第4章 住みよい環境の基盤づくり 第2節 2
第2節 障害のある人の情報アクセシビリティを向上するための施策
2.社会参加を支援する情報通信システムの開発・普及
(1)電子投票の実施の促進
電子投票とは、電磁的記録式投票機(いわゆる電子投票機)を用いて投票する方法であり、開票事務の迅速化に貢献するとともに、自書が困難な選挙人であっても比較的容易に投票することが可能である。
我が国における電子投票は、2002年2月より、地方公共団体の議会の議員及び長の選挙において導入することが認められている。
総務省としては、電子投票システムの更なる信頼性向上のための技術的な課題や電子投票促進のための改善点等についての検討を引き続き行い、地方公共団体に対する必要な情報の提供に取り組んでいる。
(2)テレワークの推進
テレワークは、ICTを利用し、時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方であり、女性、高齢者、障害のある人等の就業機会の拡大にも寄与するものと期待されている。
政府では、テレワークが様々な働き方を希望する人の就業機会の創出及び地域の活性化等に資するものとして、関係府省が連携し、テレワークの一層の普及拡大に向けた環境整備、普及啓発等を推進している。
総務省においては、社内コミュニケーションに不安がある、セキュリティが心配であるといった様々な課題に対応すべく、セミナーの開催、専門家の派遣、先進事例の表彰、セキュリティガイドラインの策定・改定等の様々な施策を推進している。
また、2017年から、関係府省・団体が連携し、2020年東京オリンピックの開会式が予定されている7月24日を「テレワーク・デイ」と位置付け、全国一斉のテレワークを実施している。2018年には7月23日から27日の期間中に、7月24日プラスその他の日の合計2日間以上テレワークを実施する「テレワーク・デイズ」として規模を拡大し、参加を呼びかけたところ、1,682団体、延べ30万人以上が参加した。
今後、ますます発展することが想定される5G 、IoT(※)、AI(※)などの新たなICTによって、障害のある人に対し、障害の特性、状態、生活実態等の様々な状況にきめ細かな対応を可能とする製品やサービスの開発・提供が可能となり、障害のある人の自分らしい人生への支援に資することが期待される。
総務省では、2017年11月、情報通信審議会情報通信政策部会の下に「IoT新時代の未来づくり検討委員会」を設置し、同委員会の下に設置された「人づくりWG」において、2030~2040年頃の未来イメージから逆算する形で、障害のある人に対するICT利活用支援策を中心に検討し、2018年8月、「未来をつかむTECH戦略(第5次中間答申)」の中で、年齢、障害の有無、性別、国籍等にかかわらず、みんなが支え合うインクルーシブな社会を目指す「スマートインクルージョン構想」を提言した。
総務省は、本答申を受け、2018年11月、新たに厚生労働省と共宰で「デジタル活用共生社会実現会議」を開催し、誰もがデジタル活用の利便性を享受し、多様な価値観やライフスタイルを持って豊かな人生を送ることができる「インクルーシブ(包摂)」な社会の実現を目指し、検討を行った。2019年3月には本会議の議論の成果として、共生社会の実現に向けた障害のある人の社会参画に関する課題を日常生活等の支援、就労環境の整備及び社会の意識改革(心のバリアフリー)の3点として整理し、その課題解決に向けたICT活用による諸施策を提言の形でとりまとめた。とりまとめでは、障害当事者参加型のICT機器・サービスの開発体制の整備や、障害のある人の情報アクセシビリティ確保のための企業によるアクセシビリティ基準の自己評価の仕組み(日本版VPAT)の導入について提言が行われた。
また、学校でのプログラミング教育を通じてICTへの興味・関心を高めた児童生徒が、障害の有無によらず、地域において発展的・継続的に学べる環境づくりに資するために、2018年度より「地域におけるIoTの学び推進事業」(地域ICTクラブ)を実施している。
※IoTとは、Internet of Things(モノのインターネット)の略。自動車、家電、ロボット、施設などあらゆるモノがインターネットにつながり、情報のやり取りをすることで、モノのデータ化やそれに基づく自動化等が進展し、新たな付加価値を生み出すというコンセプトを表した語。
※AIとは、Artificial Intelligence (人工知能)の略。コンピュータを使って、学習・推論・判断など人間の知能のはたらきを人工的に実現するための技術。
<事例:デジタル活用共生社会実現会議>
- デジタル活用共生社会実現会議及びその下にあるICTアクセシビリティ確保部会の構成員として、聴覚、視覚、知的障害当事者が参加しているため、会議において手話言語通訳や要約筆記による情報保障を行い、障害の有無、年齢にかかわらず議論に参加できるよう配慮したアクセシブルミーティングにより会議を開催している。