第4章 住みよい環境の基盤づくり 第1節 2
第1節 障害のある人の住みよいまちづくりと安全・安心のための施策
2.ユニバーサルデザインの考え方を踏まえたバリアフリー施策の推進
「どこでも、だれでも、自由に、使いやすく」というユニバーサルデザインの考え方を踏まえた、「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」(平成18年法律第91号。以下「バリアフリー法」という。)に基づき、施設等(旅客施設、車両等、道路、路外駐車場、都市公園、建築物等)の新設等の際の「移動等円滑化基準」への適合義務、既存の施設等に対する適合努力義務を定めるとともに、「移動等円滑化の促進に関する基本方針」(平成23年国家公安委員会・総務省・国土交通省告示第1号)において、2020年度末までの整備目標を定めている。「交通政策基本法」(平成25年法律第92号)に基づく「交通政策基本計画」(平成27年2月13日閣議決定)においても、バリアフリーをより一層身近なものにすることを目標の1つとして掲げており、これらを踏まえながらバリアフリー化の推進を図っている。
また、市町村が作成する「移動等円滑化促進方針」及び「移動等円滑化基本構想」に基づき、移動等円滑化促進地区及び重点整備地区において面的かつ一体的なバリアフリー化を推進しているとともに、バリアフリー化の促進に関する国民の理解を深め協力を求める「心のバリアフリー」を推進するため、高齢者、障害のある人等の介助体験や擬似体験を行う「バリアフリー教室」等を開催しているほか、バリアフリー施策のスパイラルアップ(段階的・継続的な発展)を図っている。
2018年度末(現状) | 2020年度末までの目標 | |||
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鉄軌道 | 鉄軌道駅※ | 90% | 3,000人/日以上を原則100% | |
ホームドア・可動式ホーム柵 | 84路線 783駅 | 約800駅 | ||
鉄軌道車両 | 73% | 約70% | ||
バス | バスターミナル※ | 94% | 3,000人/日以上を原則100% | |
乗合バス車両 | ノンステップバス | 59% | 約70% | |
リフト付きバス等 | 5% | 約25% | ||
貸切バス車両 | 1,013台 | 約2,100台 | ||
船舶 | 旅客船ターミナル※ | 100% | 3,000人/日以上を原則100% | |
旅客船(旅客不定期航路事業の用に供する船舶を含む。) | 46% | 約50% | ||
航空 | 航空旅客ターミナル※ | 87% | 3,000人/日以上を原則100% | |
航空機 | 98% | 原則100% | ||
タクシー | 福祉タクシー車両 | 28,602台 | 約44,000台 | |
道路 | 重点整備地区内の主要な生活関連経路を構成する道路 | 89% | 原則100% | |
都市公園 | 園路及び広場 | 57% | 約60% | |
駐車場 | 48% | 約60% | ||
便所 | 36% | 約45% | ||
路外駐車場 | 特定路外駐車場 | 65% | 約70% | |
建築物 | 2,000m2以上の特別特定建築物の総ストック | 60% | 約60% | |
信号機等 | 主要な生活関連経路を構成する道路に設置されている信号機等 | 99% | 原則100% |
(1)基本理念
「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律の一部を改正する法律」(平成30年法律第32号)において、「バリアフリー法」に基づく措置は、「共生社会の実現」、「社会的障壁の除去」に資することを旨として行わなければならないことが基本理念として新たに明記された。
(2)公共交通施設や建築物等のバリアフリー化の推進
「バリアフリー法」では、公共交通機関・建築物・道路・路外駐車場・都市公園について、「バリアフリー化基準」に適合するように求め、高齢者や障害のある人などが日常生活や社会生活において利用する施設の整備の促進によって、生活空間におけるバリアフリー化を進めることとしている。
なお、公共交通機関には、鉄軌道、バス、福祉タクシー、旅客船、航空機が含まれ、これらの車両等を新たに導入する際には、基準に適合させることとしている。
さらに、公共交通事業者等によるハード・ソフト一体的な取組を推進するため、一定の要件を満たす公共交通事業者等が、施設整備、旅客支援、情報提供、教育訓練、推進体制等を盛り込んだ「ハード・ソフト取組計画」を毎年度作成し、国土交通大臣に提出するとともに、その取組状況の報告・公表を行うよう義務付ける制度を設けている。
(3)地域における重点的・一体的なバリアフリー化の推進
「バリアフリー法」において、市町村は、移動等円滑化を促進する必要がある地区を移動等円滑化促進地区とし、「移動等円滑化促進方針」を作成するよう努めることとされており、また、重点的かつ一体的に移動等円滑化のための事業を実施する必要がある地区を重点整備地区とし、移動等の円滑化に係る事業の重点的かつ一体的な推進に関する「移動等円滑化基本構想」を作成するよう努めることとされている。
「移動等円滑化促進方針」及び「移動等円滑化基本構想」の作成に当たっては、利用者の視点を反映するよう、以下の制度を設けている。
ア 協議会制度
「移動等円滑化促進方針」及び「移動等円滑化基本構想」の作成の際、高齢者や障害のある人などの計画段階からの参加の促進を図るため、作成に関する協議等を行う協議会制度を法律に位置づけている。この協議会は、高齢者や障害のある人、学識経験者その他市町村が必要と認める者で構成され、「移動等円滑化基本構想」の作成の際は、特定事業の実施主体も構成員として必要となる。
加えて、協議会の構成員として市町村から通知を受けた場合に、正当な理由がある場合を除き、必ず協議会に参加することとしており、協議の場の設定を法的に担保することで、調整プロセスの促進を図ることとしている。
イ 移動等円滑化促進方針及び基本構想作成提案制度
「移動等円滑化促進方針」及び「移動等円滑化基本構想」を作成する市町村の取組を促す観点から、「移動等円滑化促進方針」及び「移動等円滑化基本構想」の内容を、高齢者や障害のある人などが市町村に対し具体的に提案できる提案制度を設けている。
(4)バリアフリー化を推進する上での国及び国民の責務
ア 国民の理解促進
「バリアフリー法」では、バリアフリー化の促進に関する国民の理解を深め、バリアフリー化の実施に関する国民の協力を求めるよう努めることを国の責務として定めるとともに、高齢者や障害のある人などが円滑に移動し施設を利用できるようにすることへの協力だけではなく、高齢者や障害のある人などの自立した日常生活や社会生活を確保することの重要性についての理解を深めることが、国民の責務として定められている。さらに、「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律の一部を改正する法律」においては、「心のバリアフリー」の推進のため、国及び国民の責務として、高齢者、障害のある人等に対する支援(鉄道利用者による声かけ等)を明記した。
イ 「スパイラルアップ」の導入等
高齢化やユニバーサルデザインの考え方が進展する中、バリアフリー化を進めるためには、具体的な施策や措置の内容について、施策に関係する当事者の参加の下、検証し、その結果に基づいて新たな施策や措置を講じることによって段階的・継続的な発展を図っていく「スパイラルアップ」の考え方が重要であり、「バリアフリー法」では、これを国の果たすべき責務として位置づけている。この考え方を踏まえ、国が関係行政機関及び障害のある人を含む関係者で構成する会議を設け、定期的に移動等円滑化の進展状況を把握し、評価するよう努めることとされているため、国土交通省では、これまでに「移動等円滑化評価会議」を、3回開催するなど、障害のある人等のニーズを丁寧に把握するとともに、バリアフリーに関する好事例を収集し、横展開を図ることで、バリアフリー施策のスパイラルアップを図っている。
「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」(平成18年法律第91号)に基づき、駅などのハードの整備に加え、高齢者、障害のある人等の移動等円滑化の促進に関する国民の理解及び協力を求めること、いわゆる「心のバリアフリー」を国の責務として推進している。これまでも、介助の擬似体験等を通じバリアフリーに対する国民の理解増進を図る「バリアフリー教室」の全国各地での開催や、鉄道利用者への声かけキャンペーン等の啓発活動の推進を行っている。
2018年5月に成立した「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律の一部を改正する法律」(平成30年法律第32号)において、国及び国民の責務として、「高齢者、障害者等が公共交通機関を利用して移動するために必要となる支援」を新たに明記している。
この改正を踏まえ、①「バリアフリー教室」の開催を一層充実させること、②2020年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会に向けて、鉄道の利用に当たり、高齢者、障害のある人等に対するサポートを行っていただくよう、呼びかけるキャンペーンを行うこと、③障害のある人等への接遇を的確に行うため、交通事業者向けのガイドラインを作成するとともに、より実践的な研修が行われるようモデルとなる接遇研修モデルプログラムを作成し、交通事業者等による実施の推進を図ることとしている。また、観光事業者向けでは、「高齢の方・障害のある方などをお迎えするための接遇マニュアル(宿泊施設編/旅行業編/観光地域編)」を作成し、観光関係団体による研修等で活用されている。