第2章 障害のある人に対する理解を深めるための基盤づくり 第1節 2

目次]  [前へ]  [次へ

第1節 広報・啓発等の推進

2.各種の広報・啓発活動

(1)各種の週間・月間等の取組

このほか各種の週間・月間等の活動の中でも、障害のある人への理解を深めるための広報・啓発活動が展開された。

9月1日から30日までの「障害者雇用支援月間」においては、障害のある人の雇用の促進と職業の安定を図ることを目的として、障害のある方々から募集した絵画や写真を原画とした啓発用ポスターが作成され、全国に掲示されたほか、障害者雇用優良事業所等表彰及び優秀勤労障害者表彰を始め、各都道府県においても、障害者雇用促進のための啓発活動が実施された。

10月11日から17日までの「第68回精神保健福祉普及運動」の期間においては、精神障害のある人に対する早期かつ適切な医療の提供及び社会復帰の促進等について、国民の理解を深めることを目的として、精神保健福祉全国大会を始めとする諸行事が実施された。

12月4日から10日までの「人権週間」においては、世界人権宣言の趣旨及びその重要性を広く国民に訴えかけるとともに、障害のある人に対する偏見や差別を解消することを含め、人権尊重思想の普及高揚を図るため、法務省の人権擁護機関である法務局・地方法務局及び人権擁護委員等により、全国各地で講演会の開催、ポスター・パンフレットの作成・配布等の広報・啓発活動が実施された。

2007年12月、国連総会本会議において、毎年4月2日を「世界自閉症啓発デー」とする決議が採択されたことを受け、厚生労働省では、毎年、自閉症を始めとする発達障害に関する正しい知識の浸透を図るためのシンポジウム等を開催している。2021年は新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点からシンポジウムの開催に代えて、発達障害の啓発に関する動画コンテンツを作成し、世界自閉症啓発デー日本実行委員会のホームページで動画配信した。

世界自閉症啓発デー日本実行委員会ホームページ:http://www.worldautismawarenessday.jp/htdocs/】

また、世界自閉症啓発デーを含む4月2日から8日までの「発達障害啓発週間」においては、全国の地方公共団体や関係団体等により様々な啓発活動が実施された。

(2)バリアフリー・ユニバーサルデザイン推進功労者表彰

高齢者、障害のある人、妊婦や子供連れの人を含む全ての人が安全で快適な社会生活を送ることができるよう、ハード、ソフト両面のバリアフリー・ユニバーサルデザインを効果的かつ総合的に推進する観点から、その推進について顕著な功績又は功労のあった個人・団体に対して、内閣総理大臣及び高齢社会対策又は障害者施策を担当する大臣が、毎年度、表彰を行い、その優れた取組を広く普及させることとしている。2021年度においては、7団体を表彰した(図表2-1)。

バリアフリー・ユニバーサルデザイン推進功労者表彰式(2021年12月/写真:内閣府)
図表2-1 令和3年度バリアフリー・ユニバーサルデザイン推進功労者表彰 受賞者
○内閣総理大臣表彰
株式会社高知システム開発
(高知県高知市)
【高知県推薦】
高知システム開発は1983年、高知県立盲学校の有光勲、北川紀幸の両先生及び筑波大学附属盲学校の長谷川貞夫先生からの依頼、協力を得て視覚障害者用ワープロの開発に着手し、翌年、日本初の「点字入力・音声出力ワープロ」を完成させた。1988年に「株式会社高知システム開発」を設立し、以来、視覚障害者の情報支援、社会参加支援を目的に、視覚障害者向け各種ソフトウエアの開発、販売、アフターサービスを行っており、日本全国の多くの視覚障害者の就労・教育・文化活動に大きく寄与している。
社会福祉法人佛子園
輪島KABULET®拠点施設
(石川県輪島市)
【石川県推薦】
社会福祉法人佛子園 輪島KABULET®拠点施設整備に係るプロジェクトは、「あるものを活かす」をコンセプトに、輪島市の中心部に点在する空き家、空き地を利用して地域コミュニティを再生することを意図して計画された。2018年には、温泉、足湯、食事処、生活介護、放課後等デイサービスが入る「拠点施設」が完成した。2棟の既存住宅を増築棟でつないで一つの施設とし、連結の際、既存住宅との段差を減らすために、スロープ、エレベーターを設置し、バリアフリーにも対応している。輪島KABULETでは、拠点施設を中心に、地域住民と福祉サービス利用者である高齢者・障害者などが交わる「ごちゃまぜ」のコミュニティづくりを推進しており、施設内には、障害者の就労支援作業室や近隣住民が利用できる住民自治室、こどもラボなどもある。近隣住民は温泉を無料で利用できる。入湯札では温泉の利用状況が確認でき、地域の高齢者等の見守り支援の役割も果たす。
○内閣府特命担当大臣表彰 優良賞
オムロン ヘルスケア株式会社
(京都府向日市)
【厚生労働省推薦】
オムロン ヘルスケア株式会社は、視覚に障害のある方でも一人で測定できるように、測定結果や手順を音声でお知らせする機能を搭載した音声付き体温計を開発・提供している。視覚障害者にとって、かけがえのない製品となっている。
特定非営利活動法人Creer
(徳島県徳島市)
【徳島県推薦】
特定非営利活動法人Creerは、2008年、障害のある人が、それぞれの可能性を実現できることを信じて、スペイン語で信じるという意味のCreer(クレエール)の名で設立され、障害者の学校卒業後の就労の場として、レストランをオープンした。製造工程の効率化や提供する食事の質の向上等を掲げ、2021年には、就労継続支援B型としては、全国でもトップレベルの平均賃金に到達している。さらに、働く場所を得て賃金を得られるようになった障害のあるメンバーが、自分の身についた調理の技術で地域に貢献したいと思い立ち、子ども食堂を平日毎日開店し、地域共生の推進に貢献している。
○内閣府特命担当大臣表彰 奨励賞
東京大学バリアフリー支援室
(東京都文京区)
【厚生労働省推薦】
2001年、東京大学に世界で初めて盲ろう者が常勤大学教員に着任したことを契機に東京大学バリアフリー計画が始まり、総長室にバリアフリーワーキンググループが設置され、2002年にワーキンググループの報告書「バリアフリーの東京大学」が完成した。この報告書では、推進組織の整備や当事者参画のモニター会議の設置、障害者のための施設・設備の整備、経費の支援措置といった課題項目が掲げられており、これらの課題の解決・達成を図るため、2004年に「東京大学バリアフリー支援室」が発足した。そして、この課題解決・達成を当該バリアフリー支援室が目指すことにより、バリアフリー支援の先行事例が蓄積され、今では多くの大学において障害のある学生への支援が行われているが、その後の高等教育における機会均等とバリアフリー支援モデルが形成されることとなった。
認定特定非営利活動法人トラッソス
(東京都江戸川区)
【東京都推薦】
認定特定非営利活動法人 トラッソスは、2003年の創立以来、知的障害や発達障害のある子供・成人を中心としたサッカースクール・サッカークラブの運営や、スポーツ指導者の育成・派遣等を行うことで、障害者にはスポーツを行う環境を提供し、健常者には障害者理解に関する普及啓発を推進してきた。同団体は、「笑顔」と「やりたくなるサッカー」を理念に、生徒の自立と自主性を重んじ、スポーツを契機に障害者の社会参画と自立を促しており、特に、同団体が主催する「全日本知的障害児・者サッカー競技大会」では、全国の障害者や地元住民をはじめ、障害の有無を問わず多様な方々を関わらせることにより、スポーツを通じて地域社会のノーマライゼーションにも寄与している。
特定非営利活動法人日本バリアフリー協会
(東京都千代田区)
【東京都推薦】
特定非営利活動法人日本バリアフリー協会は、音楽を通じた障害者の社会参加を目的として、2001年より、近隣学校にて障害者による演奏・講演を草の根的に展開し、2003年より、障害をもつ音楽家がグランプリを競う「ゴールドコンサート」を、2013年より、障害者が運営の担い手となるロック・ポップスの複数の著名アーティストによる音楽イベントである「GCグランドフェスティバル」を開催しており、約20年に渡り継続的に障害者が主体となった大規模な舞台芸術イベントを実施している。
資料:内閣府

(3)世界メンタルヘルスデーイベントの開催

世界精神保健連盟(WFMH)が、1992年より、メンタルヘルス問題に関する世間の意識を高め、偏見をなくし、正しい知識を普及することを目的として、10月10日を「世界メンタルヘルスデー」と定めている。その後、世界保健機関(WHO)も協賛し、正式な国際デー(国際記念日)とされている。

厚生労働省では、精神疾患やメンタルヘルスについて、国民に関心を持ってもらうきっかけとして、2019年から世界メンタルヘルスデーに合わせて、精神障害のある人に対する理解を深めるための普及啓発イベントなどを開催しており、昨年に引き続き、2021年においても、シルバーリボン運動にちなんだ東京タワーのシルバーライトアップなどのイベントを実施した。

  • 東京タワーライトアップ点灯式の様子(2021年10月10日/写真:厚生労働省)
  • 東京タワーのシルバーライトアップ(2021年10月10日/写真:厚生労働省)

世界メンタルヘルスデー(厚生労働省):https://www.mhlw.go.jp/kokoro/mental_health_day/index.html】

目次]  [前へ]  [次へ