総合科学技術会議の概要
メンバー構成
総合科学技術会議(本会議)
専門調査会
答申・決定・意見具申等一覧
パブリックコメント
大臣・有識者会合へのボタン
有識者議員の活動報告へのボタン
その他
科学技術政策ページの項目
科学技術基本計画
科学技術関係予算について
組織案内
パンフレット
5分でわかる最新の科学技術
科学技術政策トップページへ

第75回総合科学技術会議議事要旨


(開催要領)

1.開催日時:2008年5月19日(月)17:45〜19:00

2.場所:総理官邸4階大会議室

3.出席議員

 議長 福田 康夫 内閣総理大臣
 議員 町村 信孝 内閣官房長官
 同 岸田 文雄 科学技術政策担当大臣
 同 増田 寛也 総務大臣
 同 額賀福志郎 財務大臣(代理 森山財務副大臣)
 同 渡海紀三朗 文部科学大臣
 同 甘利  明 経済産業大臣(代理 中野経済産業副大臣)
 同 相澤 益男  
 同 薬師寺泰蔵  
 同 本庶  佑  
 同 奥村 直樹  
 同 郷  通子  
 同 榊原 定征  
 同 石倉 洋子  
 同 金澤 一郎  
(臨時議員)    
議員
高村 正彦 外務大臣(代理 小野寺外務副大臣)
若林 正俊 農林水産大臣


(議事次第)

1.開会

2.議事
(1) 革新的技術戦略
(2) 環境エネルギー技術革新計画
(3) 知的財産戦略
(4) 科学技術による地域活性化戦略
(5) 科学技術外交の強化に向けて
(6) 科学技術の振興及び成果の社会への還元に向けた制度改革について(フォローアップ)
(7) 社会還元加速プロジェクト等について
(8) 最近の科学技術の動向「脱石油社会の実現に向けたGM微生物の貢献」

3.閉会


(配付資料)
資料1−1   革新的技術戦略(案)(PDF)
資料1−2   革新的技術戦略(案)(1)(PDF)(2)(PDF:376KB)
 参考資料   革新的技術(案)
(1)(PDF:489KB)(2)(PDF:350KB)(3)(PDF:453KB)(4)(PDF:449KB)(5)(PDF:400KB)(6)(PDF:366KB)
資料2−1   環境エネルギー技術革新計画(案)(PDF)
資料2−2   環境エネルギー技術革新計画(案)(1)(PDF)(2)(PDF)(3)(PDF)
 参考資料    環境エネルギー技術のロードマップ及び普及シナリオ
(1)(PDF:487KB)(2)(PDF:392KB)(3)(PDF:495KB)(4)(PDF:436KB)
資料3−1   知的財産戦略(案)(PDF)
資料3−2   知的財産戦略(案)(PDF)
 参考資料    知的財産戦略(案)(PDF)
資料4−1   科学技術による地域活性化戦略(案)(PDF)
資料4−2   科学技術による地域活性化戦略(案)(PDF:339KB)
資料5−1   科学技術外交の強化に向けて(案)(PDF)
資料5−2   科学技術外交の強化に向けて(案)(PDF)
資料6−1   科学技術の振興及び成果の社会への還元に向けた制度改革について(フォローアップ概要)(PDF)
資料6−2   科学技術の振興及び成果の社会への還元に向けた制度改革について(フォローアップ)(PDF:405KB)
資料6−3   制度所管省庁等の主な取組状況(1)(PDF:481KB)(2)(PDF:467KB)(3)(PDF:475KB)
資料7   社会還元加速プロジェクトロードマップ
(1)(PDF)(2)(PDF:319KB)(3)(PDF:466KB)(4)(PDF:323KB)(5)(PDF:379KB)(6)(PDF:401KB)
(7)(PDF:368KB)(8)(PDF:366KB)(9)(PDF:331KB)
資料8−1   平成19年度科学技術の振興に関する年次報告(案)「国際的大競争の嵐を超える科学技術の在り方」
資料8−2   平成19年度科学技術の振興に関する年次報告(案)(平成20年度版科学技術白書)−概要−
資料8−3   平成19年度科学技術の振興に関する年次報告(案)
  ※閣議決定された本年次報告は、文部科学省のホームページ(平成20年版科学技術白書)に掲載
資料9   最近の科学技術の動向「脱石油社会の実現に向けたGM微生物の貢献」(PDF)
資料10   第74回総合科学技術会議議事録(案)(PDF)




(会議概要)

1.議事概要

(1)革新的技術戦略

 「革新的技術戦略」について資料1−1(PDF)に基づき、相澤議員から説明。

(2)環境エネルギー技術革新計画

 「環境エネルギー技術革新計画」について資料2−1(PDF)に基づき、薬師寺議員から説明。


  資料1−2の「革新的技術戦略(案)」及び資料2−2の「環境エネルギー技術革新計画」については、原案どおり決定し、総合科学技術会議から内閣総理大臣及び関係大臣に対し意見具申することとした。

  議題(1)、(2)に関する議員の意見は以下のとおり。


【榊原議員】
 総理は1月の施政方針演説で、他国の追随を許さない世界トップレベルの技術を持ち続けるという方針を示された。政府の研究開発投資や研究人材等の資源を投入し、スーパー特区制度等を積極的に活用して、一刻も早く革新的技術モデル事業を実施しなければならない。
 また、革新的戦略では、研究者、技術者のネットワークによる目利き集団を整備して、総合科学技術会議による研究開発マネジメントを支援するとしているが、この目利き集団を新設する際には、委員の少なくとも半分は産業界出身者で構成し、新産業の創出や産業の国際競争力の強化を促進していくべきと考える。
 次に、環境エネルギー技術革新計画だが、温室効果ガス削減の議論に際して留意する必要があるのが、温室効果ガス排出のライフサイクルアセスメント、いわゆるLCAという考え方。ある製品の製造や使用、輸送、廃棄などのライフサイクルのすべての段階を通して、製造プロセスでの温室効果ガスの排出量と、でき上がった製品が温室効果ガス排出の削減にどれだけ貢献するのかということを定量的に評価する必要があるということ。例えば、アルミやチタン、炭素繊維といった軽量化素材、その製品の製造段階で相当の温室効果ガスを排出するわけだが、でき上がった製品としては車両の軽量化、あるいは航空機の軽量化ということで、温室効果ガスの排出量削減に大きく貢献する。製造プロセスだけを取り出して、近視眼的に評価すべきでないということを申し上げたい。
 温室効果ガス排出の議論を深める際には、このライフサイクルアセスメント(LCA)についての配慮が必要だということを申し上げたい。


【奥村議員】
 環境エネルギー技術革新計画について1点申し上げたい。
 これは大変長期にわたって開発しないといけない課題で、しかもハードルが極めて高いものだが、もちろん産学官オールジャパンで取り組む必要があり、長年度にわたるため、研究開発の中核をつくっていく必要がある。
 極めて政策的な課題であり、長期にわたるということであれば、今の仕組みであれば、研究開発独立法人、現在約1兆円ぐらい研究費を使用していると聞いているが、そこの環境エネルギー技術分野を機能再編して拡充するということも検討していただけたらと考えている。


【金澤議員】
 私も革新的技術についてお話をしたい。イノベーション25の委員会で議論させていただいたことが具体化してきたという感じを持っており、大変ありがたく思っている。
 先ほどの説明では、時間がなかったためおっしゃらなかったと思うが、目利き集団の話が出ている。これは常にウォッチングし続けないといけない。先ほど榊原議員がおっしゃったが、産業界の力というのは大変大事なので、そういう集団も一つ必要だが、学術の方面からも、力を合わせてやっていきたいと思っている。
 なお、このようなある意味では非常に大事な提案が今日出ているわけだが、来年、また別な提案、内容ではなくて、革新的技術というようなまた別なテーマが出てくると、どうもこちらのほうが後回しになりかねないため、私はそういうことではなく、少し長い目で見ていただき、毎年きちんとした形でこれを募集し、そして実現していくという形をとっていただきたいと思っている。


【郷議員】
 革新的技術を持続に生み出す環境整備について少し申し上げたい。人材の流動化を促進する必要があるという御紹介があったが、純血主義をやめる、自分の大学出身者を5割未満としようということが資料1−2にあるが、この純血主義を廃するということと、もう一つ、狭い日本なので、教員、研究者が動いていろいろな出会いをすることが、新しい技術やサイエンスを生み出すために大変大事なことだと思う。しかし、現在は動くことがいろいろな面で不利になるため、なかなか動こうとしない。これは個人にとっての問題と、それから組織にとっての問題、両方含んでいると思うが、人が動いたときに、やはり何かインセンティブが機関にもつけられる、あるいは個人にも動くデメリットがないような、例えば研究や教育の基盤がきちんと手当できるようなことが必要とされるというふうに思う。


【中野経済産業副大臣】
 本戦略を確実に実行していくべきだと考える。先ほど言及があったが、革新的技術推進費については、ぜひ進めていただきたい。なお、金額については、約1%程度とあったが、ぜひ科学技術振興費の1%以上を目指していただきたい。そのためにも総合科学技術会議で体制を整備・強化され、主導的な役割を果たしていただければと期待もしている。
 また、研究開発の成果が新たな製品やサービスとして世の中に受け入れられるためには、その実証が当然大事になってくると思う。そういう意味で、研究開発と並行して社会システムの変革に向けた、これも言及のあったスーパー特区の取組をしっかりと推進すべきだと思っているところ。
 なお、「環境エネルギー技術革新計画」について、今回の計画では、経済産業省の「Cool Earth−エネルギー革新技術計画」で選定した21の技術を核として取り上げていただいており、「環境エネルギー技術革新計画」が実効を上げるように精力的に取り組んでいきたい。
 また、「環境エネルギー技術革新計画」で指摘されているが、世界全体の温室効果ガスの削減のためにも、国際的な協力は大変重要。経済産業大臣においては、来月開催されるG8エネルギー大臣会合において、国際連携の強化について、非常に先進的な提案をしたいと決意を語っているところであり、あえて開陳させていただいた。


【若林臨時議員】
 今さら申し上げることもないが、我が国の産業競争力の強化、あるいは日本と世界の安全保障の実現のためには、革新的技術戦略で提案されている革新的技術推進費などによって研究開発を機動的に加速化し重点化することは、重要だという認識を持っている。
 その際に、国際的に資源、食料価格が高騰していることなどを踏まえると、稲、麦、大豆などの優良品種の開発や、ウナギ、マグロなどの養殖技術の開発は革新的技術の中でも重点的に研究開発を推進する必要があるものの一つであると考えているところ。
 また、環境エネルギー分野においては、我が国の温室効果ガスの排出削減に向けて、間伐材や稲わら等の食料と競合しないバイオマスの利活用技術などを開発するとともに、乾燥、塩害に強い樹木や作物の開発など、途上国も活用できる技術の開発を推進することは、我が国が国際的に主導的役割を発揮するためにも重要であると考えている。
 農林水産省としても提案された環境エネルギー技術革新計画を踏まえ、これらに重点的に取り組んでまいりたい。


【森山財務副大臣】
 革新的技術の推進は、我が国の将来の成長のために非常に重要であると認識している。そのために今回、革新的技術推進費を創設するとの御提言については、財務省としても注目をしている。
 この革新的技術推進費については、科学技術予算の枠内で、どのようなメリハリをつけることで財源を捻出するか、どのようにして研究資金の機動的、かつ適正な執行を可能とするか等、実務的に検討する論点が多々あるのではないかと考えている。関係府省において、早急に具体的な案を詰めていただきたい。


【渡海議員】
 いろいろ御議論があったと思うが、革新的技術、例えばiPS細胞、また宇宙輸送システム、次世代のスーパーコンピューターなど、さまざまな国家基幹技術については、これはやはり戦略的、重点的、これは総合科学技術会議のある意味いろいろな意味での位置づけもいただいているが、図っているところ。
 基本的に言えば、私は個人的にもそう思っているが、強いところをより強くするという戦略も必要であろうと思っている。そういう意味で、戦略的に科学技術振興を図っていくためにも、提案があった予算の枠組みについては、非常に意味があると思っている。
 ただ、我々の主張としては、今25兆円の予算というのは風前の灯なので、やはり1%積むなら、それは外に積んでくれと。これは経済財政諮問会議で経済界もそういう主張をしていたが、そこのところは一応そういうお考えをしていただきたい。こう言うとすぐ縦割りと言われるが、そういうことではなく、そういう発想をとっていただきい。
 あと、人材育成という観点からもぜひ御検討をいただきたい。詳細については、あえて申し上げない。
 環境エネルギーについては、我々は中長期的に対策として必要な技術、例えばナノとか材料、例えば、今環境エネルギー革新技術革新計画の中で位置づけられている新しいコンバインドサイクルの発電システム等は、物材研がやっている新しい材料の成果であるので、そういったものも含めて、さまざまなほかの、今日は榊原さんいらっしゃいるが、カーボンの技術等も非常にいろいろ使えると思う。そういった複合要素をしっかりと見きわめながら、戦略を立てていく必要があるだろうというふうに思っている。
 加えて、このCO2の問題に関しては、これは我が省ということになるが、いろいろな観測、それから解析、これは宇宙の分野とスパコンの分野でかなり成果も上げて、IPCC等に貢献をしているが、こういった貢献というものも、国際的な視野に立っても、また外交的な視野に立っても重要な問題であろうというふうに考えているところ。

(3)知的財産戦略

 「知的財産戦略」について資料3−1(PDF)に基づき、相澤議員から説明。

(4)科学技術による地域活性化戦略

 「科学技術による地域活性化戦略」について資料4−1(PDF)に基づき、薬師寺議員から説明。

(5)科学技術外交の強化に向けて

 「科学技術外交の強化に向けて」について資料5−1(PDF)に基づき、薬師寺議員から説明。

(6)科学技術の振興及び成果の社会への還元に向けた制度改革について(フォローアップ)

 「科学技術の振興及び成果の社会への還元に向けた制度改革について(フォローアップ)」について資料6−1(PDF)に基づき、薬師寺議員から説明。


  資料3−2の「知的財産戦略(案)」及び資料4−2の「科学技術による地域活性化戦略」、資料5−2の「科学技術外交の強化に向けて(案)」については、原案どおり決定し、総合科学技術会議から内閣総理大臣及び関係大臣に対し意見具申することとした。


  議題(3)〜(6)に関する議員の意見は以下のとおり。


【石倉議員】
 地域の活性化について申し上げたい。
 私はクラスターが専門なので、この課題は随分前からやっている。実際にいろいろな地域に伺ったり、どういう問題があるのかを研究している。そこで、基本的な方向としては先ほど御説明があったとおりだが、実際何が起こっているかを中心に、3点申し上げたい。
 先ほどから「多様性」という話が出ているが、実際、地域によってかなり様子が違う。地域ごとにいろいろな具体的な問題が出ており、それに対して一律に対応することが無理な段階に来ている。そこで地域ごとの具体的な問題を洗い出して、その解決案を考えることが必要である。
 もう一つは、地域の中には、自分のところだけでは小さい、特色が見られないなど、勝負できないというところがある。その場合、もう少し広域で、近くの地域と一緒にすることなどが考えられる。
 たまたま昨日まで参加していたスイスの会議では、米国オハイオ州のアクロンの話が出た。昔はタイヤをつくっていたが衰退してしまった。アクロンだけではなく、近くにあるクリーブランドというより大きな都市と一緒になってこれから成長するシナリオを作って実行していた。小さすぎるような地域では日本でもこうした考え方ができると思った。
 それから、世界に打って出たいが、もう一つ力が足りないという地域がある。これは国がある程度支援する必要があると思う。  具体的な問題、あるいは世界を見据えた問題いずれも、地域が主体であり、その活動を実現するために、国が省庁を超えて連携作業をしっかりし、支援すること、また各省庁が担当する活動計画をいかにフォローしていくかが課題。国がしてはいけないことは、主体的に活動しようとしている地域の邪魔をすること。地域が主体的に動いている所に、中央が新しいスローガンをつくって上から下ろすのは、絶対やってはいけないことだと思う。


【本庶議員】
 全般的なことで発言したいと思う。老後に安心できる医療と、安全な食品が今日、多くの国民にとっての最大の関心事ではないかと思う。さらに、食料自給率39%という状況では、近未来において食料確保の問題が重要な政治課題になるという可能性も考えられる。
 本日の議題の中でも、医療・食料・環境エネルギーにかかわるライフサイエンス関連技術革新の重要性が指摘されているところ。総合科学技術会議でも、これまでにも、医療技術の開発のための臨床研究の重要性、また食料問題並びに環境に優しいエネルギーと化学工業にかかわる組換えDNA技術の重要性をアピールしてきた。
 臨床研究については、先ほどの薬師寺議員の発表にもあったように、わずかながら前進が見られるものの、まだその背後にある我が国の医療制度の抜本改革という大きな課題を残している。
 一方、バイオテクノロジーの発展のためには、組換えDNA技術に対する国民の偏見により、実地農場実験すら支障があるといった大きな課題を克服していかなければならない。
 これに似たようなこととして、原子力エネルギーの利用があるが、原子力については原子力基本法が制定されており、国が積極的に原子力エネルギーの開発を行うということを明確に示している。
 一方、バイオテクノロジーについては、国としてこの技術を最大限に活用しようという明確な方向性を示した法律制定がない。私は是非、バイオテクノロジー推進基本法のような法律をつくり、生命科学の果実を国民に速やかに還元する道こそが我が国の将来にとって不可欠であり、明確な方針を打ち出すことが肝要ではないかと考えている。


【増田議員】
 地域活性化の関係だが、以前この会議の場において、自治体から国立大学法人への寄附の問題の御発言があった。前回御報告したとおり、運用を昨年末に大幅に緩和した。土地と建物の無償譲渡について政令改正が必要であったが、この政令改正も3月に実施をした。
 昨年度の件数で見ると、昨年4月から12月、すなわち運用を変える前は9カ月間で同意をしたのはわずか7件だったのが、運用を大幅に改善した後、今年に入って、1月から3月の間に同意をしたのは12件。それから年度が変わって、3月に完全に政令も変えたので、4月以降、既に9件の相談が来ており、迅速化、それから手続の簡素化で、さらに周知徹底を図り、せっかくの知の拠点なので、大いに地方自治体と大学に使っていただきたい。そういうことで、円滑な運用に今後も努めていきたいという御報告が1点。
 それから、ICTによる地域のイノベーション創出だが、競争的研究資金に地域枠を設け、地域の大学や中小企業、どうしても地域の大学はそういった意味ではハンデを負っているので、地域の大学や中小企業が実施する研究開発の支援、それから先ほどお話のあった人材育成に今取り組んでいる。今後もこうしたことを通じて、地域の活性化に向けて積極的に貢献していきたい。


【小野寺外務副大臣】
 外務省を代表して、科学技術外交強化の最終とりまとめについて感謝をしつつ、1つコメントをさせていただく。
 外務省としてもODAとの連携強化など、科学技術を外交ツール資産として活用し、開発や気候変動などの課題に取り組んでいくことは大切だと思っている。
 他方、日本の科学技術が今後とも世界最先端であり続けられる保証はない。中国やインドなどの追い上げもある中で、さまざまな分野における日本の科学技術が世界最先端であり続け、国際スタンダードとしての地位を保っていくためにも、科学技術外交が重要だと思っている。例えば携帯電話、日本は高い技術を持っていたが、国際スタンダードにはなり得なかった。結局今、外に出ると、携帯電話はノキアやサムソンがほとんどを占めている。
 これから大事なことは、対外情報の収集、そしてまた特許を初めとする知的財産の保護、国際基準へ日本の技術が取り入れられるような外交努力が大変重要だと思っている。日本が優位な分野に対して、国際ルールやスタンダードが変えられ、日本の優位が弱められるという事例は、柔道やスキー、水泳などのスポーツの分野のみならず、科学技術など多くの面で見られると思っている。
 ぜひ首脳・閣僚レベルの外交から、在外公館における日々の外交活動まで、オールジャパンとしての科学技術外交を展開していく必要があると思っている。


【中野経済産業副大臣】
 知財を所掌する経済産業省の意見として申し上げる。
 iPS細胞技術などの出現に見られるとおり、これからの知財戦略は研究開発の時点からスタートしなければならない状況にある。そういう意味で、特許情報や私ども経済産業省が出している技術戦略マップを活用して、戦略的に知的財産を取得していくという視点、いわゆる知財の目を持って取り組んでいくことが重要だと確信している。そのため、知的財産の専門家の投入等、御指摘のあった、本戦略を具体化する取組を精一杯、改めての決意で進めていきたいと思っている。
 また、科学技術については、やはり地方発信のイノベーションの加速が大事であり、地域活性化戦略を通じて潜在力を最大限活用することが極めて重要だと思う。産学連携施設の整備、あるいはこれまで研究開発予算を投入してきたいろいろな機器の利用・開放について、より一層促進させる。その結果として、地域にある研究開発資源の総力を結集することがこれから大事だろうと思う。そういう意味での地域活性化に積極的に私どもも取り組んでまいりたい。


【若林臨時議員】
 農林水産分野の知的財産については、その創出のための新品種の開発などの促進をしているが、同時に、その保護・活用に向けた品種・産地別の判別の技術などの開発、農林水産知的財産ネットワークの構築を積極的に進めてまいりたい。
 また、農林水産業や食品産業は地域産業の重要な一翼を担っているわけだが、関係府省との協力のもとで、産学官の連携による研究開発を推進するとともに、これを実用化・産業化につなげることによって地域の活性化を図ってまいりたい。
 科学技術外交の点では、現在、農林水産省でも農林水産分野の国際研究戦略を取りまとめているところ。今後とも国際機関と連携して、例えばアフリカ稲の改善など、開発途上国向けの作物の開発・導入、日本人研究者の派遣や共同研究を通じた研究者の育成などに努め、科学技術外交の推進に大いに貢献してまいりたい。


【渡海議員】
 知的財産だが、今御案内のようにiPSの知財をどうやって守っていくか、またこれから流通させていくかという課題がある。
 ここで我々がぶつかった一番大きな課題は、意外と人材がいないということ。要は弁理士で、なおかつライフサイエンスに強い者が企業にしかいないという問題があった。最終的には今、コンソーシアムをつくり、これは当面は京都大学に置いていただくが、結果的にはそこにいろいろな企業も入っていただいてやるという形をつくったが、そのときに一番感じた危機は、甘利大臣にはよく話をしたが、実は攻めてきたのは外資だということ。うちが全部、それはちゃんとアメリカでやってやろうという、いろいろなベンチャーが来る。ところが、日本の企業はなかなか出てこない。こういうところで私はかなり危機感を持ち、製薬会社等にもお願いをしたわけだが、結構、隘路があるなというのが正直な実感。こういう点は先生方がよく御存じなので、これから戦略を練らなければいけないというときに、ぜひ今後、そういうことも含めて考えていただきたい。
 iPSは、要は勝手なことはさせないという体制を是非とるので、やはりこの4拠点をつくったわけなので、自由に研究者がアプローチできるというシステムをつくらせていただきたいと思うので、今後いろいろな戦略を展開していく上で、オールジャパンで何かやるときには必ずこういうシステムが要るということについても、ぜひ御意見をいただければと思っている。
 地域の問題は先ほどからいろいろあるが、我々、クラスター事業、2期に入っているが、より進めてまいりたい。
 外交は、先ほど少し言わせていただいたが、最近一番感じるのは、海外へ行って名刺を出すと、「Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology」と書いてある。そうすると、やはりこの「Science and Technology」というところに随分みんな目が行く。日本の科学技術はすごいとみんな思っている。この間も、私はリヤドへ行ったが、そのときにもぜひ科学技術で協力をしたいとか大学間の連携を図りたいというのが非常にある。タイも言っている。ベトナムも今、これは総理の「留学生30万人」の中の一環で、来る学生はぜひ産業に、彼らの言う科学技術というのは基礎科学というより、むしろ産業のほうだとは思うが、そういったことは今後の外交戦略で有効に展開していくだろうと思うので、我々も頑張っていきたい。
 洞爺湖サミットに向けてのいろいろな協力は、空からも、それから、スーパーコンピューターでも、いろいろなことができると思うので、我々もしっかり協力していきたい。

(7)社会還元加速プロジェクト等について

 岸田大臣より、昨年6月に閣議決定された長期戦略指針「イノベーション25」に掲げられた「社会還元加速プロジェクト」についてロードマップを策定したこと、「平成19年度科学技術の振興に関する年次報告」、いわゆる「科学技術白書」が5月23日に閣議決定の予定であることを報告。

(8)最近の科学技術の動向

 「脱石油社会の実現に向けたGM微生物の貢献」について、資料9(PDF)に基づき、本庶議員より説明。

 

2.福田議長(内閣総理大臣)しめくくり発言


【福田議長(内閣総理大臣)】
 科学技術は大競争時代に入っていると文部科学省の年次報告に書いてあるが、本日も大変重要な議論をしていただいた。日本にとって科学技術の発展が成長の原動力なので、本日まとまった成長戦略の柱である革新的技術戦略に沿って、政策を実行してほしい。
 そのために総合科学技術会議が司令塔となり、革新的技術推進費を効果的に使い、平成21年度予算から確実に実行に移せるよう、財務大臣と岸田大臣でよく相談していただきたい。
 7月には北海道洞爺湖サミットが開催され、主要テーマに気候変動問題がある。環境エネルギー技術革新計画は重要な指針となるものであり、これに沿って我が国が世界に先駆けて技術開発と国際協力をリードし、その成果を積極的に世界に移転していくことが我が国の責務だと思っている。
 いずれにしても、科学技術なくして我が国の成長も、地球温暖化などの地球規模問題の解決もないので、御協力いただきたい。


内閣府  科学技術政策・イノベーション担当
ウェブサイト・アクセシビリティについて 個人情報保護方針について
東京都千代田区霞が関3-1-1 中央合同庁舎第4号館 TEL:03-5253-2111(代表)
(C) Bureau of Science,Technology and Innovation Policy,Cabinet Office, Government Of Japan. All Rights Reserved.