第4章 障害のある人がその人らしく暮らせるための施策 第1節 5

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第1節 生活安定のための施策

5.スポーツ・文化芸術活動の推進

(1)スポーツの振興

ア パラスポーツの普及促進

2025年に改正された「スポーツ基本法」(平成23年法律第78号)により、障害の有無等にかかわらず、スポーツを身近に親しむことができる社会の実現を図ることが明確に位置づけられた。

2025年度「障害児・者のスポーツライフに関する調査研究」によると、障害のある人(20歳以上)の週1日以上の運動・スポーツ実施率は35.0%と、近年は伸びが緩やかなものの着実に実施率は向上している。同調査では、週1日未満の実施者の、運動・スポーツの実施の障壁を調査しており、「運動・スポーツができる場所がない」「施設がバリアフリーでない」といった回答は3%程度であり、「体力がない」といった回答が42.0%となっている。

スポーツ庁では、広く日本の各地でパラスポーツ活動の機会が創出されるよう、地方公共団体や都道府県・指定都市パラスポーツ協会、同パラスポーツ指導者協議会、パラスポーツ競技団体等に対し、スポーツ活動の場づくりや体制の強化等の構築に必要な支援を実施している。

障害のあるこども・若者が運動・スポーツ活動に継続して親しめるよう、特別支援学校等を拠点とするクラブチームや総合型地域スポーツクラブ、社会福祉施設等、多様な地域資源と連携した運動部活動ができる環境の整備や特別支援学校等の全国規模の競技会の開催支援に取り組んでいる。2025年10月には、競技者としてもパラリンピック競泳で活躍し、長年にわたりパラスポーツの振興に携わってきた河合純一氏がスポーツ庁長官に着任した。

障害者スポーツセンターにおける活動の様子
出典:東京都障害者総合スポーツセンター
第3代スポーツ庁長官に就任した河合純一氏
出典:スポーツ庁

イ 障害者スポーツの競技力向上

スポーツ庁では、パラリンピックの競技特性や環境等に十分配慮しつつ、オリンピック競技とパラリンピック競技の支援内容に差を設けない一体的な競技力強化支援に取り組んでいる。

具体的には、「競技力向上事業」を通じて、障害者スポーツの競技団体を含む各競技団体が行う強化活動に必要な経費等の支援を実施している。

特に、パラリンピック競技大会において、メダル獲得が期待される競技を「重点支援競技」として選定し、競技力向上事業助成金の加算のほか、「ハイパフォーマンス・サポート事業」を通じて、トレーニング、映像分析など、スポーツ医・科学、情報の各分野の専門スタッフによる帯同活動等のアスリート支援を実施している。2025年度においては、ミラノ・コルティナ2026パラリンピック競技大会の重点支援競技に対して、これらの支援を行った。

また、初の日本開催となった東京2025デフリンピック競技大会(以下「東京2025大会」という。)に向けては、日本パラリンピック委員会に加盟する夏季デフリンピック実施競技団体へ配分する競技力向上事業助成金の加算や、国際競技大会等への日本選手団派遣に必要な経費の支援等を実施したほか、東京2025大会までの時限措置としていたデフスポーツ競技団体のハイパフォーマンススポーツセンター(HPSC)・ナショナルトレーニングセンター利用について、デフスポーツ競技団体の要望等を踏まえ、大会終了後も継続できるよう調整した。

このほか、HPSCを中心として、競技特性に対応した最適なコンディショニングの研究、先端技術を活用した多様な支援手法の研究、チェアスキーなどの競技用具等の研究等、継続的にパラアスリートの選手強化が行えるシステムの構築を目指す「先端技術を活用したHPSC基盤強化事業」を実施した。

さらに、パラアスリートに特化した取組として、2025年度から「パラアスリートの医・科学支援強化事業」を開始した。本事業では、トータルコンディショニングを実施するための体制整備や、「JPCクラス分け情報・研究拠点」3との連携強化、日本スポーツ振興センターと連携したタレント発掘を通して、パラアスリートの国際競技力の向上に取り組んでいく。

(2)文化芸術活動の振興

ア 文化芸術活動の振興

我が国の障害のある人による文化芸術活動については、共生社会の実現に向けて、広く文化芸術活動の振興につながる取組が行われている。

2018年に成立・施行された「障害者文化芸術推進法」に基づき、2023年3月に第2期の「障害者による文化芸術活動の推進に関する基本的な計画」を策定した。この計画に基づき、以下の取組を始め、障害のある人による文化芸術活動の推進に関する施策を総合的かつ計画的に推進している。

厚生労働省では、2017年度から地域における障害のある人の自立と社会参加の促進を図るため、全国に芸術文化活動に関わる支援センター等の設置を行い、支援の枠組みを整備する「障害者芸術文化活動普及支援事業」を実施し、障害のある人の芸術文化活動(美術、演劇、音楽等)の更なる振興を図っている。

また、障害のある人の生活を豊かにするとともに、国民の障害への理解と認識を深め、障害のある人の自立と社会参加の促進に寄与することを目的として2025年にながさきピース文化祭2025(第40回国民文化祭、第25回全国障害者芸術・文化祭)を開催した。

文化庁では、障害者の文化芸術活動の充実に向けた支援に取り組んでいる。具体的には、美術・舞台芸術・音楽等の様々な文化芸術分野における鑑賞・創作活動・発表等に係る幅広い取組の推進や普及展開に向けた人材の育成、特別支援学校の生徒による作品の展示や実演芸術の発表の場の提供等を実施している。また、アクセシビリティの確保に向け、文化芸術へのアクセスの改善、助成採択した映画作品や劇場・音楽堂等において公演される実演芸術のバリアフリー字幕・音声ガイド制作への支援等にも取り組んでいる。

国立美術館、国立博物館は、障害者手帳を持つ人について展覧会の入場料を無料としているほか、全国各地の劇場、コンサートホール、美術館、博物館などにおいて、車椅子使用者も利用ができるトイレやエレベーターの設置等障害のある人に対する環境改善も進められている。

イ 大阪・関西万博での取組

文化庁では、大阪・関西万博に向けて日本各地の最高峰の文化資源を磨き上げる「日本博2.0」において、障害者による文化芸術活動を含む事業を支援した。その一環として、「大阪・関西万博」においても、舞台でのパフォーマンスや美術作品等の展示を通じ、共生社会の実現に向けた取組を国内外に発信した。

公益社団法人2025年日本国際博覧会協会では、施設整備、運営サービス、交通アクセスの各分野において、障害当事者や学識経験者等の意見を伺いながら、「ユニバーサルサービスガイドライン」等を策定し、これらにのっとって準備を進めた。日本政府館についても、こうしたガイドライン等に準拠し、ユニバーサルデザインの実現を図ることを目的として、2023年度に引き続き2024年度も「大阪・関西万博」日本館ユニバーサルデザインワークショップを実施し、検討結果について設計・運営等に反映した。また、障害の有無にかかわらず万博に来場しやすいようにするため、車椅子利用者や視覚に障害のある人のための移動のサポートや、視覚に障害のある人向けナビゲーションアプリの導入が行われた。さらに、万博会場への来場が困難な方も万博の様々なコンテンツを体験することができるよう、現地の開催期間にあわせて、インターネットを介して参加することのできるバーチャル万博を開催した。

/経済産業省、内閣官房
TOPICS(トピックス)(5)
2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)におけるバリアフリー・合理的配慮

公益社団法人2025年日本国際博覧会協会では、国や地域、文化、人種、性別、世代、障害の有無にかかわらず、大阪・関西万博を訪れる全ての人が安全・快適に過ごすことができる「オールインクルーシブな万博」の実現に向けた取組を進めた。具体的には、ユニバーサルデザイン検討会(全3回)、ユニバーサルサービス検討会(全12回)及び交通アクセスユニバーサルデザイン検討会(全5回)を開催し、障害当事者、学識経験者等から多様な意見及び提案を聴取した。また検討会での議論を踏まえ、会場内の施設整備・運営サービスや、来場者が利用する交通施設に関し、遵守・参照すべきガイドラインを策定の上、周知徹底した。

日本政府館においても、こうしたガイドライン等に準拠し、ユニバーサルデザインの実現を図ることを目的として、2023年度に引き続き2024年度も「大阪・関西万博日本館UDワークショップ」を実施し、検討結果について設計・運営等に反映した。

また、障害の有無にかかわらず万博に来場しやすいようにするため、様々な配慮を必要とする方への会場内の移動支援等が実施された。具体的には、東西ゲートに隣接するアクセシビリティセンターでは車いす・歩行補助器具の貸出し等の各種サービスが提供されたほか、協賛者の役務提供により視覚障害のある人と車いす利用者等を対象にボランティアによる移動支援サービスを実施した。あわせて、会場に行けない人に向けてリポーターが会場現地からライブ配信を行うオンラインツアーも実施し、合計15万人が利用した。

くわえて、視覚に障害のある人向けナビゲーションアプリが導入され、会場内の点字ブロックに設置された2次元コードをスマートフォンのカメラで読み込むことでルートに関しての音声ガイドを提供するサービスや、ナビレンスコードを読み込むことで位置情報や目的地までの距離などを案内するサービスが実施された。

さらに、万博会場への来場が困難な方も万博の様々なコンテンツを体験することができるよう、現地開催期間に合わせて、自身のパーソナルコンピュータやスマートフォン、VRゴーグルなどからアプリを介して参加することのできるバーチャル万博を開催した。バーチャル万博は、各パビリオン等の外観データも取り込みながら、バーチャル空間上に夢洲会場のバーチャル会場として展開された会場内を、自身のアバターで移動し、各種取組を体験できるサービスである。パビリオン内では夢洲会場内の展示テーマに沿って各出展者が展開するバーチャルならではの展示を楽しむことができ、催事場では公式行事やナショナルデーなどの配信が実施された。

こうした一連の取組がなされた結果、大阪・関西万博では、障害者手帳等をお持ちの方と同伴者(介助者)1名が購入できる入場券として特別割引券が約63.3万枚販売され、多くの障害当事者の方々にも御来場いただいた。また、アンケートでは「スタッフの接客対応が洗練されており、多言語対応や障害者への配慮もあり安心できた」等の声も頂いた。

車いす利用者や視覚に障害のある人のための会場内の移動支援「LET’S EXPO」
ミラノ・コルティナ2026パラリンピック競技大会の結果

◯日本代表選手団の活躍

イタリアのミラノ・コルティナを中心に、ミラノ・コルティナ2026パラリンピック競技大会が、2026年3月6日から3月15日まで開催された。本大会では、6競技79種目が実施され、経験豊富な選手が安定した成績を収めた結果、4個のメダル獲得、28の入賞を達成した。冬季パラリンピックが始まって50周年の記念大会でもあり、日本の冬季パラリンピックメダル獲得数は通算100個を超え、自らの限界に挑む選手の姿は国民全体に勇気と感動を与えた。

2026年には「愛知・名古屋2026アジアパラ競技大会」が、2028年には「ロサンゼルス2028パラリンピック競技大会」が開催される。スポーツ庁としては、ミラノ大会の成果等も踏まえながら、引き続き、パラスポーツの国際競技力向上に向けて取り組んでいく。

パラアルペンスキー・村岡桃佳選手
パラスノーボード・小栗大地選手
パラアルペンスキー・鈴木猛史選手
©フォート・キシモト
〈国・地域別のメダル獲得状況〉
〈メダル獲得数及び入賞数の推移〉
※JPCホームページを参考に、スポーツ庁において作成。
※入賞は8位まで。
/文部科学省
TOPICS(トピックス)(6)
第25回夏季デフリンピック競技大会東京2025の結果

【日本代表選手団の活躍】

第25回夏季デフリンピック競技大会東京2025が、2025年11月15日から11月26日まで開催された。本大会は、1924年の第1回から100周年の記念大会であり、初の日本開催大会であった。過去最多となる268名の選手が出場し、金メダル数、総メダル数いずれも過去最多を記録したほか、金メダルランキングで過去最高の3位となるなどのすばらしい結果を収めた。さらに、6つの団体競技において、競技初、種目初となる金メダルやメダルを獲得し、団体競技の躍進が際立ったとともに、10代の選手も多くのメダルを獲得し、若手のメダリストが多数誕生するなど、国民全体に夢と希望を与えた。

今後も、2026年の「愛知・名古屋2026アジアパラ競技大会」や2028年の「ロサンゼルス2028パラリンピック競技大会」等の国際競技大会で我が国の選手が活躍できるよう、パラスポーツの国際競技力向上に向けた取組を実施していく。

〈国・地域別のメダル獲得状況〉
※全日本ろうあ連盟ホームページを参考に、スポーツ庁において作成。
女子バレーボール
男子4×100mリレー
出典:© 一般財団法人全日本ろうあ連盟スポーツ委員会

【大会を通じた共生社会の実現】

デフリンピックが日本で初めて開催されることを踏まえ、デフスポーツの振興とともに、聴覚障害のある人への理解促進や多様なコミュニケーション手段への理解を広げる取組が全国で展開された。デフリンピックに向けた機運醸成の取組として、ショッピングモールや自治体等が実施する大規模イベントや各種スポーツイベントにおいて、デフスポーツの紹介や手話体験を行うブースを設置するなど、幅広い層がデフスポーツに触れる機会が創出された。

また、小学校、中学校、特別支援学校にデフアスリートを派遣し、体験学習やデフスポーツやデフリンピックを取り上げる講話が行われた。こうした取組を通じて、共生社会の形成に向け、児童生徒が聴覚障害への理解を深める契機となった。

さらに、デフリンピックに関する認知度については、東京2025デフリンピック開催が決まる前から知っていた人、東京2025デフリンピック開催決定をきっかけに知った人を合わせて42.9%となっている(令和7年度「スポーツの実施状況等に関する世論調査」)。また、これらの東京2025デフリンピックを知っていた人のうち、50.3%で、聴覚障害のある人のスポーツを含むパラスポーツへの関心が高まった、聴覚障害への理解が深まった、障害者の住みやすい社会についての関心が高まったといった意識の変化がみられた。

デフリンピックは国際スポーツ大会としての役割にとどまらず、聴覚障害のある人への理解や社会全体における多様性の尊重に対する関心を高める契機となった。

/文部科学省
TOPICS(トピックス)(7)
学校における児童・生徒の文化芸術鑑賞・体験の推進

本物の文化芸術を体験することは、こどもたちの豊かな創造力・想像力や、思考力、コミュニケーション能力などの資質・能力を養う上で非常に重要である。文化庁では、障害の有無や地域・生活環境等による文化芸術の体験格差を解消し、全てのこどもたちが本物の文化芸術を鑑賞・体験する機会を確保するため、芸術団体や芸術家・クリエイター等を学校に派遣し、授業(教育課程内)において公演等を行う「学校における文化芸術鑑賞・体験推進事業」を実施している。

本事業においては、字幕や手話、音声ガイドの活用を始め、障害のあるこどもたちも体験できるよう工夫された公演等を行う「ユニバーサル公演」を2021年度の先行実施を経て、2022年度から実施している。「ユニバーサル公演」は、特別支援学校の文化芸術鑑賞・体験機会確保への意欲を促進しており、2022年度と比較し、2025年度における特別支援学校からの応募件数は約1.26倍となっている。「ユニバーサル公演」では、どのような障害のあるこどもたちも、文化芸術を見たり、聞いたり、感じたりすることができる取組が実施可能な団体を文化庁が選定し、学校側からの要望とのマッチングを行っている。本事業では、こどもたちは文化芸術を鑑賞するだけでなく、実際に楽器を演奏したり、役を演じたり、機材に触れてみたりと、様々な体験をすることもでき、実際に体験した児童生徒からは極めて好評である※。

また、障害のあるアーティストが所属している団体も選定しており、障害のあるアーティストの活動を通じて、こどもたちの障害や表現の多様性に対する理解を深める機会としても活用されている。

さらに、特別支援学校と近隣の小・中学校が合同で実施することで、障害のあるこどもとないこどもが共に文化芸術を楽しむ機会の創出にもつながっている。

※児童生徒の声

 ・勇気をもらいました。(特別支援学校)

 ・挑戦する大切さや人と協力する楽しさを知れてよかった(中学校)

特別支援学校向けワークショップ
日本ろう者劇団による手話狂言

3 JPCクラス分け情報・研究拠点:2024年に日本パラリンピック委員会(JPC)に設置された、クラス分けに関する最新の国際的な動向の把握や専門人材の育成等を行う中枢機関。

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