第4章 障害のある人がその人らしく暮らせるための施策 第1節 1

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第1節 生活安定のための施策

1.利用者本位の生活支援体制の整備

(1)障害者総合支援法におけるサービスの概況

ア 障害福祉サービス

① 障害種別によらない一体的なサービス提供

2006年の「障害者自立支援法」(平成17年法律第123号)施行以降、身体障害、知的障害、精神障害の種類を超えた共通の制度の下で、個別のニーズに応じたサービス提供等を行っている。2013年4月の「障害者総合支援法」の施行により、障害福祉サービス等の対象となる障害者の範囲に難病患者等が含まれることとなった。制度の対象となる疾病(難病等)については、順次見直しを行い、2025年4月1日から376疾病を対象としている。

② 市町村による一元的な実施

「障害者自立支援法」施行後は、市町村に実施主体を一元化し、都道府県はこれをバックアップする仕組みに改め、より利用者に身近な市町村が責任を持って、障害のある人たちにサービスを提供できるようになっている。

イ 利用者本位のサービス体系

① 地域生活中心のサービス体系

「障害者総合支援法」では、障害のある人が地域で暮らすために必要な支援を効果的に提供できるよう、「地域生活支援」、「就労支援」のための事業や重度の障害がある人を対象としたサービスなど、地域生活中心のサービス体系としている。

地域移行支援及び地域定着支援が個別給付として位置付けられ、地域移行支援の対象には、保護施設、矯正施設等に入所している障害のある人も含まれる。また、生活の様々なニーズに対応する観点から、重度の肢体不自由者だけではなく、行動障害を有する知的障害のある人及び精神障害のある人も重度訪問介護の対象としている。

② 「日中活動の場」と「住まいの場」の分離

地域生活への移行を進めるため、「障害者総合支援法」では、障害のある人が、支援を自分で組み合わせて利用できるよう、昼のサービス(日中活動支援)と夜のサービス(居住支援)に分け(昼夜分離)、複数のサービスを組み合わせて利用できるようにした。昼夜分離により、在宅でも、障害者支援施設が実施する日中活動支援のサービスを利用できるようになった。

現在の「障害者総合支援法」の日中活動支援とその利用状況は以下のとおりである。

・療養介護 …
2025年3月現在の利用者数21,143人、事業所数259事業所。
・生活介護 …
2025年3月現在の利用者数304,282人、事業所数13,010事業所。
・自立訓練 …
2025年3月現在の機能訓練の利用者数2,162人、事業所数184事業所。生活訓練の利用者数15,530人、事業所数1,387事業所。宿泊型自立訓練の利用者数2,840人、事業所数218事業所。
・就労移行支援 …
2025年3月現在の利用者は37,086人、2,836事業所。
・就労継続支援 …
2025年3月現在の就労継続支援A型の利用者数85,339人、4,382事業所。就労継続支援B型の利用者数388,016人、18,704事業所。
・地域活動支援センター …
障害のある人が通い、創作的活動又は生産活動の機会の提供、社会との交流の促進等の便宜を図る施設(地域生活支援事業として実施)2024年10月現在、2,696事業所。

③ 障害のある人の望む地域生活の支援

「障害者総合支援法」では、障害のある人が自ら望む地域生活を営むことができるよう、支援の一層の充実を図るため、また、就労移行支援事業所又は就労継続支援事業所から一般就労に移行する障害者数の増加を踏まえ、以下の新たなサービスを実施している。

・就労定着支援 …
2025年3月現在の利用者数18,874人、1,717事業所。
・自立生活援助 …
2025年3月現在の利用者数1,219人、287事業所。

2025年10月1日からは、障害のある人の就労先・働き方についてより良い選択ができるよう、一人一人の希望や能力に沿ったよりきめ細かい就労支援を提供するため、以下の新たなサービスが加わった。指定状況は以下のとおりである。

・就労選択支援 …
2025年10月現在の利用者数227人、104事業所。

ウ 福祉施設で働く障害のある人の一般就労への移行促進等

① 就労支援の強化

障害のある人が地域で自立した生活を送るための基盤として、就労支援は重要である。希望する人には、一般就労が可能となるように支援を行い、一般就労が困難である人には、就労継続支援B型事業所等で、就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練や、工賃の水準が向上するような支援を行っている。

② 工賃・賃金向上のための取組

就労継続支援B型事業所の工賃の向上のため、都道府県では「工賃向上計画」を策定している。都道府県は、2024年度から2026年度の新たな「工賃向上計画」を策定し、関係行政機関、地域の商工団体等の関係者と連携しながら、事業所に対する工賃向上のための経営等の支援に取り組んでいる。具体的にはコンサルタントによる企業経営手法の活用や共同受注の促進などを重点に取り組んでおり、厚生労働省は、これらの取組への予算補助を行っている。また、個々の事業所も「工賃向上計画」を作成し、事業所責任者を始め、全職員が工賃向上のために主体的に取り組むこととしている。

これらの取組もあり、2024年度の平均工賃月額は前年度より上昇している。

図表4-1 就労継続支援B型事業所における平均工賃月額の推移
(厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課調べ)

エ 障害福祉計画に基づく計画的なサービス基盤整備の推進

「障害者総合支援法」及び「児童福祉法」では、障害のある人に必要なサービスが提供されるよう、将来に向けた計画的なサービス提供体制の整備を進める観点から、「障害福祉サービス等及び障害児通所支援等の円滑な実施を確保するための基本的な指針」(平成29年厚生労働省告示第116号。以下本章では「基本指針」という。)に即して、市町村及び都道府県は、数値目標と必要なサービス量の見込み等を記載した「障害福祉計画」及び「障害児福祉計画」を策定することになっている。

2026年3月には、2027年度を始期とする「第8期障害福祉計画」及び「第4期障害児福祉計画」の策定に係る基本指針について改正を行った(令和8年こども家庭庁・厚生労働省告示第4号)。改正の主なポイントは次のとおり。

① 入所等から地域生活への移行、地域生活の継続の支援

・様々なデータを活用した地域移行者数の把握

・希望する地域生活の支援に向けた支援体制確保の重要性を記載

・施設整備と計画に定める入所者数の削減目標の達成との整合

・入所施設における居室の個室化等の推進

② 精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築

・システムの理念の明確化と実現に向けた、市町村における相談及び援助の体制整備や、それに対する都道府県における体制整備

③ 福祉施設から一般就労への移行等

・就労選択支援の積極的な利用を促すための体制確保の推進

・就労選択支援事業所の設置、利用者数に関する成果目標の新設

④ 障害児支援の提供体制の整備等

・地域支援体制の構築に係る成果目標について、4つの中核機能の確保を行うよう見直し

・インクルージョン推進の協議の場の設置に係る成果目標の新設

・のぞまないセルフプランの解消を目指しつつ、関係機関との連携体制を確保した上での伴走的な相談支援体制の確保に関する成果目標の新設

・強度行動障害の状態にある児への支援ニーズの把握及び支援体制の整備に関する成果目標の新設

⑤ 地域における相談支援体制の充実強化

・基幹相談支援センターの設置のより一層の推進

・のぞまないセルフプランの解消に向けた取組の推進

・医療分野等との連携、ピアサポート等の重要性を記載

・協議会に障害当事者が参画することの重要性を記載

⑥ 障害福祉人材の確保・定着、当事者視点に立ったケアの充実のための生産性の向上

・介護テクノロジーの導入促進などによる間接業務の効率化と直接処遇業務の負担軽減・質の向上の推進

・人材確保や当事者視点に立ったケアの充実のための生産性向上の支援体制の整備に向けた成果目標の新設

・障害当事者が研修に関わることの重要性を記載

⑦ 障害福祉サービスの質の確保等

・就労系サービスやグループホーム等の質の確保について、ガイドラインなどを踏まえた取組の重要性を記載

・障害福祉サービス等情報公表制度の公表率等に関する成果目標の新設

・障害福祉分野における運営指導・監査の重要性を記載

・障害児支援における人材育成の重要性を記載

⑧ きめ細かい地域ニーズを踏まえた支援体制の整備

・様々な障害特性に応じたサービス提供体制の整備や専門人材の確保・育成等の重要性を記載

・意見申出制度の積極的な活用を念頭に入れた計画の検討

・意思疎通支援従事者の養成・派遣体制の整備、幅広い年齢層の支援者の養成、指導者の養成の促進に向けた取組の重要性を記載

・障害当事者に対するICT機器の利用支援に向けた取組の重要性を記載

⑨ 高次脳機能障害者に対する支援

・高次脳機能障害者支援法成立を踏まえ、高次脳機能障害について、相談支援体制の充実、専門的な医療機関の確保、地域協議会設置の重要性を記載

⑩ 人口減少地域におけるサービスの維持・確保

・中山間・人口減少地域におけるサービス提供体制の維持・確保の重要性を記載

⑪ 「地域共生社会」の実現に向けた取組

・地域共生社会の実現に向けたより一層の取組の推進

⑫ 住宅セーフティネット制度との連携

・住宅セーフティネット法に基づく賃貸住宅供給促進計画との調和や、住宅担当部局や居住支援協議会等との連携

⑬ 地域差の是正・指定の在り方等

・地域差の是正に向けたサービス見込量の算出方法

・サービス利用者割合の多い自治体におけるいわゆる総量規制や意見申出制度の活用の要請

・重度障害者(強度行動障害の状態にある者や高次脳機能障害を有する障害児者、医療的ケアを必要とする児者等)について個別の利用者数の見込みを設定するよう努める

⑭ 障害者等に対する虐待の防止等

・自治体における調査の徹底と体制整備の強化、重篤事例等の検証のより一層の推進

・ガイドラインを踏まえた、意思決定支援の一層の推進

・希望する生活の実現に向けた母子保健・児童福祉の関係機関との連携

⑮ スポーツ・健康増進活動による社会参加等の促進

・スポーツ・健康増進活動を通じて社会参加するとともに共生社会の実現を目指すことの重要性を記載

⑯ 災害時における障害福祉サービス提供の確保

・災害対策基本法等の改正を踏まえた、防災部局や職能団体等との連携

・施設・事業所等の耐災害性強化対策の必要性を記載

(2)身近な相談支援体制整備の推進

ア 障害のある人等に対する一般的な相談支援

障害のある人等に対する一般的な相談支援については、「障害者総合支援法」の改正により、2024年4月から、市町村における基幹相談支援センターの設置が努力義務とされた。基幹相談支援センターでは、地域の相談支援従事者に対する助言・指導や関係機関の連携の緊密化の促進も業務とし、地域の相談支援体制の充実・強化を図っている。広域・専門的な支援や人材育成については、都道府県の地域生活支援事業の中で、市町村をバックアップしている。2025年4月現在、基幹相談支援センターは66%(1,152市町村・1,457か所)の市町村が設置している。

また、指定特定相談支援事業所及び指定障害児相談支援事業所に配置されている相談支援専門員がサービス等利用計画又は障害児支援利用計画を作成することにより、障害のある人が障害福祉サービス等を適切に利用することができるよう支援を行っている。2025年3月現在、指定特定・指定障害児相談支援事業所数は12,861事業所、指定一般相談支援事業所数は3,785事業所であり、これらに配置されている相談支援専門員の延べ人数は41,992人である。

イ 都道府県による取組及び市町村区域への対応

都道府県においては、市町村に対する専門的な技術支援、情報提供の役割を担っている更生相談所等が設けられており、身体障害者相談員、知的障害者相談員、児童に関する相談員及び精神保健福祉相談員を配置している。設置状況は、身体障害者更生相談所(2026年4月現在76か所)、知的障害者更生相談所(2026年4月現在91か所)、児童相談所(2026年4月現在243か所)、精神保健福祉センター(2026年4月現在69か所)となっている。

ウ 法務局その他

全国の法務局で、障害のある人に対する差別、虐待等の人権問題について、面談・電話・インターネット等による相談に応じているほか、社会福祉施設等において特設の人権相談所を開設している。人権相談等を通じて人権侵害の疑いのある事案を認知した場合は、人権侵犯事件として調査を行い、事案に応じた適切な措置を講じている。

保健所、医療機関、教育委員会、特別支援学校、ハローワーク、民生委員・児童委員、ボランティア団体等においても、相談支援が行われている。

エ 矯正施設入所者等

障害等により自立が困難な矯正施設入所者について、出所後直ちに福祉サービスを受けられるようにするため、刑務所等の社会福祉士等を活用した相談支援体制を整備するとともに、「地域生活定着支援センター」を各都道府県に整備している。同センターは、矯正施設、保護観察所、地域の福祉関係機関等と連携して、社会復帰の支援を行っており、2021年度からは起訴猶予者等への支援も行っている。

また、帰住先が確定しないなどの理由により出所後直ちに福祉による支援が困難な者について、更生保護施設への受入れを促進し、福祉への移行準備、自立した日常生活のための支援等を実施している。

/法務省
TOPICS(トピックス)(4)
刑事施設における受刑者の障害特性に応じた処遇・支援の充実

1.拘禁刑の導入について

拘禁刑下の受刑者処遇の流れ

2025年6月、懲役及び禁錮に代わって、新たに「拘禁刑」が創設された。「刑法」(明治40年法律第45号)において、拘禁刑に処せられた者には、「改善更生を図るため、必要な作業を行わせ、又は必要な指導を行うことができる」と規定されている。

拘禁刑が創設されたことにより、全ての受刑者に一律に作業を行わせるのではなく、受刑者一人一人の特性に応じた処遇を実施できるようになり、今まで以上に効果的な改善更生と円滑な社会復帰を図ることが期待される。

拘禁刑下の受刑者処遇の流れ

2.集団編成(受刑者のグループ分け)の見直し

拘禁刑創設の趣旨を踏まえ、受刑者の特性に応じた矯正処遇等を効果的・効率的に実現するために、集団編成の見直しが行われた。これまでは、初犯や累犯、暴力団加入歴など、犯罪傾向の進度(犯罪傾向が進んでいない人はA指標、進んでいる人はB指標。)によって受刑者を分類して集団を編成していた。しかし、犯罪傾向が進んでいる人の中でも、例えば、生活困窮や障害等によって窃盗等を繰り返す高齢者が、現役の暴力団員と同じB指標に指定されてしまうなど、様々な特性の受刑者が同じ集団に編成され、現役の暴力団員などの保安リスクの高い人に合わせた処遇を画一的に実施せざるを得ない状況にあった。

このため、拘禁刑の創設を機に、障害など個々の受刑者の特性に応じた処遇を柔軟に実施できるよう、集団編成を大きく見直し、犯罪傾向の進度に加えて、受刑者の年齢、心身の状況、執行すべき刑期、受刑者の改善更生及び円滑な社会復帰の支障となる事情等に照らして、一定の共通する特性等を有する受刑者の類型ごとに、24種類の「矯正処遇課程」を設けた。個々の特性等に応じた矯正処遇課程を指定し、その矯正処遇課程を実施する施設において集団で処遇することで、受刑者個々に必要な処遇を効果的かつ効率的に実施している。

新設された矯正処遇課程のうち、福祉的な支援が必要な人を対象とした課程を3つ設けた。福祉的支援課程のうち、知的障害若しくは発達障害を有し、又はこれらに準ずる者を対象としたDH、福祉的支援課程のうち、精神上の疾病又は障害を有する者で、医療刑務所等に収容する必要性は認められないものの、自立した生活を営むことが困難な者を対象としたDM、そして、おおむね70歳以上の者で、認知症、身体障害等により自立した生活を営むことが困難な者を対象とした高齢福祉課程のDSは、いずれも高齢や障害等の特性に配慮した処遇を行っている。

矯正処遇課程一覧

3.特性に応じた処遇及び社会復帰支援の充実

刑事施設では、特性に配慮した処遇を行う必要性が特に高い受刑者に対する処遇及び支援の充実化を図るため、刑務官のほかに、医療、心理、教育、福祉、就労支援等様々な専門職による支援チームを設置し、それぞれの専門性をいかしながら、連携した処遇を実施している。これにより、本人に寄り添った柔軟な処遇及び社会復帰支援が可能となった。

また、矯正処遇課程の導入により、刑執行開始の早期の段階から、福祉的支援が必要な者が特定され、特性に応じた処遇を行いながら、福祉的支援を実施することが可能となり、障害受容の促進や福祉的支援に対する抵抗感の緩和をもたらし、日常生活での困りごと等を他機関に円滑に引き継いでいる。

定期的にケース会議を実施

(3)権利擁護の推進

ア 成年後見制度等

① 成年後見制度の利用促進

認知症、知的障害又は精神障害などにより、財産の管理又は日常生活等に支障がある人については、財産管理や身上保護などの法律行為を一人で行うことが難しい場合がある。このような一人で決めることに不安のある方々を法律により保護し、本人の意思を尊重した支援を行う制度として、成年後見制度がある。パンフレットの配布や法務省ホームページ上のQ&A掲載など、制度周知のための活動を行っている。また、障害者福祉サービスの利用者又は利用希望者のうち、知的障害や精神障害のある人について、成年後見制度の申立てに要する経費や後見人の報酬の補助を市町村で行っており、2024年4月1日現在で9割以上の市町村が実施している。

また、成年後見制度法人後見支援事業を「障害者総合支援法」の地域生活支援事業1として市町村の必須事業に位置付けている。日常生活自立支援事業2は、2025年3月末現在の本事業の実利用者数が56,681人となっている。

成年後見制度の利用促進については、「成年後見制度利用促進法」に基づき策定した「第二期成年後見制度利用促進基本計画~尊厳のある本人らしい生活の継続と地域社会への参加を図る権利擁護支援の推進~」(令和4年3月25日閣議決定)を踏まえ、地域連携ネットワークづくりの推進や市民後見人等の担い手の育成、総合的な権利擁護支援策の充実、意思決定支援の浸透など更なる制度の運用改善等に向けた取組を行っている。

② 成年後見制度の見直し

成年後見制度については、判断能力が回復しない限り制度の利用が継続することや必要な限度を超えて本人の行為能力が制限される場合があることなどの課題が指摘されている。

2024年2月には、法務大臣から法制審議会に対し、制度を利用する本人の尊厳にふさわしい生活の継続やその権利利益の擁護等をより一層図る観点から成年後見制度の見直しに関する諮問がされた。同年4月以降、法制審議会民法(成年後見等関係)部会において、一般社団法人全国手をつなぐ育成会連合会、一般社団法人日本メンタルヘルスピアサポート専門員研修機構及び公益社団法人認知症の人と家族の会に所属する障害当事者やその家族が委員として参加して、33回にわたり、調査審議がされた。2025年6月には中間試案が取りまとめられ、その後パブリックコメントを経て、2026年2月に法務大臣に要綱が答申された。同要綱は、後見及び保佐の制度を廃止し、補助の制度の対象を事理弁識能力が不十分である者の全てに拡大すること等を内容としている。

なお、要綱を踏まえた「民法等の一部を改正する法律案」が、2026年4月3日に閣議決定され、国会に提出された。

イ 消費者被害の未然防止・被害救済等

悪質な手口により消費者被害にあったなどとして、全国の消費生活センターや国民生活センター等に寄せられる障害のある人等からの消費生活相談件数は、近年増加傾向にあったが、2025年度は前年度から減少した。

消費者庁では、障害のある人の特性に配慮した消費生活相談の体制整備を図るため、地方消費者行政強化交付金を通じて地方公共団体における相談の対応力強化を支援している。このほか、聴覚障害のある人のアクセシビリティの向上のため、電話リレーサービスの導入及び2025年4月から始まった新たなサービス「手話リンク」について全国の消費生活センターへも周知等を図っている。

また、消費者庁では、「消費者安全法」(平成21年法律第50号)に基づく「消費者安全確保地域協議会」の設置・活性化の促進に取り組んでいる。消費者安全確保地域協議会は、福祉のネットワーク及び消費生活センターや消費者団体等の地域の多様な関係者で構成され、障害のある人等の配慮を要する消費者を見守り、消費者被害の未然防止・拡大防止を図っている。

2025年度には、地方消費者行政に関する先進的モデル事業として、見守り活動の優良事例の収集・横展開等を行ったほか、消費生活協力員・協力団体養成講座を実施した。また、障害者団体のほか高齢者団体・福祉関係者等専門職団体・消費者団体、行政機関等を構成員とする「全国消費者見守りネットワーク連絡協議会」を開催し、各団体における取組や消費者トラブルの現状等の情報提供等を行っている。

国民生活センターでは、障害のある人や高齢者、その周りの人々に悪質商法の手口やワンポイントアドバイス等をメールマガジンやホームページで伝える「見守り新鮮情報」を発行している。また、最新の消費生活情報をコンパクトにまとめた「2026年版くらしの豆知識」は、色覚障害のある人も見やすいカラーユニバーサルデザインの認証を取得した。デイジー版(デジタル録音図書)を、全国の消費生活センター、消費者団体、全国の点字図書館等に配布するとともに、国立国会図書館視覚障害者等用データ送信サービスにも登録した。

障害のある人への消費者教育としては、消費者庁が作成した高校生向け消費者教育用教材「社会への扉」の音声読み上げツールを提供しているほか、主に知的障害のある生徒を対象とする特別支援学校等向け消費者教育用教材を公表している。また、「消費者教育ポータルサイト」において、障害者向けの消費者教育教材や取組事例等について登録し、情報提供を行っている。

図表4-2 障害のある人、認知症高齢者等の消費生活相談件数(年度別)(2015 ~ 2025年度)
資料:独立行政法人国民生活センター運営のPIO-NET (全国消費生活情報ネットワークシステム)
図表4-3 障害のある人、認知症高齢者等の消費生活相談件数(商品・役務別10位まで)(2025年度)
障害のある人、認知症高齢者等の消費生活相談件数(商品・役務別10位まで)(2025年度)
商品・役務 件数
1 商品一般 1,899
2 他の健康食品 1,572
3 フリーローン・サラ金 1,374
4 携帯電話サービス 1,035
5 役務その他サービス 663
6 新聞 648
7 賃貸アパート 604
8 魚介類(全般) 433
9 光ファイバー 413
10 医療サービス 407
注1:2026年3月末までの登録分。消費生活センター等からの経由相談は含まない。
注2:「判断不十分者契約」又は「心身障害者関連」に関する相談についての集計。
資料:独立行政法人国民生活センター運営のPIO-NET(全国消費生活情報ネットワークシステム)

(4)障害者虐待防止対策の推進

「障害者虐待防止法」に基づき、「市町村障害者虐待防止センター」や「都道府県障害者権利擁護センター」を設置するなどして、障害者虐待の通報・届出の受理、相談や指導・助言を行うほか、国民の理解の促進、広報・啓発等を行っている。都道府県労働局は、都道府県などの地方公共団体と連携し、事業主や職場の上司など、「使用者」による障害者への虐待の防止や、虐待が行われた場合の関係法令に基づく是正指導などに取り組んでいる。

厚生労働省は、地方公共団体が、障害者虐待の未然防止や早期発見、迅速な対応等を行えるよう、支援体制の強化や地域における関係機関等との協力体制の整備等を図るとともに、虐待防止や権利擁護等に係る各都道府県における指導的役割を担う者の養成研修等を実施している。

また、2022年に改正された「精神保健福祉法」に基づき、2024年4月から、精神科病院における虐待防止措置の実施の義務化や精神科病院内の業務従事者による虐待を受けたと思われる障害者を発見した場合の都道府県等への通報の義務化等が施行され、2024年度の精神科病院における業務従事者による障害者虐待の状況について、都道府県・指定都市の対応状況が公表されている。

2024年度の報酬改定においては、障害福祉サービス事業所等における虐待防止の取組の徹底を図るため、以下について実施している。

・2022年度に義務化された障害者虐待防止措置を未実施の場合の減算措置の導入

・身体拘束廃止未実施減算について、入所施設・居住系サービスにおける減算額の引上げ

令和6年度障害者虐待事例対応状況調査結果(令和7年12月公表)では、養護者及び施設従事者等による障害者虐待の「相談・通報件数」、「虐待判断件数」がいずれも過去最多となった。「令和6年度使用者による障害者虐待の状況等」(令和7年9月公表)の結果では、虐待が認められた障害者数、事業所数はいずれも前年度と比べて減少している。

図表4-4 令和6年度都道府県・市区町村・都道府県労働局における障害者虐待事例への対応状況等(調査結果)
(1)養護者による障害者虐待
※2012年度は下半期のみのデータ。
(2)障害者福祉施設従事者等による障害者虐待
※2012年度は下半期のみのデータ。
(3)令和6年度における使用者による障害者虐待の状況
資料:厚生労働省

(5)障害者団体や本人活動の支援

障害のある人の政策決定過程への参画を得て、その視点を施策に反映させる観点から、障害者政策委員会等において障害のある人や障害者団体が、情報保障その他の合理的配慮の提供を受けながら構成員として審議に参画している。

また、「障害者総合支援法」に基づく地域生活支援事業において、障害のある人やその家族、地域住民等が自発的に行う障害者等に対するボランティア活動などへの支援を行う「自発的活動支援事業」を実施している。


1 後見、保佐及び補助の業務を適正に行うことができる人材の育成及び活用を図るための研修を行う事業。

2 認知症高齢者、知的障害者、精神障害者等のうち判断能力が不十分な方が地域において自立した生活が送れるよう、利用者との契約に基づき、福祉サービスの利用援助等を行う事業。

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