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基準・認証制度等に係る市場開放問題についての意見
市場開放問題苦情処理推進会議総点検報告書(平成15年3月13日)

平成15年3月13日
市場開放問題苦情処理推進会議

本報告書は、過去に市場開放問題苦情処理体制(OTO)で扱った案件の現状について総点検し、市場アクセスの一層の改善を促進 する観点から、追加的に講じるべき措置について具体的提言を意見として取りまとめたものである。

市場開放問題苦情処理対策本部におかれては、速やかに本報告書を最大限尊重した対応を決定し、それに基づく措置をとられたい。

1 「OTO案件の総点検」に見られる傾向

世界経済の一体化が進む中で、市場アクセスを改善し、我が国市場を国際的に開かれたものにするため、OTOは、過去20年にわたって、個別苦情、問題提起プロセスあわせて1,000件以上の案件を処理してきた。OTOは、これらの案件を1件1件個別具体的に検討し、その検討結果として所管省庁が行うべき対応を提言してきた。多くの案件については、その提言に沿った対応が行われてきた。しかし、案件の中には、必ずしも速やかにかつ着実な対応が行われていないものがあり、それらの案件を放置しておくのではなく、速やかにかつ 着実な対応を求めていくことが重要である。昨年度の平成13年度問題提起プロセスにおいても、行うべき対応が速やかにかつ着実に実施されているか検証し、その状況如何によっては更なる対応を求めていくことが重要であるとの指摘を行った。

本年度のOTOプロセスにおいては、このような状況を踏まえ、OTO案件の総点検(フォローアップ)を行うこととした。フォローアップの範囲としては、「OTO案件の総点検」(平成10年12月取りまとめ)以降の、本格的にフォローアップが行われていない231件を対象としている。この231件においては、個別苦情処理案件が88件であり、問題提起プロセスで提起された案件が143件である。(なお、フォローアップの対象期間は平成9年11月〜平成14年8月である。)

今回の案件を分野別に見ると、動植物・食品関係は52件、医薬品・医療用具・化粧品関係は19件、工業関係等は32件、運輸・通信関係は26件、建設関係は16件、輸入手続関係は64件、その他は22件である。所管省庁別では、厚生労働省は66件、財務省は58件、経 済産業省は36件、国土交通省は32件、農林水産省は26件、総務省は15件、警察庁は11件、法務省は3件、文部科学省は3件、その他5省庁で6件である。

苦情申立者別では、国内からの経済団体、個別業者からの苦情が全体の68%である。海外からの大使館、経済団体からの苦情は32%であり、このうち、アメリカ・カナダ地域からは13.2%、アジア地域からは9.5%、EUからは5.3%である。
(「OTO案件の総点検」措置状況)

次に「OTO案件の総点検」の措置状況の検証結果は次の通りになった。(なお、苦情の案件は231件であるが、項目(苦情の中身)的には複数にわたるものがあるため、280項目になる。)

280項目のうち、「輸入促進的な措置を行う」となった項目数は158である。このうち、1)「措置が全て施行済みである」項目数は107項目、2)「一部施行されている」項目数は46項目、3)「措置の施行が遅れている」項目数は5項目である。「輸入促進的な措置を行う」以外の項目数は122である。このうち、当初の対処方針にない新たな改善措置が講じられた項目数は11である。

「輸入促進的な措置を行う」となった項目のうち、1)「措置が全て施行済みである」については一応の解決を見たと考えることができる項目である。「輸入促進的な措置を行う」となった項目の中で、67.7%になる。

一方、「輸入促進的な措置を行う」158項目の中で、2)と3)の項目については、未だ措置が全て施行済みになっていない項目であり、これらの項目と「輸入促進的な措置を行う」以外の122項目、あわせて173項目ついては、OTOとしては引き続き苦情の解決に向けて努力していくべきものである。

231件:項目数280の苦情の中で、
(1)所管省庁によって「輸入促進的な措置を行う」となった項目数は158である。
  1) 措置が全て施行済みである項目数は107
  2) 一部施行されている項目数は46
  3) 措置の施行が遅れている項目数は5
(2)(1)以外の項目数は122である。
  所管省庁によって当初の対処方針にない新たな改善措置が講じられた項目数は11

(OTO案件の総点検における検討項目)
「OTO案件の総点検」においては、上記に掲げた、OTOとしては引き続き苦情の解決に向けて努力していくべき173項目の中で、

1) 同趣旨の苦情が現在まで繰り返し寄せられているなど、苦情解決の要望が大きいもの
2) 措置が行われているものの有効に機能していない恐れのあるもの
3) 市場アクセスの改善ばかりでなく、高コスト構造の是正や経済の効率化の促進等、経済活性化の効果が期待できるもの、IT化、電子化(電子政府への対応)に資するもの

の観点から、更なる検討が必要な9テーマ(18項目・16案件)に絞り、OTO専門家会議で検討を進め、具体的な提言を行った。

具体的な提言を行った9テーマ

「基準・認証制度に係る課題」
―規格・基準の策定に係る課題―
 ○外国で流通する食品添加物の開放
 ○食薬区分の見直し
―規格・基準への適合性評価に係る課題―
 ○輸入建材等の検査での海外検査データの活用
 ○ JAS制度の見直し
「24時間、365日世界に開かれた日本の実現」
 ○通関・検疫業務の24時間、365日営業の実現
 ○港湾業務への市場原理の導入
「輸入手続の簡素化・迅速化等」
 ○輸入手続の簡素化・迅速化
  ・簡易申告制度の改善
  ・ワンストップサービス(シングルウィンドウ化)の推進
 ○NACCSの利用料金の低廉化

「その他」
 ○けん引自動車及び被けん引自動車に係る車検制度の改正等

2 「OTO案件の総点検」における重要課題

「OTO案件の総点検」における具体的な提言を取りまとめるにあたって、今後OTO案件の処理を進める際に考慮すべき重要課題とし て、以下のような指摘を行った。

(1)基準・認証制度に係る課題

市場アクセスを改善するためには、依然、基準・認証制度に係る課題は重要である。しかし、政府における規制緩和の推進、規格・基準の国際的整合化の努力にもかかわらず、内外の事業者等からは我が国の市場アクセスが実際にはそれほど改善していないのではないかとの不満は多い。また、このような改善の遅れが、国際的には様々な摩擦の原因にもなっている。今回の「OTO案件の総点検」の案件の中でも、基準・認証制度に係る案件は多く、OTO専門家会議で検討を行い、具体的な提言を行った9テーマのうち、4テーマは基準・認証制度関連である。

また、基準・認証制度も、社会・経済を巡る環境に応じて柔軟に対応していくことが重要である。現在のように社会的な閉塞感が高まり、社会の成熟化・少子高齢化が進展している中では、基準・認証制度の在り方についても、従来とは大きく変革せざるを得ない。社会全体としては、人的・経済的な資源について、従来以上に経済の活力を生み出す分野に重点的に配分することが求められる。それに伴 い、基準・認証制度の在り方についても、海外等の経験を積極的に受け入ることによって、従来は、基準・認証制度に費やされていた資源を直接経済の活力を生み出す分野にまわすことが重要になってくると考えられる。

(規格・基準の策定に係る課題)
規格・基準の見直し、あるいは新たな規格・基準を策定する上では、国際機構等によって国際的に評価が定まっているものに対して国内基準の適合化を図ることが重要である。今回具体的な提言を行った「外国で流通する食品添加物の開放」、「食薬区分の見直し」は、このような性格のテーマであり、広く海外で流通し、安全性が確認されているにもかかわらず、国内の規格・基準が国際規格に整合化していないために、日本では流通できなくなっていることが問題の所在であった。

―行政主導による見直し―

国際規格への整合化が進まなかった背景としては、個別事業者からの具体的要請を待って承認をする要請主義を採用していることにある。実際、事業者等にとって、承認を受けるための個別申請を行うことは、多くの資金や時間を要するなど負担が重く、そのため、結果として申請を先送りするという状況を生み出すことになっているからである。事業者等からの具体的な申請を待つまでもなく、行政主導で積極的に見直しを行うことが必要である。

―国際的な規格・基準策定への積極的対応―

国際的な規格・基準が存在しない分野においても、国際規格が策定されるのを待って整合化を進めるのではなく、国際規格策定に向けて、各国に対する働きかけを行い、イニシアティブを発揮していく等、積極的な対応を行うべきである。

規格・基準への適合性評価に係る課題)

規格・基準への適合性を評価する上で、海外の評価機関をいかに活用していくかの視点は重要である。これは、前にも述べたように最適な資源配分の実現という観点からも重要である。具体的提言を行った「輸入建材等の検査での海外検査データの活用」「JAS制度の見直し」はこのような性格のテーマである。海外の優秀な評価機関を積極的に活用して、再検査等のコスト(国際的には二重コストになる)をいかに削減していくか、日本の制度が実際の運用も含めていかに海外の評価機関の活用を阻害しているかが問題の所在であった。

―英語による申請―

海外の評価機関を活用するためには、海外の評価機関が日本の制度上の評価機関として承認を受けることが必要になる。その際、大きな障壁としては、日本語での申請が求められることである。日本語での申請は、海外の機関にとって、多くの資金や時間を要するものである。申請書類・添付書類に関して、すべてを日本語での提出を求めるのは、申請者にとってあまりに負担が大きい。承認申請の内容等に応じ、英語による申請を積極的に認めることが重要である。

―標準処理期間の設定―

承認に要する時間が長いことも評価機関として承認を受けるための障壁となっている。申請者の利便性の観点からは、少なくとも、評価機関の承認をうけるために、承認申請に必要な標準処理期間の設定を設けることが必要である。

―相互承認の仕組みの推進―

他国で行われた適合性評価を積極的に活用するためには、相互承認の実現が必要であり、これは、利用者の負担を軽減し、利便性を向上させるものである。我が国においても主要国との間の相互承認の推進について包括的な枠組みの整備も含め、積極的な対応が重要である。

(2)「24時間、365日世界に対して開かれた日本」の実現

世界経済のグローバル化が進展し、経済活動が国境を越えて広く展開している中、先進的な国際港湾等を有する近隣諸国において主要な物流拠点の整備が進んでいる。一方、我が国は物流拠点としての地位を低下させている。

そのような状況の中で、通関・検疫、港湾荷役作業、港湾ゲート等、海外と直接アクセスのある業務について、関税の徴収、社会悪物品等の取り締まり等、従来業務の視点に固執するばかりでは不十分である。これら海外と直接アクセスのある業務を我が国物流の重要な要素として新たにとらえ直し、24時間、365日体制を整備することで、「24時間、365日世界に対して開かれた日本」の実現を図ることは、市場アクセスの改善ばかりでなく、物流面における効率化を促し、物流拠点としての再活性化をもたらすものである。また、「24時間、365日世界に対して開かれた日本」が実現することで、今度は、その状況を所与の経済環境とした新たな物流システムが構築される。そのような新たな物流システムは、日本の物流の一層の効率化を促進させるものである。

加えて、その効果を十分に発揮するためには、税関、検疫所、植物防疫所、港湾管理者、民間業者等、官民の関係者が今まで以上に密接な連携を図っていくことが重要である。

(3) 輸入手続の簡素化、迅速化等

(利用者の視点からの不断の見直し)

我が国における物流面の効率化を促し、時間的、経済的コストを削減するためには、輸入手続の簡素化・迅速化を図ることが重要である。しかしながら、輸入手続の諸段階において、手続の簡素化・迅速化を求める苦情は依然多い。例えば、具体的な提言を行った「簡易申告制度の改善」については、利用価値が大きい制度である割には十分に活用されていないとの苦情が出されている。輸入関連手続 の簡素化、迅速化に係る苦情は、多種多様なものであるが、1件1件、利用者の要望に耳を傾け、利用者の視点からの不断の見直しを行うことが重要である。

(IT化、電子化の推進)

輸入手続の簡素化・迅速化を促す観点から、輸入の諸手続に関するIT化、電子化の推進は、利用者の利便性を向上させるばかりでなく、輸入関連手続のコストを直接削減させるための重要な要素である。過去のOTO案件においても、「インターネットを活用したNACCS等通関手続の改善」等、輸入手続の電子化に関連した苦情が多く提起されている。

特に、今般、政府において、輸出入・港湾関連手続のワンストップサービス(シングルウィンドウ化)の運用開始に向けた準備を進めてい るが、ワンストップサービスに関してできる限り早期の運用を図るともに、利用者の利便性の観点から、既存システムの相互接続にとどまらず、重複業務の見直し、手続の簡素化等全ての手続を徹底的に見直すことが重要である。<

利便性が向上しても、その利用コストが高ければ意味がない。NACCS(通関情報処理システム)の利用料金については、時々の経済事情、財務事情に応じて柔軟に料金の見直しを行うべきであり、その際、剰余金・引当金を利用者に還元するためのルールを明確にするとともに、NACCSの利用料金に係る諸経費削減の成果を速やかに利用料金に反映させ、利用料金の一層の低廉化を実現することが重要である。同時に、利用料金が適正なものかどうかを検証するために、情報公開を一層進め、利用料金の透明性を高めることが重要である。

また、多角的な視点から中立的な立場で利用料金の在り方について検討するため、有識者及び利用者による第三者機関をできる限り早期に設置することが必要である。

(4) 結び―繰り返し検証を行うことの重要性

WTOの交渉が非常に重要な段階を迎え、さらにFTA(自由貿易協定)の動きが盛んになっている等、現在、世界貿易を取り巻く状況が大きく変化する中で、透明性のある自由貿易を実現し、ひいては我が国の国際的な競争力を強化する観点からも、国内の構造改革をこれらの動きにいかに連動せしめていくかが問われている。OTOの活動も個別具体的な苦情の処理を通じてこのような構造改革の実現に取り組むものである。

今回の「OTO案件の総点検」の作業を通じて改めて指摘されるべきことは、類似した案件が繰返し苦情として申立てられているということである。もちろん、対応が不可能な苦情もあろうが、多くの場合、その背景には、行うべき対応を怠り、とりあえず問題を先送りにしているのではないかということがある。このような、先送りによる経済全般への影響に対する認識や危機感の欠如に起因しているものであり、さらには、構造改革の進展を阻害し、ひいては、日本全体の競争力の低下を生み出している要因にもなっている。

冒頭でも述べたように、所管省庁が行うべき対応が着実に実施されているかを検証するために、「OTO案件の総点検」としてフォローアップを行ってきた。しかし、ここで終わりにしてはその効果は限定的である。重要なのは、所期の成果が着実に上がり、苦情そのものが 解決に至ったかどうか、最終段階までフォローしていくことにある。このため、OTO推進会議としては、「行うべき対応が行われているか」「その対応が施策の実施段階まで至ったのか」「実施された施策は成果を挙げているのか」を繰り返し検証するとともに、対応があまりに遅いため、あるいは内容が不十分であるため、所期の成果が十分上がっていない場合には、その成果が一刻も早く実現できるよう、 積極的に働きかけていくこととする。

具体的な提言を行った9テーマ

1 外国で流通する食品添加物の開放

○ 提起された課題

外国から食品を輸入する場合、その成分に厚生労働大臣が指定した以外の食品添加物が入っていると輸入が認められない。
外国で安全が確認された食品添加物の入っている食品については、輸入を認めるべきである。(外国で認められている食品添加物の使用[平成11年度問題提起プロセス])

○ 所管省庁(厚生労働省)による措置の概要(案件を巡る背景)

(所管省からの回答)

新規食品添加物の指定は、食品添加物の指定及び使用基準改正に関する指針(平成8年3月衛化第29号生活衛生局長通知)に基づくこととされている。本指針に従い、安全性等の資料を添えて、具体的に指定について要請されることが必要である。

食品添加物の指定については、欧米諸国においても我が国と同様、科学的評価を経て実施されるものである。海外で安全性が確認さ れているということは、その安全性評価を行う上で、参考となる科学的データがあることを意味していると認識しており、上記指針に基づき必要な資料を添えて要請がなされたものについては、薬事・食品衛生審議会での審議を経て適切に対処しているところである。

○ 総点検作業における検討結果

(1) 所管省による新たな対応

ア従来、上記2の所管省からの回答にあるような要請主義が採用されていたが、その後、所管省は、食のグローバル化を踏まえ、食品添加物の規制に関し、国際的に科学的な評価が確立しているものについては国際的な整合性をとる方向で、食品添加物の指定の考え方について、必要な見直しの検討を行っている。

(ア)すなわち、
1) JECFA(FAO/WHO合同食品添加物専門家会議)で国際的に安全性評価が終了し、一定の範囲で安全性が確認されているものであり、かつ、
2) 米国及びEU諸国等で使用が広く認められており、国際的に必要性が高いことが予想されるもの
については、指定の方向で、個別品目毎に安全性及び必要性を検討するという方針決定を行い、平成14年7月、薬事・食品衛生審議会においても了承を得ている。

(イ)なお、香料に関しては、JECFAで用いられている安全性評価方法が他の添加物と大きく異なっており、まず、その方法論の是非について確認する必要があることとされている。
イまた、平成14年12月19日に開催された薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会毒性・添加物合同部会において、所管省より「国際的に安全性が確認され、かつ汎用されている添加物の取扱いについて(中間報告)」が示されている。この中で、在京大使館及び食品関係団体への照会の結果、上記ア(ア)1)及び2)の基準を満たすため検討の対象となるもの38品目、及び先に所管省により公表された「暫定的調査により想定される添加物候補」のうち情報提供がなかった8品目の合計46品目を対象にして、平成15年4月を目途に指定に向けた具体的な審議・検討を開始することとされている。

(2) 総点検作業における検討結果

ア食品添加物承認における要請主義の問題点(国際的整合性)

広く海外で流通し、安全性が確認されている食品添加物が日本では制度上流通できないことは大きな輸入障壁であり、国際的整合性に欠けているといえる。

これまでの制度では、たとえ国際的に安全が確認されている食品添加物であっても、個別事業者からの具体的要請を待って承認をするという要請主義を採用していた。このような制度的枠組みのもとでは、輸入を必要としている中小企業にとって、多くの時間とコストがかかり、要請をすることが困難な状況となっていた。このため、個別申請の先送りという状況を生み、昨今、食品や添加物中に指定外添加 物を使用したさまざまな食品衛生法違反事例が発生してきたことにも関連していると思われる。

イ要請主義から行政主導による積極的指定への転換

上記アで述べたような状況に鑑み、広く海外で流通し、安全が確認されている食品添加物については、事業者等からの具体的申請を待つことなく、行政主導で積極的に指定していくべきである。また、指定の際には、申請に係る手続きの省力化及び費用の低廉化の観点から、海外における安全性に関する調査・研究資料などを積極的に活用すべきである。さらに、審議・検討にあたっては、その内容について一層の情報開示を図るべきである。

このことについて、今般、食のグローバル化に伴い、また、指定外添加物の問題を受け、ようやくではあるが、所管省が、行政主導で指定を行う方向で検討を開始したことは、一定の評価に値するものである。また、平成14年12月、上記(1)ア(ア)1)及び2)の基準に則り、当面46品目を対象とし、平成15年4月を目途に審議・検討を開始することとした等、その後の進展がみられる。

しかし、今回の総点検作業においては、所管省により具体的に審議・検討が予定されている46品目の未指定添加物以外にも、広く海外で流通し、安全性が確認されている食品添加物の存在について指摘がなされている。

所管省は、具体的に審議・検討が予定されている46品目の未指定添加物については、行政主導で速やかに審議・検討を行い、その結果に基づき指定を行うべきである。

また、46品目以外の未指定添加物についても、一定の条件にあった要望の多いものについては、行政主導で引き続き審議・検討を行い、その結果に基づき積極的に追加指定を行っていくべきである。この追加指定に際しては、具体的な対象品目、指定基準、スケジュール等について事前周知すべきである。

○ 具体的提言

以上を踏まえ、所管省においては、市場アクセスの一層の改善に向けて以下の措置を講ずるべきである。

(1)広く海外で流通し、安全が確認されているような一定の条件にあった食品添加物については、事業者等からの具体的申請を待つことなく、行政主導で、海外の安全データなどを参考に内部調査等必要な審議・検討を行い、日本で流通できない明確な理由がないものについては積極的に指定していくべきである。また、審議・検討にあたっては、その内容について一層の情報開示を図るべきである。
(2)具体的に審議・検討が予定されている46品目の未指定添加物については、行政主導で速やかに審議・検討を行い、その結果に基づき指定を行うべきである。また、46品目以外の未指定添加物についても、一定の条件にあった要望の多いものについては、行政主導で引き続き審議・検討を行い、その結果に基づき積極的に追加指定を行っていくべきである。この追加指定に際しては、具体的な対象品目、指定基 準、スケジュール等について事前周知すべきである。

2 食薬区分の見直し

○ 提起された課題

L−カルニチンは、栄養補助食品、乳幼児用食品、スポーツドリンク等の成分として、ヨーロッパ各国やアメリカにおいて製造・販売されている。このL−カルニチンを含む健康食品を輸入したいが、L−カルニチンは、日本では薬事法上、専ら医薬品として使用されるべき成分として扱われているため、この成分を食品に使用することは認められず、この成分を含む食品は日本に輸入できないものとなっている。

しかし、L−カルニチンは、牛乳、牛肉、アスパラガス、米等様々な食品にも入っている天然の栄養素であり、これが専ら医薬品として取り扱われるのは納得できないので、食品としても扱われるようにして欲しい。

(参考)
我が国では、人が経口的に摂取する物は「食品」と「医薬品等」(医薬品及び医薬部外品)に分類される。医薬品等に該当するか否かは、その物の成分本質(原材料)、形状(剤型、容器、包装、意匠等)及びその物に表示された使用目的・効能効果・用法用量並びに販売方法、販売の際の演述等を総合的に判断して、通常人が薬事法に掲げる目的を有する物であるという認識を得るかどうかによって判断しており、その基準として「医薬品の範囲に関する基準」が定められている。従って、外国で食品として販売されているものであっても国内では医薬品等に該当するものもある。
なお、同基準の一部改正により、平成9年3月からビタミンの一部、平成10年3月からハーブの一部、平成11年3月からミネラルの一部が医薬品に該当しないものとして扱われ、食品として流通することが可能となっている。

○ 所管省庁(厚生労働省)による措置の概要(案件を巡る背景)

(所管省回答)

抽出し若しくは化学的に合成したL−カルニチンについては、以下の理由から食品として取り扱うことはできない。

L−カルニチンについては、1)我が国において承認されている医薬品の有効成分であり、その医薬品としての有効性、安全性等が我が国の薬事法における承認制度の下で、人を対象とした治験等による科学的なデータ(根拠)に基づき認められており、医薬品としての使用実態が確立している成分本質(原材料)であること、2)医薬品としての使用において、消化器障害(下痢、柔便等)、顔面浮腫、血尿、貧血等の副作用が知られていること、3)我が国において、食品としての使用実態は知られていないものであることから、従来「専ら医薬品としての使用実態のある物」に該当し、「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)」として取り扱われるものとしてきたものである。

「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」については、新たな安全性等に関する知見等により、必要に応じて、追加、訂正削除等を行うこととしているところである。したがって、科学的な検証に基づくデータ(疫学調査等を含む)の提示を待って、L-カルニチンの安全性等について、検討することとしたい。

○ 総点検作業における検討結果

(1)食薬区分に関するリストの問題点(国際的整合性)

現行の食薬区分のうち「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」の中には、アメリカ、EU等の諸外国では食品成分として扱われており、安全性の観点からも、専ら医薬品として使用される成分とする必要のないものが依然として存在している。この背景として、ある成分本質が医薬品または食品であるかは、各国における規制状況、食習慣等で異なるため難しい状況がある、旨の説明が所管省からあった。しかし、通常海外で食品として流通・販売されているものが日本では制度上薬品としてしか流通できないことは大きな輸入障壁であり、国際的整合性に欠けているといえる。

(2)行政主導による積極的な改善措置の実施

所管省では、アメリカ、EU等の諸外国で食品成分として扱われている実態を踏まえ、そのような成分については食品成分としての含有量、安全性、機能に関する情報等を整理し、科学的見地から必要な検討を行った上で、行政主導で食薬区分の積極的な見直しを行うべきである。「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」については、速やかに見直しの具体的な対象品目、スケジュール等につい て明示すべきである。

(3)食品としての支障なき流通の確保へ

上記(2)の見直しにより「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」から外れたものが、別途、食品衛生法における食品添加物として認められていない等の理由から、事実上食品として流通・販売できないこととなると、見直しの意義が失われる。所管省では、「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」に収載されている物質の見直しと併せて、それらの物質が食品添加物として指定を受ける等、食品として支障なく流通・販売できるように措置すべきである。

(4)L−カルニチンに関する所管省の対応<

本件において具体例として採り上げられたL−カルニチンについては、苦情申立者から科学的検証に基づくデータ等の提出を受け、学識経験者により検討が行われた結果、平成14年11月15日、厚生労働省医薬局長通知により、「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」から削除され、「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品として判断しない成分本質(原材料)リスト」に追加された(「医薬品の範囲に関する基準の一部改正について」(平成14年11月15日医薬発第1115003号))。

また、平成14年12月25日、厚生労働省医薬局食品保健部基準課長通知により、L−カルニチンを食品添加物用途で使用する場合にあっても、別途食品添加物としての指定を要することなく直ちに食品として流通できることとなった(「「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)」の取扱いの改正について」(平成14年12月25日食基発第1225001号)。

○ 具体的提言

以上を踏まえ、所管省においては、市場アクセスの一層の改善に向けて以下の措置を講ずるべきである。

(1)今回食品として流通できるようになったL−カルニチンと同様、通常海外で食品として流通・販売されているにもかかわらず我が国では「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」に収載されている成分本質(原材料)については、当該成分の食品成分としての含有量、安全性、機能に関する情報等を整理し、科学的な見地から必要な検討を行った上で、行政主導で食薬区分の積極的な見直しを行うべきである。また、リストについては、速やかに見直しの具体的な対象品目、スケジュール等について明示すべきである。
(2)食薬区分の見直しと併せて、それらの物質が食品添加物として指定を受ける等、食品として支障なく流通・販売できるように措置すべきである。

3 輸入建材等の検査での海外検査データの活用

○ 提起された課題

(1)外国の建材を輸入する際には、外国の規格認証を得た製品であっても改めて日本国内の検査が必要となり、その検査に100万円以上の費用がかかる。
建材の検査に当たっては、輸出国の検査データを活用するなど、簡略化を図るべき。[11FYプロセス東商]

(2)外国製木製防火戸について、欧州等輸出国における検査データを受入れ、それを基に日本における審査・認定を行うなど、簡便に日本の基準への適合が認められ、輸入が促進されるようにして欲しい。[13FYプロセス東商]

○ 所管省庁(国土交通省)による措置の概要(案件を巡る背景

(所管省回答)

・ 平成10年の建築基準法(昭和25年法律第201号)の改正により、海外の規格による製品であっても、国土交通大臣の承認を受けた海外の評価機関(承認性能評価機関)が、建築基準法令に規定する性能に関して一定の基準に適合するものとして性能評価を行ったものであれば、国土交通大臣の認定を受け、日本国内で使用することが出来るものとしている。
また、試験の種類によっては、輸出国の試験データをもとに、性能評価を受けることができる。

・ 「型式適合認定」(注)を行う認定機関(承認認定機関)の指定(国内)又は承認(外国)にあたっては、内外の区別なく同等の要件を課しているところであり、要件を満たしている機関からの申請があれば、承認認定機関として承認することが可能である。
なお、平成14年12月現在、承認認定機関として承認された機関は存在しないが、外国を業務範囲に含めている指定認定機関があり、当該機関を活用されたい。

(注)型式適合認定:型式適合認定とは、エレベーター、防火戸のように同一の型式で量産される建築材料、建築設備等について、個別の建築確認において審査しなくてもよいように、予め国土交通大臣の認定を受けるもの。

・ 平成14年12月現在、性能評価、型式適合認定を行うことが出来るものとして、外国の「承認性能評価機関」及び「承認認定機関」を、国土交通大臣が承認した実績はない。

○ 総点検作業における検討結果

(承認認定機関制度等を有効に活用されるものとするための措置等)

平成10年の建築基準法改正により、新たに承認認定機関制度及び承認性能評価機関制度が設けられ、外国事業者は、日本国内の指定認定機関又は指定性能評価機関だけでなく、承認認定機関又は承認性能評価機関として国土交通大臣から承認された外国の検査機関等を活用することにより、建築基準法上の審査を受けることが可能となった。

しかし、平成14年12月現在、承認認定機関又は承認性能評価機関として国土交通大臣から承認を受けた機関は皆無であり、外国事業者は、承認認定機関制度等を活用することができない状況となっている。

承認認定機関及び承認性能評価機関という法的枠組みが設けられていても、実際に当該機関として承認されているものが存在しなければ全く意味がなく、多くの外国検査機関等が承認申請を行い、かつ、迅速に多くの機関が承認認定機関等として承認され、当該制度が有効に活用されるものとなることが必要である。

ところが、所管省は、「承認性能評価機関及び承認認定機関は、試験機関の申請により承認するものであるため、承認を受けようとする機関がなければ承認することはできない。」とし、積極的に外国検査機関等からの承認申請を促すための具体的措置は講じていない。

そこで、以下のとおり、本会議において、承認認定機関等に係る外国検査機関等からの承認申請を促進するために所管省が構ずるべき具体的措置等を考察し、提言することとする。

(1) 承認申請についての標準処理期間の設定

現在、所管省は、承認認定機関及び承認性能評価機関の承認申請についての標準処理期間を定めていない。

しかし、承認認定機関又は承認性能評価機関の承認にどれ位の期間を要するかということは、承認申請を行うことを検討している機関にとって非常に重要な問題である。

承認までに要する期間の目安がなく当該手続きの透明性が確保されていない場合、その後の事業計画を策定することができず、事業活動に混乱が生ずることが懸念され、申請するインセンティブそのものが損なわれていることが考えられる。

また、行政手続法(平成5年法律第88号)第6条においても、「行政庁は、申請がその事務所に到達してから当該申請に対する処分をするまでに通常要すべき標準的な期間を定めるよう努める」と規定され、行政庁は、当該期間に関する一定の目安(通常要すべき標準的な期間)をもった上で、その迅速かつ公平な処理を図ることが求められている。

上記のとおり、外国検査機関等による承認申請を促進するためには、承認申請に係る標準処理期間を設定し、手続きの透明性を確保するとともに、迅速な処理を図ることが必要不可欠であり、所管省は、速やかに承認認定機関及び承認性能評価機関の承認申請についての標準処理期間を定め、これを公示すべきである。

なお、申請の内容によって審査期間に相当な長短が想定される場合においても、例えば、合理的な範囲内で一定の幅をもったものとすることや類型化等の工夫により、「通常要すべき標準的な期間」の設定を図るべきである。

(2) 英語による申請

現在、承認認定機関及び承認性能評価機関の承認申請に当たり提出が必要な書類(注)は、建築基準法等における明示的根拠はないものの、全て日本語による表記が求められ、外国検査機関等は、必要書類を全て日本語に翻訳した上で、申請しなければならない状況となっている。

一方、外国検査機関等からの我が国認定・認証制度における認定・認証機関の登録・承認申請を促進するためには、内容等に応じ、当該申請に必要な書類の一部について、英語での提出を認め、外国検査機関等の負担(翻訳に要する経費や期間等)の軽減を図ることが有効であることは、既に「基準・認証制度等に係る市場開放問題についての意見」(平成14年3月18日、市場開放問題苦情処理推進会議)において指摘したとおりであり、本件においても、外国検査機関等からの承認申請を容易にし、承認申請を促進するための具体的措置の一つとして、英語による承認申請を認めることが必要と考える。

さらに、資料によっては、厳格な審査を行うためには、日本語に翻訳されたものよりも、むしろ、英語等原文の資料を直接審査することが必要であるものもあると思われ、当該資料については、原文(英語)のままの提出を認めるべきと考える。

以上を踏まえ、所管省は、承認認定機関及び承認性能評価機関の承認申請に必要な書類について、外国検査機関等の申請負担の軽減を図り、承認申請を促進するため、英語での提出を認める書類を速やかに検討し、直ちに実施すべきである。

(注)承認申請に当たり提出が必要な書類(「建築基準法に基づく指定資格検定機関等に関する省令(平成11年建設省令第13号)」第47条、第72条)
1) 承認申請書、2) 定款若しくは寄付行為及び登記簿謄本等、3) 申請日の前事業年度における財産目録及び貸借対照表等、4)申請者が建築基準法第77条の37(欠格条項)第1号及び第2号に該当しない旨を明らかにする書類、5) 申請日の事業年度及び 翌事業年度における事業計画書等、6) 申請者が法人である場合の役員等の氏名及び略歴、7) 組織及び運営に関する事項を記 載した書類、8)事務所の所在地を記載した書類、9) 申請者が法人である場合、発行済株式総数の100分の5以上の株式を有す る株主等の氏名又は名称、住所及びその有する株式の数等を記載した書類、10) 認定員の氏名及び略歴を記載した書類、11) 現 に行っている業務の概要を記載した書類、12) 認定等の業務の実施に関する計画を記載した書類等

(3) 外国政府及び外国検査機関等に対する効果的なPR等

平成10年の建築基準法改正により、承認認定機関及び承認性能評価機関という法的枠組みが設けられたものの、未だ当該機関として承認された機関は存在せず、外国事業者等は、より利便性の高い外国検査機関等を活用した認定・性能評価を受けることができない状況となっている。

この状況について、所管省は、「承認性能評価機関及び承認認定機関は、試験機関の申請により承認するものであるため、承認を受けようとする機関がなければ承認することはできない。」とし、積極的に外国検査機関等からの承認申請を促すための具体的措置は講じていない。

しかし、承認認定機関及び承認性能評価機関という制度は、単に法的枠組みが設けられただけでは意味がなく、当該機関として承認された外国検査機関等が各国に多数存在するようになり、各国の事業者等が容易に有効活用できる状態になって初めて当該制度の設けられた趣旨が達成されたと言い得るものである。

したがって、所管省は、「承認を受けようとする機関がなければ承認することはできない。」といった受動的な態度を採るのではなく、外国検査機関等が承認認定機関等として多数承認され、当該制度が有効に活用されるものとなるよう積極的な措置を講じるべきであり、そのための一方策として、まず、利用者のニーズ把握等現状分析を的確に行い、ニーズの見込まれる地域の外国政府及び外国検査機関等を中心に、当該制度の有用性について、積極的かつ効果的なPR活動を行うべきである。

また、承認認定機関及び承認性能評価機関の承認申請に係る申請手続きの流れ、提出書類(様式等を含む)、相談窓口等を記載した申請者にとって分かり易い申請手続きマニュアル(手引書)を英文で作成し、配布・ホームページ上等で公開することが、外国検査機関等からの承認申請を容易にし、迅速な処理に資することは明らかであり、所管省は、直ちに英文による申請手続きマニュアル(手引書)を作成し、 配布・公開すべきである。

(4) 相互承認等へ向けた取り組み

外国の製造業者、輸出業者等が日本への輸出を行うに当たっては、物資により日本の規格・基準に適合していることの認証が必要となり、外国製造業者等にとっては、不慣れな日本語による認証申請、当該認証に係る費用及び時間が多大な負担となっている。

この点については、既に、規格・基準のISO等国際規格への整合化、規格・基準への適合性評価手続の国際指針等への整合化等を図り、相互承認協定を締結するなどして、外国製造業者等の負担を軽減している分野もある。

所管省は、建築資材の建築基準法令への適合について、「種類によっては、輸出国の試験データを基に、性能評価を受けることができる。」としている。

ただし、本件において具体的苦情として提起されている防火戸等防耐火関係の試験及び木造住宅の壁強度関係の試験については、この対象となっておらず、また、相互承認協定の締約というレベルで外国製造業者等の負担を軽減している例もない。

一方、北米圏内、EU圏内、英連邦圏内においては、建築資材の試験施設について、それぞれ相互承認等が図られているとのことであり、日本においても主要貿易国との間で相互承認協定を締約し、認証に要する負担(費用及び時間等)の軽減、製品の市場投入スピードのアッ プ等一層の市場アクセスの改善を図るべきとする要請は強い。

したがって、所管省は、利用者の負担を軽減し、利便性を向上させることにより、一層の市場アクセスの向上を図るため、建築資材について、主要貿易国との間で相互承認を実現するための方策について検討すべきである。

○ 具体的提言

以上を踏まえ、所管省においては、市場アクセスの一層の改善に向けて以下の措置を講ずることを求める。

所管省は、建築基準法上の承認認定機関及び承認性能評価機関に係る外国検査機関等からの承認申請を促進するため、速やかに以下の措置を講ずるべきである。

(1) 承認申請に係る標準処理期間を設定かつ公示し、手続きの透明性を確保するとともに、迅速な処理を図るべきである。
(2) 承認申請に必要な書類について、外国検査機関等の申請負担の軽減を図り、承認申請を促進するため、英語での提出を認める書類を速やかに検討し、直ちに実施すべきである。
(3) 当該制度の有用性について、積極的かつ効果的なPR活動を行うべきであり、その際には、承認申請に係る申請手続きの流れ、提出書類(様式等を含む)、相談窓口等を記載した申請者にとって分かり易い申請手続きマニュアル(手引書)を英文で作成し、配布・ホームページ上等で公開するべきである。
 また、利用者の負担を軽減し、利便性を向上させることにより、一層の市場アクセスの向上を図るため、建築資材について、主要貿易国との間で相互承認を実現するための方策について検討すべきである。

4 JAS制度の見直し

○ 提起された課題

有機JASについて、「登録外国認定機関」の登録の遅れにより、輸入業者は、法が本来予定していた平成13年4月1日(法施行日)からの有機JASマーク貼付済み物資の輸入ができず、多大の損害を被ったところ。

所管省は、登録外国認定機関を増加させ、登録外国認定機関制度の活用を図るため、1) 同機関の登録申請に当たっては、英語等による申請を認めるなど申請を容易にするための措置を講ずること、2) 国際的に信頼性が確立している機関(IOAS)に登録されている機関を活用することにより「JAS制度と同等制度を有する国」を要件としないこと等具体的措置を講ずるべきである。[13FYプロセス国内事業者]

○ 所管省庁(農林水産省)による措置の概要(案件を巡る背景)

<平成13年度対策本部決定>

有機農産物等について、農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律(JAS法)に定められる登録外国認定機関制度の活用に関し、以下の対応を取る。

ア 今回の問題提起を契機として新たに登録外国認定機関等の登録に係る標準処理期間を定め、その期間を3か月以内と設定したが、その実行に当たっては、事務処理の効率化等を図り申請の迅速な処理に努める。

イ 輸入業者等が円滑に登録外国認定機関を活用することができるよう登録外国認定機関の増加を図る観点から、登録申請に必要な書類等の一部について、英語による記載を認める等登録外国認定機関の登録を容易にするための具体的措置を検討する。

ウ 輸入業者等がJAS制度と同等性を有する国として指定されていない国の機関についても登録外国認定機関として活用することを可能にし、登録外国認定機関の適正な運営・監督を確保するため、「JAS制度と同等制度を有する国」を要件としないこと、またその場合には、国際的に信頼性が確立している機関(例えばIOAS)に登録されている機関を活用すること等JAS法の改正について検討し、必要な措置を講ずる。

<所管省回答>

○ 申請の迅速な処理に努めており、平成15年2月17日現在、欧州7機関、豪州6機関を登録し、平成14年度中にさらに2機関の登録を行う予定。当方からの照会に対する回答提出までの期間を除外すると平均的な処理期間は3ヶ月以内。

○ 登録申請に必要な書類に英語の記載を認める点については、翻訳の責任を申請者でなく、当方が負うこととなることを考慮し、添付を義務付けている書類のうち、どの書類が英語での提出を認められるかという点について検討を行っているところ。

○(参考:我が国と同等性を有する国)
・ EU15か国、オーストラリア(平成13年3月指定)
・ アメリカ合衆国(平成14年3月指定)

○ 総点検作業における検討結果

(1) 英語による申請

登録外国認定機関の登録に当たり提出が必要な書類は、農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律施行規則(昭和25年農林省令第62号)第85条で準用する同規則第55条において定められており、現在、以下の書類が定められている。(下記イ以下は、添付書類。)

ア 申請書
(記載事項:名称及び住所、認定を行う事業所の所在地、認定を行おうとする農林物資の区分、認定を行おうとする区域、資格を有する者の数、認定の業務の管理に関する事項、登録不適格に該当する事実の有無、認定の業務以外の業務の概要及びこれと認定を行う農林物資 との関連)

イ 認定の業務に携わる者の履歴書

ウ 定款又は寄付行為及び登記簿の謄本
(申請者が外国法令に基づいて設立された法人である場合には、これらに準ずるもの)

エ 役員の氏名及び住所を記載した書類

オ 直近の財産目録又は貸借対照表

カ 申請の日の属する事業年度及び翌事業年度の事業計画及び収支予算に関する書類

キ 法人の種類に応じ、構成員の氏名又は名称を記載した書類

ク 構成員のうち事業を行っている者がいる場合には、当該事業の概要及び当該事業と認定を行う農林物資との関連を記載した書類

これらの書類については、上記2のとおり、平成13年度の「基準・認証制度等に係る市場開放問題についての対応」(平成14年3月20日市場開放問題苦情処理対策本部決定)において、登録申請に必要な書類等の一部について、英語による記載を認める等の具体的措置を検討することが決定されており、迅速な対応が求められているところ。

一方、所管省は、「登録申請に必要な書類に英語の記載を認める点については、翻訳の責任を申請者でなく、当方が負うこととなることを考慮し、添付を義務付けている書類のうち、どの書類が英語での提出を認められるかという点について検討を行っている」と回答している。

 しかし、上記ア乃至クの必要提出書類についてみると、記載事項の主たる要素が固有名詞や数字となっており、そもそも日本語に翻訳する必要性が低いと思われるものも多く、これまでの登録審査経験を踏まえれば、英語での提出を認めるか否かの判断に長期間を要するとは思われない。昨年度の市場開放問題苦情処理対策本部決定から既に約1年が経過しており、未だ検討中とする所管省の対応は、遅きに失するものと言わざるを得ない。<

また、所管省は、その回答において「翻訳の責任を申請者でなく、当方が負うこととなることを考慮し」とするが、登録外国認定機関の登録審査に当たって重要なことは、不適格な機関を登録外国認定機関として認定した後の帰責の転嫁、つまり、「翻訳の責任」を申請者に負わせるということではなく、当該申請者が真に登録外国認定機関として適格な能力を有するか否かの実体判断を所管省が適正かつ厳格に行うことであり、厳格な審査を行い適正な実体判断を下すためには、翻訳された書類ではなく、むしろ、英語等による原本資料を直接審査することが必要な場合がある。

さらに、一般的に、国際裁判においては、翻訳された書類の場合、先ずその信憑性が問題となるという実態があり、申請者が日本の制度に沿うよう翻訳した書類を基に審査するのではなく、直接英語等による原本に当たって厳格かつ適正な審査を行うべき場合があると思われる。

したがって、所管省は、登録外国認定機関の申請に必要な書類について、外国機関等の申請負担の軽減を図り、登録申請を促進するため、英語での提出を認める書類についての検討結果を速やかに出し、直ちに実施すべきである。<

(2) 「JAS制度と同等の制度を有する国」要件の見直し

現在、農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律(昭和25年法律第175号。以下「JAS法」という。)においては、外国の認定機関等がJAS法上の登録外国認定機関として登録されるためには、「農林物資について日本農林規格による格付の制度と同等の水準にあると認められる格付の制度を有している国として農林水産省令で定め」られた国に属することが必要条件となっており、たとえ優秀な認定能力を有する認定機関であっても、当該機関が属する国が「JAS制度と同等の制度を有する国」として農林水産省令で定められていなければ、当該機関は登録外国認定機関として登録されることはできない。(JAS法第19条の6の2、第19条の6の4)

この現行制度について、昨年度の市場開放問題苦情処理対策本部決定においては、「輸入業者等がJAS制度と同等性を有する国として指定されていない国の機関についても登録外国認定機関として活用することを可能にし、登録外国認定機関の適正な運営・監督を確保するため、『JAS制度と同等制度を有する国』を要件としないこと、またその場合には、国際的に信頼性が確立している機関(例えばIOAS)に登録されている機関を活用すること等JAS法の改正について検討し、必要な措置を講ずる。」とされたところ。

しかし、所管省は、未だこの検討結果を出しておらず、JAS制度と同等制度を有する国として指定されていない国の機関についても、十分な認定能力を有する機関については、登録外国認定機関としての登録審査を受けることが可能となるよう門戸を開くべきとする昨年度の本会議による提言の趣旨を踏まえ、速やかに検討結果を出すことが必要である。

したがって、所管省は、「JAS制度と同等制度を有する国」を要件としないこと、またその場合には、国際的に信頼性が確立している機関(例えばIOAS)に登録されている機関を活用すること等JAS法の改正についての検討結果を速やかに出すべきである。また、この検討結果においては、JAS制度見直しの中で、JAS制度と同等制度を有する国として指定されていない国の認定機関等であっても、十分な認定能力を有する認定機関については、登録外国認定機関として登録されることが可能となるための方策について明らかにすべきである。

○ 具体的提言

以上を踏まえ、所管省においては、市場アクセスの一層の改善に向けて以下の措置を講ずることを求める。

(1) 登録外国認定機関の申請に必要な書類について、外国機関等の申請負担の軽減を図り、登録申請を促進するため、英語での提出を認める書類についての検討結果を速やかに出し、直ちに実施すべきである。
(2) 「JAS制度と同等制度を有する国」を要件としないこと、またその場合には、国際的に信頼性が確立している機関(例えばIOAS)に登録されている機関を活用すること等JAS法の改正についての検討結果を出すべきである。また、その際には、JAS制度見直しの中で、JAS制度と同等制度を有する国として指定されていない国の認定機関等であっても、十分な認定能力を有する認定機関については、登録外国認定機関として登録されることが可能となるための方策についての検討結果を示すべきである。

5 通関・検疫業務の24時間・365日営業の実現

○ 提起された課題

(1) 輸入業者が輸入手続を税関の執務時間(8:30〜17:00)外の休日・夜間に行う場合、臨時開庁の承認を執務時間内に行わなければならないことに加えて、臨時開庁のための手数料を支払う必要がある。臨時開庁制度ではなく税関の執務時間の延長を行うことで、24時間輸入手続が可能となるようにすべきである。特にニーズの高い港、空港について24時間輸入手続が可能となるよう迅速に実施すべきである。[平成13年度問題提起プロセス]

(2) 臨時開庁の申請には別途手数料が必要だが、臨時開庁となる時間の基準を明確にしてほしい。また、臨時開庁の業務内容は、通常業務と同じであることから、時間外手数料自体を廃止すべきである。[平成11年度問題提起プロセス]

(3) 上記の問題提起内容に密接不可分な問題として、輸入手続の24時間・365日実施の効果を十分に発揮するため、通関業務のみならず検疫業務についても24時間・365日の実施を図るべきである。

○ 所管省庁(財務省)による措置の概要(案件を巡る背景)

(1) 税関においては、従来から執務時間外である平日夜間及び土・日・祝日であっても、輸出入手続を求める要請があれば、関税法第98条の規定に基づく臨時開庁申請により、臨時に必要な職員を手当てし、対応している。

また、執務時間外において臨時の手続を求める要請の多い通関官署においては、既に執務時間外に職員を常駐させ、効率的な業務処理体制を整備している。

今後、港湾の24時間フルオープン化に向け民間側の対応が進展することが望まれ、税関の執務時間外における輸出入通関等の手続を求める具体的要請に応じて、これに対応する通関体制の整備を積極的に行っていくこととしている。

なお、14年10月から、港湾の24時間フルオープン化へ向けた動きに対応する上での問題点等を把握することを目的として、コンテナ貨物取扱い実績の多い7港湾の8税関官署において、平日夜間(17:00〜21:00)・土日休日(08:30〜17:00)に職員を配置する通関体制の試行を実施している。その際、臨時開庁の承認申請は、税関の執務時間外にも受け付けることとしている。

(2) 臨時開庁の時間は、臨時開庁を求める業務の開始から終了までの時間であり、その基準はすでに明確になっている。

臨時開庁制度は、税関の執務時間外における臨時の執務の求めがあった場合に、これを行うものとし、もって輸出入業者の利便に資そうとするものであることから、執務することに伴い発生する行政コスト(人件費等)を勘案した負担を受益者たる申請者に求めているものである。したがって、これを廃止することはできない。

○ 総点検作業における検討結果

(1) 通関・検疫業務の24時間、365日体制の整備

世界経済のグローバル化が一層進展し、経済活動が国境を越えて広く展開している。先進的な国際港湾等を有する近隣諸国において、主要な物流拠点の整備が進んでいる反面、我が国の物流拠点としての地位の低下が叫ばれている。そのような状況の中で、物流システムの重要な構成要素として、通関・検疫業務においても、国際的に遜色のない水準であることが求められている。特に、事業者等からの要望が強い、全国の港湾・空港において通関・検疫業務の24時間、365日体制の実現を図ることは、輸出入における利用者の利便性の面から重要であるとともに、我が国の物流面における効率性を促すものである。24時間、365日体制を実現するに当たって、まずは、少なくとも恒常 的に需要が見込まれる地域において、積極的に進めていくことが重要である。

恒常的な需要が見込まれる地域を把握するためには、的確な需要判断を行うことが重要である。このためには、港湾管理者等関係機関とのネットワークを強化して、現時点における需要予測を的確に行うとともに、現時点では顕在化していない需要を予測することが重要になる。

顕在化されていない需要とは、「24時間、365日体制が所与の経済環境となることで、それを前提とした物流システムが構築されることになり、その結果として生み出される潜在需要」のことである。このような潜在的な需要を把握するためには、実際に24時間、365日体制が根づ いている諸外国の実例について調査することが有益であると考えられる。

更に、税関、検疫所、植物防疫所等の業務は、通関・検疫業務の24時間、365日実施の効果を十分に発揮するためには、密接不可分なものであり、所管各省は、今まで以上に密接な連携を図るべきである。

現在、財務省においては、港湾の24時間フルオープン化へ向けた動きに対応する上での問題点等を把握するため、当面、15年3月末までを目途に、税関の執務時間外に職員を配置する通関体制の試行(7DAYSオープン・トライアル)を行っている。その試行の評価を的確に行い、現在試行を行っている7港湾においては、本格的に整備する方向で検討を行うべきである。さらに、試行対象以外の地域についても、少 なくとも恒常的に需要が見込まれる地域については、積極的に対応すべきである。

また、厚生労働省及び農林水産省においても、通関業務と密接な連携を図るとともに、少なくとも恒常的に需要が見込まれる地域については、積極的に対応すべきである。

通関・検疫業務の24時間、365日体制を整備するためには、勤務時間・体制等の見直しが必要であることはいうまでもなく、業務の迅速化、省力化を推進することが必要でなる。このためには、民間への業務の外部化やIT化を促進することが重要である。特に、民間への業務の外部化について、財務省は「通関業務の根幹のところについては民間等への業務委託によることはできないが、根幹以外、つまり、公権力の行使以外の周辺業務等の民間への外部委託等については進めている」としている。また、厚生労働省も「分析に係る部分についてはその一部を登録検査機関に委託を行う」としている。このような取り組みについては、不断に見直しを行い、民間への業務の外部化を推進することが重要である。一方、農林水産省は「動植物検疫業務の民間等への委託は不可能である」としている。しかし、財務省や厚生労働省の取り組みのように、外部化を通じて効率化できる業務については、できる限り外部化を進める姿勢で、外部化の検討を行うべきである。

以上を踏まえて、所管省は、我が国の通関検疫業務が国際的に遜色のない水準であるように、全国の主な港湾、空港において、通関・検疫業務の24時間、365日実施を検討し、的確に需要を判断し、できる限り速やかに必要な対応を行うべきである。また、勤務時間・体制等の見直しを行うとともに、可能な限り業務の外部化や、IT化の一層の促進により、業務の更なる効率化・省力化を推進し、速やかに講じるべ き措置の具体化に取り組むべきである。

また、通関・検疫業務の24時間、365日実施の効果が十分発揮されるものとなるよう、所管各省は、密接に連携を図るべきであり、少なくとも恒常的に需要が見込まれる地域においては、積極的に対応すべきである。

財務省は、15年3月末まで税関の執務時間外における通関体制の試行を実施している7港湾については、引き続き実施すべきである。厚生労働省及び農林水産省が行う検疫業務については、通関業務と密接に連携を図るべきである。

(2) 執務時間外手数料について

通関業務においては、執務時間外における臨時開庁には、別途手数料が必要になるが、このような執務時間外手数料については、その負担の軽減あるいは撤廃を求める事業者は多い。財務省によると、歴史的経緯もあり、受益者負担の考え方に基づいて、臨時開庁のための手数料を徴収しているようであるが、これは物流コストを増加させる一因にもなっている。21世紀を迎えて、今後、従来からの関税の徴収、社会悪物品等の取締り等といった視点ばかりでなく、我が国物流システムの重要な構成要素としての視点が必要になってくる。24時間、365日体制の実現が図られたとしても、執務時間外手数料のコストが負担になるのでは、その効果は限定的にならざるを得ない。

物流コストの面から、執務時間外手数料のあり方について見直しを行い、手数料の撤廃を含め、その額の軽減を検討する必要がある。また、構造改革特別区域における特別措置として、我が国貿易の振興を図る観点から臨時開庁手数料を2分の1に軽減を図ることは手数料見直しに向けた第1歩として評価でき、今後、更に、執務時間外手数料についての合理的な算出根拠等、そのあり方等について検討を進めるべきである。また、構造改革特別区域での取り組みを起爆剤として、それ以外の地域での適用を視野に入れて、手数料の撤廃を含め、その額の軽減の検討を推進していくことが重要である。

検疫業務において、厚生労働省は「特段の手数料徴収は行っていない。今後、24時間、365日の業務を実施する際においても利用者からの手数料徴収は考えていない」としており、評価できるものと考えられる。

以上を踏まえて、財務省は、執務時間外の手数料について、24時間、365日体制の整備に伴い、手数料の撤廃を含め、その額の軽減を検討し、所要の措置を講じるべきである。

○ 具体的提言

以上を踏まえ、所管省においては、市場アクセスの一層の改善に向けて以下の措置を講ずるべきである。

(1)所管省は、我が国の通関 検疫業務が国際的に遜色のない水準であるように、全国の主な港湾、空港において、通関・検疫業務の24時間、365日実施を検討し、的確に需要を判断し、できる限り速やかに必要な対応を行うべきである。勤務時間・体制等の見直しを行うとともに、可能な限り業務の外部化や、IT化の一層の促進により、業務の更なる効率化・省力化を推進し、速やかに講じるべき措置の具体化に取り組むべきである。

(2)通関・検疫業務の24時間、365日実施の効果が十分発揮されるものとなるよう、所管各省は、密接に連携を図るべきであり、少なくとも恒常的に需要が見込まれる地域においては、積極的に対応すべきである。

(3)財務省は、15年3月末まで税関の執務時間外における通関体制の試行を実施している7港湾については、引き続き実施すべきである。厚生労働省及び農林水産省が行う検疫業務については、通関業務と密接に連携を図るべきである。

(4)財務省は、執務時間外の手数料について、24時間、365日体制の整備に伴い、手数料の撤廃を含め、その額の軽減を検討し、所要の措置を講じるべきである。

6 港湾業務への市場原理の導入

○ 提起された課題

(1) 日本の港湾業務の荷役料や運送料は高く、その処理速度は遅い。日本の港湾業務のコストが高すぎるために、輸入品が国産品に比べて価格競争の点で不利となっている。また、夜間荷役、日曜荷役等が不十分であることによる貨物引取の遅延が見られる。

港湾業務に市場原理を導入し、港湾の荷役・輸送コストを縮減し、業務の迅速化を図るべきである。

行政改革委員会の最終意見が既に平成9年12月に出されているが、実施が平成12年内と時間がかかり過ぎている。コストの削減は、一刻を争う問題であり、規制緩和の早急な実施を要望する。[11FYプロセス東商]

(2) 国による規制ではなく労使間の問題とのことだが、荷役業務等が24時間対応でなければ意味がなく、国土交通省から事業者団体等に対し、利用者の立場に立った指導をしてほしい。[13FYプロセス東商]

○ 所管省庁(国土交通省)による措置の概要(案件を巡る背景)

<平成11年度対策本部決定>

港湾業務への市場原理導入に関し、以下の対応を取る。

・ 競争による港湾業務の効率化、サービスの向上を早急に実現させるため、コンテナ貨物取扱量の太宗を占める主要9港(京浜港、千葉港、清水港、名古屋港、四日市港、大阪港、神戸港、関門港、博多港)において、港湾運送事業の免許制を許可制へ(需給調整規制の廃止)、料金の認可制を届出制へ移行する規制緩和措置を、平成12年の可能な限り早い時期に実施する。

・ 規制緩和の実効性を確保するため、新規事業者の参入を妨げることのないようにする。

<所管省回答>

(1) 我が国港湾の活性化、港湾荷役サービスの効率化等を目的とし、主要9港において事業免許制を許可制に(需給調整規制の廃止)、料金認可制を事前届出制に規制緩和すること等を内容とする港湾運送事業法の一部を改正する法律が平成12年11月に施行された。

また、主要9港以外の地方港の規制緩和についても、本年3月29日に閣議決定された「規制改革推進3か年計画(改定)」の中で、平成14年度に検討を開始し平成15年度中に結論を得るとされたところ。

(2) 平成13年11月末に、荷役作業について元旦を除く364日24時間実施すること及びゲート作業について土・日・祝日も平日と同様に8時半〜20時まで実施することが港運労使間で合意された。

国土交通省としては、(平成13年度に引続き)平成14年度においても港湾物流効率化推進調査委員会※を設置し、横浜港における実証実験等を通じたゲートの24時間フルオープン化についての検討を実施中である。

※ 日本港運協会、日本船主協会、日本荷主協会、経済団体連合会、港湾管理者、行政(港湾局、海事局、財務省関税局、海上保安庁、厚生労働省)により構成。

○ 総点検作業における検討結果

(1) 主要9港以外の地方港の規制緩和

近年、東アジアと欧米との間を結ぶコンテナ基幹航路における日本の港への寄港回数が減少するなど、東アジアにおける日本の港の地位は低下しており、その原因の一つとして、事業免許制の下では事業者間の競争が生まれ難く、船会社、荷主のニーズに合ったサービスが提供され難くなっている点が内外から指摘されている。

このような状況を踏まえ、港湾運送事業の効率化、サービスの向上を図るため、平成12年に港湾運送事業法(昭和26年法律第161号)が改正され、主要9港については、一般港湾運送事業等に係る需給調整規制が廃止され、事業免許制が許可制に改められるとともに、運賃・料金規制が見直され、料金許可制が事前届出制に改められた。

 一方、主要9港以外の地方港については、「規制改革3か年計画(改定)」(平成14年3月29日閣議決定)において、「速やかに検討を開始し、平成15年度中に結論を得る。」とされており、国土交通省によれば、現在、先行して規制緩和を実施した主要9港の規制緩和の影響調査、ユーザー(船会社・荷主)、港湾管理者、海運事業者、労働組合等関係者の意見聴取、地方港の実態調査等を進めており、地方港の実 情を十分に検証した上で、平成15年には中央懇談会を設置し、平成15年度中に結論を得る予定としている。

しかし、主要9港の規制緩和において、平成9年12月に行政改革委員会最終意見が出された後、実際に規制緩和措置が実施された平成12年11月まで約3年の期間を要しており、平成11年度問題提起プロセスにおいては、その遅れそのものが苦情として問題提起されたところである。

また、今回の主要9港以外の地方港の規制緩和については、例えば、構造改革特区構想の地方自治体からの提案としても挙がっており、早急に実施すべきであるとする要望は強い。

したがって、今回の主要9港以外の地方港の規制緩和については、二度と前回のような遅れは許されず、所管省は、確実に平成15年度中に検討の結論を出し、その結論を直ちに実施するための措置を講ずるべきである。

(2) 新規事業者の参入を妨げないための措置

平成12年11月、主要9港において、需給調整規制を廃止し、事業免許制を許可制に、料金認可制を事前届出制に規制緩和することを内容する港湾運送事業法の一部を改正する法律が施行されたところ。

改正法施行後約2年を経過した平成14年12月1日現在、新規許可が10件(千葉港1件、清水港1件、大阪港3件、関門港4件、博多港1件)、業務範囲変更が63件、運賃料金届出102件となっており、所管省は、今後も改正法の着実な実施に努めていくとしている。

一方で、個別事業者からは、新規に港湾運送事業に参入しようとしたところ、事実上、港湾運送事業に係る同業者組合に加入することを強制され、同業者組合への加入を希望しない者にとっては、円滑に新規参入することができない状況にあるとの苦情が寄せられているところ。

所管省は、引き続き、規制緩和の実効性を確保するため、新規事業者の参入を妨げることのないようにするべきである。

(3) 港湾ゲートの24時間フルオープン化等

港湾の24時間フルオープン化については、我が国における港湾物流をより一層効率化する観点から、平成13年7月に「新総合物流施策大綱」が閣議決定され、その早期実現の必要性が盛り込まれたところ。

現在、日本の港湾は、荷役作業は、24時間化が図られているものの、ゲート作業については、8:30〜20:00(東京港、横浜港、名古屋港、大阪港、神戸港、関門港、博多港の主要7港については21:00まで)の実施となっているが、シンガポール、香港、釜山、ロサンゼルス等海外の主要港では、ゲート作業も24時間化が図られており、日本の港湾の地位を向上させるためには、ゲート作業も含めた24時間フルオープン化が必要な状況となっている。

このような状況の中、平成14年10月から、横浜港において、港湾ゲートの24時間フルオープン化の早期実現に向けた実証実験が行われており、所管省によれば、平成14年度中に実証実験の取りまとめを行い、荷主・トラック事業者のゲート利用ニーズを具体的に把握し、港湾ゲートの24時間フルオープン化の実現可能性について検討する予定とのことである。

また、財務省関税局においても、東京港をはじめとする主要7港において、平成14年10月から平成15年3月末までの間、試験的に税関の 土・日・祝日の開庁及び執務時間の延長を実施しており、これに合わせ、ゲート作業の時間も21:00まで延長されている。

しかし、上記のような港湾ゲート24時間フルオープン化に向けた取り組みは、未だ緒に就いたばかりの感があり、例えば、港湾ゲートの24時間フルオープン化の実現可能性についての検討結果を出す時期も明らかとなっていない。

先進的な国際港湾等近隣諸国における主要な物流拠点の整備が進み、その取扱量が大きく伸びている中、我が国の港湾が真の意味での国際競争力を有する国際物流拠点としての地位を得るには、荷役作業の24時間化のみならず、港湾ゲートの24時間フルオープン化及び通関業務等行政手続の24時間化を実現することが必要不可欠である。<

したがって、所管省は、我が国の港湾が国際競争力を有する国際物流拠点としての地位を取得するよう、港湾の24時間フルオープン化の早期実現に向けて、1) 港湾ゲートの24時間フルオープン化についての検討結果を出す時期を明示し着実に実施されるものとするべきであり、2) 官民関係者が連携して港湾ゲートのフルオープン化の早期実施に取り組むための具体的措置を講ずるべきである。また、3) 通関・検疫業務との連携を強化し、利便性の向上を図るべきである。

○ 具体的提言

上を踏まえ、所管省においては、市場アクセスの一層の改善に向けて以下の措置を講ずることを求める。

(1) 主要9港以外の地方港の規制緩和について、所管省は、確実に平成15年度中に検討の結論を出し、その結論を直ちに実施するための措置を講ずるべきである。
(2) 所管省は、引き続き、規制緩和の実効性を確保するため、新規事業者の参入を妨げることのないようにするべきである。
(3) 我が国の港湾が国際競争力を有する国際物流拠点としての地位を取得するよう、港湾の24時間フルオープン化の早期実現に向けて、1) 港湾ゲートの24時間フルオープン化についての検討結果を出す時期を明示し着実に実施されるものとするべきであり、2) 官民関係者が連携して港湾ゲートのフルオープン化の早期実施に取り組むための具体的措置を講ずるべきである。また、3)通関・検疫業務との連携を 強化し、利便性の向上を図るべきである。

7 輸入手続の簡素化・迅速化

・簡易申告制度の改善
・ ワンストップサービス(シングルウィンドウ化)の推進

○ 提起された課題

我が国における物流面の効率化を促し、時間的、経済的コストを削減するためには、輸入手続の簡素化・迅速化を図ることは重要である。

(簡易申告制度の改善)

○ 簡易申告制度は、承認された者が指定された種類の貨物について法令遵守の確保を条件に、引取申告と納税申告を分離し、納税申告を貨物の引き取り後に行える申告手続であり、平成13年3月から導入された。この制度の適用対象貨物は、「継続的に輸入される貨物」との指定があり、具体的には過去1年間24回以上輸入している貨物となっている。この回数では相当頻繁に輸入を行わなければ、この制度 は利用できない。指定対象とすべき貨物の輸入回数を例えば3年で30回などに改善すべきである。〔個別苦情〕

(ワンストップサービス(シングルウィンドウ化)の推進)

○ 輸入手続の簡素化・迅速化を促す観点から、輸入の諸手続に関する電子化は重要な要素であり、過去のOTO案件においても、「インターネットを活用したNACCS等通関手続の改善」等、輸入手続の電子化に関連した苦情が多く提起されている。特に、今般、政府において、輸出入・港湾関連手続のワンストップサービス(シングルウィンドウ化)の運用開始に向けた準備を進めているが、ワンストップサービスに関してできる限り早期の運用を図るともに、利用者の利便性の観点から、既存システムの相互接続にとどまらず、重複業務の見直し、手続の簡素化等全ての手続を徹底的に見直すべきである。

○ 所管省庁(財務省)による措置の概要(案件を巡る背景

(簡易申告制度の改善)

簡易申告制度は、コンプライアンス(法令遵守)の良好な輸入者に対して簡易な輸入手続を認めるものである。

本制度の適用を受ける貨物に対しては、原則、税的な観点からの検査は行われないこととなることから、本制度の利用が認められるには、コンプライアンスが十分に確保されている必要があるため、輸入者が関税法違反等の非違がないこと、かつ適用対象貨物の輸入手続について習熟し、適正な申告の確保が期待できること等の要件を課すこととしている。

このうち、適用対象となる貨物の輸入についての習熟に関しては、当該貨物の輸入について「直近1年間に24回以上の輸入許可の実績」がないと、当該貨物の輸入について習熟しているとは認められないと考えている。

現在は、上記対処方針のとおり。なお、平成13年度の制度導入以降1年半を経過していることから、その実施状況等を踏まえ、現行制度についての種々の検討も行っているところである。

○ 総点検作業における検討結果

(1) 簡易申告制度の改善

我が国における物流面の効率化を促し、時間的、経済的コストを削減するためには、輸入手続の簡素化・迅速化を図ることは重要である。平成13年度に新たに導入された簡易申告制度については、引取申告と納税申告を分離し、納税申告を貨物の引取り後に行える申告手続であり、本来は、その利用価値が高い制度である。それにもかかわらず、特例輸入者の輸入許可件数に占める簡易申告制度利用率は6%程度であるなど、必ずしもその制度が十分に利用されておらず、導入効果が十分に発揮されているとはいえない。

その要因としては、多くの輸入業者にとって、簡易申告制度を利用するに当たっての貨物の指定要件、担保の提供要件等が厳しすぎることにある。特に「直近1年間に24回以上の輸入許可」に係る要件については厳しすぎるものである。

以上を踏まえて、所管省は、多くの輸入業者が簡易申告制度を利用できるようにするため、貨物の指定、担保の提供等に係る要件を速やかに見直すべきであり、特に輸入許可の要件に関しては、「直近1年間に24回以上輸入許可を受けた貨物」との指定を「直近1年間に6回以上」に見直すべきである。

(2) ワンストップサービス(シングルウィンドウ化)の推進

輸入手続の簡素化・迅速化を促す観点から、輸入の諸手続に関する電子化の推進は、利用者の利便性を向上させるばかりでなく、輸入関連手続のコストを直接削減させるための重要な要素である。

現在、政府においては、行政手続の電子化、IT化の一環として、平成15年度のできるだけ早い時期における供用開始に向けて、輸出入・港湾関連手続のワンストップサービス(シングルウィンドウ化)を推進している。しかし、利用者にとっては一刻も早いワンストップサービス(シングルウィンドウ化)の実現が切実な要望となっている。供用開始を少しでも繰り上げて早期に実現すべきであり、遅くとも平成15年7月中には供用を開始すべきである

また、ワンストップサービス(シングルウィンドウ化)を推進するに当たって、既存の各システムを相互に接続したものではその効果は限定的である。既存システムの相互接続にとどまらず、利用者の利便性の観点から、重複業務の見直し、手続の簡素化等全ての手続を徹底的に見直すべきである。さらに、供用開始後も、引き続き、利用者の要望に耳を傾け、利用者の視点から見直しを行うべきである。また、将来的に民間システムとの連携について検討を行うことも重要である。

以上を踏まえて、所管省は、輸入手続の簡素化・迅速化を図るためには、行政手続の電子化の観点から、輸出入 港湾関連手続のワンストップサービス(シングルウィンドウ化)を積極的に進めるべきである。ワンストップサービス(シングルウィンドウ化)の供用開始を少しでも繰り上げて早期に実現すべきであり、遅くとも平成15年7月中には供用を開始すべきである。さらに、既存システムの相互接続にとどまらず、利便性の観点から、重複業務の見直し、手続の簡素化等全ての手続の徹底した見直しを行うとともに、システムの供用開始後も、引き続き、利用者の視点から見直しを行うべきである。

○ 具体的提言

以上を踏まえ、所管省においては、市場アクセスの一層の改善に向けて以下の措置を講ずるべきである。

(1) 所管省は、多くの輸入業者が簡易申告制度を利用できるようにするため、貨物の指定、担保の提供等に係る要件を速やかに見直すべきであり、特に輸入許可の要件に関しては、「直近1年間に24回以上輸入許可を受けた貨物」との指定を「直近1年間に6回以上」に見直すべきである。

(2) 所管省は、輸入手続の簡素化・迅速化を図るためには、行政手続の電子化の観点から、関係府省と連携、協力しつつ、輸出入 港湾関連手続のワンストップサービス(シングルウィンドウ化)を積極的に進めるべきである。ワンストップサービス(シングルウィンドウ化)の供用開始を少しでも繰り上げて早期に実現すべきであり、遅くとも平成15年7月中には供用を開始すべきである。さらに、既存システムの相互接 続にとどまらず、利便性の観点から、重複業務の見直し、手続の簡素化等全ての手続の徹底した見直しを行うとともに、システムの供用開始後も、引き続き、利用者の視点から見直しを行うべきである。

8 NACCSの利用料金の低廉化

○ 提起された課題

平成13年10月のAir-NACCS更改に伴い料金体系が定額制から従量制に変更された結果、小口の多くの宅配便を扱う国際宅配便業者の費用負担が増加することになった。今回の変更に関しては、利用者に説明、情報提供が十分に行われずに形式的に手続が進められて変更された。したがって、Air-NACCSの料金体系については、多角的な視点から慎重に検討を行う中立的な機関を設置して、見直しを行うべきである。

NACCSの料金は、総経費を賄うように決められるため、コスト削減のインセンティヴが働きにくい。また、システム開発・運営が長年にわたり特定企業に固定されており、競争原理が働いているとはいえない。したがって、競争入札の活用や業務の外部化等により業務の効率化 を図ることにより総経費を削減して、利用料金の低廉化を図るべきである。

NACCSの利用者は、NACCSを使用せざるを得ず、決められた料金を支払うことになる。通関情報処理センターは料金について説明責任を有しており、利用者等による不断の監視に資するためにも情報公開を進めて、料金に関する透明性を高めるべきである。[13年度問題提起プロセス]

○ 所管省庁(財務省)による措置の概要(案件を巡る背景)

<平成13年度対策本部決定>

NACCSの料金体系に関し、以下の対応を取る。

ア NACCSについては、情報公開を一層進め、利用料金の透明性を高めるとともに、システム開発に係る競争入札の徹底、業務の外部化等について、平成14年度から速やかに講ずべき措置の具体化に取り組むことによって、業務の実施について更なる効率化・適正化を推進 し、利用料金の一層の低廉化を実現する。

イ NACCSの利用料金の在り方については、総経費の削減方策、利用者における費用負担の在り方等多角的な視点から中立的な立場で審査等を行うため、有識者を含めた適切な場を速やかに設置する等新たな料金体系の見直し方策を講じる。Air-NACCSについては、遅くとも激変緩和措置が終わる平成16年9月までに利用料金の体系を見直す。その際には規模の経済性に配慮しつつ合理的な料金設定の在り方について検討を行う。

(所管省の回答)

(1) 情報公開を通じた利用料金の透明性については、従来から、利用料金改定の際に所謂パブリックコメントを実施し、算定根拠・理由等の情報を提供するなど透明性に向けた努力を実施している(例:平成14年4月適用の海上システム利用料金及び航空システム利用料金に係るパブリックコメント実施:平成14年2月)。また、14年10月から施行される独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律に則り、利用料金に係る情報も含め、一層の情報公開に取り組んでいく予定である。

(2) 業務の実施について効率化を図るため、従来から、業務全般に亘る経費の見直しを行ってきており、電算機運転代行等の外部委託を引続き実施している。平成14年度においては、利用実態を踏まえ、通信回線の見直しを行ったほか、平成15年3月に稼働予定の netNACCSについて14年8月に競争入札を実施する等、更なる効率化に努めている。

(3) 対策本部決定にあるとおり、「Air-NACCS利用料金の遅くとも平成16年9月までの料金体系見直し」の指示に沿うため有識者を含めた適切な場を平成15年度には立ち上げるべく準備作業を行っているところである。これに資するため、14年9月10日、通関情報処理センター内に、料金の在り方を研究する特別チームとして「Air-NACCSの利用料金研究会」を立上げ、組織的な研究・調査のための体制を充実させている。

○ 総点検作業における検討結果<

(1) 総経費の一層の削減方策

NACCSの利用料金は、総経費を充足するように決められているので、利用料金を低廉化するためには、総経費を削減させるための方策を積極的に行なうことが必要不可欠である。既に削減の方策を講じてきているところであるものの、総経費の大宗をシステム開発・運営の費用が占めている以上、総経費を削減するためには、セキュリティの維持に配慮しつつ、主要業務であるシステム開発・運営等の事業費を更に削減させることは当然であり、同時に、人件費が大宗を占めている一般管理費についても、見直し、検討を行い、できる限り削減を図るべきである。

また、経費の削減を一層推進するためには、利用者に対し十分な説明、情報提供を行うことが重要であり、情報公開を一層進め、利用料金の透明性を高めることは、利用料金のより一層の低廉化に資することになる。<

システムの開発・更改時における費用対効果の面からの分析・検証については、所管省は効果面に言及しているものの、費用対効果の面からの分析・検証が必ずしも十分に行われているとは言い難い。また、NACCSのシステムの開発・運営が長年にわたり特定企業に固定しているという提起された課題も踏まえ、特定のメーカーに依存することになる可能性が高いメインフレームの役割の低下を図るとともに、競 争入札の徹底や業務の外部化等をより一層推進し、業務の実施について更なる効率化・適正化を図るべきである。

以上を踏まえ、情報公開を一層進め、利用料金の透明性を高めるとともに、システム開発に係る競争入札の徹底、業務の外部化等を通じて速やかに講ずべき措置の具体化に取り組むことにより、業務の実施について更なる効率化・適正化を推進し、さらに、システムの開発・運営において費用対効果の視点から十分に検討を行う等、一般管理費を含め一層の総経費削減策を図るべきである。

(2) 利用料金の柔軟な見直し、剰余金・引当金の還元ルールの策定等

利用料金については、5年目に全面見直しを行い、経済事情等に応じて弾力的に対応するという方法が行われている。しかしながら、急速にIT関連の技術革新が進んでいる状況に加え、我が国経済を巡る状況が大きく変動している中で4〜5年程度の中期需要を正確に予測することは困難であることを考えると、現行の見直し方策では、あまりに遅く、迅速性に欠けているといわざるを得ない。さらに、通関情報処理 センターには、多額の剰余金・引当金(14年3月末68億円)が累積されており、平成13年度単年度においても7億5千万円の利益金が生じている。このような多額の剰余金・引当金が累積するのは、上記で指摘したように現行の利用料金の見直し方法では、迅速性に欠け、柔軟な対応が十分できないことによるものに加え、多額の剰余金・引当金が生じた時に、利用者に還元させるための明確なルールがないことが要因であると考えられる。

以上を踏まえ、利用料金について、時々の経済事情、財務事情に応じて柔軟に料金の見直しを行うべきであり、その際、剰余金・引当金を利用者に還元するためのルールを明確にするとともに、3(1)で検討したように、NACCSの利用料金に係る諸経費削減の成果を速やかに利用料金に反映させ、利用料金の一層の低廉化を実現するべきである。

(3) 料金体系の見直しのための第三者機関の設置

平成13年度対策本部決定において、第三者機関は速やかに設置することとされており、センター内に設置した「Air-NACCSの利用料金研究会」で行われている第三者機関を準備するための作業を進め、できるだけ早い時期に有識者及び利用者による第三者機関を設置すべきである。その第三者機関においては、Air-NACCSの利用料金の在り方について、コスト削減の方策、規模の経済性に配慮した料金体系等、今後の検討内容、見直しの方向性等を含めて検討すべきである。検討の際には、議事録を公開するとともに、必要に応じてオブザーバー参加を認めるなど、中立性・透明性を確保すべきである。

また、Sea-NACCSについても、できるだけ早い時期に有識者及び利用者による同様な第三者機関を設置し、Sea-NACCSの料金体系の在り方について、多角的な視点から中立的な立場で検討を行うべきである。

以上を踏まえ、Air-NACCSの利用料金に関する有識者及び利用者による第三者機関を平成15年度のできる限り早い時期に設置すべきである。その第三者機関において、コスト削減の方策、規模の経済性に配慮しつつ合理的な料金設定の在り方等、今後の検討内容、見直しの方向性等について検討を行うべきである。その検討を行う際には、広く情報を公開し、例えば議事録の公開や必要に応じてオブザーバ ー参加を認めるなど、できる限り中立性、透明性を確保すべきである。

さらに、Sea-NACCSに関しても、多角的な視点から中立的な立場で利用料金の在り方について検討するため、Air-NACCSと同様な有識者及び利用者による第三者機関をできる限り早期に設置すべきである。

○ 具体的提言

以上を踏まえ、所管省は、市場アクセスの一層の改善に向けて通関情報処理センターにおいて、以下の措置が講じられるよう適切な対応 を取るべきである。

(1) 情報公開を一層進め、利用料金の透明性を高めるとともに、システム開発に係る競争入札の徹底、業務の外部化等を通じて速やかに講ずべき措置の具体化に取り組むことにより、業務の実施について更なる効率化・適正化を推進し、さらに、システムの開発・運営において費用対効果の視点から十分に検討を行う等、一般管理費を含め一層の総経費削減策を図るべきである。

また、利用料金について、時々の経済事情、財務事情に応じて柔軟に料金の見直しを行うべきであり、その際、剰余金・引当金を利用者に還元するためのルールを明確にするとともに、諸経費の削減の成果を速やかに利用料金に反映させ、利用料金の一層の低廉化を実現す るべきである。

Air-NACCSの利用料金に関する有識者及び利用者による第三者機関を平成15年度のできる限り早い時期に設置すべきである。その第三者機関において、コスト削減の方策、規模の経済性に配慮しつつ合理的な料金設定の在り方等、今後の検討内容、見直しの方向性等について検討を行うべきである。その検討を行う際には、広く情報を公開し、例えば議事録の公開や必要に応じてオブザーバー参加を認めるなど、中立性、透明性を確保すべきである。

さらに、Sea-NACCSに関しても、多角的な視点から中立的な立場で利用料金の在り方について検討するため、Air-NACCSと同様な有識者及び利用者による第三者機関をできる限り早期に設置すべきである。

9 けん引自動車及び被けん引自動車に係る車検制度の改正等

○ 提起された課題

キャンプ用トレーラーは、高額で、保管場所の確保も容易でないことから、レンタル利用の要望が多い。

しかし、我が国の現行車検制度では、キャンプ用トレーラー(被けん引自動車)はけん引する自動車と連結した状態での検査が求められ、キャンプ用トレーラーをけん引できる自動車は、予め個別に車検証に記載された車名・型式の自動車に限定されていることから、自己の保有する自動車に、レンタルしたキャンプ用トレーラーを連結させて走行することは、事実上、不可能となっており、輸入キャンプ用トレーラーの普及が阻害された状況となっている。

一方、欧米においては、けん引自動車に当該自動車のけん引能力を表示するという方式が導入されており、利用者は、その自動車のけん引能力に応じて被けん引自動車を自由に選択することができる制度となっている。

以上を踏まえ、国土交通省は、現行車検制度を改正し、けん引自動車のけん引能力に応じ、被けん引自動車を自由に選択・利用できるようにすべきである。[11FYプロセス駐日米国大使館]

○ 所管省庁(国土交通省)による措置の概要(案件を巡る背景)

<平成11年度対策本部決定>

けん引自動車及び被けん引自動車に係る検査・登録に関し、以下の対応を取る。

・キャンピングトレーラーのレンタルでの利用に向け、キャンピングトレーラーを予め登録した自動車以外のものでもけん引を可能とするために、個々の自動車に、その自動車がけん引可能な車両の重量の上限を自動車製作者が表示するという欧米型の方式を導入することの可否を含めて、キャンピングトレーラーの登録時の手続きの簡素化について、直ちに検討を開始し、遅くとも平成12年中にはその検討結果を出す。

<所管省回答>

国土交通省では、キャンピングトレーラー登録時の手続きの簡素化について、有識者等による検討会を設置し検討を行ったところ、平成12年12月に検討結果を取りまとめている。

現在は、この検討結果を受けて、トレーラーの自動車検査証に牽引可能な車名・型式を記載する現行制度を維持しつつ、簡素化された代替的な制度として、連結装置を取り付けた自動車について、関係団体から提供されたデータをもとにユーザーから記載事項変更の申請が あった場合には、原動機、ブレーキ、連結装置の性能等から求められる最大牽引重量(概ね2トンを超えない範囲)を自動車検査証の備考欄に記載し、その数値を超えない範囲でトレーラーを牽引することができるようにするべく、関係団体からのデータ提供方法、牽引に係る関係者間の役割分担の明確化、連結装置の技術的要件等について具体的な検討を引き続き行っているところである。

今後、関係団体からの許容牽引重量等に係るデータの提供方法、牽引に係る関係者間の役割分担の明確化、欧州等で用いられている連結装置の技術要件、実施時期等について、具体的な検討を更に進め、所要の法令上の措置を講じることとしている。

○ 総点検作業における検討結果

本件については、本会議による「基準・認証制度等に係る市場開放問題についての意見」(平成12年3月16日、市場開放問題苦情処理推進会議)において、「既に欧米で実施されている方法を我が国に導入するか否かの検討には長い期間をかけるべきではない。」と指摘しているところ。

一方、所管省は、「キャンピングトレーラー登録時の手続きの簡素化について、有識者等による検討会を設置し検討を行ったところ、平成12年12月に検討結果を取りまとめている。」としているが、この検討結果が出された平成12年12月から2年以上を経過した現在、未だ簡素化 の措置は実施されておらず、問題提起者からも速やかな実施が求められている状況となっている。

この未だ簡素化の措置が実施されていない理由について、所管省は、平成12年12月の検討結果において課題とされていた、1) 関係者 (自動車メーカー、トレーラー業界等)からの最大けん引重量に係るデータの提供、2)けん引に係る関係者間の役割分担、3) 連結装置の技 術要件、4) 安全なけん引を確保するための情報提供についての検討が必要であり、これらの検討についての関係者間の利害が対立し、所管省による調整が難航したことを挙げている。

また、今後の予定として、所管省は、「今後、関係者のコンセンサスが得られ次第、関係法令の準備、パブリックコメントの募集やWTO通報等の手続きのほか、ガイドブックの作成など必要な作業を行い、来年度(平成15年度)末を目途に所要の措置を完了する予定である。」としている。

しかし、本件に係る本会議意見が出されてから約3年、また、上記検討会の結論が出されてから2年以上を経てもなお、簡素化の措置が実施されていない状況となっており、速やかに簡素化の措置を実施すべきである。また、そのためには、実施に向けた具体的な作業工程を 公表するなどの方策を直ちに講ずるべきである。

なお、本件制度改正に当たり、現在行われている関係者間の調整ポイントとされる自動車登録の申請・検査における自動車メーカー、ユーザー、所管省等関係者の責任の所在の範囲については、広く意見を聴取し検討する必要があると思われ、所管省は、パブリックコメントに意見を求めることを含め検討すべきである。

以上を踏まえ、所管省は、パブリックコメントの募集時期やWTO通報等の手続き時期等実施に向けた具体的な作業工程を公表し、遅くとも平成15年度中には確実に実施するよう、迅速な対応をとるべきである。

○ 具体的提言

以上を踏まえ、所管省においては、市場アクセスの一層の改善に向けて以下の措置を講ずることを求める。

けん引自動車及び被けん引自動車に係る車検制度の改正について、パブリックコメントの募集時期やWTO通報等の手続き時期等実施に向けた具体的な作業工程を公表し、遅くとも平成15年度中には確実に実施するよう、迅速な対応をとるべきである。<

参考資料

  1.  OTO案件の総点検調査票概要(PDFファイル)PDF形式へのリンク
  2.  OTO推進会議及びOTO推進会議専門家会議の開催状況(PDFファイル) PDF形式へのリンク