第5章 住みよい環境の基盤づくり 第3節 3
第3節 手話に関する施策の推進に関する法律の公布・施行
3.手話施策推進法に係る施策
(1)手話を必要とするこどもや保護者のための取組
聴覚障害児の支援は、乳児からの適切な支援が必要であることから、福祉部局と教育部局の連携の下で、聴覚障害児支援の中核機能を整備し、聴覚障害児とその家族に対し適切な情報提供や支援を実施している。具体的には、関係機関が連携して支援ニーズの把握・共有や支援の検討を進めるほか、家族支援や保育所・幼稚園等に向けた巡回支援を通じて、手話の習得支援等に取り組んでいる。
また、国は、都道府県が「障害児福祉計画」を策定するに当たっては、「難聴児の早期発見・早期療育推進のための基本方針」(令和4年2月)に基づいて難聴児の早期発見・早期療育を総合的に推進するための計画を策定することを求めており、難聴児支援のための体制整備を促している。
さらに、令和6年度障害福祉サービス等報酬改定において、重度の聴覚障害のあるこども等に対して、意思疎通の専門人材を配置して支援を評価する加算(視覚・聴覚・言語機能障害児支援加算)を新設する等している。
(2)手話を使用して学べる環境の整備
文部科学省では、難聴児を含む特別な支援を必要とするこどもへの就学前から学齢期等の切れ目ない支援体制を構築するため、地方公共団体等の体制整備の経費や手話通訳士を含む外部専門家の配置の経費の一部の補助等を実施している。
また、教育委員会や特別支援学校等の参考となるよう、全国の聴覚障害特別支援学校が独自に作成している手話付きの学習教材の情報収集、整理等を実施している。
さらに、大学等における聴覚障害の情報保障を推進するため、地域の手話通訳派遣機関との連携事例等を大学等の学生支援担当の教職員を対象とした会議等で周知を行っている。
(3)手話を使用できる環境の整備
手話を使用できる環境の整備に向けては、社会全体で手話を使用することのできる環境が広がることが重要である。内閣府においては、「障害者差別解消法」の周知により、手話を含む合理的配慮について情報提供を行ってきた。「手話施策推進法」の成立を受け、2025年度においては、手話に関するオンラインシンポジウムの開催、普及啓発のための動画などの作成・公表、「手話施策推進法」や手話の理解を深めるためのパネルの作成・掲載等を行った。
資料:内閣府
また、文部科学省では、2025年度において、聴覚障害のない児童生徒等が聴覚障害や手話に関する理解を深めることのできる動画コンテンツの開発を行っている。
手話を使用する者の日常生活及び社会生活を送る上で必要な、コミュニケーションを支える手話通訳の派遣については、「障害者総合支援法」に基づく地域生活支援事業において、都道府県及び市町村の必須事業として実施されている。
職場での合理的配慮を推進するための施策としては、聴覚障害のある被用者とのコミュニケーションが適切に行われるよう、障害者雇用納付金を財源に、雇用管理に必要な手話通訳や要約筆記等の担当者の配置等を行う事業主に対して助成が行われている。聴覚障害のある被用者の雇用から1年以内であれば、配置の場合は配置1人につき月15万円まで、委嘱の場合は年最大150万円まで、費用の4分の3が最長10年間助成される。2024年度における手話通訳・要約筆記等助成金の利用は52件であった。
(4)災害発生時の情報提供
内閣府においては、災害発生時の情報伝達について、地方公共団体に対して、取組方針やガイドラインを通じて取組を促している。
まず、災害時に、多様な情報伝達手段等を活用して、避難行動要支援者や要配慮者に確実に情報を伝達できるようにするため、「避難行動要支援者の避難行動支援に関する取組指針」や「避難情報に関するガイドライン」において、情報伝達手段の一例として手話や手話放送を記載している。
また、避難所等の情報伝達については、障害児者等には情報が伝達されにくいことから、「避難生活における良好な生活環境の確保に向けた取組指針」において、避難者の状態に応じた伝達の方法を工夫することを求めており、聴覚障害児者に対する例示として、手話通訳、遠隔手話サービス等による方法を挙げている。
(5)手話通訳者の養成
手話を使用して生活するには、手話通訳の確保が重要となる。都道府県における手話通訳者養成事業においては、2024年3月31日現在、手話通訳者として10,080人が登録されている。手話通訳者の養成は、養成カリキュラムを基本に実施されることとしており、全国的に一定レベルの手話通訳者の養成が可能になっている。本カリキュラムについては、言語としての手話の認知やICTの活用も含めた状況の変化を踏まえ、2023年度に改定がなされている。
都道府県での養成に加え、厚生労働大臣が認定する公的な資格である手話通訳士については、これまで、4,258名(2025年3月14日現在)の有資格登録者がいる。また、国においても、国立障害者リハビリテーションセンター学院において手話通訳士の養成に取り組んでいる。さらに、一定の基準を満たす手話通訳スキル習得を目指す講座を教育訓練給付金の対象講座として指定している。
手話奉仕員も手話を使用する者のコミュニケーションを支援する重要な役割を担っている。市町村において養成が行われており、手話通訳者と同様に養成カリキュラムの見直しが行われた。
このほか、盲ろう者向け通訳・介助員については、養成を都道府県が担い、派遣は都道府県及び市町村において実施されている。
一方、手話通訳者を含む意思疎通支援従事者については、高齢化に伴う人材不足への対応が重要な課題となっている。このため、主に若年層を対象として、手話への関心を高め、手話通訳者等の分野への参入促進を図ることを目的とした情報発信を厚生労働省が行っている。
写真:厚生労働省
写真:厚生労働省
(6)手話による情報発信
政府においては、手話施策推進法の施行前より、総理大臣官邸で行われる内閣総理大臣及び内閣官房長官の記者会見、国土交通省における緊急時の記者会見において手話通訳の配置を行っている。また、同法の施行を受け、内閣府においては、障害者施策を所管する内閣府特命担当大臣の定例会見について、2025年9月の会見の動画配信から、手話通訳の動画を付けてウェブサイトに掲載している。
出典:首相官邸ホームページ(https://www.kantei.go.jp/jp/104/actions/202601/19kaiken.html)
写真:内閣府