第2章 障害のある人に対する理解を深めるための基盤づくり 2

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広報・啓発等の推進

2.各種の広報・啓発活動

(1)各種の週間・月間等の取組

このほか各種の週間・月間等の活動の中でも、障害のある人への理解を深めるための広報・啓発活動が展開された。

9月1日から30日までの「障害者雇用支援月間」においては、障害のある人の雇用の促進と職業の安定を図ることを目的として、障害のある方々から募集した絵画や写真を原画とした啓発用ポスターが作成され、全国に掲示されたほか、障害者雇用優良事業所等表彰及び優秀勤労障害者表彰を始め、各都道府県においても、障害者雇用促進のための啓発活動が実施された。

2023年度は、10月23日から29日までの「第70回精神保健福祉普及運動」の期間において精神障害のある人に対する早期かつ適切な医療の提供及び社会復帰の促進等について、国民の理解を深めることを目的として、精神保健福祉全国大会を始めとする諸行事が実施された。

2023年度は、12月4日から10日までの1週間を「第75回人権週間」と定め、関係諸機関及び諸団体の協力の下に、世界人権宣言の趣旨及びその重要性を広く国民に訴えかけるとともに、障害のある人に対する偏見や差別を解消することを含め、人権尊重思想の普及高揚を図るため、法務省の人権擁護機関である法務局・地方法務局及び人権擁護委員等により、全国各地で人権啓発活動を実施した。「第75回人権週間」においては、「『誰か』のこと じゃない。」をテーマに掲げて周知ポスターの配布やインターネット広告による広報活動を展開するとともに、障害のある人の人権問題を含め、様々な人権問題をテーマにした人権啓発動画の配信や講演会の開催等の各種広報・啓発活動を行った。

2007年12月、国連総会本会議において、毎年4月2日を「世界自閉症啓発デー」とする決議が採択されたことを受け、厚生労働省では、毎年、自閉症を始めとする発達障害に関する正しい知識の浸透を図るため、世界自閉症啓発デー日本実行委員会の協力の下啓発活動に取り組んでいる。2023年は発達障害の啓発に関する動画コンテンツを作成し、世界自閉症啓発デー日本実行委員会のホームページで公開するとともに、東京タワーブルーライトアップ・啓発イベントを実施している。

世界自閉症啓発デー日本実行委員会ホームページ:https://www.worldautismawarenessday.jp/】

また、「世界自閉症啓発デー」を含む4月2日から8日までの「発達障害啓発週間」においては、全国の地方公共団体や関係団体等により様々な啓発活動が実施された。

第75回人権週間ポスター
資料:法務省

(2)バリアフリー・ユニバーサルデザイン推進功労者表彰

高齢者、障害のある人、妊婦やこども連れの人を含む全ての人が安全で快適な社会生活を送ることができるよう、ハード、ソフト両面のバリアフリー・ユニバーサルデザインを効果的かつ総合的に推進する観点から、その推進について顕著な功績又は功労のあった個人・団体に対して、内閣総理大臣及び高齢社会対策又は障害者施策を担当する大臣が、毎年度、表彰を行い、その優れた取組を広く普及させることとしている。2023年度においては、6団体を表彰した(図表2-1)。

令和5年度バリアフリー・ユニバーサルデザイン推進功労者表彰式(第22回)(内閣府):https://www8.cao.go.jp/souki/barrier-free/r05hyoushou/index.html】

バリアフリー・ユニバーサルデザイン推進功労者表彰式(2023年12月/写真:内閣府)
図表2-1 令和5年度バリアフリー・ユニバーサルデザイン推進功労者表彰 受賞者
○内閣総理大臣表彰
社会福祉法人
あさがお福祉会
Tsuda-Machi-Kitchen
(徳島県徳島市)
【徳島県推薦】
2015年開設。ユニバーサルカフェ、高齢者デイサービス、放課後等デイサービス、児童発達支援、共同生活援助の5つの事業所で構成された施設を運営。年齢や障害の有無に関わらず、全ての人が日常的に共存する「ごちゃまぜ」空間の縮図となることを目指す。
徳島市内において、医療、介護、障害者福祉、乳幼児関係事業を展開する「あさがおグループ」の事業拠点の一つ。
特定非営利活動法人
メディア・アクセス・
サポートセンター
(東京都渋谷区)
【総務省推薦】
2009年設立。視聴覚に障害のある人にも映画を楽しんでもらえるよう、字幕メガネやスマートフォンの専用アプリで、セリフ、効果音、人物の動作、情景等の映画情報が提供される仕組みの普及に取り組み、映画業界におけるバリアフリーに尽力。
映画フィルムのみならず、TV、インターネット、DVDBlu-rayなど多様なメディアにおける字幕・音声ガイドの制作、制作物の監修など事業者の支援、字幕表示・音声ガイドアプリや字幕制作ソフトの開発、字幕・音声ガイド制作者の養成、全国の映画館に対する字幕メガネの無料貸与、映画館における運用マニュアルや障害者のための利用ガイドラインの作成に取り組んできた。
○内閣府特命担当大臣表彰 優良賞
株式会社Lean on Me
(大阪府高槻市)
【経済産業省推薦】
2014年設立。「障がい者にやさしい街づくり」を掲げ、障害のある方の生きづらさを解消するため、障害福祉に関わる事業者向けに、主に知的障害に関するeラーニング「Special Learning」事業を展開。
虐待の原因にもなりうる知識不足を解消し、障害のある方への理解を深めることで、共生社会の実現に向けた社会基盤の構築を目指す。
全国1万人以上のユーザーが「Special Learning」を利用。
公益社団法人
鳥取県聴覚障害者協会
(鳥取県米子市)
【厚生労働省推薦】
1933年発足、2014年公益社団法人として設立。「いつでも、どこでも、だれでも、コミュニケーションがとれる社会の実現をめざして」を掲げ、手話通訳者・要約筆記者の派遣、就労継続支援、地域相談窓口の運営等の「支援事業」、手話通訳者の養成など「人材育成事業」、手話パフォーマンス甲子園等のイベント開催、出版物の刊行など「啓発普及事業」を実施。
○内閣府特命担当大臣表彰 奨励賞
千葉県立東金特別支援
学校パラスポ推進隊
(千葉県東金市)
【千葉県推薦】
2018年発足。東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会開催を契機として開始されたものであり、共生社会の実現に向け、校内・地域にパラスポーツの魅力を更に広めることを目的とした児童・生徒を主体とした活動を展開。
同校は小学部から高等部まで約150名の生徒が在籍し、毎年、全校集会で隊員を募集、20名前後が応募・参加。
特定非営利活動法人
町田ハンディキャブ
友の会
(東京都町田市)
【東京都推薦】
1983年発足、2010年特定非営利活動法人として設立。「移動が困難な人たちが音楽会や買い物などに行く際の支援など、共に生き・共に楽しむこと」、「安心安全」を掲げて、長年にわたり市民の外出を支援。
発足当初、市が直営で通院・通所の輸送を行うなか、本団体はレクリエーション活動等の外出ニーズに対応することで役割を分担。2007年からは、市の補助事業となった福祉輸送サービスの運行も併せて本団体が担っている。
資料:内閣府

(3)世界メンタルヘルスデーイベントの開催

世界精神保健連盟(WFMH)が、1992年から、メンタルヘルス問題に関する世間の意識を高め、偏見をなくし、正しい知識を普及することを目的として、10月10日を「世界メンタルヘルスデー」と定めている。その後、世界保健機関(WHO)も協賛し、正式な国際デー(国際記念日)とされている。

厚生労働省では、精神疾患やメンタルヘルスについて、国民に関心を持ってもらうきっかけとして、2019年から世界メンタルヘルスデーに合わせて、精神障害のある人に対する理解を深めるための普及啓発イベントなどを開催している。2023年は著名人を招き、主に「10代後半から20代前半」の方を対象としたトークイベントを世界メンタルヘルスデー当日に開催し、後日、厚生労働省の世界メンタルヘルスデー特設サイトにて当日の様子を配信した。

ほかにも、世界メンタルヘルスデー当日には、東京タワーを含め全国20か所の名所やモニュメントのライトアップイベントが開催された(主催:特定非営利活動法人シルバーリボンジャパン、ルンドベック・ジャパン株式会社 後援:厚生労働省)。年々世界メンタルヘルスデーへの協力等を通じ、普及啓発に取り組む自治体や企業等が増えている。

世界メンタルヘルスデーJAPAN2023ポスター
(10月10日トークイベントの様子)
資料:厚生労働省

厚生労働省ホームページ:https://www.mhlw.go.jp/kokoro/mental_health_day/】

(4)心のサポーターの養成

うつ病等の精神疾患やメンタルヘルスに対する正しい知識と理解を持ち、これらの問題を抱える家族や同僚等に対する傾聴を中心に行う支援者を養成するために、厚生労働省は、2021年度からモデル事業として「心のサポーター養成事業」を開始し、2024年3月末現在の心のサポーター養成者数は7,280人となっている。

3年間のモデル事業期間を経て、2024年度から都道府県等が主体となって心のサポーターの養成を担い、全国でより多くの心のサポーターの養成が図られるよう、取組を進めることとしている。

心のサポーターが全国で養成されることで、地域におけるメンタルヘルスの知識の普及啓発に寄与するとともに、家族や同僚等が抱えるうつ病等の精神疾患やメンタルヘルスの問題への早期介入につながることが期待されている。

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