市場開放問題苦情処理推進会議総点検報告書(平成10年12月7日)│OTO 市場開放問題苦情処理体制内閣府

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市場開放問題苦情処理対策本部決定の検証結果
市場開放問題苦情処理推進会議総点検報告書(平成10年12月7日)

平成10年12月7日
市場開放問題苦情処理推進会議

本報告書は、「OTO案件の総点検の進め方について」（平成9年12月18日、市場開放問題苦情処理対策本部決定）に基づき、過去に市場開放問題苦情処理体制（OTO）で扱った案件の現状について総点検し、市場アクセスの一層の改善を促進する観点から、追加的に講じるべき措置についての具体的提言を意見として取りまとめたものである。

市場開放問題苦情処理対策本部におかれては、本報告書を受けて速やかに具体的な対応を検討し、それに基づく措置を取られたい。

Ｉ．はじめに

平成10年11月に経済対策閣僚会議において決定された「緊急経済対策」の目標は、「平成11年度の経済を、はっきりプラス成長と自信を持って言える需要創造」、「失業者を増やさない雇用と起業の推進」及び「国際協調の推進、とりわけ対外経済摩擦の抑制」である。

市場開放問題苦情処理体制(OTO)は、昭和57年2月、対外経済摩擦問題の高まりの中で、市場開放経済体制を効果的に推進するための一環として、輸入検査手続等の市場開放問題に関する苦情について、その迅速かつ的確な処理を図るために経済対策閣僚会議により設置された。その後、平成6年には内閣総理大臣を本部長とする市場開放問題苦情処理対策本部(OTO対策本部)の設置など、OTOの機能強化が行われた。

発足以来16年を迎えるところとなったOTOがこれまでに扱ってきた個別苦情は約600件に達する。これらに加え、我々市場開放問題苦情処理推進会議(OTO推進会議)は、平成4年度より内外の事業者等からの問題提起を受けて年1回、「基準・認証制度等に係る市場開放問題についての意見」をまとめているが、この問題提起プロセスにおいては、これまでに約300件の案件を扱ってきている。また、過去に扱った案件に共通する事項について審議し、市場アクセス改善のための総論的課題について必要な対応を平成9年6月に建議したところである。

こうした中、平成9年11月、「21世紀を切りひらく緊急経済対策」において、柱の一つである市場アクセス改善の加速化のために、過去のOTO案件の現時点での状況を平成10年度中に総点検し、その改善状況に応じて、OTO対策本部が更なる対応を行うことが決定された。

これを受け、当推進会議は、過去のOTO案件に対する関係省庁の対応状況等について検討を行ってきたところであるが、今般、市場アクセスの一層の改善に向けての政府に対する具体的提言を以下のようにとりまとめた。

II．総括的所見

平成10年6月以来の総点検作業を総括すると、過去のOTO案件の中で、政府として何らかの措置を行うこととされた事項等のうち、7割近くの事項について実施済みであるとともに、案件によっては当初の想定以上に市場アクセスの改善が進んでおり、これらの点は評価することができる。

しかしながら、これらはあくまで政府の決定した対処方針の枠組みを基準とした評価であり、国民経済的な観点や苦情・問題が提起されたもともとの趣旨等からみて、苦情・問題の解決に果たして最善のものであったどうかという点については、慎重な検討が必要である。また、個別の苦情の処理分類をみると、関係省庁の対処方針として所管する規制を「現行どおり」としたまま「処理済」とされているものが3割近くを占めているが、苦情を申し立てた事業者等が心底納得していたかどうかは不明である。よって、総点検作業においては、関係省庁に加えて、問題提起者からの意見を聴取する機会も設けた。

1．今回の総点検作業に重点的に検討した具体的分野

以上を踏まえ、更なる対応をとるべき事項を検討するため、個々の案件の処理状況について検討するとともに、特定の事項を法律や分野といった共通性でグループ化して、過去の案件の相当部分をカバーできるようにしつつ、重点的に審議することとした。具体的には、1)薬事法、2)物流・道路交通関連分野、3)JAS制度、4)外国検査データの受け入れ等、5)輸入手続、6)民民規制及び7)上陸審査基準に関する事項を検討すべき課題とした。その際、これらの事項を選定した際の観点は、概ね以下のとおりである。

(1) 繰り返し類似の苦情や問題が提起されている法律等

総点検対象案件を所管省庁別にみると、厚生省関係案件(共管も含む)が268案件と最も多く、全体(789案件)の3割を超えており、法律別には、食品衛生法関係が140案件、薬事法関係が95案件となっている。

このうち、薬事法については、化粧品、医療用具、医薬品の分野で様々な改善措置がとられてきたが、最近時においても、栄養補助食品という新たなカテゴリーを設けることや、化粧品や医療用具等の各分野における輸入販売業許可要件のあり方等、薬事法が規制する分野全般において、様々な改善措置が要望され続けている。特に、栄養補助食品については、平成6年度以降、毎年、新たなカテゴリーの設置や改善措置の進捗等に係る問題が提起されている。したがって、総点検作業においては、薬事法全般における規制緩和の問題を取り上げた。

また、食品衛生法関係では、輸入手続の簡素化・迅速化に係る案件が最も多いが、この傾向は全OTO案件についても当てはまる。すなわち、輸入手続の簡素化・迅速化に関する苦情は、全OTO案件の3割以上を占め、案件数だけでみれば、OTO案件の一つの典型であるといえる。

輸入手続の簡素化等については各種法令手続の電算システム化や執務時間の延長等の各般の対応策が実施されているが、平成3年以降、ほぼ定期的に所要時間調査が行われ、客観的なデータにより対応策の効果を検討できることもあり、総点検作業における検討課題として取り上げた。

さらに、外国検査データの受け入れ等の基準・認証問題も当初から数多くの苦情が寄せられているOTO案件として審議した。

(2) 一体として処理すべき案件

個別の苦情・問題に個々に対処するばかりではなく、関連する苦情・問題を一体として取り扱わないと抜本的解決につながりにくい案件もある。

前述の輸入手続の簡素化等も、各省庁が連携して一体的な措置がとられないと抜本的な解決が期待できない一例であった。この観点から、トレーラーハウスのように総合的な検討が不可欠な案件につき審議を行った。

(3) 現時点においても依然として苦情等として処理が行われている案件

OTOに寄せられる苦情等の中で、過去に提起され、処理済みであるべき案件に関するものについては、まず、当初における案件処理から最大限の措置がとられたかどうかを検討する必要がある。かかる観点から、総点検作業においては、現時点においても個別の苦情として処理が行われている海上コンテナ、トレーラーハウス(けん引免許等)及び自動二輪車に係る案件について検討を行った。

(4) 民民規制への取り組みの重要性

政府による規制の改革が進展をみせる中、民間における規制、いわゆる民民規制が大きな問題として浮上しつつある。このため、民民規制についても総点検作業の対象として取り上げることとした。

これまでOTOで扱われてきたいわゆる民民規制案件は、公益法人等の民間団体が行っている規格策定や適合性評価業務から生じた問題のように、公的部門が関与しているケースが中心であった。

(5) 「建議」(平成9年6月)のフォローアップ

当推進会議は、平成9年6月、過去にOTOで扱った案件に関し、それらに共通する事項について、我が国の基準・認証制度等に関する問題の所在を明確化し、必要な対応を総論的意見としてとりまとめた(以下、「建議」という)。

「建議」では、我が国の基準・認証制度等に係る共通の問題として、特に適合性評価（試験、検査や特定の規格・基準を満たしていることを証明する認証等）のあり方、法令上根拠のない民間団体の基準・認証活動等の民間慣行を扱っている。総点検作業においても、外国検査データの受け入れや相互承認の推進状況や、いわゆる民民規制への取り組み状況について検討することとした。特に、相互承認については、「我が国においても主要国との間の相互承認の推進について包括的な枠組みの整備も含め、積極的対応が必要である」との意見を述べたことから、日・EU相互承認協力協定交渉の現状について取り上げることとした。

また、「建議」における個別指摘事項として、日本農林規格(JAS)については「規格・基準の包括的な見直しを行うことが必要である」との意見を述べたところであるが、平成9年9月、JAS制度の改革の方向を検討するため、農林物資規格調査会に基本問題委員会が設置された。したがって、当推進会議においても、JAS制度の見直しへの取り組み状況について取り上げることとした。なお、1)や2)で言及した栄養補助食品及びトレーラーハウスについては、それぞれ「新しいカテゴリーとすることについて、積極的に対応する必要がある」(栄養補助食品)及び「関係省庁において我が国現行法令等との関係について速やかに検討を進め、積極的な対応を行うべきである」(トレーラーハウス)との意見を述べたことからも、総点検作業において検討する必要があった。

(6) その他

OTOへの苦情等の処理状況をみると、制度に対する誤解から生じているものも多くある。また、取られた措置を実際の市場アクセスの改善につなげるためには、その十分な広報が必要である。上陸審査基準に関する入国審査及び在留管理上の措置はその一例であった。

2．政府としての適切な対応を求める共通課題

個別事項を審議していく中で浮かび上がってきた以下の共通課題については、政府としての適切な対応を求めたい。

(1) 規格・基準の国際整合化作業へ対応できる人材の育成

世界経済の一体化が進展する中、多くの分野で規格・基準の国際整合化作業が進められており、我が国の専門家もその作業に積極的に貢献するとともに、我が国における規格・基準も十分考慮されるよう努力することが重要である。

その際、単に会議に参加するのみではなく、進んで原案を作成する程の実質的な貢献を行うべきである。そのような能力のある人材が十分育っているとはいえないのが現状であり、その育成が急務である。

(2) 国際的な動向に処する主体的な対応方針の決定

WTO等における国際交渉のように、相互主義により対処すべき場合もあれば、国際標準化が図られている規格・基準や、国際的な制度の調和等が図られている分野においては、国際的動向を視野において国内規制を決めなければならない場合もある。しかしながら、国際規格・基準への整合化、外国検査データや適合性評価結果の受け入れ等については、市場アクセスの改善に我が国が主体的に取り組んでいくという観点から、相互主義にこだわらず、我が国の方から率先して実施するよう努めるべきである。

また、諸外国において不当な規制が行われている場合には、積極的に注文をつけるという対応も考えるべきである。

(3) 対外的アカウンタビリティーの向上

世界経済の一体化により、輸入に直接的に係る規制のみならず、国内のあらゆる規制に関し、市場アクセス上の問題として他国から提起される可能性がある。

規制の存在が問題とされた場合には、まず、市場アクセスの改善に向けた政府のこれまでの取り組みや今後の対処方針を明確に伝えるとともに、存続する規制については、その必要性について対外的に合理的かつ説得力ある説明ができなくてはならない。

(4) 規格・基準の法制化と規制のネガティブリスト化への努力

今回の総点検作業においては、法令ではない通達・通知等により実質的な規格・基準が運用され、行政の裁量範囲が不透明である例が指摘された。「建議」においても、行政の透明性の確保という精神を最大限活かした対応が必要であるという意見を述べたところであり、規制の詳細についても、原則として法令により規定すべきであると考える。その際、規制する項目は、限定列挙、すなわちネガティブリスト化による最小限のものとすべきである。

(5) 積極的な改善措置と新規格・基準への機動的な対応

OTO事務局による現状調査において、苦情等が申し立てられた当初は特段の対応が行われなかったものの、その後新たな改善措置が講じられたものが多くみられた点には、一定の評価を与えることができる。今後は、個別の要望に対して極力迅速かつ積極的に対応すべきであるとともに、定期的に規制の体系そのものを抜本的に検討するという手法も必要である。

また、成長産業における新型製品の普及等により国内の規格・基準が製品の実態に合わなくなるような場合がしばしばみられると考えられるが、できる限り迅速かつ的確に対応すべきである。

(6) 国民経済全体を向上させるという観点の導入

特定の業種における市場アクセス改善要望を検討する際にも、改善の効果が我が国経済全体へ及ぼす影響を常に考慮し、その最大限の向上を目指す必要がある。規制の改革に際し、費用対効果を予め推計するという動きがみられるが、その際にも、規制の改革による直接的な費用・効果のみならず、適切な前提条件を置く必要はあるものの、我が国経済全体へ与え得る間接的な費用・効果も併せて推計し、わかりやすい形で国民に示すよう努めるべきである。

(7) 市場アクセス改善の評価手法の検討

市場アクセスの改善効果は、可能な限り、定性的な表現ではなく、具体的数値をもって示すことが重要である。もっとも、前提条件等によって同一施策を幾通りにも評価できる可能性があり、その点に留意されるべきである。今回の総点検作業では、OTO案件関連品目の輸入量等の推移等、OTO活動の成果の数量的な検証が試みられた。

注：OTO事務局による過去のOTO案件の処理状況に係る調査の概要

過去のOTO案件789件（OTO諮問会議報告書及び第1～4回OTO推進会議報告書関係案件:238件、並びに平成9年10月31日までに処理済となった個別苦情案件:551件）のうち、所管省庁の対処方針において何らかの措置を行うこととされた案件等（381事項）について、OTO事務局が平成10年6月19日現在における現状を以下の通り整理した。なお、1案件に複数の事項を含むものがあるため、過去の案件総数（789件）より総事項数（824事項）がやや上回っている。

(1) 7割近くの事項について必要な措置が既に全て実施済み

上記381事項を、OTOにおける苦情処理を通じて「講じた」もしくは「講ずる」とされていた措置の実施状況に応じて分類すると、これらの措置を「全て施行済」のものが、256事項と全体の7割近くを占めた。また、「一部施行済」のものは57事項となっているが、そのうち20事項については、問題提起者等、所管省庁以外の都合・事情により改善措置を全て施行することができないものである。

(2) 改善措置の実施率は98パーセント以上。

さらに、規制緩和の推進等により、所管省庁の当初の対処方針にはない新たな改善措置が講じられ、実施されたものが63事項ある。

したがって、所管省庁の対処方針において何らかの措置を行うこととされた案件等381事項のうち376事項について、既に何らかの改善措置が実施されており、改善措置の実施率は98％を超えている。

OTO案件の現状の措置区分		事項数
1) 「講じた」もしくは「講ずる」とされていた措置が、全て施行済であるもの。		256
2) 一部施行済		57
	1) 「講じた」もしくは「講ずる」とされていた措置が、「全て施行済」ではないが、一部施行されているもの。	37
	2) 問題提起者側の都合・事情により、改善措置を全て施行することができないもの。	20
3) 規制措置の推進等により、所管省庁の当初の対処方針にはない新たな改善措置が講じられ、実施されたもの。		63
小計		376
所管省庁の対処方針において何らかの措置を行うこととされた個別事項等		381
総事項数		824

III．意見－政府に求められる措置－

III-1．薬事法における規制緩和

○ 提起された課題

これまでにOTOに対して内外から申し立てられた苦情の案件数を法律別にみると、薬事法の運用等に関する苦情は95件と、食品衛生法の140件に次ぐ位置を占めている。因みに、OTOへの苦情第1号は、救急箱と消火器を標準装備した西独製乗用車を輸入する際に、薬事法及び高圧ガス取締法が要求する手続を簡素化すべきであるというものであった（それぞれ措置済み）。

これらの苦情を、化粧品、医療用具、医薬品等の分野別にみると以下のとおりとなる。

(1) 化粧品

OTO設立当初から、化粧品に含めうる個別成分の追加や承認手続の簡素化等に関する苦情が寄せられていたが、近年、配合成分を口紅やファンデーションといった種別毎に承認するやり方、配合可能成分に関する基準の国際整合化、輸入販売業許可のあり方等、化粧品に対する規制のあり方そのものが議論されるようになった。

(2) 医療用具

医療用具については、水銀体温計等、一定の要件を満たすことなどにより輸入に際して厚生大臣による承認を得る必要のない品目が定められているが、その承認不要品目の拡大が数次にわたって要望されてきた。その他、新規に輸入される機器に対する販売業の届出の免除や、薬事法上の問題ではないものの医療保険制度の適用等も苦情として受け付けている。

(3) 医薬品

昭和57～62年に、後発医薬品や新薬の輸入承認手続・申請書類の簡素化や権限委譲等に関する苦情が集中的に寄せられたが、平成7年度に一般用医薬品の承認及び販売許可手続の簡素化が提起されて以降、ここ数年は医薬品に関する苦情はあまり申し立てられていない。

(4) 栄養補助食品

国民の健康に対する関心の高まりとともに、二次的・補完的に栄養素を補給する、いわゆる栄養補助食品が数多く流通販売されるようになったが、我が国では栄養補助食品に関する法的位置付けがなされていない。したがって、形状等によっては、海外において食品として流通しているものが我が国においては医薬品とみなされることがあるため、栄養補助食品の法的位置付けの明確化と規制の緩和が提起された。

(5) 体外診断薬

妊娠検査薬のような通常人体には直接使用されない体外診断薬を輸入する場合も、医薬品として輸入承認を得る必要があるが、欧州などではこのような規制を受けない国もあるため、その取り扱いの抜本的な簡素化が提起された。

○ 所管省（厚生省）による措置の概要

(1) 化粧品

配合できる個別成分の追加や承認手続の簡素化が逐次実施された後、平成10年7月、厚生省に設置された「化粧品規制のあり方に関する検討会」が、ネガティブリスト及び特定成
分群のポジティブリストの作成による種別承認制の廃止、全成分表示の導入等、今後の化粧品規制の在り方と具体的な取り扱いをとりまとめた。このとりまとめに基づき、所要の法令等の改正を経て、平成12年度までに必要な措置を実施することとなっている。

(2) 医療用具

輸入する際の厚生大臣による承認を不要とする品目の拡大が逐次実施され、平成10年3月には、マッサージ器や磁気健康器具等の家庭用医療用具の承認が不要となった。

なお、薬事法上の問題ではないが、平成7年に申し立てられた心臓用ペースメーカーの材料価格基準の見直しについては、中央社会保険医療協議会において引き続き検討されている。

(3) 医薬品

承認手続に関し、逐次、申請書類の簡略化やペーパーレス化が実施されており、平成9年3月には、後発医薬品の標準事務処理期間が1年6か月から1年に短縮された。また、平成10年3月までに、医薬品に配合される成分の多くについて標準規格が設定され、標準規格の範囲内の変更であれば、一部変更承認申請を要しないこととなった。

(4) 栄養補助食品

いわゆる栄養補助食品については、中長期的には、医薬品と食品の区分方法について、栄養補助食品を新たなカテゴリーとすることを検討し結論を得ることとされており、平成9年3月、厚生省内において関係部局による省内横断的な検討が開始された。さらに本年11月、公衆衛生審議会及び食品衛生調査会で栄養補助食品の検討を行うことが了承され、本年から各分野の委員からなる検討会を設置し、検討することとなった。

なお、医薬品と食品の区分の見直しについては、規制緩和推進計画に基づき検討が行われており、平成9年3月よりビタミン、平成10年3月からハーブの一部が食品として流通することが可能となっており、ミネラルの取り扱いについては現在検討が行われている。

(5) 体外診断薬

平成8年3月、成分の変更等を行っても一部変更承認申請を要しない範囲が明示され、平成9年8月、承認申請書類が一部簡素化された。

また、医薬品等としての承認を不要とする範囲の設定等を検討するため、平成8年度から欧米諸国の制度の調査研究が進められている。

○ 総点検作業における検討結果

(1) 消費者及び企業の自己責任の原則に基づく規制の緩和

政府による規制は、規制項目の限定列挙、すなわちネガティブリスト化による必要最小限のものとしていくべきであり、たとえ人体に直接害を及ぼすリスクのあるものを規制対象とする薬事法であっても、製造物責任法の精神を最大限活用し、消費者及び企業の自己責任の原則を背景とした規制緩和をさらに実施する余地はある。その際、通知等により実質的に規制が運用されている部分も併せて見直し、原則として規制の詳細まで法令により規定し直すべきである。

例えば、化粧品の輸入販売業の許可を得るためには、試験検査設備に関する要件（物的要件）と責任技術者の設置等に関する要件（人的要件）の双方を営業所毎に満たす必要があるが、これにより法的に担保されたとみなされる製品の適正管理や不良品の回収等は、他の業界では、法に規定がなくとも企業自体の責任において必要な手当がなされるのが通常である。しかも、法で定められた学歴等の要件が、求められている責務の遂行に必要不可欠であるとは考えがたく、逆に、学歴等だけ満たせば実務上十分というわけではない。他方、栄養補助食品の法的位置付けの明確化に関し、医薬品と食品を区別するための表示規制により、ビタミン等の用量用法や注意書き等がうまく表示できず、かえって消費者が自ら必要なものを必要な量だけ摂取するための情報が不足するケースがある可能性もある。

(2) 新しい製品に適した規格・基準の整備等

栄養補助食品や体外診断薬等の海外からの新しい製品に適した規格・基準が我が国にはない場合、必要に応じて「医薬品」や「化粧品」といった現行の括り方を見直し、新たなカテゴリーを設けるなど、迅速かつ積極的に対応すべきである。その際、国際規格の制定等を待つのではなく、むしろ国際規格の制定にも資するよう、検討期限を設定し早期に結論を得るとともに、検討過程の透明性を確保するため、必要に応じて外部の関係者が参加した検討会を設置すべきである。

(3) 「化粧品規制の在り方に関する検討会最終とりまとめ」で示された内容の着実な実施

上記検討会に参加した在日米国商工会議所や欧州ビジネス協会によれば、本とりまとめで示された化粧品に関する今後の規制緩和の内容は「大きな一歩」であるとのことであり、その着実な実施が望まれる。

ただし、所要の法令等の改正や消費者等各方面への周知に平成12年度まで時間が必要であるとされる点については、国内手続を経る必要性は理解できるものの、その具体的手順を明示すべきであると考える。

○ 具体的提言

以上を踏まえ、所管省においては、市場アクセスの一層の改善に向けて以下の措置を追加して講ずるべきである。

(1) 「化粧品規制の在り方に関する検討会最終とりまとめ」の内容を、実施スケジュール・手順を明確化した上で着実に実施すべきである。さらに、輸入販売業許可における構造設備や責任技術者についての要件は、品質確保の実態を早急に評価し、その必要性も含め抜本的に見直すべきである。

(2) 栄養補助食品の位置付けの明確化に関し、

1) 平成11年度中に新たなカテゴリーのあり方について決定すべきである。
2) 基準の法制化などにより、形状（剤型）の制限の廃止または大幅な緩和を行うべきである。
3) 基準の法制化などにより、表示の制限について、適切な摂取方法や栄養補助的効能、注意表示等について、消費者が自分に必要なものを的確に選択できるような表示を可能とすべきである。

(3) 薬事法において体外診断薬を新たなカテゴリーとする対応を取ることを検討するため、外部の専門家等が参加した検討会を平成11年上半期中に設置するとともに、検討期限を明確化すべきである。

III-2．物流・道路交通関連分野における規制緩和

II．1で述べたとおり、今回の総点検作業では物流・道路交通関連分野に関し、(1) 背高コンテナ等、(2) トレーラーハウス、(3) 自動二輪車に関する案件の現状について検討を行った。

(1) 背高コンテナ等

○ 提起された課題

1) 高さ制限の緩和<

国際物流が著しく増加する中、コンテナ化とその水陸一貫輸送の推進という物流効率化の観点から、国際物流において広く普及しているISO規格国際海上コンテナ（注：「背高（海上）コンテナ」とは、当初は高さ8.6ft(2.59m)のものを指したが、現在は高さ9.6ft(2.9m)のものを指す）の国内輸送に関し、車両制限令及び道路交通法施行令による車高の制限(3.8ｍ)の緩和や弾力的運用が求められてきた。

2) 特殊車両通行許可の限度重量の引上げ

道路法等によって道路上を通行できる車両の重量の上限が定められているが、上記と同様の観点から、海上コンテナのフル積載（注：フル積載によるコンテナ総重量は、長さ20ftの海上コンテナで24t、長さ40ftの海上コンテナで30.5tとなる）による通行を可能とするよう求められてきた。

○ 所管省庁（建設省・警察庁）による措置の概要

1) 高さ制限の緩和

海上コンテナ(高さ8.6ft)を低床式トレーラで輸送すれば、高さ制限の範囲内で通行できる。低床式トレーラが普及するまでの経過措置として、昭和53年度から57年度末まで平床式トレーラによる輸送（総車高4.0m）が臨時的に認められていたが、低床式トレーラの普及率が9割以上にまで高まっているため、本措置の再採用が行われる予定はないとされている。

背高海上コンテナ(高さ9.6ft)については、高さ制限の範囲内における輸送を可能とする超低床式トレーラの開発が不可能であることにかんがみ、昭和60年4月より、制限外積載及び特殊車両通行許可の対象として、指定経路（運輸事業者等の要望を受けた上で審査し指定するもの。平成10年度当初で約1万3千km）における低床式トレーラによる輸送（総車高4.1m）が可能となった。通行許可についても、1)原則として終日通行可とする、2)ルート申請受付間隔の短縮及び審査の迅速化、3)申請書類の簡素化及び制限外積載許可の有効期間の大幅延長（原則として1年）4)高速道路におけるトンネルの通行許可という措置が実施されている。また、平成10年10月1日より、高速自動車国道における指定経路の指定要件を緩和する措置が行われた。

なお、通常の海上コンテナの平床式トレーラを特殊車両として通行を認めた場合、その他の一般車両についても同様に通行を認めざるを得なくなるが、安全上の問題が大きく、直ちに許可することは困難としている。いずれにせよ、高さ制限の緩和については、長期的視野から物流の効率化に資するという観点から、安全・円滑な運行を可能とするためにトンネル等の構造物の再構築に要する費用と得られる効果を調査中であり、道路の高さに関する設計基準を見直すことを含めて検討を行うこととなっている。

2) 特殊車両通行許可の限度重量の引上げ

重要港湾、物流拠点を結ぶ物流上の重要な路線について、橋梁の補強等が完了した約3万2千5百㎞の高速自動車国道及び指定道路につき、平成10年4月より、長さ40ft及び20ftの海上コンテナをフル積載したセミトレーラの通行が可能になるとともに、6月より、一般の特殊車両の許可限度重量も引き上げられた。新道路整備5か年計画においても、海上コンテナの輸送ニーズ等を踏まえて橋梁の補強等の道路整備を行うこととされており、平成14年度末までにフル積載に対応した約6万㎞のネットワークが整備される見込みである。

なお、上記指定道路の指定状況については、現在、工業団地等主要な物流施設へのアクセスが可能かどうか総点検を行い、物流上のニーズや道路整備の状況を踏まえ、指定道路の追加指定を平成10年内に行えるよう諸手続が進められている。また、併せて、高速自動車国道又は指定道路に接続する道路について、当該道路が指定道路として指定されるまでの間、道路管理者が道路構造の保全及び交通の危険防止上支障がないと認めた場合に限り、特殊車両通行許可に関して指定道路と同様の取扱いとする措置を平成10年内に講じるよう諸手続きが進められている。
現有のコンテナ輸送用セミトレーラでフル積載する場合には、軸重に係る限度値(10t)を超えることとなるが、必要な改造を行った現有車両等についても、平成10年4月から10年間、当該車両を通行可能とする経過措置が講ぜられている。

○ 総点検作業における検討結果<

1) 背高コンテナの高さ制限緩和に係る費用対効果の再検討

物流サービスの水準を国際的に遜色のない水準にするためも、背高海上コンテナは原則通行可能とし、通行できないルートを指定するというネガティブリスト的発想を長期的な課題として検討してもよいと考える。
建設省が実施している高さ制限の緩和に係る費用対効果分析は、車両の節約効果といった直接的・技術的効果またはコストのみが取り上げられており、物流の効率化が国民生活全体に与える影響といったマクロ的な視点が欠けているといえる。また、短期的に全てのトンネルを再改築することが前提となっているが、物流上の重要な路線・地域への集中的投資や新設・改修道路への新規格の適用などにより、計画的に高さ制限の緩和を図ること等も考慮すべきである。

調査自体の中立性をより高めるためにも、民間の機関に委託して調査し、その結果を踏まえて高さ制限の緩和をできる限り前向きに検討すべきである。

2) 海上コンテナ輸送ネットワーク形成の前倒し<

平成14年度末までにフル積載に対応した約6万㎞のネットワークが整備される見込みであるということだが、できる限り前倒しで実施することが望ましい。

○ 具体的提言

以上を踏まえ、市場アクセスの一層の改善に向けて以下の措置を講ずることを求める。

海上コンテナの高さ制限緩和に係る費用対効果分析について、国民経済全体への影響といったマクロ的な視点や計画的な規制緩和といった視点を盛り込みつつ、民間の機関に委託して調査し、平成11年度中に結果を得るとともに、その結果を踏まえ、高さ制限の緩和について検討すべきである。
2) 海上コンテナのフル積載に対応した約6万㎞のネットワークは、平成14年度末までに整備される予定となっているが、できる限り前倒し実施を図るべきである。

(2) トレーラーハウス、キャンピングカー

○ 提起された課題

1) 車庫法上の取り扱い

大型のトレーラーハウス（大型の被けん引式キャンプ用車両）の保管場所に関し、都心において車庫法の運用にしたがい自宅（使用の本拠の位置）から2㎞以内に確保することは極めて困難であり、また、このような大型車両が自宅周辺で日常の交通手段として使用され、違法駐車の問題が生ずるとは現実的に考えられないことから、「使用の本拠の位置」の解釈運用を改め、モータープール等、自宅周辺以外の場所にその保管場所を確保することを認めるべきとの要望が提起された。

2) 道路運送車両法及び建築基準法上の取り扱い

トレーラーハウスは、我が国おいてあまり普及していないことから、法的位置づけが明確でなく、車輪等を有しており道路上を移動することが可能であることからこれを「自動車」とみなすという考え方や、一定期間定着して使用されることから「建築物」とみなす考え方があった。そこで、1)トレーラーハウス本来の利用方法にそった使用方法である限り、トレーラーハウスを建築基準法の規制対象外とすべきである、2)関係省庁はトレーラーハウスに係る新たな規格・基準の整備を行うべきである、という問題提起がなされた。

3) 道路交通法上の取り扱い

当初、キャンピング・トレーラ（被けん引式キャンプ用車両）の普及を図るため、普通自動車免許による被けん引車両の重量制限(750㎏)の引上げが要望されたが、警察庁は根拠を示しつつこれを認めなかった。その後は、けん引免許を被けん引車両の重量に応じた区分を創設すべきという要望が提起された。

○ 所管省庁（建設省、警察庁、運輸省）による措置の概要

1) 保管場所に係る規制緩和

平成7年8月、一定の条件の下、モータープール（保管場所）についても、「使用の本拠の位置」として認定され、自宅との距離が2kmを超える場所であっても保管場所証明を受けることが可能となった。

2) トレーラーハウス、キャンピングカーの輸入の円滑化

平成9年3月、トレーラーハウスのうち、規模、形態等により建築基準法に規定する建築物には該当しないものがある旨、通達により周知された。

3) けん引免許取得に係る規制緩和

けん引免許に被けん引車両の重量に応じた区分を設けることについて検討するため、区分ごとの運転適性、区分する合理性等に関する調査を実施すべく、現在、被けん引車両の重量別の事故特性、限定的なけん引免許のニーズ等に関する資料収集を行っている。

○ 総点検作業における検討結果

1) トレーラーハウス等の規制のあり方を検討するための検討会の設置

問題提起者からのヒアリングにおいても指摘されたとおり、平成9年3月の建設省通達だけでは、トレーラーハウス等の設置場所と設置目的に関する位置づけの解釈が、事業者や担当者の間で異なり、法の適用等について現場で争いが生じる可能性も考えられる。OTO対策本部が決定した「キャンプ場においてキャンプのために使用するものについては建築基準法の適用を受けない」ためには、「キャンプ場」自体の法的位置づけが明確でないため、建築基準法の通達の文章の明確化だけでは対応しきれないと考えられる。

トレーラーハウス等の新たな規格・基準の整備に関しては、既存法の枠内で対応するか新法制定で対応するかについて、平成9年度内を目途に結論を出すこととなっていたが、各種スペックや米国における規制等の調査が依然として継続中であることにより、結論は出ていないとのことである。しかしながら、米国側が提出すべきデータを日本政府のどこに提出すればよいかということは予め明確化しておくべきであると考える。これらを踏まえ、トレーラーハウス等の規制のあり方について、検討会を設置し、必要に応じて関係法令の改正等について具体的な検討を開始すべきである。

2) けん引免許の区分化に関する調査の早期実施

けん引免許の区分化に関する調査は、できる限り早期に結果を得るべきである。

○ 具体的提言

以上を踏まえ、市場アクセスの一層の改善に向けて以下の措置を講ずることを求める。

1) トレーラーハウス等の規制のあり方を検討し、早急に結論を得るため、OTO事務局は関係省庁等と連絡調整を行い、検討会を設置するとともに、平成11年中にOTO推進会議に対し報告を行うべきである。
2) けん引免許の区分化に関する調査をできる限り早急に開始し、平成11年中にOTO推進会議に対し報告を行うべきである。

(3) 自動二輪車

○ 提起された課題

以下の規制の存在により、主として大型の自動二輪車を製造している米国及び欧州による我が国の自動二輪車市場への参入が困難になっているので、規制を緩和すべきであるとの問題提起がなされた。

1) 高速自動車国道及び自動車専用道路（高速道路）における二人乗りの禁止
我が国と韓国を除き、高速道路において自動二輪車の二人乗りが禁止されている国はないとして、その撤廃が求められた。
2) 大型自動二輪車(総排気量400cc以上)の技能試験のあり方
大型自動二輪車の技能試験は、運転免許試験場のみで実施されており、指定自動車教習所における技能検定制度がないため、取得が困難であるとして、その改善が求められた。
3) 高速道路における制限速度の引上げ

高速道路における制限速度が、乗用車では100㎞/hであるのに対し、自動二輪車では80㎞/hとなっており、かえって危険であるとして、その引上げが求められた。

○ 所管庁（警察庁）による措置の概要

1) 高速道路における二人乗りの禁止
「大型自動二輪車の二人乗り走行の安全性について、問題提起者から提出されるデータ等の検討を行い、安全性に問題がなければ規制を見直す」ことがOTO対策本部において決定されたが、問題提起者からは、新規のデータ等は提出できないとの回答があった。
2) 大型自動二輪車に係る免許制度の変更
平成8年9月、自動二輪免許自体が廃止され、総排気量400ccを境に大型自動二輪車免許及び普通自動二輪車免許が設けられ、それぞれの車両特性に応じた技能試験が課されるようになるとともに、大型自動二輪車免許について指定自動車教習所における技能検定制度が施行された。
3) 高速道路における自動車の速度差に関する調査研究
現在、(財)日本交通管理技術協会が主体となり、「高速道路における自動車の速度差と安全対策に関する調査研究」が実施されている。

○ 総点検作業における検討結果

1) 高速道路における自動車の速度差に関する調査研究の早期実施
高速道路においては、各車種の間で車両特性に差がなければ法定速度を同じくする方が安全であると考えられる。
高速道路における二人乗りについては、規制の必要性があるのであれば、所管庁が問題提起者等に対し、それを説得力をもって説明しなければならない。このため、所管庁は、安全性に関するデータの収集等に努めるべきである。
いずれにせよ、高速道路における二人乗り禁止と制限速度に関する要望は、必要に応じて苦情処理部会において審議するなど、所管庁における処理を見守っていくこととしたい。また、制限速度差に関する調査研究は、できる限り早期に結果を得るべきである。

○ 具体的提言

以上を踏まえ、市場アクセスの一層の改善に向けて以下の措置を講ずることを求める。

1) 高速道路における自動車の速度差と安全対策に関する調査研究については、平成11年度中にOTO推進会議に対し報告を行うべきである。

III-3．食品等の表示・規格制度（JAS制度）の見直し

○ 提起された課題

日本農林規格（JAS）に係るOTO案件は、案件数でみると7件しか受け付けておらず、食品衛生法や薬事法等に係る案件数と比較すると極めて少ないが、食品日付表示制度や果汁等のJAS規格の変更と、内容的に我々の日常生活に及ぼす影響の比較的大きいものがみられる。その他、ニュージーランドの主要な人工林由来産物であるラジアタ松の等級区分に関する問題提起がなされた（一部処理中:現在ニュージーランドからの規格改正に必要なデータの提示を待っている）。

また、当推進会議による「建議」において、JASに係る規格・基準の包括的見直しの必要性を指摘したところであるが、平成9年9月、JAS制度の改革の方向を検討するため、農林物資規格調査会に基本問題委員会が設定された。その後、同委員会における7回にわたる審議を経て、平成10年10月、JAS制度の見直しについて取りまとめが行われ、報告書「食品等の表示・規格制度の見直しについて(取りまとめ)」が出された。

(1) 国際的な規格に則した食品日付表示制度の導入

平成4年、駐日米国大使館、在日米国商工会議所より我が国の消費者の鮮度指向を背景に、小売業者や卸売業者が、製造年月日をベースに不当に短い販売期限や納入期限を設定しているため、輸送や通関に日数を要する外国製品は、国産品に比べて不利な競争条件におかれており、国際的な規格に則した期限表示制度を導入することが必要であるとの問題提起がなされた。

(2) 果汁のJAS規格の見直し

平成7年、日本貿易会より果汁のJAS規格に関し、①輸入果汁が増加しているにもかかわらず、オレンジ果汁の酸度、クレープ果汁のアミノ態窒素、灰分でJAS規格を満たさないものがあり、JAS規格は実態に即していないので、輸入果汁の実態に則して、JAS規格の抜本的な変更をすべきである、②これらは国際規格であるコーデックス規格に規定されていない日本独自の項目であり、事実上国内でしか測定できないためコストがかかる旨の問題提起がなされた。

○ 所管省（農林水産省・（厚生省））による措置の概要

(1) 国際的な規格に則した食品日付表示制度の導入

厚生省は、「食品の日付表示に関する検討会」において「製造年月日よりも期限表示の方が食品の品質保持に係る情報としては有用である」旨の報告書をまとめると、食品衛生調査会への諮問を経て、平成6年12月、関係省令等について、製造年月日等を期限表示に切り替える旨の改正を行い、2年間の移行期間を設定した上で、平成7年4月からこれを施行した。

農林水産省も、「食品表示問題懇談会」を設置し、同懇談会において厚生省における検討会の報告書と同趣旨の報告書がまとめられたことを踏まえ、農林物資規格調査会への諮問を経て、平成6年12月、JAS規格、品質表示基準を改正した。

(2) 果汁のJAS規格の見直し

平成10年8月、果汁の品質項目から酸度（オレンジ果汁のうち濃縮果汁）、アミノ態窒素及び灰分（グレープ果汁）の項目が削除された。

(3) 農林物資規格調査会の報告書「食品等の表示・規格制度の見直しについて（取りまとめ）」の骨子

1] 表示制度の見直し
・表示対象品目の拡大（消費者が必要とする全ての品目について表示基準が制定できるよう措置）
・表示項目の見直し（生鮮食料品の原産地表示等につき、消費者・生産者のニーズを踏まえ対応）
・横断的な表示基準の策定（品目ごとではなく、食品横断的に一般的な表示のルールを定める仕組みを整備）
・統一的な食品表示へ向けた取り組み（品質・公衆衛生・栄養表示・不当表示を包括した統一的な食品表示の枠組みの導入について、広い立場から検討）
2] 規格制度の見直し
・規格の制定・見直しの方針を策定
・規格制定・見直し手続の改善（一定期間ごとに全ての規格を見直すシステムの導入、制定・見直し手続の透明性の確保）
・役割を達成した規格等の廃止等
・国際化への対応（規格の国際整合化の推進、性能に着目した規格の導入）
3] 適合性評価（格付け）制度の見直し
・システム認証の導入（一定の品質システムを導入している工場については、製品の検査を受けなくてもマークを付することができる仕組みを検討）
・民間認証機関の活用（格付業務や工場の認定等の権限を民間会社を含む内外の認証機関に開放）

○ 総点検作業における検討結果

(1) 農林物資規格調査会の報告書「食品等の表示・規格制度の見直しについて（取りまとめ）」の着実な実施

今般、農林物資規格調査会基本問題委員会において、規格の国際整合化の推進や内外の民間認証機関の活用を含むJAS制度の見直しの方向が取りまとめられたことは、市場アクセス改善の観点からも評価できる。

JAS制度の見直しにあたっては、WTO等における国際的な動向を注視しつつ、消費者にとって本当に必要な情報は何かということに十分配慮する必要があると考える。

(2) 表示ガイドラインのあり方の見直しと積極的法制化

有機野菜や水産物などの表示ガイドラインは、任意の仕組みであるがゆえに、期待される効果を発揮できない場合がある。ガイドラインという手法のあり方を検討し直すとともに、表示等に関するニーズが強いものについては積極的に法制度に基づく措置としていくべきである。

○ 具体的提言

以上を踏まえ、市場アクセスの一層の改善に向けて以下の措置を講ずることを求める。

(1) 「食品等の表示・規格制度の見直しについて（取りまとめ）」の内容を着実に実施するため、規格の見直しや制度の運用改善を図るとともに、制度的な見直しが必要なものについては、直ちに対応を図るべきである。

(2) 消費者等のニーズを踏まえ、有機野菜や水産物などの表示ガイドラインのあり方を見直し、必要に応じて法制度に基づく措置としていくべきである。

III-4．外国検査データの受け入れ等の促進

○ 提起された課題

輸入検査を行う際に外国検査機関のデータを受け入れて輸入検査手続を簡略化したり、外国における適合性評価結果を受け入れて国内の認証手続を大幅に省略すべきであるという要望は、全OTO案件の約1割強を占めている。傾向的には、外国検査データの受け入れから一歩進んで、適合性評価結果を受け入れ、さらに相互承認を推進すべきであるという要望のウェートが増してきている。

分野別にみると、ミネラルウォーター等の食料品、排気ガス基準等の自動車及び自動車部品、輸入住宅資材や壁紙等の建築資材、化粧品や医療用具等の薬事法関連品目、電気用品、給水栓等の水道用品などに関して、外国検査データの受け入れ等を要望する案件があった。

○ 講じられた措置の概要

外国検査データを最初から全く受け入れないという品目はほぼ見当たらなくなったといえる。さらに、国内規格・基準自体の国際整合化が進展し、外国検査データの受け入れや相互承認を促進する体制も整いつつある。なお、苦情等への対応ではなく、当推進会議による「建議」を踏まえ、平成10年4月、電気通信事業法及び電波法の改正により、電気通信端末機器及び無線設備について、相互承認協定締結の有無に係わらず、外国の適合性評価機関が行う認証及び試験等のデータの結果を受け入れる制度が創設された。これは、我が国における強制規格に係る基準認証制度としては、初めての制度である。

ただし、データの受け入れが可能であると指定された外国検査機関の数が少なかったり、英文証明書等の受け入れについては、省庁ごとに差がみられる。

また、我が国では原則として国や公益法人が検査・認証機関となっているものが多いが、諸外国では民間機関がその役割を担っている場合も多い。相互承認を推進するということは、これらも含め相手国の適合性評価手続によって与えられる保証を、これまで国内の検査・認証機関が行ってきた適合性評価手続によるものと同等のものとして認めるとともに、適合性評価の結果を受け入れるという意味合いを持つ。

○ 総点検作業における検討結果

(1) 外国検査データ及び適合性評価結果の受け入れの促進

外国の検査機関が作成したデータや外国政府等が発行した証明書等については、できる限り受け入れることを基本とし、受け入れない場合には合理的理由を示すべきである。同時に、受け入れ対象データ等の拡大に向けても積極的に取り組むべきである。その際、「相互主義」に則るということも一つの考え方ではあるが、市場アクセスの改善は我が国として主体的に取り組むべき課題であるということにかんがみると、我が国の方から率先して外国検査データ等を受け入れることにも努めるべきである。その際、データの信頼性等が問題にされることがあるが、試用期間を設けるなど、柔軟な対応を工夫すべきである。

また、検査データの受け入れに止まらず、外国の適合性評価結果を受け入れれば、国内の認証手続を大きく省略することができると期待される。「建議」においても主張したとおり、外国の適合性評価機関を積極的に活用し、その評価結果の受け入れを促進すべきである。

なお、相互承認については、通常、工業製品の適合性評価結果の受け入れに関する問題として議論されるが、経済のサービス化は大きく進展し、世界貿易に占めるサービス貿易の比重も増しており、ハードウェアに関する市場アクセスの改善のみならず、ソフト面、すなわちサービス貿易や対日投資に関する市場アクセスの改善も重要な課題である。

いずれにせよ、外国検査データ及び適合性評価結果の受け入れについては、我が国の市場をできる限り開放するという観点から柔軟に対応していく姿勢が重要である。

(2) 日・EU相互承認協力協定の早期締結

相互承認の推進に関し、95年5月より日・EU間で相互承認協力の枠組み設定を目的とした協議が開始され、共通の総則的規定の下、通信機器、電気用品、医薬品の製造管理・品質管理基準（GMP）及び化学品の優良試験所基準（GLP）を個別優先分野として取りまとめるべく現在交渉中であり、国内的には、協定関連法等の準備に向けて調整中ということである。

日・EU間で相互承認協力が推進されれば、広範な分野において市場アクセスの改善が加速されることを期待できる。

したがって、関連国内法改正案等の準備に向けて関係省庁がすみやかに必要な作業を行い、本協定の早期締結を図るべきである。

○ 具体的提言

以上を踏まえ、市場アクセスの一層の改善に向けて以下の措置を講ずることを求める。

(1) 関連国内法改正案等の準備に向けて関係省庁がすみやかに必要な作業を行い、日・EU相互承認協力協定の早期締結を図るべきである。

III-5．輸入手続のさらなる簡素化・迅速化

○ 提起された課題

輸入手続の簡素化・迅速化に関する苦情は、全OTO案件の3割以上を占め、案件数だけでみれば、OTO案件の一つの典型であるといえる。特に、昭和60～63年にかけては、受け付けた苦情の半分もしくはそれ以上が輸入手続の簡素化・迅速化に関するものであった。

これらの苦情を通じて、輸入貨物に関わる法令手続・機関の集約化、関係行政機関の執務時間の延長、各種証明書の簡略化及び事前手続等の導入などが求められてきた。

(1) 輸入貨物に関わる法令手続・機関の集約化

貨物を輸入しようとする者は、必要な事項を税関長に申告して輸入許可を受けなければならない。その際、貨物の種類に応じて、食品衛生法、植物防疫法または家畜伝染病予防法がそれぞれ規定する所要の届出・検査を経る必要がある。

このように貨物の輸入にあたっては関係法令の主務官庁（税関、検疫所、植物防疫所、動物検疫所）が多岐にわたり、それぞれの申請窓口も分散しているため、申請窓口の集約化や手続・機関の一元化が求められてきた。

(2) 関係行政機関の執務時間の延長

土・日及び夜間等通常の執務時間外における輸入手続に関し、申請があれば対応する税関の臨時開庁制度と同様の制度を、食品検査、動物検疫、植物防疫においても整備すべきであるという問題提起がなされた。また、税関の執務時間の延長や、臨時開庁制度における手数料の引き下げについても要望された。

(3) 各種証明書の簡略化

食品衛生法上必要な各種証明書に関し、同一の品目を継続的に輸入する場合等の提出義務の簡略化が求められた。また、食肉・ハム等の輸出国による衛生証明に関し、我が国では動物検疫と食品衛生のそれぞれの観点からの証明書が要請されるが、これが通関の遅れ等の原因となることがあるので、証明書を統一すべきであると問題提起された。

(4) 事前手続等の導入

輸入手続に係る所要時間を短縮するという観点から、輸入貨物の事前審査や関税等納付前の輸入許可制等の導入が求められた。

○ 講じられた措置等の概要

(1) 輸入貨物に関わる法令手続の集約化

輸入貨物に関わる法令手続は、それぞれの主務官庁により別個に電算処理化が進められ、昭和53年8月の税関手続を処理する通関情報処理システム(NACCS)をはじめとして、平成8年2月には厚生省の輸入食品監視支援システム(FAINS)、平成9年4月には農林水産省の動物検疫検査手続電算処理システム(ANIPAS)及び輸入植物検査手続電算処理システム(PQ‐NETWORK)が稼動を開始している。

輸入手続全体の簡素化・迅速化を図るため、NACCSと他の電算システムとの接続（インタフェース化）が推進され、平成9年2月には厚生省の電算システムと、平成9年4月には農林水産省の電算システムとの間でそれぞれ実現した。これにより、省庁間の手続を必要とする輸入申告のうち約9割が、NACCS端末を用いて処理することが可能となった。

また、平成11年度までを目途に、外為法に基づく輸出入許可及び承認の手続や主要港湾及び国際空港における出入港手続等のEDI化と、上記電算システムとの連携により、輸出入及び港湾諸手続のペーパーレス化及びワンストップサービス化を実現するため、関係省庁において作業が続けられている。

(2) 関係行政機関の執務時間の延長

平成7年以降、成田、名古屋、福岡等の主要空港において、検疫所、植物防疫所及び動物検疫所が執務時間の延長や定員増を行った。また、平成7年4月、税関においても、名古屋及び福岡空港において執務時間の延長を行った。なお、税関の臨時開庁承認手数料については、平成6年1月、1臨時開庁承認申請で扱い得る申告件数が拡大され、輸出入者のコストの実質的軽減が図られた。

(3) 各種証明書の簡略化

食品衛生法上必要な各種証明書は、同一の品目を継続的に輸入する場合等において、有効期限が延長された。

また、輸出国の衛生証明に関しては、厚生省と農林水産省の両省が要求するものが異なることがあることには現時点で変わりはないが、証明内容に関して輸出国と二国間協議が行われる際には、両省がそれぞれ要求すべき内容を満たすものとなるよう図られている。

(4) 事前手続等の導入

昭和63年4月、貨物が到着する前に輸入申告書等を税関に提出し、事前に税関の審査を受けることができる「予備審査制」が導入された。

平成元年4月には、担保の提供を条件に輸入時から3ヶ月以内に限り関税等の納期限の延長を認める「納期限延長制度」が導入された。

さらに、平成8年4月には、一定の航空貨物について、さらなる迅速通関の観点から「到着即時輸入許可制度」（貨物を保税地域へ搬入することなく貨物の到着と同時に輸入許可を行うことができる制度）が導入された。

○ 総点検作業における検討結果

(1) 輸入貨物の入港から申告までの所要時間の短縮

先般の「緊急経済対策」(平成10年11月16日)では「国際ハブ空港・ハブ港湾の整備」等により国際社会での都市間競争力を向上させることとされているが、このようなハードの整備も輸入手続といったソフトの質的向上を伴わなければ意味をなさない。また、輸入手続に必要な時間の短縮は、物流における「時間価値」、すなわち貨物の輸送から生み出される付加価値を高める効果を持つと考えられる。

OTO案件への対応も含め、これまで取られてきた輸入手続に係る簡素化・迅速化策により、例えば、海上貨物の入港から輸入許可までの手続に必要な時間は、平成3年調査の168.2時間から、平成10年調査では86.7時間まで短縮した。しかしながら、平成3年時の米国における所要時間54.5時間を依然としてはるかに上回っており、さらに短縮の余地がある。

所要時間の内訳をみると、申告から許可までの通関手続部分は他の先進国と比較しても遜色がないということであり、輸入手続全体の所要時間短縮のためには、入港から申告までの所要時間の短縮に重点を置く必要がある。

入港から申告までに長時間を要した理由としては、手続期間内における休・祝日の存在が上位に挙げられている。このうち入港から保税地域への搬入に関しては、関係省庁等間の連携を強化し、主要港について休日等も含めた安定的な搬入の確保等に向け、関係者の取組みを促すべきである。

保税地域への搬入から申告までの間については、休日要因の他、関税等の納税申告のための確認作業等に時間が必要であるとの指摘もあった。また、貨物引取の迅速化という通関業者間の競争上の理由から、貨物引取と引き換えに輸入業者が支払うべき関税・消費税の立替払いを、通関業者が自ら行うこともあるということである。

いずれにせよ、納税申告等のために貨物が滞留し、輸入手続全体の所要時間短縮が妨げられている可能性があるのであれば、米国における通関手続を参考に貨物の引取手続と納税手続を分離した形態の制度を導入することの可否について今後検討していく必要がある。

(2) 輸入手続システムのさらなる効率化

輸入手続に係る様々な法令手続の電算システム化及びそのインタフェース化が進展し、輸入手続の簡素化・迅速化に貢献している。さらに、平成11年度に導入が予定されている次期海上システムにおいては、入港、貨物の積卸しから国内引取までのシステムを構築し、税関の輸入手続及び入出港手続のペーパーレス化及びワンストップサービス化の実現を目指すこととなっている。

これらの取組みは評価できるが、今後輸入手続のさらなる簡素化・迅速化を図るためには、インタフェース化を一歩進めて、将来的には、通関その他の法令手続を処理するシステムについて、入力データの共通化・簡素化等の連携を図るとともに、申請者にとって、輸入手続全体を統一的に処理することを可能とするため、システムの充実を目指すべきである。

○ 具体的提言

以上を踏まえ、市場アクセスの一層の改善に向けて以下の措置を講ずることを求める。

(1) 休日等における港湾業務の国際水準の稼働の実現に向け、関係者に一層の取組みを促すこと等により、入港から申告までの所要時間を最大限短縮すべきである。また、欧米における通関手続も参考にしつつ、適正な通関を確保し、物流の効率化に資する制度の導入も検討すべきである。

(2) 輸出入及び港湾関係手続の簡素化・迅速化を一層推進する観点から、ペーパーレス化及びワンストップサービス化の実現に向けて引き続き努力するとともに、将来的に申請者にとって、輸入手続全体を統一的に処理することを可能とするシステムへの改良等についても検討すべきである。

III-6．いわゆる民民規制への積極的取り組み

○ 提起された課題

民民規制には様々な捉え方がある。例えば、経済審議会民民規制（業界団体の役割）ワーキンググループ報告書（平成10年4月7日）は、民民規制を「国の法令に基づく規制以外の、業界団体等による、あるいは民間事業者間における事業活動に対する規制であって、直接国民生活に、あるいは事業活動に与える影響を通じて間接的に国民生活に影響し、不利益を与えるもの」と定義している。しかしながら、「国の法令に基づく規制以外の規制」とはいっても、公的規制や行政指導等を通じて公的部門が大きく関与している場合がある。

OTOにおける民民規制関連案件は、公益法人等の民間団体が行っている規格策定や適合性評価業務から生じた問題のように、公的部門が関与しているケースが中心であった。また、食品日付表示に関連した商慣行も問題提起された。なお、当推進会議は、建議（平成9年6月18日）においても、民民規制の見直しと解消に向けて取るべき対応について意見を述べたところである。

(1) 公益法人等の民間団体の規格・基準や適合性評価業務

案件数でみると、認可法人、公益法人、任意団体といった民間団体の規格・基準や適合性評価業務に対し、国際規格への整合化あるいは外国規格に合格した製品の受け入れが求められる案件が多い。また、民間団体の業務と、政府による規制等との関係が必ずしも明確ではなく、民間団体の自主規格があたかも強制規格かのごとく受け取られるという誤解を招くなど、市場への参入障壁となっているという案件が少なからずみられた。団体別にみると、(社)日本水道協会関連の案件が10件以上と最も多く、黄銅（真鍮）製給水栓の使用許可や給水器具等の水道用品の型式認証の国際整合化等が求められた。

(2) 食品日付表示に関連した商慣行の問題（表参照:PDFファイル）

我が国の消費者の鮮度指向を背景に、小売業者や卸売業者が、製造年月日をベースに不当に短い販売期限や納入期限を設定しているため、輸送や通関に日数を要する外国製品は、国産品に比べて不利な競争条件におかれており、不当に短い販売期限や納入期限の設定等を改善することが必要であるとの問題提起がなされた。

○ 講じられた措置の概要

(1) 公益法人等の民間団体の規格・基準や適合性評価業務

多くの団体で、規格・基準の国際整合化や外国検査データの受け入れ、政府の関与についての誤解の解消等への取り組みがみられる。しかし、申請がない限り対応できないという申請主義からデータ受入可能となった試験検査機関が著しく少ないままのケースもみられる。

また、(社)日本水道協会については、平成9年3月、型式承認制度自体が廃止された。また、水道法関係の政省令の制定により、従来水道事業者ごとに運用が異なっていた制度が、給水装置の構造・材質基準に係る要件を国が明確化することによって全国統一的に運用できる制度とされるとともに、製造業者等による自己認証を基本とし、第三者による認証を義務付けない制度とされた。

(2) 食品日付表示に関連した商慣行の問題（p.54参照）

平成6年12月、厚生省は厚生省令等について、農林水産省はJAS規格、品質表示基準について、製造年月日等を期限表示に切り替える旨の改正を行った。しかしながら、本案件をOTOへ提起した在日米国商工会議所からは、返品等、流通分野における商慣行の問題は未だに解決されていない旨の指摘があった。

○ 総点検作業における検討結果

(1) 民民規制の実態と弊害についての調査・検討及びその広報の必要性

民民規制は複雑な態様で存在する。また、公的部門が何らかの形で大きく関与し「民民規制」と呼ぶには必ずしもふさわしくないといえるようなものまで含まれていると考えられる。したがって、政府が民民規制に対してとるべき対応もケースバイケースとならざるをえないと考えられるので、民民規制の具体的な実態と弊害につき、様々な角度からさらに調査・検討を深めていく必要がある。特に、規格・基準の設定や適合性評価業務を行う民間団体については、公正取引委員会が平成10年7月に「公益法人等の自主基準・認証に関する実態調査報告書」を公表したが、これらの団体の活動が市場アクセスの妨げとならないよう、運営のあり方等の実態を把握しておく必要があると考えられる。

また、民民規制に対する有効な対応の前提として、政府による規制の緩和が進展しても、民民規制が存続すれば豊かな国民生活の実現が阻害される恐れがあるという認識を広く一般化しておく必要があると考えられるので、映像等の媒体を活用し、民民規制の実態と弊害に関する調査・検討結果をわかりやすく広報する必要がある。

(2) 公正取引委員会による積極的取り組み

公正取引委員会は従来から民民規制に対し積極的に取り組んでいるとのことであるが、民民規制については、独占禁止法の適用による対処が重要な役割を果たすと考えるので、独占禁止法違反行為に対する同法に基づく厳正な対処、実態の調査と競争制限的民間慣行の是正及びその背後に競争制限的行政指導が存在する場合の関係省庁との所要の調整に積極的に対応することが望まれる。

公正取引委員会の取り組みを支えるためには、独占禁止法違反が疑われるような民民規制の具体的事例があれば公正取引委員会へ積極的に報告するという国民意識を高揚させていくことも重要である。公正取引委員会においても、国民からの積極的な報告を促す工夫が必要である。

(3) 政府全体の取り組みのあり方

関係行政機関は、民民規制の背後に競争制限的な行政指導がある場合、それを早急に見直すとともに、行政として何ら関与していない場合には、誤解を解くためにも、関与していない旨を改めて周知し、責任の所在を明確化すべきである。民民規制の存在によるものと思われる具体的損失への対処を政府に対して求めたくとも、公的部門の関与が大きい場合に関与しているとみられる規制当局に対し直接苦情を申し立てるのを避けたりすると、相談すべき窓口が政府内でうまくみつからず泣き寝入りとなってしまうという問題が考えられる。また、これまでみたとおり、民民規制という概念そのものが曖昧であるため、省庁間や担当者によってその解釈が異なり、省庁間で対応ぶりが異なるというおそれもなくはない。したがって、民民規制に関し、関係省庁間の連絡調整を行う仕組みを確立し、一見窓口が不明確な相談事案の受け皿を確保することも一案である。OTOとしても、苦情として申し立てられた場合には、申立者の立場に立って、既存のノウハウを活かしつつ、できる限りの対応を行うべきである。

○ 具体的提言

以上を踏まえ、市場アクセスの一層の改善に向けて以下の措置を講ずることを求める。

(1) 民民規制の具体的実態と弊害について様々な角度から調査するとともに、様々な媒体を活用し、その結果をわかりやすく広報すべきである。

(2) 公正取引委員会においては、民民規制についての民間からの報告を促進する措置を講ずるべきである。

(3) 民民規制についてOTOに対し苦情として申し立てられた場合には、できる限りの対応を行うべきである。また、必要に応じて、民民規制に関し、関係省庁間の連絡調整を行う仕組みの検討を行うべきである。

III-7．その他の検討結果等

(1) OTOに関する広報の強化

○ 総点検作業における検討結果

当推進会議第5回報告書の「総括的所見」でも指摘したとおり、制度上は改善措置がとられても、その的確なPRが足りず、外国人事業者等がその事実を認識していなければ、実質的に改善が行われなかったことと同様である。

例えば、上陸審査基準に関し、在留資格である「企業内転勤」に係る最長滞在期間(5年)の制限が本年1月に廃止されたばかりであるにもかかわらず、本年10月になっても、「在留期間を延長すべき」との苦情が申し立てられた（OTO584）。このような場合、苦情申立者の認識不足にも問題があるが、PR強化の必要性を示すものである。因みに、OTOによる個別の苦情の処理分類としては、誤解の解消が最も大きなウェートを占めている。

さらに、潜在的な苦情を発掘し、市場アクセスの改善に役立てるという観点からも、OTOの活動についてのわかりやすい広報をより一層積極的に行うべきである。

○ 具体的提言

以上を踏まえ、市場アクセスのさらに一層の改善に向けて、以下の措置を講ずることを求めたい。

1) 改善措置がとられた際には、その内容について積極的かつわかりやすい広報に努めるべきである。
2) OTOの活動についてのわかりやすい広報をより一層積極的に行うべきである。

(2) その他

以下の案件については、総点検作業を踏まえ、必要に応じて苦情処理部会において審議するなど、所管省庁における処理状況を見守っていくこととする。

(1) OTO566「自動二輪車に関する規制緩和」

(2) OTO569「けん引免許に係る規制緩和」

(3) OTO575「ISO規格海上コンテナ輸送用トレーラーが通行できる道路の延長」

(4) OTO578「化粧品のラベル表示方式の変更」

(5) OTO584「上陸審査基準の見直し」

IV．むすび

以上に指摘した共通課題や具体的提言に基づいて、政府が市場アクセスの改善に一層努力することを期待したい。今回の報告書に盛り込んだ具体的提言に対する政府の対応については、当推進会議として、その実施状況及び結果を適宜フォローアップし、必要に応じてさらなる検討を加えていくこととする。

他国にはみられない、内外の事業者からの苦情に基づき市場アクセスの改善を図るというOTOの手法は、これまで多くの具体的成果を挙げてきており、規制緩和を通じた経済構造改革にも一定の貢献を果たしてきた。苦情や我々の意見に対する関係省庁の対応も、当推進会議の設立当初と比較すると、近年、前向きになってきたことは評価される。

しかしながら、毎年、政府へ提出される内外からの市場アクセス改善要望は絶えることがない。開かれた経済社会システムを創造し、内外の企業による多様な競争を通じた我が国経済の効率化・活性化を図るためにも、政府は、今後とも、一つ一つの具体的な苦情を貴重な問題提起として積極的に位置付け、それに真摯に対応することが必要である。加えて、繰り返し問題が提起される規制については、個々の事案に対処するのみならず、規制そのものを抜本的に見直すという取り組みが必要である。

我々としても、内外から寄せられた要望に基づき、基準・認証制度等に関する問題の所在を明確化し、必要な対応を意見として表明するという活動とともに、必要に応じ、提起される問題点の多い特定の課題を取り上げて集中的に審議し、市場アクセスの改善に資する具体的提言をとりまとめていく活動も重視していきたい。

市場開放問題苦情処理推進会議総点検報告書(平成10年12月7日))

OTO

関連

市場開放問題苦情処理対策本部決定の検証結果
市場開放問題苦情処理推進会議総点検報告書(平成10年12月7日)

Ｉ．はじめに

II．総括的所見

1．今回の総点検作業に重点的に検討した具体的分野

(1) 繰り返し類似の苦情や問題が提起されている法律等

(2) 一体として処理すべき案件

(3) 現時点においても依然として苦情等として処理が行われている案件

(4) 民民規制への取り組みの重要性

(5) 「建議」(平成9年6月)のフォローアップ

(6) その他

2．政府としての適切な対応を求める共通課題

(1) 規格・基準の国際整合化作業へ対応できる人材の育成

(2) 国際的な動向に処する主体的な対応方針の決定

(3) 対外的アカウンタビリティーの向上

(4) 規格・基準の法制化と規制のネガティブリスト化への努力

(5) 積極的な改善措置と新規格・基準への機動的な対応

(6) 国民経済全体を向上させるという観点の導入

(7) 市場アクセス改善の評価手法の検討

注：OTO事務局による過去のOTO案件の処理状況に係る調査の概要

III．意見－政府に求められる措置－

III-1．薬事法における規制緩和

III-2．物流・道路交通関連分野における規制緩和

(1) 背高コンテナ等

(2) トレーラーハウス、キャンピングカー

(3) 自動二輪車

III-3．食品等の表示・規格制度（JAS制度）の見直し

III-4．外国検査データの受け入れ等の促進

III-5．輸入手続のさらなる簡素化・迅速化

III-6．いわゆる民民規制への積極的取り組み

III-7．その他の検討結果等

(1) OTOに関する広報の強化

(2) その他

IV．むすび

Ｖ．参考資料

市場開放問題苦情処理推進会議総点検報告書(平成10年12月7日))

OTO

関連

市場開放問題苦情処理対策本部決定の検証結果市場開放問題苦情処理推進会議総点検報告書(平成10年12月7日)

Ｉ．はじめに

II．総括的所見

1．今回の総点検作業に重点的に検討した具体的分野

(1) 繰り返し類似の苦情や問題が提起されている法律等

(2) 一体として処理すべき案件

(3) 現時点においても依然として苦情等として処理が行われている案件

(4) 民民規制への取り組みの重要性

(5) 「建議」(平成9年6月)のフォローアップ

(6) その他

2．政府としての適切な対応を求める共通課題

(1) 規格・基準の国際整合化作業へ対応できる人材の育成

(2) 国際的な動向に処する主体的な対応方針の決定

(3) 対外的アカウンタビリティーの向上

(4) 規格・基準の法制化と規制のネガティブリスト化への努力

(5) 積極的な改善措置と新規格・基準への機動的な対応

(6) 国民経済全体を向上させるという観点の導入

(7) 市場アクセス改善の評価手法の検討

注：OTO事務局による過去のOTO案件の処理状況に係る調査の概要

III．意見 － 政府に求められる措置 －

III-1．薬事法における規制緩和

III-2．物流・道路交通関連分野における規制緩和

(1) 背高コンテナ等

(2) トレーラーハウス、キャンピングカー

(3) 自動二輪車

III-3．食品等の表示・規格制度（JAS制度）の見直し

III-4．外国検査データの受け入れ等の促進

III-5．輸入手続のさらなる簡素化・迅速化

III-6．いわゆる民民規制への積極的取り組み

III-7．その他の検討結果等

(1) OTOに関する広報の強化

(2) その他

IV．むすび

Ｖ．参考資料

市場開放問題苦情処理対策本部決定の検証結果
市場開放問題苦情処理推進会議総点検報告書(平成10年12月7日)

III．意見－政府に求められる措置－