通院の日程確保への配慮や、職員ごとの体調に合わせた働き方が可能になっている。
(4)就労に向けた各種訓練の推進
国立障害者リハビリテーションセンター自立支援局においては、一般就労を希望する65歳未満の障害のある人に対して、就労に必要な知識や技能を獲得させるため、障害福祉サービス(就労移行支援)を実施している。身体障害又は発達障害のある人には、生産活動、職業体験等の必要な訓練を、視覚に障害のある人には、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師の国家資格取得のための教育訓練を行い、就労に関する相談や支援を通じて、障害のある人の適性に見合った職場への就労とその定着を支援している。
(5)障害のある人の創業・起業等の支援
生活福祉資金貸付制度は、低所得世帯、障害者世帯等に対し、資金の貸付けと必要な相談支援を行うことにより、その経済的自立及び生活意欲の助長促進並びに在宅福祉及び社会参加の促進を図り、安定した生活を送れるようにすることを目的に、都道府県社会福祉協議会を実施主体として運営されている。本制度の資金種類の1つとして、「福祉資金」が設けられており、障害者世帯が生業を営むために必要な経費や技能習得に必要な経費及びその期間中の生計を維持するために必要な経費等の貸付を行っている。
また、経済産業省では、地域経済を活性化させるため、産業競争力強化法(平成25年法律第98号)の認定市区町村(平成29(2017)年12月現在で1,379市区町村)において、新たに創業を行う者に対して、その創業等に要する経費の一部を助成し、新たな需要や雇用の創出等を促す取組を行っており、障害のある人も活用できる制度となっている。
(6)障害のある人の就労支援に当たっての農業部局との連携
障害者就労施設において、稲作や野菜、果樹、花き、畜産、農産加工や販売等、幅広い分野で農業活動等が取り組まれている。農業を通じて高い賃金・工賃を実現している事業所もあり、障害のある人の就労機会の確保や賃金・工賃の向上といった面のみならず、地域の農業における労働力不足への対応といった面でも意味のある取組であり、農業と福祉の連携の推進を図ることは重要な課題となっている。
このため、農林水産省では、障害のある人等のための福祉農園の開設・整備等の取組を支援しているほか、全国の地方農政局等に行政、福祉、農業等の関係者で構成する「農業分野における障害者就労の促進ネットワーク(協議会)」を設置し、シンポジウムを通じて優良事例や施策の紹介などを行っている。
一方、厚生労働省では、農福連携による障害のある人の就労支援を推進する取組として、農業分野に取り組もうとする就労継続支援B型事業所等に対して、農業分野の専門家を派遣し、農業に関する知識・技術の習得や6次産業化の推進に向けた助言・指導を行うとともに、都道府県において農業に取り組む就労継続支援B型事業所等が参加する農福連携マルシェ(市場)の開催を支援している。平成28(2016)年度は28府県、平成29(2017)年度は40道府県に対し支援を実施しており、平成30(2018)年度は全都道府県での実施を目指している。
また、農林水産省と厚生労働省とが連携して「『農』と福祉の連携プロジェクト」を推進し、農業関係者と福祉関係者との相互理解を深めるため、農福連携推進フォーラムを開催(平成29年度は平成30年3月23日)している。
これらの取組を通じて、両省が連携しつつ、優良事例や支援策の周知を含め積極的に情報発信を行い、農業と福祉の連携や、それを通じた障害のある人の賃金・工賃の向上の推進に取り組むこととしている。
(7)職場での適応訓練
ア 職場適応訓練
障害のある人に対し、作業環境への適応を容易にし、訓練修了後も引き続き雇用されることを期待して、都道府県知事又は都道府県労働局長が民間事業主等に委託して実施する訓練で、訓練生には訓練手当が、事業主には職場適応訓練費(2万4千円/月)が支給される(訓練期間6か月以内(原則))。また、重度の障害のある人に対しては、訓練期間を長くし(1年以内)、職場適応訓練費も増額(2万5千円/月)している。
イ 職場適応訓練(短期)
障害のある人に対し、実際に従事することとなる仕事を経験させることにより、就業への自信を持たせ、事業主に対しては対象者の技能程度、適応性の有無等を把握させるため、都道府県知事又は都道府県労働局長が民間事業主等に委託して実施する訓練で、訓練生には訓練手当が、事業主には、職場適応訓練費(960円/日)が支給される(訓練期間2週間以内(原則))。また、重度の障害のある人に対しては、訓練期間を長くし(4週間以内(原則))、職場適応訓練費も増額(1,000円/日)している。
(8)資格取得試験等(法務関係)における配慮
司法試験においては、障害のある人がその有する知識及び能力を答案等に表すに当たり、その障害が障壁となり、事実上の受験制限とならないために、障害のない人との実質的公平を図り、そのハンディキャップを補うために必要な範囲で措置を講じている。具体的には、視覚障害者に対する措置として、パソコン用電子データ又は点字による出題、解答を作成するに当たってのパソコンの使用、拡大した問題集・答案用紙の配布、試験時間の延長等を、肢体障害者に対する措置として、解答を作成するに当たってのパソコンの使用、拡大した答案用紙の配布、試験時間の延長等を認めるなどの措置を講じている。
司法書士試験、土地家屋調査士試験及び簡裁訴訟代理等能力認定考査においては、その有する知識及び能力を答案等に表すことについて障害のない人と比較してハンディキャップを補うために必要な範囲で措置を講じている。具体的には、弱視者に対する拡大鏡の使用や記述式試験の解答を作成するに当たってのパソコン(ワープロ)の使用を、また、試験時間の延長を認める等の措置を講じている。
(9)福祉施設等における仕事の確保に向けた取組
ア これまでの取組
重点施策実施5か年計画(平成20(2008)年度~平成24(2012)年度)において、国は公共調達における競争性及び公正性の確保に留意しつつ、福祉施設等の受注機会の増大に努めるとともに、地方公共団体等に対し、国の取組を踏まえた福祉施設等の受注機会の増大の推進を要請することとされていた。これを踏まえ、官公需(官公庁の契約)を積極的に進めるため、各府省の福祉施設受注促進担当者会議を開催し、更なる官公需の促進を依頼するなどの取組を行うとともに、平成20年に地方自治法施行令を改正し、地方公共団体の契約について随意契約によることができる場合として、地方公共団体が障害者支援施設等から、クリーニングや発送作業などの役務の提供を受ける契約を追加する措置を講じた。
また、国等による障害者就労施設等からの物品等の調達の推進等に関する法律(平成24年法律第50号)(以下「障害者優先調達推進法」という。)の施行(平成25(2013)年4月)にあわせて、「予算決算及び会計令」を改正し、随意契約によることができる場合として、「慈善のため設立した救済施設から役務の提供を受けるとき」を追加する措置を講じた。
イ 障害者優先調達推進法の成立
障害のある人が自立した生活を送るためには、就労によって経済的な基盤を確立することが重要である。そのためには、障害者雇用を支援するための積極的な対策を図っていくことも重要であるが、加えて、障害のある人が就労する施設等の仕事を確保し、その経営基盤を強化する取組が求められている。
このような観点から、障害者就労施設等への仕事の発注に関し、民間企業を始め国や地方公共団体等において様々な配慮が行われてきた。
平成25(2013)年4月からは、障害者優先調達推進法が施行され、障害者就労施設等で就労する障害のある人や在宅で就業する障害のある人の自立の促進に資するため、国や地方公共団体などの公的機関が物品やサービスを調達する際、障害者就労施設等から優先的に購入することを進めるために、必要な措置を講じることとなった。当該法律に基づき、全ての省庁等で調達方針を策定し、障害者就労施設等が供給する物品等の調達に取り組んでいる。
(10)職業能力開発の充実
ア 障害者職業能力開発校における職業訓練の推進
一般の公共職業能力開発施設において職業訓練を受けることが困難な重度の障害のある人については、障害者職業能力開発校において、職業訓練を実施している。
平成30(2018)年4月1日現在、障害者職業能力開発校は国立が13校、都道府県立が5校で、全国に18校が設置されており、国立13校のうち2校は独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が運営し、他の11校は都道府県に運営を委託している。
障害者職業能力開発校は、入校者の障害の重度化・多様化が進んでいることを踏まえ、個々の訓練生の障害の態様を十分に考慮し、きめ細かい支援を行うとともに、職業訓練内容の充実を図ることにより、障害のある人の雇用の促進に資する職業訓練の実施に努めている。
なお、障害者職業能力開発校の就職率については、障害者基本計画(第4次)において、平成34(2022)年度に70%となるよう目標設定されている。
イ 一般の公共職業能力開発施設における受入れの促進
都道府県立の一般の公共職業能力開発施設において、精神障害や発達障害のある人を対象とした訓練コースの設置を促進し、受講機会の拡充を図っている。
ウ 障害のある人の多様なニーズに対応した委託訓練
雇用・就業を希望する障害のある人の増大に対応し、居住する地域で職業訓練が受講できるよう、地域の企業、社会福祉法人、特定非営利活動法人、民間教育訓練機関等を活用した障害のある人の多様なニーズに対応した委託訓練(以下「障害者委託訓練」という。)を各都道府県において実施している。
障害者委託訓練は、主として座学により知識・技能の習得を図る「知識・技能習得訓練コース」、企業の現場を活用して実践的な職業能力の向上を図る「実践能力習得訓練コース」、通校が困難な人などを対象とした「e-ラーニングコース」、特別支援学校高等部等に在籍する生徒を対象とした「特別支援学校等早期訓練コース」及び在職障害者を対象とした「在職者訓練コース」の5種類があり、個々の障害特性や企業の人材ニーズに応じて多様な職業訓練を行うことが可能な制度である。なお、委託訓練修了者の就職率については、平成28(2016)年度は46.2%であり、障害者基本計画(第4次)において、平成34(2022)年度に55%となるよう目標設定されている。
エ 精神障害・発達障害のある人に対する職業訓練
ハローワークに求職を申し込む精神障害のある人や発達障害のある人の増加が近年著しいことを踏まえ、精神障害のある人や発達障害のある人の障害特性に配慮した訓練コースの設置を推進することとしている。このため、都道府県が運営する障害者職業能力開発校で精神障害のある人や発達障害のある人の障害特性に配慮した訓練コースの設置が円滑に行われるよう独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が運営する障害者職業能力開発校において、訓練計画の策定、指導技法、訓練コース設置後のフォローアップ支援を行っている。また、前述の障害のある人の多様なニーズに対応した委託訓練においても、精神障害のある人の増加や精神障害のある人向けの職業訓練の実施に係るノウハウの蓄積が乏しい現状を踏まえ、平成26(2014)年度から、地域の就労支援機関に委託して精神障害のある人向け職業訓練の受託先の開拓や職業訓練の設定、実施等の支援を行っている。
オ 障害のある人の職業能力開発に関する啓発
① 全国障害者技能競技大会(愛称:アビリンピック)の実施
全国障害者技能競技大会は、障害のある人の職業能力の開発を促進し、技能労働者としての自信と誇りを持って社会に参加するとともに、広く障害のある人に対する社会の理解と認識を深め、障害のある人の雇用の促進を図ることを目的として、アビリンピックの愛称の下、昭和47(1972)年から実施している。
平成29(2017)年度には、栃木県で第37回大会が開催(11月17日~19日)された。
平成29(2017)年度は、11月17日から19日までの3日間にわたり、栃木県において、「とちぎから 未来へ翔(はばた)く技と夢」という大会スローガンのもと、第37回全国障害者技能競技大会が開催された。
大会には、技能競技22種目に全国から365名の選手が参加し、日頃培った技能を競い合うとともに、障害者雇用に関する新たな職域の一部として、「クリーニング」、「製パン加工」、「ベッドメイキング」の3職種による技能デモンストレーションが実施された。
また、第37回アビリンピックの開催に併せて、障害のある人の雇用に関わる展示、実演及び作業体験など総合的なイベントである「障害者ワークフェア2017」が同時開催され、盛大な大会となった。
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製品パッキング種目競技風景(第37回大会)
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縫製種目競技風景(第37回大会)
② 国際アビリンピックへの日本選手団の派遣
国際アビリンピックは、昭和56(1981)年の「国際障害者年」を記念して、障害のある人の職業的自立意欲の増進と職業技能の向上を図るとともに、事業主及び社会一般の理解と認識を深め、更に国際親善を図ることを目的として、昭和56年10月に第1回大会が東京で開催され、以降おおむね4年に1度開催されている。第9回国際アビリンピックがフランス共和国ボルドー市において平成28(2016)年3月に開催され、日本から、第35回全国大会での成績優秀者31名の選手が参加した。
(11)雇用の場における障害のある人の人権の確保
全国の法務局・地方法務局及びその支局では、人権相談等により雇用の場における、障害のある人に対する差別的取扱い等の人権侵害の疑いのある事案を認知した場合には、事案に応じた適切な措置を講じるなどして、人権侵害による被害の救済及び予防を図っている。