第5章 住みよい環境の基盤づくり 第1節 2
第1節 障害のある人の住みよいまちづくりと安全・安心のための施策
2.ユニバーサルデザインの考え方を踏まえたバリアフリー施策の推進
「どこでも、だれでも、自由に、使いやすく」というユニバーサルデザインの考え方を踏まえた、高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(平成18年法律第91号)(以下「バリアフリー法」という。)に基づき、施設等(旅客施設、車両等、道路、路外駐車場、都市公園、建築物等)の新設等の際の「移動等円滑化基準」への適合義務、既存の施設等に対する適合努力義務を定めるとともに、「移動等円滑化の促進に関する基本方針」において、平成32(2020)年度末までの整備目標を定めている。交通政策基本法(平成25年法律第92号)に基づく交通政策基本計画(平成27年2月閣議決定)においても、バリアフリーをより一層身近なものにすることを目標の1つとして掲げており、これらを踏まえながらバリアフリー化の推進を図っている。
また、市町村が作成する基本構想に基づき、重点整備地区において重点的かつ一体的なバリアフリー化を推進しているとともに、バリアフリー化の促進に関する国民の理解を深め協力を求める「心のバリアフリー」を推進するため、高齢者、障害のある人等の介助体験や擬似体験を行う「バリアフリー教室」等を開催しているほか、バリアフリー施策のスパイラルアップ(段階的・継続的な発展)を図っている。
(1)公共交通施設や建築物等のバリアフリー化の推進
バリアフリー法では、公共交通機関・建築物・道路・路外駐車場・都市公園について、バリアフリー化基準に適合するように求め、高齢者や障害のある人などが日常生活や社会生活において利用する施設の整備の促進によって、生活空間におけるバリアフリー化を進めることとしている。
なお、公共交通機関には、鉄軌道、バス、福祉タクシー、旅客船、航空機が含まれ、これらの車両等を新たに導入する際には、基準に適合させることとしている。
(2)地域における重点的・一体的なバリアフリー化の推進
市町村は、移動等の円滑化を図ることが必要な一定の地区を重点整備地区とし、移動等の円滑化に係る事業の重点的かつ一体的な推進に関する基本構想を作成することができる。
基本構想の作成にあたっては、利用者の視点を反映するよう、以下の制度を設けている。
ア 協議会制度
基本構想の作成の際、高齢者や障害のある人などの計画段階からの参加の促進を図るため、作成に関する協議等を行う協議会制度を法律に位置づけている。この協議会は、特定事業の実施主体はもとより、高齢者や障害のある人、学識経験者その他市町村が必要と認める者で構成される。
加えて、バリアフリー化の対象となる事業の実施主体は、市町村から通知を受けた場合に、正当な理由がある場合を除き、必ず協議会に参加することとしており、協議の場の設定を法的に担保することで、調整プロセスの促進を図ることとしている。
イ 基本構想作成提案制度
基本構想を作成する市町村の取組を促す観点から、基本構想の内容を、高齢者や障害のある人などが市町村に対し具体的に提案できる提案制度を設けている。
(3)バリアフリー化を推進する上での国及び国民の責務
ア 国民の理解促進
バリアフリー法では、バリアフリー化の促進に関する国民の理解を深め、バリアフリー化の実施に関する国民の協力を求めるよう努めることを国の責務として定めるとともに、高齢者や障害のある人などが円滑に移動し施設を利用できるようにすることへの協力だけではなく、高齢者や障害のある人などの自立した日常生活や社会生活を確保することの重要性についての理解を深めることが、国民の責務として定められている。
イ 「スパイラルアップ」の導入等
高齢化やユニバーサルデザインの考え方が進展する中、バリアフリー化を進めるためには、具体的な施策や措置の内容について、施策に関係する当事者の参加の下、検証し、その結果に基づいて新たな施策や措置を講じることによって段階的・継続的な発展を図っていく「スパイラルアップ」の考え方が重要であり、バリアフリー法では、これを国の果たすべき責務として位置づけている。
高齢者、障害者等の移動等円滑化の促進に関する法律(平成18年法律第91号)(以下「バリアフリー法」という。)に基づき、駅などのハードの整備に加え、高齢者、障害のある人等の移動等円滑化の促進に関する国民の理解及び協力を求めること、いわゆる「心のバリアフリー」を国の責務として推進している。これまでも、介助の擬似体験等を通じバリアフリーに対する国民の理解増進を図る「バリアフリー教室」の全国各地での開催や、鉄道利用者への声かけキャンペーン等の啓発活動の推進を行っている。
平成30年2月に閣議決定され、第196回国会へ提出されたバリアフリー法の改正法案において、国及び国民の責務規定に、「高齢者、障害者等が公共交通機関を利用して移動するために必要となる支援」を協力の例示として加えることとしている。
今後この改正を踏まえ、バリアフリー教室の開催を一層充実させること、2020年東京大会に向けて、鉄道の利用に当たり、高齢者、障害のある人等に対するサポートを行っていただくよう、呼びかけるキャンペーンを行うこと、障害のある人等への接遇を的確に行うため、交通事業者向けのガイドラインを新たに作成し、より実践的な研修が行われるよう働きかけることなどを行うこととしている。