第9回総合科学技術会議議事要旨
(開催要領)
1.開催日時:2001年8月30日(木)17:00〜18:00
2.場所:総理官邸大客間
3.出席議員
(議事次第)
1.開会
2.議事
(1)平成14年度予算編成に向けた取組について (2)ITER(国際熱核融合実験炉)計画について (3)生命倫理について ・諮問第3号「ヒトES細胞の樹立及び使用に関する指針について」に対する答申について ・諮問第4号「特定胚の取扱いに関する指針について」 ・クローン人間計画への対応について (4)最近の科学技術の動向について(月例科学技術報告) (5)その他
3.閉会
(配付資料)
(会議概要)
井村議員から、「平成14年度予算編成に向けた取組について」について説明。これに関連して、重点分野推進戦略専門調査会における分野別推進戦略の 今後の進め方について報告。(資料1−1(PDF)、資料1−2(PDF)) 構造改革特別要求については、以下の意見、議論を踏まえて、尾身議員と有識者議員を中心に、優先順位付けを検討し、9月末に、総合科学技術会議で 議論することとした。 また、分野別推進戦略については、9月末までに、総合科学技術会議で最終的なとりまめとを行うべく、引き続き、重点分野推進戦略専門調査会で調査・ 検討をすることとした。
(竹中議員)
平成14年度の予算編成では、「構造改革特別要求」について、重点7分野に関係の深い内閣の諸会議、本部等で調整を行うという 新機軸が設けられたところ。縦割りの弊害を排した総合的な予算要求がされるよう、総合科学技術会議においても積極的な調整機能を果た していただきたい。経済財政諮問会議では、「特別要求」の総合的な調整の叩き台について審議することとなっているので、「改革断行予 算」という明確なメッセージを出せるようお願いしたい。
(川口議員)
環境分野は、「構造改革特別要求」7分野の1つであるとともに、更に「資源配分の方針」の重点4分野の1つでもあり、環境省 としては予算編成については最大限努力した。 特別要求としては、第1に、地球環境研究総合推進費などの競争的資金の拡充、第2に、地球温暖化の影響と適応戦略に関する調査や モニタリング基盤の強化、第3に、環境試料の長期的な保存、について要求したいと思っているので、環境問題の真の解決に資する政策 について予算の配分がなされるようよろしくお願いしたい。 地域科学技術振興プランには、賛成。ただし、民間企業の経験があるものとして申し上げれば、研究シーズを産業化する際には、マー ケティングが必要。どこの場でやるのが適当かは別として、サイエンスとマーケティングの結び付けをきちんと考えていただきたい。
(松田議員代理)
第1に総合科学技術会議で、今後取り進める特別要求の査定について、本当に必要な分野に思い切って重点化を図ることには大賛成。 その際、現在の経済状況及び将来の日本経済の姿を考えると、民間の研究開発とその実用化を徹底して下支えすることが極めて大事。その 意味で大学発ベンチャーの促進や、新しいイノベーションシステムの構築のための改革をお願いしたい。また、新産業創出、あるいは地球温 暖化に対応した新エネルギー、省エネルギーも焦眉の急。さらに、地域科学技術の振興に加え、それを支える技術人材の育成もお願いしたい。 第2に、研究開発予算が効率的に使えるように、技術開発予算の複数年化についても、今回の予算編成において考慮頂きたい。 第3に、産学官連携サミットは、産学官連携を推進する上で極めて重要。副大臣会議においても、産学官連携を推進するプロジェクトチーム が出来ており、尾身議員を支える体制を作っている。一方、経済産業省としても、共催者の一省として全力で協力させていただく。
(桝屋議員代理)
構造改革特別要求については、その大半を科学技術分野に充て、競争的資金の拡充をしっかりと図っていきたい。具体的には、ライフ サイエンス分野を中心にして、ナノテクノロジーの医療分野での活用に関する研究、ヒトゲノム情報を利用した創薬の基盤研究に取り組んで いきたい。 また、国民の生活を守るという観点から、肝炎、狂牛病などの感染症の研究、自殺、外傷性ストレス障害など社会問題化しているこころの 健康問題の研究などに取り組んでいきたい。
(武部議員)
農林水産業の構造改革に向け、科学技術の振興を、いわゆる「武部プラン」の重点の一つに位置付け、14年度概算要求をとりまとめ たところ。 重点分野の戦略的推進に関する取組としては、第1にイネゲノム研究等の先端的研究の推進、第2に関係府省との連携による農林水産 バイオリサイクルシステム創出等に向けた環境研究の推進。 科学技術システム改革に関する取組としては、産学官の連携の推進を図る観点から、民間や大学等の優れた発想を活かした研究開発を 促進することとし、特に、地域科学技術振興を図る観点からは、地域の研究シーズ、ポテンシャルを活用・発展させた新たな研究制度の 創設等を重点的・戦略的に実施し、科学技術の振興等に必要な役割を果たして参る所存。
(中谷議員)
米国では、技術そのものに民生と防衛の境が無く、むしろ科学技術の先端技術の目標に、航空機、情報網、宇宙等軍事防衛部門が多く、 その結果として、インターネットやGPSなどを生み出し、それを民生転用して徹底的に基礎研究を行っている。我が国はそういう点を 敬遠して避けてきた気がする。国の安全保障の点も念頭において、科学技術に活かしていただきたい。具体的には、航空機の技術に関す る研究開発などを要望していきたい。民間波及や雇用創出など世界の航空機産業のリーダーとして日本が活躍する素地となるので、よろ しくお願いしたい。
(片山議員)
今回の構造改革では、予算についても、戦略的重点分野に集中するだけでなく、さらに分野の中の研究も精査して集中し、めり張り をつけることが重要。 地域科学技術の振興による新産業の振興については、地方のイニシアチブを尊重すべき。中央省庁が、施策を押しつけるようなやり方は やめ、地方の自発性を尊重して、進めていただきたい。
(遠山議員)
聖域なき構造改革を図る観点から、必要な事業を十分に厳選したうえで、既存経費を抜本的に見直し、その上で骨太の方針に基づいて、 「人材育成・教育立国」、および「科学技術創造立国」の実現を目指した重点的な要求をしている。
ITER計画について、尾身議員と有識者議員とで進めている検討の状況につき、資料2(PDF)に 基づき、井村議員から報告。 審議を踏まえ、今後も引き続き、尾身議員と有識者議員で、検討を進め、総合科学技術会議に諮ることとした。 本件に関する審議概要は以下のとおり。
アメリカの参加なしでも大丈夫か。
(井村議員)
アメリカの参加は、技術的にも予算的にも非常に大きいのは確か。私どもとしてはアメリカが復帰することを期待しているが、 一方で、アメリカが入らなくても実施できる体制を現在考えている。
尾身議員と有識者議員による検討の進捗に感謝。 ITER計画は、人類初の長時間持続する核融合の実現、将来の核融合炉に向けての工学技術の確立といった重要な課題の達成に不可欠。 我が国への誘致については、候補地点の選定に関し調査を進めており、とりまとめは9月になるが、まとまり次第、総合科学技術会議に 報告する予定。また、総合科学技術会議においても、引き続き審議し、総合的な科学技術政策の観点から方向付けを行っていただきたい。 これらの結果を踏まえ、文部科学省としてITERの誘致について判断していきたい。 なお、ITER計画への米国の復帰に関しては、米国はこの分野の開発に高い能力を持っているので、再び参加するよう働きかけを行うことが重要。 尾身議員に訪米の機会があれば、米国において働きかけをして頂きたい。
(塩川議員)
ITER計画の資金は、科学技術基本計画で決めている24兆円の枠内の話か。
当然24兆円の枠内と考えている。
ITER計画の参加・誘致のメリット、デメリットは9月に大体分かるのか。
今後検討したいと考えている。誘致をすると、参加の場合よりも2倍強の費用が要るので、その辺りの費用対効果も考えないといけない。 できるだけ9月には分かるようにしたい。
私は、原子力船「むつ」や高速増殖炉「もんじゅ」を推進していたが、結局中途半端な状態になっている。ITERがこれらの二の舞になら ないように、これらについての評価もお願いしたい。
「研究」なので、100%大丈夫とは言えないが、担当者が全体としてかなり詳しく評価をしており、私は成功の確率が高いと考えている。
(尾身議員)
私どもは、ITERの資金は24兆円の枠内であると考えている。また、アメリカ復帰の問題については、私が近くアメリカに行った際に働きかけを行いたい。 また、誘致が決まった際に、地元の反対によりできなくなるということは、ITER計画が国際的なプロジェクトということもあって、大変困る。 こうしたことがないように、十全の確認、必要な手だてを打っていきたいと考えている。
諮問第3号「ヒトES細胞の樹立及び使用に関する指針について」の答申案について、資料3−1(PDF)、 資料3−2(PDF)、資料3−3(PDF)、 資料3−4(PDF)に基づき、井村議員(生命倫理専門調査会長)から説明。審議の後、原案とおり決定し、文部科学大臣に対して答申。文部科学大臣は本答申に沿って早急に指針の 策定及び告示をすることとした。 本件に関する審議概要は以下のとおり。
次に、遠山議員から、諮問第4号「特定胚の取扱いに関する指針について」(遠山文部科学大臣より諮問)を説明。 これについては、生命倫理専門調査会において調査・検討をすすめ、11月までに答申することとした。 更に、最近米国でも問題になっている「クローン人間計画への対応について」、井村議員から説明。
資料4(PDF)に基づき、吉川議員より、科学と政策との関係について、地球温暖化問題を例として、説明。
産学官連携プロジェクトの創設、及び産学官連携サミットについて、尾身議員から報告し、これらも含めた「地域科学技術振興プラン」のとりまとめ 状況について、資料5(PDF)に基づき、井村議員から報告。 (本件に関する審議概要については、(1)においてまとめて言及済み。) 今後、本件については、引き続き、尾身議員と有識者議員で、プランの取りまとめに向け、各省と連携して、具体化を図っていくこととした。
今度の予算については、めり張りのきいた予算要求を出していただくためにいろいろご努力いただいていると思います。短期間でありますが、 今までの議論を踏まえて、今後よろしく、お願いしたいと思います。 クローン人間、これはちょっと人間の領域を超えているのではないか。人間というのは、天へのおそれというか、神へのおそれ、これをなく していくと大変なことになるので、日本としても、このクローン人間づくりは禁止しているわけです。国際社会においても禁止していこうとい うことでありますので、国内、国外ともに禁止の協定づくり、取り組みに積極的に努力をお願いしたいと思います。 きょうは本当にありがとうございました。