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市場アクセスの一層の改善に向けて

平成9年7月18日
市場開放問題苦情処理対策本部

I.経済構造改革と市場アクセスの改善

世界経済が益々一体化し、人、物、資金、情報が自由に移動する時代にあって、世界の潮流を先取りする開かれた経済社会システムを創造することが喫緊の課題となっている。
政府は、経済構造改革を行政改革や財政構造改革等とともに、一体として推進しているが、経済構造改革を進めるに当たり、市場アクセスの改善は、我が国として主体的に取り組むべき課題である。
すなわち、市場アクセスの改善により、海外からの輸入や投資が増加すれば、消費者の選択の幅が広がり、また、内外価格差の縮小に貢献する。
それと同時に、産業の高コスト構造の是正が図られ、内外の企業による多様な競争を通じて我が国経済が効率化・活性化する。
また、それは企業が国を選ぶ時代の中で、国際的に魅力ある事業環境を整備し、経済の空洞化にも適切に対応するという課題にも応えることになる。

II.市場開放問題苦情処理体制(OTO)の活用

市場開放問題苦情処理体制(OTO)は、昭和57年の発足以来約800件の具体的苦情や問題提起の処理を行い、市場アクセスの改善に大きな成果をあげてきたところであり、特に、最近においては、いくつかの分野で、法改正を含め大胆な見直しが実施に移されつつあるなど着実な成果をあげている。
こうした中で、先般6月18日、市場開放問題苦情処理推進会議(OTO推進会議)より、これまでのOTOの苦情処理や問題提起プロセスの実績を活かし、我が国の基準・認証制度等に係る共通の課題についての建議を受けたところである。

III.対応の基本方針

市場開放問題苦情処理対策本部(OTO対策本部)としては、世界の潮流を先取りする開かれた経済社会システムを創造するためには、市場アクセスの改善が不可欠であるとの認識に立ち、経済構造改革を推進するに当たり、市場アクセスの改善をより積極的に位置づけるため、上記建議を最大限尊重し、必要な対応をとることとする。特に、
(1) OTOにおいて個別具体的な苦情や問題提起を受けて、下記の観点から案件の処理を行う。その際、関連制度につき必要な対応を検討し、それに基づく措置を取るよう努める。
(2) その実施状況については、適宜OTO推進会議に報告する。

(1) 規格・基準の策定に係る観点

1) 規格・基準の設定の必要性及びその内容の見直し
規格・基準の設定の必要性及びその内容を技術の進歩、規制緩和の要請、消費者ニーズの多様化、規格・基準の国際的調和の要請等の観点から適時・適切な見直しを行う。
その際には、生産者、使用者、消費者等の関係者の観点を幅広く取り入れ、ゼロベースの点検(全面的見直し)を行うなど、諸制度において規格・基準の包括的な見直しを図る。なお、規格・基準の制定・改廃に当たっては、関係省庁が連携して、可能な限り、JIS規格と強制法規の技術基準や政府調達の調達基準等との整合化を図る。
2) 新しい製品に適した規格・基準の整備等
海外からの新しい製品等に適した規格・基準が我が国には存在しない場合には、消費者の利益に資するため、必要に応じ、従来の規格・基準の見直しを行い、新しい製品にも対応できるような規格・基準の整備等を行う。
さらに、規格を策定する際には、民間規格を取り入れることを考慮する。
3) 明確な規格・基準の整備
行政等の裁量の余地を少なくするよう、規格・基準はできる限り明確に規定し、また、これにより適合性評価制度の簡素化を図る。
4) 国際規格への整合化
ISO/IECなどの国際標準化機関等で策定された適当な規格が存在する場合にはそれを基礎として用いる。また、国際規格の作成を待って対応するのではなく、その案が準備された段階で同時平行的に国内規格・基準の整備を図るなど、国内規格・基準の国際規格への整合化を最大限迅速化する。
さらに、国際規格が存在しない分野においては、その策定作業に積極的に貢献するとともに日本の規格・基準が独特である場合にはその妥当性について明確に説明できるよう対応をとる。
5) 性能規格・基準化の積極的推進
海外の製品を含め多様な製品が流通できるよう仕様規格・基準を可能な限り性能規格・基準に改め、その際、適合性評価機関のありかた等についてあわせて配意する。

(2) 規格・基準への適合性評価に係る観点

1) 適合性評価への競争原理の導入
検査、認証等の適合性評価業務を民間に広く開放し、適合性評価機関を複数化することにより、競争原理を働かせるなど、検査、認証等のためのコストの低下や質の向上を図る。
2) 海外の適合性評価機関の積極的活用及び相互承認の推進
輸入時の再検査等に伴うコスト増を避けるため、外国の優秀な適合性評価機関の積極的な活用を図ることを早急に検討を進めて対応する。こうした対応を行う際には、適合性評価に関するISO/IECガイドライン等を活用し、それを満たす機関には幅広く適合性評価の資格を開放する等の対応をとる。
また、主要国との間の相互承認の推進について積極的に対応する。また、国と適合性評価機関との関係を明確にした上で、適合性評価制度については、EUにおける取り組みも参考に、市場アクセスにも留意した適合性評価のシステムを早急に整備する。
3) 第三者認証を義務付けない制度への移行
明確な規格・基準を整備することにより、原則として、自己確認を基本とし、第三者認証を義務付けない制度へと移行し、適合性評価制度の大胆な簡素化を図る。また、その際には、信用力や試験・検査能力の不足する海外事業者や中小事業者等のために任意の試験所認定制度や第三者認証制度を整備する。他の制度においても、可能な限り、工業標準化法改正により導入された新たな認証制度の活用を含め積極的に対応を進める。
第三者認証等を義務付けない場合には、適合性評価制度がかえって不透明なものにならないよう、第三者認証等が義務でない旨流通段階に十分周知徹底する。
4) 適合性評価手続の簡素化・迅速化
政府等による適合性評価が不可欠な場合には、可能な限りその簡素化、迅速化、検査間隔の延長を図る。また、事業者の品質管理体制等を適合性評価の項目としている場合には、原則として、国際規格(ISO9000シリーズ)の活用等により、簡素化、迅速化を図る。

(3) 民間慣行等への対応に係る観点

1) 民間団体の規格・基準、適合性評価業務への対応
1] 法令上の根拠をもって民間団体が規格・基準を設定し、適合性評価業務を行う場合
所管省庁において、上記(1)(2)の原則を遵守するとともに業界関係者に過度に依存する等の不適切なことがあれば早急に改めるなど、適切な法の運用を行う。
公益法人については、「『公益法人に対する検査等の委託等に関する基準』について」(平成8年9月20日 閣議決定)において、所要の措置を平成12年度末までに行うものとしているが、これを可能な限り前倒しして行う。特に、かつてOTOの苦情の対象となった民間団体については早急に措置する。
2] 法令上の根拠なく民間団体が規格・基準を設定し、適合性評価業務を行う場合
民間団体における自主的な事業についても、国際的な規格と整合的でない場合等には、実質的に外国製品の輸入や対日直接投資の阻害要因となりうることから、これら民間団体の自主的な認証業務が国の業務との誤解を招かないよう、国の制度の運用や、当該団体の認証業務への関与の仕方に十分留意する。
さらに、公益法人については、主務官庁において、規格の策定、適合性評価について、市場アクセスの観点から適切な業務が確保されるよう指導を行い、特に当該団体の広報資料等の中の表現等において、国との関連について誤解を招かないよう配意する。
2) 独占禁止法の厳正運用による競争制限的な民間慣行の是正
内外の事業者の公正かつ自由な競争を促進するため、独占禁止法を厳正に運用する。政府は必要に応じ、競争制限的な民間慣行の実態を調査し、競争制限行為に対する独占禁止法の厳正な適用を行うとともに、背後に競争制限的な行政指導が存在する場合には、それを早急に改めることにより、競争制限的な民間慣行の是正を図る。
特に、民間団体の規格の設定及び適合性評価については、その内容又はその実施態様等によっては、それらの行為が競争制限的に機能する場合がありうることに十分留意し、そうした場合には独占禁止法に照らし厳正に対処する。

(4) 国内制度の一層の透明化に係る観点

1) 行政手続法の精神を最大限活かした対応
行政の透明性の向上を図るため、たとえ法的には義務とはなっていないとしても可能な限り審査基準・処分基準等の作成及び公開を自主的に行うなど、行政手続法を定めた際の「行政の透明性の確保」という精神を最大限活かした対応を行う。
また、行政手続法の適用除外になっている分野においても同様に行政の運営の公正の確保と透明性の向上を図るという法の精神を尊重する。
2) 市場アクセスに関連深い制度の積極的な広報活動
現在推進されている規制緩和の成果を実際の市場アクセスの改善につなげるため、インターネット等も活用し、制度の概要等に関する一層積極的な広報活動等を行う。特にOTOの苦情の対象となった制度については、その概要を容易に把握できるよう取り組む。また、重要な資料は極力英訳し、行政運用の判断基準となる通達、通知でも特に重要なものは英訳する。
3) 地方支分部局に対する指導の充実
本省における市場アクセス改善の取り組みを内外の事業者が具体的に接する窓口まで十分浸透させる。
4) 国際ルールを遵守した対応
規格・基準の策定や適合性評価手続等については、WTOのTBT/SPS協定の規定を遵守して情報提供を積極的に行う。特に、規格・基準の策定にあたって外国人等、幅広い第三者の意見を聞く機会を十分持ち、手順を同協定の規定に基づいたものとする。

(5) 消費者、企業の自己責任の確立に係る観点

製品安全規制については、製造物責任法の一層の定着を図るとともに、原則として、規格・基準への適合性を事前に政府において確保することを見直し、可能な限り、政府及び第三者認証を義務付けない制度、すなわち自己確認を基本とする制度への移行を積極的に図る。
また、こうした移行を実施するための環境整備として、消費者に対する十分な情報提供等を積極的に推進するとともに、消費者教育の施策の充実を行う。

(6) 対日投資促進等に係る観点

1) 対日投資促進に係る環境整備
対日投資の促進は、新たな技術や優れた経営資源の移転などを通して、我が国経済の効率化・活性化に資するものである。例えば投資家が優れた人材を確保することは、その事業活動を活発にする上で重要である。こうしたことにかんがみ、対日投資の促進を図るべく必要な対応を着実に進める。
2) 申請等の負担の軽減
輸入時等の各種の申請・届出、文書保存等に係る負担の軽減は、利用者の利便の向上、国際的に魅力ある事業環境の整備という観点から推進する。
さらに、「申請負担軽減対策」(平成9年2月10日 閣議決定)により、申請・届出手続の電子化・ペーパーレス化について、原則として平成10年度(1998年度)末までに可能なものから早期に実施に移すこととしているところであり、これを積極的に推進する。