5-1 スウェーデンの障害者権利条約の国内実施体制

 スウェーデン政府は、社会省の家族・社会サービス局を中央連絡先に指定している。また、政府の中に、障害者権利条約の内容に関係する各省庁の集まりである「省庁間高レベル作業部会」を設置し、この作業部会が調整のための仕組みに指定されている。また、社会大臣が招集するハイレベルな会合として「特別障害委員会」がある。この委員会には市民社会のメンバーも参加し、年4回開催されている24

 しかし、スウェーデンでは、独立した仕組みは指定されていない。独立した仕組みのあり方について2008年にスウェーデン政府から諮問を受けたスウェーデン人権代表会議は、中間報告の中で、平等オンブズマンを独立した仕組みとすることが適切だが、一部の責任は障害者政策調整庁(ハンディサム)が負うことが適切だとした25。しかし、この報告後も、スウェーデン政府は独立した仕組みを指定しないまま今日に至っている。また、スウェーデン人権代表会議の報告で独立した仕組みの候補とされた障害者政策調整庁は、その後の組織改編により、現在は社会参加庁の一部となっている。

 なお、本調査で実施したインタビューの中で、社会省の担当者は独立した仕組みは設置されるべきだと述べており26、現在、設置に向けた検討が進んでいる模様である。

 一方、市民社会においては、中核障害者団体としてスウェーデン障害連盟(Swedish Disability Federation)とEqually Uniqueが活動している。この2つの中核障害者団体は協力関係にあり、スウェーデンの包括的な最初の報告の検討プロセスの中では、パラレルレポートの作成や国連障害者権利委員会への働きかけなどを協力して進めた27

図表5-1 スウェーデンの国内実施体制の概要(図表5-1のテキスト版

スウェーデンの国内実施体制の概要を示す図

出典:各種資料より作成


23 スウェーデンの包括的な最初の報告(文献9)、paragraph350
24 社会省 Lars Nilsson氏インタビュー
25 包括的な最初の報告(文献9)、paragraph351
26 社会省 Lars Nilsson氏インタビュー
27 スウェーデン障害連盟 Mia Ahlgren氏インタビュー

前のページへ次のページへ