第5章 住みよい環境の基盤づくり 第3節 2
第3節 手話に関する施策の推進に関する法律の公布・施行
2.手話施策推進法の概要
「手話施策推進法」では、手話は言語であり、手話を使う人にとって、生活を営む上で重要な意思疎通の手段であることが規定され、基本的施策を定めている。
(1)基本理念等
「手話施策推進法」においては、①手話の習得・使用に関する環境の整備、②手話文化の保存・継承・発展、③国民の理解と関心の増進を3つの基本理念として定め、これらに即した施策を国や地方公共団体が総合的に実施するよう求めている。
目的規定では、手話は「これを使用する者にとって日常生活及び社会生活を営む上で言語その他の重要な意思疎通のための手段」としており、盲ろう者が使用するコミュニケーション方法である触手話や接近手話など、幅広く使われている手話も対象としている。また、主に手話を使用するろう者などの聴覚障害者だけではなく、その家族なども含む広い概念として「手話を使用する者」という文言を使用している。また、手話の習得への支援については「手話を必要とする者」として、例えば、言語未獲得のこどもやその保護者、音声の日本語の習得後に聞こえなくなった方など手話を未習得の人も対象としている。
(2)基本的施策の概要
基本的施策については、第6条以降に規定されている。
まず、手話の習得に係る支援については、こどもや保護者に対する手話の習得の支援として、
○手話に関する情報の提供・相談・助言等
○手話を必要とするこどもの希望に沿った、乳幼児期における手話の学習機会の提供や、学校等の授業等における手話の学習機会の提供等、手話習得の支援
○保護者・家族が手話を学習できる機会の提供や手話に関する相談・助言等
の施策を講ずることとされている。
また、音声言語の習得後に意思疎通が困難となり手話を必要とする中途失聴者・難聴者等が手話を習得できるよう、手話に関する情報の提供・助言、手話の学習機会の提供等、必要な施策を講ずることとされた。
次に、手話を使用するこどもが在学する学校において、その意向ができる限り尊重されつつ手話による教育が受けられるよう、手話の技能を有する教員、手話通訳、手話に関する必要な支援を行う者などの適切な配置や、手話を使用した教材の提供等の施策を講ずることとされている。また、手話で教えることのできる教員の養成のため、大学や教員養成機関による取組の促進、教員に対する研修や、学校生活において手話を自由に使用できる環境の整備に関する施策についても規定しており、その他、初等中等教育だけではなく、大学等における配慮も規定されている。
手話を使って暮らすための支援の施策については、手話を使用して日常生活及び社会生活を円滑に営むことができる環境の整備が図られるよう施策を講ずることとしている。また、職場においても手話を使用する方が適切かつ円滑に手話を使用できる職場環境の整備のための取組の促進や、災害時の情報保障等に関しても施策を講じることとされている。これらを支える手話通訳等についても、人材の安定的な確保、養成及び資質の向上のため、研修の機会の確保、適切な処遇の確保等を規定している。
このほか、国及び地方公共団体は、
・手話文化の保存・継承・発展に必要な施策(第12条)
・国民の手話への理解・関心を深めるための施策や学校教育における手話への理解・関心を深めるための施策(第13条)
を講じることとされており、特に、手話の普及啓発のための日として、手話の日(9月23日)を設け、その趣旨にふさわしい行事を実施することが求められた。
さらに、国は、手話の習得のための効果的な手法の開発、円滑な意思疎通を図るためのデジタル技術等の先端的な技術を活用した機器等の開発も取り組むべきとされている。
これらの施策の実施に当たっては、障害者基本計画や都道府県・市町村の障害者計画の策定・変更の場合に、法の趣旨を踏まえた内容とすることとしている。
内閣府においては、こども家庭庁、文部科学省及び厚生労働省と連名で「手話施策推進法」の公布日に、施行通知を発出した。また、障害者政策委員会において法の施行について報告を行っている。政府では、今後、聴覚障害のある方など手話を使用する方の意見を聴く機会を設け、障害者政策委員会等において次期障害者基本計画の検討を行っていく。