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第1章 新型コロナウイルス感染症への対応 3

3.障害のある人に関わる主な措置(2021年4月現在)

(1)障害福祉関係

障害福祉サービス等事業所を始めとする社会福祉施設等が提供する各種サービスは、利用者の方々やその家族の生活を継続する上で欠かせないものであり、十分な感染防止対策を前提として、利用者に対して必要な各種サービスが継続的に提供されることが重要である。

そのため、厚生労働省では、地方自治体に対し、社会福祉施設等における感染拡大防止に向けた取組について、感染者が発生した場合の留意事項や衛生用品等の適切な管理、障害福祉サービス等の報酬、人員、施設・設備及び運営基準等の柔軟な取扱いについて要請するとともに、緊急事態宣言後の対応等について周知した。

障害福祉サービス事業者等への支援として、令和2年度第一次補正予算において、感染者が発生した事業所等への各種手当や消毒の費用などのかかり増し費用、人員確保のための費用の助成を実施した。また、令和2年度第二次補正予算において、感染症対策の実施のために必要なかかり増し費用やサービス利用休止中の利用者への利用再開支援に係る費用を助成するとともに、利用者と接する職員に対し慰労金を支給した。

このほか、障害福祉サービス現場における感染症への対応力の底上げを図るため、感染対策マニュアルや業務継続ガイドラインを策定し、周知した。

また、視聴覚障害者等、情報・コミュニケーション支援を必要とする者に対する新型コロナウイルス感染症への対応について、相談に関する連絡先(電話、FAX番号やメールアドレス)の周知、ホームページ上の情報のテキストデータや字幕映像の提供等、障害特性を踏まえた情報提供の配慮を地方自治体に対して要請した。

さらに、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、多くの国民が不安やストレスを抱えていることから、都道府県・指定都市に設置されている精神保健福祉センター等において、新型コロナウイルス感染症に起因する心のケアに関する相談対応を実施している。また、新型コロナウイルス感染症による国民の心理面への影響を把握するため、「新型コロナウイルス感染症に係るメンタルヘルスに関する調査」を実施し、調査結果を踏まえて作成した国民向けリーフレットを地方自治体等に配布した。

(2)障害者雇用関係

ハローワークにおいては、感染拡大防止の観点から、電話による職業相談や、郵送又はインターネットなどできる限り来所を求めない方式により求職申込み又は求人申込みが可能であることを周知した。また、地域障害者職業センター及び障害者就業・生活支援センターにおいて、できる限り来所を求めない方式により支援の継続に努めること等、柔軟な対応を推進した。2021年度も新型コロナウイルス感染症の影響が懸念されるため、引き続きオンライン支援等の対面以外の相談を推奨することにより、感染予防を図りつつ、継続した支援を行っていく。

さらに、支援対象障害者の職場定着支援(障害者介助等助成金、職場適応援助者助成金)について、従来対面での支援を助成対象としていたところ、ICT等を活用したオンラインによる支援も助成対象とした。

また、事業主による雇用維持の取組を支援するため、雇用調整助成金について支給要件の緩和、助成内容の拡充等の特例措置を講じたほか、トライアル雇用助成金(障害者トライアルコース及び障害者短時間トライアルコース)について、トライアル雇用期間に感染拡大防止のため休業した事業主は、休業期間を当初のトライアル雇用期間から除き、トライアル雇用の終了予定日の翌日から起算して、当該除外された期間に相当する勤務日数分を、トライアル雇用期間に追加できることとした。

加えて、事業者団体に対して、障害のある人の雇用の安定に向け、特段の配慮を求める要請を行った。

(3)教育関係

各教育機関等における新型コロナウイルス感染症に関する対応については、国内で感染者が確認され始めた当初より、文部科学省において、新型コロナウイルスに関連した感染症対策に係る情報を、児童生徒、学生、保護者及び教職員等に周知するとともに、安全確保に細心の注意を払う旨を教育委員会等に依頼するなど、各種対応を行ってきた。

ア 初等中等教育

2020年2月27日に開催された対策本部において、子供たちの健康・安全を第一に考え、多くの子供たちや教職員が、日常的に長時間集まることによる感染リスクにあらかじめ備える観点から、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校等における一斉臨時休業を要請する方針が内閣総理大臣から示された。このことを受け、翌28日に、文部科学省から各学校の設置者へ春季休業開始日までの間の臨時休業の実施を要請し、多くの学校において、臨時休業の措置が取られた。

この一斉臨時休業に際し、特別支援学校等に在籍する障害のある幼児児童生徒の中には、保護者が仕事を休めない場合に自宅等で一人で過ごすことができない者がいることも考えられることから、地域の障害福祉サービス等も活用して、幼児児童生徒の居場所の確保に取り組むこと等を要請するなど、障害のある子供の居場所の確保に取り組んだ。

さらに、2020年3月24日に学校の再開に向けて「新型コロナウイルス感染症に対応した学校再開ガイドライン」及び「新型コロナウイルス感染症に対応した臨時休業の実施に関するガイドライン」を周知し、その後、これらのガイドライン等については、「新型コロナウイルス感染症に対応した持続的な学校運営のためのガイドライン」として整理し、周知した。なお、「臨時休業ガイドライン」については、専門家会議の見解や新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言を受け、改訂を行った。

また、臨時休業等に伴い学校に登校できない児童生徒の学びを保障するために、2020年4月10日に「新型コロナウイルス感染症対策のための臨時休業等に伴い学校に登校できない児童生徒の学習指導について(通知)」において、学校が課す家庭学習に関する基本的な考え方を示すとともに、5月7日に「新型コロナウイルス感染症に対応した臨時休業中における障害のある児童生徒の家庭学習支援に関する留意事項について」において、障害のある児童生徒の家庭学習を支援するに当たり、障害種毎の家庭学習上の留意事項を通知するとともに、各学校において家庭学習への支援を積極的に行うことを要請した。

緊急事態宣言は段階的に解除されたが、学校においては児童生徒等及び教職員の感染リスクを可能な限り低減しつつ、教育活動を継続し、子供の健やかな学びを保障していくことが必要であることから、学校の衛生管理の観点から、児童生徒等の感染リスクを低減するための取組の参考になるよう5月22日に「学校における新型コロナウイルス感染症に関する衛生管理マニュアル」を作成し、最新の知見を踏まえ、随時改訂し、周知している。6月19日には、これまで文部科学省がガイドラインやマニュアル等で示してきた障害のある幼児児童生徒への指導等を行う際の基本的な考え方などを「特別支援学校等における新型コロナウイル感染症対策に関する考え方と取組」として整理し、周知した。

2021年1月7日に内閣総理大臣より行われた「新型インフルエンザ等緊急事態宣言」及び13日の区域拡大を受けて、小学校、中学校及び高等学校、特別支援学校等における新型コロナウイルス感染症対策の徹底について周知した。

イ 高等教育

高等教育段階においては、新型コロナウイルスの感染拡大防止と学生の学修機会の確保を両立するため、2020年6月5日に「大学等における新型コロナウイルス感染症への対応ガイドライン」をまとめ、各大学等に対して周知を行った。また、コロナ禍においても学びを継続するため、大学等における遠隔教育の実施に関する環境整備への支援を行うとともに、障害のある学生の受講についても配慮するよう、2020年5月22日に「学事日程等の取扱い及び遠隔授業の活用に係るQ&A」において周知した。他方、大学教育はオンライン授業だけですべてが完結するものではなく、人的交流機会も重要であるため、2020年9月15日に発出した「大学等における本年度後期等の授業の実施と新型コロナウイルス感染症の感染防止対策について」等により、各大学等に対して、感染防止対策を十分に講じた上での対面授業の機会の確保について検討を促すとともに、各大学等における取組や状況についての調査を実施し、優れた事例や工夫と併せて、授業実施に関する留意事項等について、累次にわたって周知を行った。

また、新型コロナウイルス感染症の影響で家計が急変し経済的に困窮した学生等が、進学・修学をあきらめないようにしっかり支えることも重要であるため、高等教育の修学支援新制度や日本学生支援機構の貸与型奨学金による支援を行ったほか、授業料等減免を実施する大学等への支援を行った。

ウ 社会教育

文部科学省は、公民館や図書館等の社会教育施設について、障害の有無にかかわらず、全ての人々にとって利用しやすい施設となるよう促しているところである。新型コロナウイルス感染拡大への対応としては、2020年5月に公民館や図書館等の全国組織が策定した感染症対策ガイドラインを地方公共団体に周知することにより、感染予防対策を徹底するとともに、新型コロナウイルス感染拡大時においても障害のある人を含む地域住民が学びの機会を確保できるよう、公民館や図書館等の取組事例を紹介した。加えて、文部科学省からの周知のみならず、全国の地方公共団体の生涯学習・社会教育部局担当職員、社会教育施設等職員を対象に、2020年11月にコロナ禍における社会教育の在り方に関する情報交換会を実施し、全国の関係者間の情報共有の促進に取り組んだ。

(4)スポーツ、文化芸術

ア スポーツ

新型コロナウイルスの感染拡大により、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会が延期になったことに加え、2020年第7回スペシャルオリンピックス日本冬季ナショナルゲーム・北海道や第54回全国ろうあ者体育大会が中止となり、全国障害者スポーツ大会が2023年に延期となるなど、多くの障害者スポーツに係る大会・イベントに影響が生じた。

このような状況を踏まえ、公益財団法人日本障がい者スポーツ協会は、各種スポーツイベントの再開に当たっての基準や再開後の開催時における感染拡大予防のための留意点についてまとめた「スポーツイベントの再開に向けた感染拡大予防ガイドライン」を策定した。また、スポーツ庁は、スポーツイベントの円滑かつ本格的な再開又は実施を促進するため、スポーツイベント主催者による会場における感染拡大防止対策及び継続的な顧客獲得のための広報への支援を行うとともに、新型コロナウイルス感染拡大の影響により活動自粛を余儀なくされたスポーツ関係団体や個人事業主に対し、感染対策を取りつつ、活動の再開・継続を行うための積極的取組に必要な経費の支援を行った。

イ 文化芸術

新型コロナウイルス感染症の流行を踏まえ、障害者芸術等に関するイベントも含め、文化芸術関係イベントの中止や開催方式の変更等文化芸術活動は多大なる影響が生じた。

そのため、政府全体としての雇用維持等に向けた取組に加えて、持続化給付金、雇用調整助成金や中止等となった文化芸術関係イベントのチケット代金の寄附に係る税制特例、税や社会保険料の猶予など、あらゆる手段で、文化事業の継続と雇用の維持を図ってきた。

加えて、文化庁においては、令和2年度第1次・第2次・第3次補正予算を活用し、文化施設の感染症対策、文化芸術団体の活動継続や収益力強化の取組、感染対策を十分に実施したうえで行う積極的な公演への支援等を通じ、文化芸術活動の再開・継続・発展に向けて取り組んだ。

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