第2章 障害のある人に対する理解を深めるための基盤づくり 2
障害のある人に対する理解促進のための広報・啓発等の推進
2.広報・啓発活動
(1)各種の週間・月間等の取組
このほか各種の週間・月間等の活動の中でも、障害のある人への理解を深めるための広報・啓発活動が展開された。
厚生労働省では、障害のある人の雇用の促進と職業の安定を図ることを目的として、9月1日から30日までを「障害者雇用支援月間」としている。障害のある方々から募集した絵画や写真を原画とした啓発用ポスターを作成し、全国の主要な駅などに掲示した。このほか、障害者雇用優良事業所等表彰及び優秀勤労障害者表彰を始め、各都道府県においても、障害者雇用促進のための啓発活動が実施された。
2024年度は、10月7日から13日までの「第71回精神保健福祉普及運動」の期間において精神障害のある人に対する早期かつ適切な医療の提供及び社会復帰の促進等について、国民の理解を深めることを目的として、精神保健福祉全国大会を始めとする諸行事が実施された。
法務省では2024年度、12月4日から10日までの1週間を「第76回人権週間」と定め、関係諸機関及び諸団体の協力の下に、世界人権宣言の趣旨及びその重要性を広く国民に訴えかけるとともに、障害のある人に対する偏見や差別の解消を含め、人権尊重思想の普及高揚を図るため、法務局・地方法務局及び人権擁護委員等により、全国各地で人権啓発活動を実施した。「第76回人権週間」においては、「『誰か』のこと じゃない。」をテーマに掲げて周知ポスターの配布やインターネット広告による広報活動を展開するとともに、障害のある人の人権問題を含め、様々な人権問題をテーマにした人権啓発動画の配信や講演会の開催等の各種広報・啓発活動を行った。
また、個別の障害に関しては、毎年4月2日を「世界自閉症啓発デー」とする国連総会での決議を受け、厚生労働省は、毎年、自閉症を始めとする発達障害に関する正しい知識の浸透を図るため、世界自閉症啓発デー日本実行委員会の協力の下、啓発活動に取り組んでいる。2024年は、発達障害に関する啓発の動画コンテンツを作成し、世界自閉症啓発デー日本実行委員会のホームページで公開するとともに、東京タワーブルーライトアップ・啓発イベントを実施している。
また、「世界自閉症啓発デー」を含む4月2日から8日までの「発達障害啓発週間」においては、全国の地方公共団体や関係団体等により様々な啓発活動が実施された。

資料:法務省

資料:厚生労働省
(2)バリアフリー・ユニバーサルデザイン推進功労者表彰
高齢者、障害のある人、妊婦やこども連れの人を含む全ての人が安全で快適な社会生活を送ることができるよう、ハード、ソフト両面のバリアフリー・ユニバーサルデザインを効果的かつ総合的に推進する観点から、その推進について顕著な功績又は功労のあった個人・団体に対して、内閣総理大臣及び高齢社会対策又は障害者施策を担当する大臣が、毎年度、表彰を行うことで、優れた取組を広く普及している。2024年度は、5個人・団体を表彰した(図表2-1)。
社会福祉法人 埼玉聴覚障害者福祉会 (埼玉県入間郡毛呂山町) 【厚生労働省推薦】 |
昭和61年、ろう重複障害者の共同作業所である「どんぐりの家」を結成後、平成6年「社会福祉法人埼玉聴覚障害者福祉会」を設立。主に埼玉県内の聴覚障害児・者が地域社会において自立した生活を営むことができるよう支援することを目的に活動している。同団体が開所した重度身体障害者授産施設「ふれあいの里・どんぐり」は、漫画「どんぐりの家」としてコミック誌に掲載され、社会的に大きな注目を浴び、全国的なろう重複施設等の設立に寄与したほか、同団体の施設では、手話言語で作業や生活ができる環境が整えられており、手話言語を軸とした情報バリアフリー社会の構築に大きく寄与してきた。 |
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只石幸夫 (北海道旭川市) 【北海道推薦】 |
特定非営利活動法人カムイ大雪バリアフリー研究所代表理事(平成23年8月~令和5年9月)及び一般社団法人旭川観光コンベンション協会常任理事(平成27年~現在)を歴任。障害者自立支援サービスを提供する就労継続支援事業所「チーム紅蓮」の設立に携わるとともに、旭川地域を中心に、障害当事者や行政、観光業界、大学、病院等、幅広い関係機関とともに、バリアフリー観光やパラスポーツの振興等をテーマに、地域の異業種の企業と連携しながら、街や施設のバリアフリー化・ユニバーサルなイベントの開催などのバリアフリー・ユニバーサルデザインの推進活動を行い、その広がりに貢献している。 |
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公益財団法人 兵庫県芸術文化協会 兵庫県立尼崎青少年創造劇場及び兵庫県立ピッコロ劇団 (兵庫県尼崎市) 【兵庫県推薦】 |
昭和53年に劇場開館。「地域が芸術でつながり誰もが生きやすい社会をつくる」をミッションに掲げ、障害者が演劇公演を楽しめるように、音声ガイドや舞台のバリアフリー字幕などの鑑賞サポートに力を入れている。 また、阪神・淡路大震災での演劇による被災地支援活動の経験を活かして、東日本大震災の被災地に寄り添った、息の長い活動を展開。さらに、増え続ける在留外国人の地域コミュニティ参加支援のため、演劇手法を用いたワークショップを地域の国際交流団体等と連携して行っている。 |
株式会社Halu (京都府京都市) 【京都府推薦】 |
令和2年4月創業。インクルーシブ・ブランド「IKOU(イコウ)」を運営し、障害のある子どもやその家族の課題を起点に、子どもをもつすべての家族の多彩な外出機会を創出するための、障害児も健常児も「ともに使えるプロダクト」を開発・販売。 特に「IKOU ポータブルチェア」は、姿勢保持機能の高さや携帯性などから、障害児を含む小さな子連れ家族の行動範囲の拡大に寄与しており、障害の有無に関わらず子どもたちやその家族が体験を共有できる空間や機会を増やすことで、多様性を体感しお互いを認め合う経験を育み、それを社会全体に広げることを目指している。 |
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みんなでつくる音楽祭in小平実行委員会 (東京都小平市) 【東京都推薦】 |
平成26年9月に実行委員会を立ち上げ、小平市中央公民館を拠点に活動を開始。同年12月6日に第1回「みんなでつくる音楽祭in小平」を開催。障害者週間にちなみ毎年12月の第一土曜日に開催しているこのイベントは、準備期間から当日まで、障がいの有無・年齢・性別などのボーダーを超えて、多様な市民が実行委員、参加者として協働することでお互いを理解し合う「心のバリアフリー」を目指している。朝鮮大学校の学生や海外からも参加申込みがあるなど、毎年幅広い層が参加している。コロナ禍ではオンラインによる配信を行い、一昨年には対面開催が再開され、令和6年も1,000人以上の参加があるなど地道な活動を行っている。 |





(3)世界メンタルヘルスデー1イベントの開催
厚生労働省では、精神疾患やメンタルヘルスについて、国民に関心を持ってもらうきっかけとして、2019年から10月10日の世界メンタルヘルスデーに合わせて、精神障害のある人に対する理解を深めるための普及啓発イベントなどを開催している。2024年は人気キャラクターを応援サポーターとした東京タワーでの広報活動や公共交通機関での普及啓発ポスターの掲示を行った。
ほかにも、世界メンタルヘルスデー当日には、東京タワーなど全国29か所の名所等でライトアップイベントが開催された(共催:特定非営利活動法人シルバーリボンジャパン、ルンドベック・ジャパン株式会社 後援:厚生労働省)。年々世界メンタルヘルスデーへの協力等を通じ、普及啓発に取り組む自治体や企業等が増えている。


(4)心のサポーターの養成
うつ病等の精神疾患やメンタルヘルスに対する正しい知識と理解を持ち、これらの問題を抱える家族や同僚等に対する傾聴を中心に行う支援者を養成するために、厚生労働省は、全国でより多くの「心のサポーター」の養成が図られるよう取組を進めている。
2024年度からは都道府県等が主体となって心のサポーターの養成を担い、2025年3月末現在の心のサポーター養成者数は22,385人となっている。
心のサポーターが全国で養成されることで、地域におけるメンタルヘルスの知識の普及啓発に寄与するとともに、家族や同僚等が抱えるうつ病等の精神疾患やメンタルヘルスの問題への早期介入につながることが期待されている。
1 世界メンタルヘルスデー 世界精神保健連盟(WFMH)が、1992年から、メンタルヘルス問題に関する世間の意識を高め、偏見をなくし、正しい知識を普及することを目的として、10月10日を「世界メンタルヘルスデー」と定めている。その後、世界保健機関(WHO)も協賛し、正式な国際デー(国際記念日)とされている。