第3章 社会参加へ向けた自立の基盤づくり 第2節 2

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第2節 障害のある人の雇用・就労の促進施策

2.障害のある人への就労支援

(1)障害のある人への地域における就労支援

障害のある人の就労支援の充実には、雇用・福祉・教育・医療の一層の連携強化が必要である。ハローワークを中心とした関係機関とのチーム支援、地域障害者職業センターにおける専門的な職業リハビリテーション、障害者就業・生活支援センターにおける就業面と生活面での一体的な支援、ジョブコーチによる定着支援など、地域におけるきめ細かな就労支援を行っている。

ア ハローワーク

ハローワークの専門窓口で、技能、職業適性、知識、希望職種、身体能力等に基づき、個々の障害特性に応じたきめ細かな職業相談を実施し、就職・職場定着を支援している。

① ハローワークを中心とした「障害者向けチーム支援」

障害者支援を担当する「就職支援コーディネーター」(2024年度の配置数は275人)をハローワークに配置している。障害者就業・生活支援センター、地域障害者職業センター、就労移行支援事業所、特別支援学校、医療機関等の地域の関係機関からなる「障害者就労支援チーム」により、就職に向けた準備から職場定着までの一貫した支援を行う「障害者向けチーム支援」を実施している。2024年度障害者向けチーム支援の支援対象者の就職率は56.7%であった。

② トライアル雇用

障害のある人を一定期間の試行雇用の形で受け入れ、障害のある人の適性や業務遂行可能性を見極め、障害のある人と事業主の相互理解を促進すること等を通じて、常用雇用への移行を促進する障害者トライアル雇用事業を実施している。2024年度における支給件数は5,683件であり、トライアル雇用を終了した5,388人のうち、常用雇用に移行した者の数は4,238人(常用雇用移行率:78.7%)であった。

イ 地域障害者職業センター

地域障害者職業センターは、JEEDにより各都道府県に1か所(そのほか支所5か所)設置・運営されている。ハローワークや地域の就労支援機関との連携の下に、専門職の「障害者職業カウンセラー」により、職業評価、職業指導から就職後のアフターケアに至る職業リハビリテーションを専門的かつ総合的に実施している。精神障害、発達障害、高次脳機能障害など、個別性の高い専門的な支援を必要とする人を中心に対応しており、2024年度の支援実施対象者におけるこれらの障害者数は18,807人であった。

① 職業評価・職業指導及び職業リハビリテーション計画の策定

個々の就職の希望等を把握した上で行った職業評価・職業指導を基に就職及び就職後の職場適応に必要な支援内容等を含む職業リハビリテーション計画の策定を行っている。

② 障害のある人の就職等を促進するための支援(職業準備支援)

障害のある人に対して、職業上の課題の把握とその改善を図るための支援、職業に関する知識の習得のための支援及び社会生活技能等の向上のための支援を行っている。

③ 障害のある人の職場適応に関する支援(職場適応援助者(ジョブコーチ)支援事業)

就職又は職場適応に課題を有する精神障害、発達障害、高次脳機能障害のある人等が円滑に職場に適応できるよう、就職時のみならず雇用後も事業所にジョブコーチ13を派遣し、障害特性を踏まえた専門的な支援を行っている。事業主に対しても、雇用管理に必要な助言や職場環境の改善の提案等の援助を行っている。また、安定した雇用継続を図るためのフォローアップも行っている。

④ 精神障害のある人等に対する総合雇用支援

精神障害のある人及び事業主に対して、主治医との連携の下、新規雇入れ、職場復帰、雇用継続のそれぞれの雇用の段階に応じた専門的な支援を総合的に行っている。

休職中の精神障害のある人及びその人を雇用する事業主に対する円滑な職場復帰に向けた支援(リワーク支援)を進めており、生活リズムの立て直しや集中力・持続力の向上等の支援を行うとともに、事業主に対しては、職場の受入体制の整備等の支援を行っている。

⑤ 地域の関係機関に対する助言、研修その他の援助

障害者就業・生活支援センターや就労移行支援事業所等の関係機関及びこれらの機関の職員に対して、効果的な職業リハビリテーションが実施されるよう、職業リハビリテーションに関する技術的事項についての助言、研修及び支援方法に係る援助を行っている。

ウ 障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターでは、障害のある人の職業生活における自立を図るため、雇用、保健、福祉、教育等の関係機関との連携の下、障害のある人の身近な地域において就業面及び生活面における一体的な支援を行っている(2026年4月現在340か所)。

例えば、就業やそれに伴う日常生活上の支援を必要とする障害のある人に対し、就職に向けた準備支援(職業準備訓練、職場実習のあっせん)や求職活動等の就業に関する相談と、就業するに当たって重要な健康管理等の生活に関する相談等に応じている。また、必要に応じてハローワークや地域障害者職業センターなどの専門的支援機関と連絡調整をし、支援を引き継ぐなど適切な支援機関への案内窓口としての機能も担っている(2024年度における就職件数:16,414件、就職率:80.5%、就職後1年経過時点での職場定着率:81.8%)。

(2)福祉的就労から一般就労への移行等の支援

企業等での一般就労に向けた就労支援は重要であり、「障害者総合支援法」に基づき、障害のある人の就労支援として以下の制度が設けられている。

ア 就労移行支援について

一般就労を希望する障害のある人が、できる限り一般就労が可能となるように、就労移行支援事業所では、生産活動その他の活動の機会の提供を通じて、就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練、求職活動の支援等、本人の適性に応じた職場の開拓、就職後の職場への定着支援等を行っている(2025年10月現在2,802事業所)。

イ 就労継続支援A型について

障害のある人には、一般就労が困難であっても適切な支援により雇用契約に基づく就労が可能な人や、一般就労をしていても就労に必要な知識や能力の向上のための支援を一時的に必要とする人がいる。就労継続支援A型では、そうした人に、生産活動等の機会を通じて、就労に必要な知識や能力の向上のために必要な訓練を行うとともに、一般就労に向けた支援や職場への定着のための支援等を行っている。就労継続支援A型事業所では、生産活動に係る事業の収入から生産活動に係る事業に必要な経費を差し引いた額から、利用者に賃金が支払われることとされているため、これを満たさない事業所に経営改善計画の提出を求め、地方公共団体が必要な指導・支援を行い、事業所の安定運営と障害のある人の賃金の向上を図っている(2025年10月現在4,358事業所)。

2025年3月末時点で、生産活動の収益が利用者の賃金総額を下回っている事業所数は、経営状況を把握した4,006事業所のうち774事業所となっており、改善計画の提出を求めている。

就労継続支援A型について(写真:厚生労働省)

ウ 就労継続支援B型について

障害のある人のうち、一般就労が困難な人や一般就労していても就労に必要な知識及び能力の向上のための支援を一時的に必要とする人がいる。就労継続支援B型では、そうした人に対し、生産活動その他の活動の機会の提供を通じて、就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練を行うとともに、一般就労に向けた支援や職場への定着のための支援等を行っている。国や地方公共団体では、事業所の経営力強化に向けた支援、共同受注化の推進、「障害者優先調達推進法」に基づく調達の推進等、就労継続支援B型事業所等における工賃の向上に向け、官民一体となった取組を推進している(2025年10月現在19,730事業所)。

就労継続支援B型について(写真:厚生労働省)

エ 就労定着支援について

就労移行支援等の障害福祉サービスを利用し、一般就労に移行した障害のある人に対して、就労の継続を図るため、企業、障害福祉サービス事業者、医療機関等との連絡調整を行うとともに、雇用に伴い生じる日常生活又は社会生活を営む上での各般の問題に関する相談、指導、助言等の必要な支援を行っている(2025年10月現在1,795事業所)。

オ 就労選択支援について

2025年10月に始まった制度であり、働く力と意欲のある障害のある人に対して、障害のある人本人が就労先・働き方についてより良い選択ができるよう、就労アセスメントの手法を活用して、本人の希望、就労能力や適性等に合った選択を支援している(2025年10月現在104事業所)。

/厚生労働省
TOPICS(トピックス)(3)
「就労選択支援」制度の施行

就労選択支援は、「福祉・雇用それぞれのサービス体系におけるアセスメント(ニーズ把握、就労能力や適性の評価)の仕組みを構築・機能強化」するという方向性の下、2022年の「改正障害者総合支援法」により創設され、2025年10月から施行された新たな障害福祉サービスである。2025年10月時点で104事業所が指定されている。

就労選択支援の役割は、障害者本人が就労先・働き方についてより良い選択ができるよう、就労に関する適性、知識及び能力の評価並びに就労に関する意向及び就労するために必要な配慮などの整理を行うことである。また、そうした評価及び整理の結果に基づき、適切な支援の提供のために必要な障害福祉サービス事業を行う者等との連絡調整なども実施する。

対象者は、就労移行支援又は就労継続支援を利用する意向を有する者及び現に利用している者である。特別支援学校等の在学者も就労選択支援の利用が可能であり、在学中に複数回実施することも可能となっている。就労継続支援A型・B型の利用開始後であっても本人の希望に応じて利用することができる。

就労選択支援のサービス利用期間は原則1か月であり、標準的なサービスの流れは以下のとおりである。

まず、様々な支援機関などから利用の相談を受けた就労選択支援事業所は、本人への就労に係る情報提供等を行う。また、情報提供と並行して作業場面等を活用した状況把握(アセスメント)を実施し、本人の就労能力や適性、ニーズや強み、本人が力を発揮しやすい環境要因、職業上の課題、就労に当たっての支援や配慮事項等について、本人と協同して整理を行う。本人と協同して整理することで、本人の自己理解を促進することにもつながり、本人にとってより適切な進路を選択することが可能となる。

次に、得られたアセスメント結果を基に就労選択支援事業所がアセスメントシート(案)を作成し、多機関連携によるケース会議を踏まえてアセスメントシートを作成する。アセスメントシートは、就労選択支援の終了後、障害福祉サービスの利用の際や、一般就労に向けた支援への活用が期待される。

就労選択支援事業所は、協議会への定期的な参加や、公共職業安定所(ハローワーク)への訪問等により、地域における就労支援に係る社会資源、雇用に関する事例等の情報収集に努め、利用者に対して進路選択に資する情報を提供するように努めることとされている。

就労選択支援は、障害のある人の就労上の強みを把握する重要なサービス類型となる。今後、就労支援において大きな役割を担うことが期待される。

(3)障害特性に応じた雇用支援策

ア 精神障害のある人への支援

近年、ハローワークにおける精神障害のある人の新規求職申込件数が増加傾向にある。そのため、専門窓口では「精神・発達障害者雇用サポーター」などの専門職員による個々の障害特性に応じたきめ細かな相談支援を行うとともに、事業主に対し、精神障害のある人等の雇用に係る課題解決のための相談・助言を行っている。

厚生労働省では、本人の障害に関する理解や支援機関同士での情報連携等、採用選考時の本人理解や就職後の職場環境整備の促進のため、情報共有ツール「就労パスポート」を作成し、普及に取り組んでいる。精神障害のある人等が、働く上での自分の特徴やアピールポイント、希望する配慮等を支援機関とともに整理し、就職や職場定着に向け、事業主や支援機関と必要な支援について話し合う際に、「就労パスポート」を活用することを想定している。

また、継続雇用する労働者へ移行することを目的に、週の所定労働時間10時間以上20時間未満から一定程度の期間をかけて、週の所定労働時間を20時間以上とすることを目指す「トライアル雇用助成金(障害者短時間トライアルコース)」の支給などを行っている。

イ 発達障害のある人への支援

ハローワークでは、「精神・発達障害者雇用サポーター」を配置し、個々の障害特性や強みを把握するなどきめ細かい求職者支援や事業主が抱える発達障害のある人等の雇用に係る課題解決のための個別相談を実施している。発達障害のある求職者に対する職業紹介に当たっては、地域障害者職業センター、発達障害者支援センター、障害者就業・生活支援センターなどの機関と十分な連携を図って対応している。

ハローワーク等の職業紹介により発達障害のある人を新たに雇い入れた事業主には、「特定求職者雇用開発助成金(発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース)」を支給している。

また、大学等における発達障害のある学生等の増加を踏まえ、就職活動に際して専門的な支援が必要な学生等に対して、大学等と連携して支援対象者の早期把握を図るとともに、就職準備から就職・職場定着までの一貫した支援を実施している。

ウ 難病のある人への支援

ハローワークでは、就労支援の必要な難病のある人に対して、難病相談支援センターとの連携による就労支援を行っている。「難病患者就職サポーター」を配置し、難病相談支援センター等の地域の関係機関と連携しながら、個々の難病患者の希望や特性、配慮事項等を踏まえたきめ細かな職業相談・職業紹介、定着支援等総合的な支援を実施している。

また、難病のある人をハローワーク等の職業紹介により新たに雇い入れた事業主に対して、「特定求職者雇用開発助成金(発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース)」を支給することにより、その雇用促進を図っている。

さらに、「難病のある人の雇用管理マニュアル」(JEEDが2018年に作成)を活用し、ハローワーク等において、難病のある人の就労支援を行っている。

エ 在宅就業等への支援

① 在宅就業支援制度

自宅等で就業する障害のある人(在宅就業障害者)の就業機会の確保等を支援するため、これらの障害のある人に直接又は在宅就業障害者に対する支援を行う団体として厚生労働大臣の登録を受けた法人(在宅就業支援団体(2025年6月現在20団体))を介して業務を発注した事業主に対して、障害のある人に対して業務の対価として支払われた金額に応じて、障害者雇用納付金制度で、在宅就業障害者特例調整金(常用雇用労働者数100人以下の事業主については在宅就業障害者特例報奨金)を支給する制度を運用している。

② テレワークによる勤務の支援

障害のある人の多様な働き方の推進や、通勤が困難な者、感覚過敏等により通常の職場での勤務が困難な者等の雇用機会の確保の観点から、ICTを活用したテレワークを障害のある人の雇用においても普及することが重要である。2025年度は、障害のある人のテレワーク雇用の導入を検討している企業等に対して、導入に向けた手順等の説明を行うセミナーを実施するとともに、各企業の個別の課題やニーズに応じた相談支援を実施した。また、「トライアル雇用助成金(障害者トライアルコース)」について、テレワークによる勤務を行う者については、原則3か月のトライアル雇用期間を、6か月まで延長可能としている。

③ 就労支援機器等の普及・啓発

従来、障害のある人が就労困難と考えられていた職業であっても、IT機器を利用することにより、就労の可能性が高まってきている。このため、障害のある人の職域拡大に資することを目的として、JEEDにおいて、在宅就業も含めた就労を希望する障害のある人や事業主のニーズに対応した就労支援機器に関する情報提供、貸出事業等を通じて、その普及・啓発に努めている。

障害者雇用におけるIT分野での取組事例

IT分野で障害者雇用の新しい在り方を築く先進事例

【自動化の将来を見据え、IT分野の先駆者としてのチャレンジ】

株式会社マイナビパートナーズ(以下「マイナビパートナーズ」という。)は2016年に株式会社マイナビ(以下「マイナビ」という。)の特例子会社として設立された。2026年2月時点で従業員数は339名、うち障害者数は251名(身体障害11%、知的障害1%、精神障害88%(うち約7割は発達障害))。設立当時はマイナビグループの事務業務代行が主な業務であったが、受託しているPC業務の自動化の進展に危機感を覚え、「将来的にロボットに仕事が取られるくらいならば、自ら自動化の作業をできるように」と発想を転換し、障害のある従業員に対してITスキルの育成を進める。

【教育環境の整備と互いに教え合う仕組みにより、IT事業として拡大】

IT分野への展開のきっかけは、日常の事務作業のRPA化であった。立候補制でIT業務に興味のある社員を募ったところ、IT未経験者を含む職員の約20名が挙手をした。e-learningを活用した基礎教育環境を整備し、ITスキルを習得した障害のある職員がトレーナーとなり、新たにITスキルを学ぶ障害のある職員(トレーニー)に対して技術を伝える仕組みを構築した。この「障害のある当事者同士による育成モデル」により、個別対応に依存せず、継続的にIT人材を育成する体制が確立された。こうした取組は次第に事業として拡大し、現在ではIT推進課が発足。マイナビグループ全体の業務効率化やシステムトラブル対応を担うなど、グループ内において欠かせない存在となっている。

【「誰もが活躍するための道を拓き、未来の道標となる。」】

落ち着いて作業できる静かな集中エリア
写真:株式会社マイナビパートナーズ

例えば、障害特性によって注意が散漫になりやすい方であっても、業務の自動化スキルを身につけることでヒューマンエラーが減少し、安定して業務に取り組めるようになる。こうした成功体験を通じて、従業員自身がITスキルの有効性に気づくことが、学習意欲と成長につながっている。マイナビパートナーズでは、障害特性に対する配慮を前提としつつ、業務設計とIT活用によって「働きやすさ」と「戦力化」を両立させている。環境を整え、成長の機会を用意することで、障害の有無にかかわらず会社にとって欠かせない存在となる。

【活躍する社員の方からの声 ―まずはチャレンジをしてみて―】

上司とコミュニケーションを取りながら業務に取り組むSさん
写真:株式会社マイナビパートナーズ

〈精神・発達障害を持つSさんの声〉

社会人になってから障害者手帳を取得し、前職では文字が薄い複写伝票の文字をなぞり補強する等の単純作業をしていました。何もせず座っているだけの時もあり、仕事がある環境に身を置きたいという思いから入社を決めました。

入社当初に従事していた事務作業をより効率的に行いたいという理由から、今まで未経験であったIT領域の教育プログラムに参加しました。継続的に学習を続け、今では障害のある社員をIT人材として育成する立場になっています。メンバーには、「出来ないではなく、まずはチャレンジをしてみて」と伝えています。


(4)職場での適応訓練

ア 職場適応訓練

障害のある人に対し、作業環境への適応を容易にし、訓練修了後も引き続き雇用されることを期待して、都道府県知事又は都道府県労働局長が民間事業主等に委託して実施する訓練で、訓練生には訓練手当が、事業主には職場適応訓練費が支給される(訓練期間6か月以内)。また、重度の障害のある人に対しては、訓練期間を長くし、職場適応訓練費も増額している。

イ 職場適応訓練(短期)

障害のある人に対し、実際に従事することとなる仕事を経験させることにより、就業への自信を持たせ、事業主に対しては対象者の技能程度、適応性の有無等を把握させるため、都道府県知事又は都道府県労働局長が民間事業主等に委託して実施する訓練で、訓練生には訓練手当が、事業主には、職場適応訓練費が支給される(訓練期間2週間以内(原則))。また、重度の障害のある人に対しては、訓練期間を長くし、職場適応訓練費も増額している。

(5)農福連携等による障害のある人の就労支援

障害者就労施設では、稲作や野菜、果樹、花き、畜産、農産加工や販売等、幅広い分野で農福連携が取り組まれている。農業を通じて高い賃金・工賃を実現している事業所もあり、地域の農業における労働力不足への対応としても意味のある取組である。また、障害以外の理由で社会的に支援が必要な者や林業や水産業への取組拡大も含めた農福連携等の更なる推進が重要となっている。

このため、「農福連携等推進ビジョン(2024改訂版)」(2024年6月農福連携等推進会議)に基づき、「地域で広げる」「未来に広げる」「絆を広げる」のスローガンの下、地域単位での推進体制づくりの後押し、ノウフクの日(11月29日)等による企業・消費者も巻き込んだ取組の意義や効果の理解促進、世代や障害の有無を超えた多様な者の社会参画を図るユニバーサル農園の普及・拡大等を推進している。

また、関係省庁や各界関係者の参加する「農福連携等応援コンソーシアム」による優良事例の表彰・横展開や、施策等の周知を目的としたポータルサイトによる情報発信等を行っている。企業による農福連携等の取組推進に向け、2025年8月には、同コンソーシアムの下に「農福連携等企業部会」を設置した。

農林水産省では、農林水産業に関する技術の習得、ユニバーサル農園の開設、農福連携を地域で広げるための取組、生産・加工・販売施設の整備、全国的な展開に向けた普及啓発等を支援している。専門人材の育成に向けた都道府県による取組を支援するほか、農福連携を現場で実践する手法をアドバイスする「農福連携技術支援者」の育成研修を実施している。また、11月1日から12月31日までを「もっともっとノウフク2025」として、関係省庁や全国の地方公共団体・事業者等と連携して関連イベントを実施した。2026年1月9日には、首相官邸において、木原稔内閣官房長官、関係省庁の大臣等と、先進的な取組を行う事業者や農福連携を現場で実践する障害のある人との交流会を実施した。

地域協議会の設立により、行政機関、農業関係者、福祉関係者等が一体となって地域での農福連携を推進
写真(左):安芸市農福連携研究会(高知県安芸市)
写真(右):大隅半島ノウフクコンソーシアム(鹿児島県大隅半島)

厚生労働省では、農業に関するノウハウのない就労継続支援事業所に対する農業に係る指導・助言や6次産業化の支援のための専門家の派遣、就労継続支援事業所における農福連携マルシェ14の開催等を、都道府県を通じて支援している(2025年度は44道府県で実施)。また、障害者就労施設と農家等とのマッチング、事業立ち上げ、事業実施・検証・事例報告までを「伴走型コーディネーター」が一体的に支援するモデル事業を実施している(2025年度は全国5県4市で実施)。

(6)資格取得試験等における配慮

各種資格試験では、障害等の種類・程度に応じて、様々な合理的配慮を図っている。例えば、司法試験及び司法試験予備試験では、代筆による提出書類の作成も認めている。視覚障害のある受験者には、パソコン用電子データ又は点字による出題、解答作成に当たってのパソコンの使用、拡大した問題集・答案用紙の配布、試験時間の延長などの措置を講じている。肢体障害のある受験者には、解答作成に当たってのパソコンの使用、拡大した答案用紙の配布、試験時間の延長などの措置を講じている。司法書士試験、土地家屋調査士試験等でも、弱視者の拡大鏡の使用や記述式試験の解答作成に当たってのパソコンの使用、試験時間の延長等の措置を講じている。

資格試験での障害に応じた配慮については、「資格取得試験等における障害の態様に応じた共通的な配慮について」(平成17年11月9日障害者施策推進課長会議決定)において、配慮の内容を示してきた。内閣府では、「障害者差別解消法」の施行以後の合理的配慮の義務化や近年の配慮技術の進歩等を鑑み、各試験制度で新たに実施されている配慮を踏まえ、新たな配慮事項を、2026年2月26日付で、関係省庁に示すとともに、地方公共団体や試験を委託している団体等の試験実施機関等への周知を依頼し、各種試験での合理的配慮の提供を促した。

(7)国等による障害者就労施設等からの調達の推進

「障害者優先調達推進法」では、障害者就労施設等で就労する障害のある人や在宅で就業する障害のある人の自立の促進に向け、国や地方公共団体などの公的機関が物品やサービスを調達する際、障害者就労施設等から優先的な購入を進めるために必要な措置を講じることとしている。同法に基づき、全ての省庁等で調達方針を策定し、障害者就労施設等が供給する物品等の調達に取り組んでおり、国等における調達実績額は、この10年間で2倍程度に増加している。

図表3-13 障害者就労施設等からの調達実績(2024年度)
障害者就労施設等からの調達実績(2024年度)
2024年度 2023年度
※
前年度比較
件数 調達額 件数 調達額 件数 調達額
国 6,763 14.97億円 6,825 13.54億円 -62 1.43億円
独立行政法人等 8,472 19.85億円 8,402 19.31億円 70 0.53億円
都道府県 28,612 31.40億円 28,691 36.29億円 -79 -4.89億円
市町村 107,014 176.09億円 99,768 162.08億円 7,246 14.01億円
地方独立行政法人 2,323 4.08億円 2,202 3.96億円 121 0.11億円
合計 153,184 246.38億円 145,888 235.18億円 7,296 11.20億円
※ 四捨五入の関係で合計や前年度比の調達額が合わないところがある。
資料:厚生労働省

(8)職業能力開発の充実

ア 障害者職業能力開発校における職業訓練の推進

障害者職業能力開発校では、入校者の障害の重度化・多様化に対し、個々の訓練生の障害の態様を十分に考慮した、きめ細かな支援と、職業訓練内容の充実を図っている。2026年4月1日現在、障害者職業能力開発校は国立13校、府県立6校設置されている。国立のうち2校はJEEDが運営し、他の11校は都道府県に運営を委託しており、修了者における近年の就職率は6~7割で推移している。

イ 一般の公共職業能力開発施設における受入れの促進

都道府県立の一般の公共職業能力開発施設も、精神保健福祉士や公認心理師等による相談体制の整備を図るとともに、精神障害のある人等の受入れに係るノウハウの普及や対応力の強化に取り組んでいる。

ウ 障害のある人の多様なニーズに対応した委託訓練

雇用・就業を希望する障害のある人が居住する地域で職業訓練を受講できるよう、企業、社会福祉法人、特定非営利活動法人、民間教育訓練機関等を活用した障害のある人の多様なニーズに対応した「障害者委託訓練」を各都道府県で実施している。主として座学による「知識・技能習得訓練コース」、企業の現場を活用する「実践能力習得訓練コース」、通校が困難な人などを対象とする「e-ラーニングコース」、特別支援学校高等部等に在籍する生徒を対象とする「特別支援学校早期訓練コース」及び「在職者訓練コース」がある。修了者の就職率は、障害者職業能力開発校における就職率より低い水準であるが、近年は約4割で推移している。

エ 精神障害・発達障害のある人に対する職業訓練

ハローワークに求職を申し込む精神障害や発達障害のある人の増加が近年著しいことを踏まえ、精神障害や発達障害のある人の障害特性に配慮した訓練コースの設置を推進している。具体的には、都道府県が運営する障害者職業能力開発校で精神障害や発達障害のある人の障害特性に配慮した訓練コースの設置が円滑に行われるようJEEDが運営する障害者職業能力開発校において、訓練計画の策定、指導技法、訓練コース設置後のフォローアップ支援を行っている。

オ 障害のある人の職業能力開発に関する啓発

① 全国障害者技能競技大会(愛称:全国アビリンピック)の実施

全国障害者技能競技大会(愛称:全国アビリンピック)は、障害のある人が日頃培った技能を競う大会で1972年から開催している。障害のある人の職業能力の向上を図るとともに、企業や社会一般の人々に障害のある人に対する理解と認識を深め、その雇用の促進を図ることを目的として、JEEDが主催している。

第45回全国障害者技能競技大会

第45回全国障害者技能競技大会は、2025年10月17日から19日まで、愛知県常滑市で開催され、401人の選手が参加し、開会式を含めて約20,000名が来場し、専用Webサイト上で動画配信された。ビルクリーニング、木工、喫茶サービスなど25種目の競技に加え、障害者雇用に関する新たな職域を紹介する職種として、RPA、ドローン操作による技能デモンストレーションが実施され、成績優秀者92名が入賞者として表彰された。

ネイル種目競技風景(第45回大会)
RPA操作実施風景(第45回大会)
資料:JEED

② 国際アビリンピックへの日本選手団の派遣

国際アビリンピックは、障害のある人の職業的自立への意欲の増進と職業技能の向上を図るとともに、社会一般の理解を深め、参加者の国際交流・親善を目的として、おおむね4年に1回開催されている。2023年3月に第10回がフランス共和国メッス市において開催され、次回は2027年5月にフィンランドで開催される。


13 地域障害者職業センターのジョブコーチ以外に、社会福祉法人等に所属し事業所に出向いて支援を行う訪問型ジョブコーチ、企業に在籍し同じ企業に雇用されている障害のある労働者を支援する企業在籍型ジョブコーチがいる。

14 マルシェとは「市場」を意味するフランス語。農家が収穫したての農産物やハンドメイド雑貨等をマルシェで直接販売する。商店などの出店は少なく個人が出店することが多い。

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