3.イギリスにおける合理的配慮提供に際しての合意形成プロセス

 サービス利用者に対する合理的配慮に際しての合意形成プロセス(合理的配慮提供プロセス)にかかわる法的な根拠は、2010年に制定された「2010年平等法(Equality Act 2010 、以下、「平等法」と記述する。)」72及びその施行規則(Code for Practice)にある73。イギリスの政府機関、地方自治体(市町村、特別区など)、その他の公共団体や公的サービスを提供する者74は、同法が禁止する差別の解消に向けて取り組まなくてはならないという公共機関平等義務(Public Sector Equality Duty)75を負う。

 平等法における障害者差別禁止に係る規定は、1995年障害者差別禁止法(Disability Discrimination Act 199576。以下「DDA」と記述する。)での規定を基礎として見直しを図ったものであり、合理的配慮の概念や適用範囲などの枠組みはDDAと共通の部分が多い。したがって、本章では、平等法及びその施行規則を中心に、必要に応じてDDAでの規定なども参照しながら、イギリスにおける公共団体の合理的配慮提供プロセスにかかわる法的根拠・義務について整理する。

 一方、イギリスにおける合理的配慮提供の実際については、インターネット77を通じた地方自治体、NGO、障害者団体、平等人権委員会(the Equality and Human rights Commission、EHRC)などからの資料収集と、2016年2月に実施した現地調査で得た情報・知見・資料を基に整理する。このため、実際の合理的配慮提供のプロセスや用いられている基準、評価、課題などについては、情報が得られた幾つかの地方自治体や、影響力のある団体による取組の事例情報を中心にとりまとめる。


72 平成23年度内閣府委託報告書「障害者差別禁止制度に関する国際調査 第4章 2010年平等法(イギリス)」https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/tyosa/h23kokusai/12-eng1.html
73 2016年2月17日EGOインタビューによる。
74 平等法別表19 https://www.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/84984/Schedule-19.pdf
75 平等義務はこれまでの障害義務(disability duty)を置き換える形で2011年に施行された。https://www.equalityhumanrights.com/en/advice-and-guidance/public-sector-equality-duty
76 DDAはまず数年かけて段階的に施行され、また2001年の教育分野における改正を経て、再度2005年に改正された。
77 インターネットで入手できる最新かつ最も総合的な資料として平等法施行後およそ6年目に当たる2016年3月に発行された「2010年平等法と障害」上院委員会報告書『2010年平等:障害者における影響』がある。(House of Lords Select Committee on the Equality Act 2010 and Disability,”The Equality Act 2010: the impact on disabled people. Report of Session”, 2016,2015-16 http://www.publications.parliament.uk/pa/ld201516/ldselect/ldeqact/117/11702.htm)

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