第4章 障害のある人がその人らしく暮らせるための施策 第2節 2
第2節 保健・医療施策
2.障害のある人に対する適切な保健・医療サービスの充実
(1)障害のある人に対する医療・医学的リハビリテーション
ア 医療・リハビリテーション医療の提供
医療・リハビリテーション医療の充実は、障害の軽減を図り、障害のある人の自立を促進するために不可欠である。
「障害者総合支援法」に基づき、身体障害の状態を軽減するための医療(更生医療及び育成医療)及び精神疾患に対する継続的な治療(精神通院医療)を自立支援医療と位置付け、その医療費の自己負担の一部又は全部を公費負担している。
2026年度の診療報酬改定においては、高次脳機能障害の患者に対して退院後も必要なリハビリテーション等を適切に提供する観点から、回復期リハビリテーション病棟入院料及び特定機能病院リハビリテーション病棟入院料において、「高次脳機能障害者支援センター」や、こうした患者に適したサービスを提供する他の保険医療機関等の情報を把握するとともに、退院時に患者又はその家族に当該情報を説明し、必要に応じて関係機関に患者情報の提供を行うことを要件とした。
イ 高次脳機能障害のある方への医学的リハビリテーションの確保
交通事故や病気等により脳に損傷を受け、その後遺症等として記憶、注意、遂行機能、社会的行動といった認知機能(高次脳機能)が低下した状態を高次脳機能障害という。2025年12月には、高次脳機能障害への理解促進や高次脳機能障害者の自立及び社会参加のための支援を目的とした「高次脳機能障害者支援法」が成立している。同法においては、高次脳機能障害者への支援に関する基本理念を定め、国等の責務を明らかにするとともに、地域での生活支援や相談体制の整備等の支援に関する施策が定められており、2026年4月から施行されている。
国立障害者リハビリテーションセンター病院では、高次脳機能障害者や失語症患者への復職・復学を目標としたリハビリテーション、訓練プログラムや家族支援の充実を図っている。退院後も外来や生活訓練・職業訓練を利用して連続した支援を行っている。
高次脳機能障害は日常生活の中で表れ、外見からは障害があるとわかりにくく、「見えない障害」や「隠れた障害」などといわれている。このため、都道府県に高次脳機能障害のある人への支援を行うための支援拠点機関を置き、①支援コーディネーターによる高次脳機能障害のある人に対する専門的な相談支援、②関係機関との地域支援ネットワークの充実、③高次脳機能障害の支援手法等に関する研修等を行う「高次脳機能障害及びその関連障害に対する支援普及事業」を開始し、全国で高次脳機能障害に対する適切な対応が行われるよう取り組んでいる。
2023年度からは高次脳機能障害の診断及びその特性に応じた支援サービスの提供を行う協力医療機関(医療機関、リハビリ機関等)及び専門支援機関(就労支援機関、教育機関等)を確保するとともに、明確化し、高次脳機能障害の当事者への専門的相談支援及び医療と福祉の一体的な支援を普及・定着させている。また、地域の関係機関が相互に連携・調整を図り、「高次脳機能障害及びその関連障害に対する地域支援ネットワーク構築促進事業」に取り組み、当事者やその家族等の支援に資する情報提供を行う地域支援ネットワークを構築し、切れ目のない充実した支援体制の促進を図ることとしている。
2026年度からは、「高次脳機能障害者支援法」の施行を踏まえ、各都道府県及び指定都市が指定する「高次脳機能障害者支援センター」を中心に、支援コーディネーターの配置等による相談支援、普及啓発、高次脳機能障害に関する支援手法等の研修事業など、支援体制づくりのための取組を行うほか、地域の実情に応じた支援体制の協議、課題の共有等を行うための「高次脳機能障害者支援地域協議会」を開催する事業、専門的な医療機関の確保や高次脳機能障害者及びその家族等への支援体制の強化のための事業を各都道府県等において実施する予定であり、高次脳機能障害への理解を促進するとともに、高次脳機能障害者の自立及び社会参加のための生活全般にわたる支援を、どの地域でも、あらゆる段階で、切れ目なく受けられるよう取り組む予定である。
また、国立障害者リハビリテーションセンターに「高次脳機能障害情報・支援センター」を設置し、高次脳機能障害について一般の方への啓発を行うとともに、高次脳機能障害者支援に必要な最新の国内外の情報や研究成果等を集約し、高次脳機能障害のある人やその家族及び支援関係者等に役立つ情報についてホームページ等を通じて発信している。
さらに、国立障害者リハビリテーションセンター学院において、「高次脳機能障害支援養成研修(指導者研修)」等、現に高次脳機能障害のある人に対する支援を行っている専門職を対象とした研修会を実施している。
(2)難病患者に対する保健医療サービスとその情報提供
早期に正しい難病の診断ができる体制、診断後はより身近な医療機関で適切な医療を受けることができる体制が整備できるよう、都道府県ごとの難病診療連携拠点病院、難病診療分野別拠点病院、難病医療協力病院の整備、保健所を中心とした在宅難病患者に対する地域での支援の強化など、地域における保健医療福祉サービスの提供を推進している。
また、難病情報センターにおいて、インターネットを活用して最新の医学や医療の情報等を提供するとともに、難病患者のもつ様々なニーズに対応したきめ細かな相談や支援が行えるよう、「難病相談支援センター」を都道府県、指定都市に設置し、地域における難病患者支援を推進している。
(3)口腔の健康づくり
定期的に歯科検診や歯科医療等の歯科保健医療を受けることが困難な障害者・障害児に対しては、その状況に応じて、歯科疾患の予防や口腔機能の獲得・維持・向上等による歯科口腔保健の推進を図っていく必要がある。そのため、「歯科口腔保健の推進に関する基本的事項」(平成24年厚生労働省告示第438号)において、「障害者支援施設及び障害児入所施設での定期的な歯科検診実施率の増加」を指標として設定した。「歯科口腔保健の推進に関する基本的事項(第二次)」(令和5年厚生労働省告示第289号)においては、「障害者・障害児が利用する施設での過去1年間の歯科検診実施率」を指標(目標値90%(2032年度))として設定している。
「8020運動・口腔保健推進事業」では、歯科疾患の予防等による口腔の健康の保持・増進を図ることを目的として、都道府県等が実施する、歯科保健医療サービスを受けることが困難な障害のある人等に対する歯科健診(検診)等や、施設等の職員等に対する口腔の健康の保持・増進及び歯科疾患の予防に係る普及啓発及び指導等に対して支援を行っている。