バリアフリー化推進要綱(案)要旨~ 誰もが社会の担い手として役割を持つ国づくりを目指して ~

I 基本的考え方

1.基本認識

(1) 活力と魅力に満ちた国づくりを進めるためには、国民一人ひとりが社会の活動に参加・参画し、社会の担い手として役割と責任を果たしていくことができる社会を目指すことが必要であり、今後以下の取組みを進める。

(2) 人の能力や個性は、一人ひとり異なり、年齢や環境等によっても変化することから、政策遂行に当たってその多様性を認識することが基本である。

(3) また、年齢や障害の有無等にかかわりなく国民誰もが社会に参加し、余暇活動等を通じて心の豊かさや生きがいを感じることができる環境の形成が必要である。

(4) このような認識を踏まえ、政府一体となって社会のバリアフリー化のための施策を強力に推進する。

2.バリアフリー化の推進状況

 バリアフリー化への取組みが進められているが、未だ十分なレベルに達しているとは言い難い。関係府省が地方自治体、民間団体等の関係者と一体となってこれまで以上に推進していくことが急務である。

3.今後の基本的取組み

(1) 概ね10年後を目処として、高齢者、障害者をはじめ誰もが社会の担い手として役割を持つ国づくりを目指す。

(2) バリアフリー化の推進に当たっては、以下のような視点に立って取り組む。

1) 利用者のニーズを踏まえた施策展開

2) ハード施策とソフト施策の総合的推進

3) 政策間連携・調整の推進

4) 官民を通じた社会全体での取組みの推進

5) 国民への積極的な情報提供・情報公開

(3) 要綱については、今後、必要に応じて見直しを行う。


II 分野別の基本的取組み

1.生活環境

1.-1 バリアフリー化された生活環境の形成

バリアフリー化されたまちづくり(ハード面)とこれを利用しやすい状況づくり(ソフト面)を進める。

(1)総合的な環境整備

  • 地域自らのバリアフリー化への取組みを促進するため、計画的、横断的な取組みを以下のように推進する。
  • 交通バリアフリー法に基づき主要な駅等を中心とした地区における基本構想の策定を促進しその実施を支援する。
  • 建築物も含めた一体的なバリアフリー対応について基本構想策定の際に配慮されるよう、交通バリアフリー法に基づく基本方針を改正する。
  • 各地方公共団体におけるバリアフリー環境の整備に係る指標のとりまとめ・公表や、駅、歩行空間等のバリアフリー化に係る先進的事例の情報提供を行う。
  • 障害者等の点検等を踏まえた基本計画の策定とこれに基づく公共施設(病院、市町村庁舎等)のバリアフリー化を推進する。
  • 都市再生等のプロジェクトの計画に際してバリアフリー化に配慮する。

(2) 住宅・建築物

1) 官公庁施設

 (施設)

  • 国の施設の新築に当たってバリアフリー化を行う。
  • 窓口業務を行う施設については、事務室の自動ドア化等を含めた高度なバリアフリー化を推進する。
  • 既存施設についても、引き続きバリアフリー化を進める。

 (サービス)

  • 各府省等のホームページや刊行物のバリアフリー化(音声対応等)を進める。
  • 窓口業務を行う施設について、バリアフリー化の観点からサービスの向上を進める。

2) 住宅

  • 高齢者等に配慮した仕様の標準化等により公共賃貸住宅のバリアフリー化を図る。
  • 高齢者向け優良賃貸住宅の供給等により民間住宅のバリアフリー化を推進する。

3) 建築物(官公庁施設を除く。)

  • ハートビル法に基づく義務づけを行う。
  • 利用円滑化誘導基準を満たす建築物の認定及び支援を行い、よりバリアフリー化された建築物の導入を促進する。
  • 自動回転ドアの取扱いについては、バリアフリー化推進の観点も含めて早期に検討を進める。

(3)公共交通機関

1) 旅客施設
  • 交通バリアフリー法に基づく義務づけを行っており、22年までに主要な旅客施設のバリアフリー化を実施する。
  • 旅客施設のバリアフリー化への支援等を進める。
  • 鉄道駅バリアフリー施設等の情報提供の拡充等を進める。
2) 車両等
  • 交通バリアフリー法に基づく義務づけを行っており、22年までに車両等のバリアフリー化を一定レベルまで高める。
  • 車両等のバリアフリー化の支援等を進める。
  • 地域の鉄道・バスの維持・活性化とともに、個別ニーズに応じた輸送サービスの充実に向けNPO等による高齢者等の有償運送の全国的な実施等を図る。
3) 人的支援
  • 介助体験等を内容とする交通バリアフリー教室の内容を拡充する。
  • 駅等におけるバリアフリーボランティアへの支援等を図る。
  • 交通事業者の人材育成を促進する。
(4)公共施設
1) 歩行空間
  • 市街地の主要ルートにおいて、幅の広い歩道の整備、歩道の段差解消、音響信号機の設置、エレベーター等の設置や建築物との直結化がなされた立体交通横断施設等の整備等のバリアフリー化を進める。
  • 歩行者等の安全で快適な通行を確保する「あんしん歩行エリア」において、都道府県公安委員会と道路管理者が連携して面的かつ総合的な死傷事故抑止対策を講じる。また、踏切道の立体交差化や構造改良等を推進する。
2) 都市公園

 園路、トイレ等都市公園における施設のバリアフリー化を進める。

3) 水辺・海辺空間
  • 水辺にアプローチしやすいスロープ、緩傾斜堤防等の親水空間を福祉施設等のある地区等で整備する。
  • 海岸についても、海辺へアクセスしやすいバリアフリー化に配慮した海岸保全施設の整備を行う。
(5)農山漁村

 集落道等における幅の広い歩道の整備、農業施設のバリアフリー化を進める。

(6)その他生活環境

 大活字・点字等による食生活情報の提供等を行う。


1.-2 観光振興との効果的な連携~当面の重点的な取組み~

(1)観光振興とバリアフリー化
1) バリアフリー化の位置づけと観光立国の推進状況

 高齢化が進む中、高齢者等の移動制約者が観光を楽しめるようにすることが重要である。また、バリアフリー化は各地域の魅力を向上させるとともに、人々の安心かつ快適な旅行を可能とする。一方、政府では平成15年7月に「観光立国行動計画」を取りまとめるなど、観光立国を積極的に推進している。

2) 観光振興におけるバリアフリー化の位置づけ

 バリアフリー化は、地域の価値を高め観光立国の形成に好影響を及ぼす。また、高齢者等が安心して旅行するための重要な要素でもある。

(2)観光振興との効果的な連携
1) 観光地のバリアフリー化
  • 宿泊施設や国立・国定公園等の施設のバリアフリー化を進める。
  • 沖縄におけるバリアフリー観光を推進する。
2) 観光振興と連携した取組みの推進

 地域による観光振興への取組みと効果的に連携しつつバリアフリー化された生活環境の形成を進めていく。

2.教育・文化

(1)学校教育
  • 学校施設のバリアフリー化を支援する。
  • 障害のある児童生徒等の受験機会の確保等を図る。
  • 児童生徒に対し、バリアフリー化の推進に資する教育を行う。
(2)社会教育

 社会体育施設のバリアフリー化に対する支援等を行う。

3.雇用・就業

  • 障害者の雇用やその継続に伴う職場環境のバリアフリー化の支援等を行う。
  • 障害者の雇用促進に資する機器の貸し出しを推進する。

4.情報・製品

(1)情報通信機器・システム
  • 高齢者等に配慮した情報提供機器・サービスの開発・普及、字幕放送・解説放送等の普及等を行う。
  • 高齢者等に配慮した設計指針の国際標準化を図る。
  • 移動支援のためのシステム開発等を推進する。
(2)福祉用具、生活用品等
  • 福祉用具の研究開発や普及を支援する。
  • ユニバーサルデザインのものづくりを促進する。

5.広報・啓発等

  • 国民向けの啓蒙活動を行うとともに、バリアフリー化に係る表彰を実施する。
  • バリアフリー関連情報の総合的な提供体制を整備するとともに、地域の先進的な取組みを評価・奨励する。