第5章 住みよい環境の基盤づくり 第2節 4

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第2節 障害のある人の情報アクセシビリティを向上するための施策

4.コミュニケーション支援体制の充実

(1)手話や点訳等によるコミュニケーション支援

「障害者総合支援法」に基づき、聴覚、言語機能、音声機能、視覚、盲ろう、失語、知的、発達、高次脳機能、重度の身体などの障害や難病のため、意思疎通を図ることに支障がある人に、手話通訳者や要約筆記者、盲ろう者向け通訳・介助員、失語症者向け意思疎通支援者等の派遣等による支援を行う意思疎通支援事業や、手話通訳者等の養成研修等が実施されている。

各都道府県警察においては、聴覚に障害のある人のための手話通訳及びルビを付した字幕入りの映像の活用や手話通訳員の確保に努めている。また、言語での意思伝達を困難とする人たちと警察官とのコミュニケーションを円滑にするため、協力団体と共に開発し、提供を受けた「コミュニケーション支援ボード」を、全国の交番、パトカー等に配備し、活用している。

また、聴覚や発話に障害のある人とそれ以外の人をオペレータが「手話」や「文字」と「音声」とを通訳することにより、電話で双方向につなぐ電話リレーサービスについては、「聴覚障害者等による電話の利用の円滑化に関する法律」(令和2年法律第53号)が2020年12月1日に施行され、2021年7月より、総務大臣より電話リレーサービス提供機関の指定を受けた(一財)日本財団電話リレーサービスにより、公共インフラとしての電話リレーサービスの提供が開始されている。

電話リレーサービスの更なる普及促進を図るため、総務省は関係省庁と連携して周知広報を実施しているほか、電話リレーサービス提供機関が全国各地で実施する電話リレーサービスの講習会や利用登録会などに協力しており、2024年度末の利用登録者数は1万7,480人となっている。前年より約2,000人ほど増加しており、電話リレーサービスの提供が開始されて以降、増加し続けている。

また、2025年1月より、中途失聴や難聴など自分の声で電話をしたいものの通話相手の声が聞こえにくい方などが利用できる、電話リレーサービスの新たなサービス「文字表示電話サービス(サービス名:ヨメテル)」の提供が開始された。

金融庁では、銀行等や保険会社に対し、電話リレーサービスの導入状況に関する項目を含む「障がい者等に配慮した取組みに関するアンケート調査」を実施しており、アンケートを通じ、顧客に対して電話を用いて提供しているサービスのうち、電話リレーサービスに対応していないものはあるか等、各金融機関における障害のある人等に配慮した取組状況を把握している。そのほか、障がい者団体と金融機関関係団体との意見交換会を実施しており、これらの結果を踏まえ、障害のある人に対する利便性向上について、銀行・保険会社等に対して、業界団体との意見交換会の機会等を通じ、より積極的な対応を促している。

図表5-16 電話リレーサービスの仕組み
資料:総務省

(2)コミュニケーション支援用絵記号及びアクセシブルミーティング

文字や話し言葉によるコミュニケーションの困難な人が、自分の意思や要求を相手に的確に伝え、正しく理解してもらうことを支援するための絵記号に関する規格として「コミュニケーション支援用絵記号デザイン原則(JIS T0103)」が制定された。2010年に障害のある人が会議に参加しやすいように主催者側の配慮事項の規格として「高齢者・障害者配慮設計指針―アクセシブルミーティング(JIS S0042)」が制定されている。

図表5-17 コミュニケーション支援用絵記号の例
注:コミュニケーション支援用絵記号デザイン原則(JIS T0103)には参考として約300の絵記号の例を収載しており、これらは公益財団法人共用品推進機構のホームページから無償でダウンロードすることができる。
/総務省
第5章第2節 4.コミュニケーション支援体制の充実
TOPICS(トピックス)(12)
文字表示電話サービス「ヨメテル」の提供開始

現行の「電話リレーサービス」は、双方の会話を、手話または文字と音声を通訳するサービスのため、電話で相手先の声が聞こえにくく、自分の声で話したい人や、スマートフォンなどでの文字入力に不慣れな人にとっては使いにくいという課題があった。そこで、スマートフォンを使って自身の声で通話相手であるきこえる人に話し、通話相手の声を文字で読むことができる文字表示電話サービス「ヨメテル」が2025年1月から開始された。

「ヨメテル」は、現行の電話リレーサービスと同じく公共インフラとして24時間365日利用でき、緊急通報(110、118、119)が可能である。発信者側はIP電話へ発信する際と同程度の通話料金が適用される。

「ヨメテル」の専用アプリをインストールして利用登録をすると、050から始まる電話番号が付与され、利用できる。電話リレーサービスをすでに使っている人の場合は手続をすれば同じ電話番号を使うことができ、「ヨメテル」を使っている人が「電話リレーサービス」を使う場合も、手続をすれば「ヨメテル」で取得した電話番号で「電話リレーサービス」を使うことができる。

きこえる人の声を文字で表示する方法は、AIの音声認識による表示と文字入力オペレータによる表示の2パターンが用意されており、利用者は通話ごとにそのいずれかを選択することが可能である(緊急通報の場合は文字入力オペレータによる文字表示のみの対応となる)。

資料:総務省
資料:総務省

「ヨメテル」で電話をかけると、最初に通話の相手方に「電話リレーサービスのヨメテルです。あなたの声を文字にして、相手に表示します。はっきりとお話しください。」という音声ガイダンスが流れ、音声ガイダンスの後に相手方とつながる。いたずら電話や勧誘電話と誤認され、時には通話を切られたりするケースがある。「ヨメテル」はきこえにくい人の暮らしや社会参画に役に立つ、そしてきこえる人とのつながりを感じることができるサービスである。本サービスについて多くの人の理解を深め、円滑な利用につなげることが重要である。

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