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市場開放問題苦情処理対策本部決定の検証結果
平成15年度市場開放問題苦情処理推進会議報告書(平成16年3月29日)

平成16年3月29日
市場開放問題苦情処理推進会議

本報告書は、平成15年度に市場開放問題苦情処理推進会議が専門家会議において審議した「OTO案件の総点検(平成15年3月)」、「平成13年度問題提起プロセス(平成14年3月)」における市場開放問題苦情処理対策本部決定の検証の結果、ならびに苦情処理部会(第20回、第21回)において審議した結果を取りまとめたものである。

市場開放問題苦情処理対策本部におかれては、本報告書を最大限尊重し、対策本部決定の所期の成果が十分上がっていない事項については、着実かつ速やかに措置の実施に努められたい。

I.総括的所見

昭和57年1月に誕生した市場開放問題苦情処理体制(OTO)は、平成6年2月に機能強化が図られてから、今年で10年の節目を迎えた。

OTOは、これまでに1,000を超える苦情を受け付け、処理することを通じて、我が国市場アクセスの改善に取り組んできた。しかしながら、類似した案件が繰り返し苦情として申し立てられていることから、平成15年度の市場開放問題苦情処理推進会議(OTO推進会議)では、市場開放問題苦情処理対策本部(OTO対策本部)決定について、所期の成果が着実に上がり苦情そのものが解決に至ったか最終段階までフォローするため、「OTO案件の総点検」、ならびに「平成13年度問題提起プロセス」において決定された事項の検証を行った。具体的には、専門家会議を4回開催し、平成14年度、平成13年度に対策本部決定がなされた13案件の各事項に関して、その実施時期が守られているか、所期の効果が着実に上げられているか等の観点から進捗状況の検討を行った。

また、個別の苦情への対応として、重要な案件1件について苦情処理部会を2回開催し、検討を行った。

1.市場アクセスを改善する措置の実施

本年度の専門家会議における検証の結果、平成14年度、平成13年度に対策本部決定された事項は、概ね実施に移されていることが確認された。また、本年度に苦情処理部会を開催して検討を行った苦情案件については、所管省から解決に至るための措置につき方針が示された。これらの措置の実施により、我が国の市場アクセスは以下のような改善が期待される。

(1)規制/基準・認証制度の国際整合化

我が国の規制や基準・認証制度が諸外国と異なるために、外国で流通する財の輸入が認められない、あるいはそうした財の我が国における普及が妨げられることがある。OTOがこれまで取り組んできた市場開放問題の多くも、こうした問題を中心とするものであった。規制や基準・認証制度の国際整合化に向けた取り組みは、我が国の市場アクセスを改善し、国内における新技術の導入・開発に寄与するものであるとともに、消費者に多様な財の選択を与えるものとして、極めて重要である。

1)輸入を妨げる規制の見直し

今般検証の結果、平成13年度の対策本部決定に基づき、我が国における毒物及び劇物を運搬する際の容器の基準を国際基準に整合化させる措置が講じられたこと、また、平成14年度の対策本部決定に基づき、外国で流通する食品添加物でありながら我が国では未指定であるものについて、いくつか指定に向けた対応が行われていることが確認された。これらの措置により、毒物及び劇物の輸入が円滑化され、また、外国で流通する食品添加物を含む食品の輸入が進むことが期待される。

2)輸入財の国内普及を妨げる規制の見直し

我が国の規制や基準・認証制度が、直接的に財の輸入を妨げない場合でも、輸入した財の国内における普及を妨げ、結果的に輸入阻害的な効果をもつことがある。

我が国の車検制度では、欧米諸国と異なり、キャンピングトレーラにけん引自動車と連結した状態での検査を求めているため、結果的にキャンピングトレーラの普及・輸入を妨げているとの指摘があった。今般検証の結果、平成14年度の対策本部決定に基づき、けん引可能な重量の範囲内ならば、不特定のキャンピングトレーラをけん引できるよう車検制度が改正されたことが確認された。これにより、今後、キャンピングトレーラの普及・輸入が進むことが期待される。

また、本年度の苦情処理部会では、外国で普及している住宅の防蟻に関する新技術(ベイトシステム)が我が国の任意規格である住宅性能表示制度で評価対象となっていないことが、当該技術の普及の妨げとなっているとの苦情案件について検討を行った。検討の結果、所管省より、住宅性能表示制度において当該技術を認めるとの方針が示されたことから、今後、同技術の普及、ならびに関連する財の輸入が進むことが期待される。

3)外国検査機関の登録を進めるための措置の実施

外国から製品を輸入する際に必要とされる我が国の基準・認証制度への適合性評価の検査については、国内の機関に依頼せざるを得ないことが多く、費用や利便性の面で輸入業者等への負担になっているとの問題がある。

こうした負担を軽減するため、JAS制度の登録認定機関や、建築基準法上の承認認定機関及び承認性能評価機関では、外国の検査機関を認定する仕組みが設けられているが、必ずしも登録が進んでいないとの指摘があった。今般検証の結果、平成13年度、および平成14年度の対策本部決定に基づき、いずれの制度でも申請書類の一部について英語による表記を認めるなど、外国の検査機関の登録を進めるための措置が講じられていることが確認された。今後、外国機関の登録が進み、輸入業者等の負担が軽減されることが期待される。

(2)輸出入・港湾に関連する事業の効率化の推進

我が国の輸出入・港湾に関連する事業には、事業の安定を図る等の観点から、参入規制が行われているものや、公益法人等に委ねられているものがあるが、こうした事業では市場原理が働かないため、輸入業者等に非効率性に起因するコスト面の負担をもたらすことになる。こうした事業の効率化を推進し、輸入業者等の負担を軽減することは、関税率の引き下げと同様に輸入価格への楔(くさび)を削減する効果があると考えられる。

我が国の港湾運送事業については、平成12年に主要9港において需給調整規制が廃止され、免許制を許可制にするとともに、料金の認可制が事前届出制とされたところであるが、今般検証の結果、平成14年度の対策本部決定に基づき、主要9港以外の地方港についても、平成16年度中に同様に措置するための取り組みが進められていることが確認された。今後、地方港においても事業者間の競争が生まれ、港湾の運送コスト等の一層の縮減が図られることが期待される。

また、輸入食品等の検査を行う指定検査機関が公益法人に限定されているとの問題については、平成13年度の対策本部決定に基づき、民間への開放が実現したことが確認された。今後は、民間検査機関の参入を通じて市場原理が働き、検査の効率化や検査費用の低廉化が実現することが期待される。

このほか、NACCS(通関情報処理システム)の利用料金が、その運営・管理を行う独立行政法人(平成15年9月までは認可法人)通関情報処理センターの総経費を賄うように決められているために、コスト削減のインセンティブが働かず、利用者に過度の負担となっているとの指摘がある。今般検証の結果、平成13年度ならびに平成14年度の対策本部決定に基づき、通関情報処理センターにおいて経費削減のための努力が進められていること、また利用料金に関する有識者及び利用者による第三者機関が設置され、利用料金のあり方について検討が進められていること等が確認された。今後は、これらの取り組みを通じてNACCSの利用料金の低廉化が進み、利用者の負担が軽減されることが期待される。

(3)輸出入・港湾関連手続きの改善

我が国における輸出入・港湾関連手続きを改善することは、輸入業者等への時間的・経済的負担を軽減する措置であるとともに、我が国における物流面の効率化や、港湾の国際競争力の強化をもたらすものである。

今般検証の結果、平成13年度の対策本部決定に基づき、我が国の植物検疫の透明化・合理化を図るための措置として、消毒命令書の全件交付等が実施されていることが確認された。また、平成14年度の対策本部決定に基づき、簡易申告制度の継続的輸入要件が緩和されたほか、シングルウィンドウ・システムの供用が開始されるなど、輸入手続の簡素化・迅速化が進められていることが確認された。さらに、通関・検疫業務の24時間、365日の実施の実現に向けた取り組みも進められていることが確認された。これらの取り組みにより、輸入業者等への時間的・経済的負担が軽減され、我が国への輸入が円滑化することが期待される。

2.残された課題

今般の検証作業を通じて、平成14年度ならびに平成13年度に対策本部決定された事項が概ね実施に移されていることが確認された。しかしながら、専門家会議における検討の過程で、案件によっては問題提起者等から所管省対応を不十分とする意見が寄せられたほか、我が国の市場開放を進める上での課題がいくつか明らかとなった。また、本年度の苦情処理部会で検討を行った案件については、解決に向けた措置がとられることとなったものの、苦情が生じた経緯における問題点も明らかとなった。本年度の検討を通じて明らかとなった課題は以下のとおりである。

(1)新技術への対応

本年度の苦情処理部会で検討を行った案件は、平成12年に創設された住宅性能表示制度における防蟻技術の評価基準が、国内の既存の技術のみを想定したものであったことが苦情の原因となったものであった。当該案件については、制度の運用面での解決が図られることとなったが、法整備に際して、外国で普及しているような新技術を視野に入れることの重要性が明らかとなった。事務局に寄せられる最近の個別苦情には、新たな法整備にともなうものも多いが、外国で普及しているような新技術は、法整備に際して十分考慮されるようにすべきである。また、法整備当初に想定されていなかったとしても、本件のように柔軟な対応を進められるところは積極的に進めるべきである。

また、法改正が必要となる場合には、将来の新技術に対しても適応が可能となる形で措置することが望ましい。本年度の検証作業では、毒物及び劇物を運搬する容器の基準の改正が、国際基準を引用する形で実施されたことが確認されたが、こうした措置は、我が国における基準の国際整合性が将来的にも保証されるものとして、類似の案件への対応にも参考とされるべきものである。

(2)民間機関の活用の推進

今般の検証に際しては、我が国の市場アクセスに密接に関連する事業が公益法人等に委ねられていることによる問題も明らかとなった。

平成13年度に指摘があった植物検疫協会のくん蒸への関与の問題については、対策本部決定に基づく所管省の対応にもかかわらず、問題提起者等からは一層の改善が期待されるとの意見が寄せられた。また、平成14年度の対策本部決定に基づいて外国で流通する食品添加物の指定に向けた作業を進めるにあたり、所管省が特定の公益法人にのみ作業を依頼し、そのことが作業の進捗にも影響を及ぼしている可能性も指摘された。このほか、NACCSの管理・運営を担う通関情報処理センターでは、対策本部決定に基づいて第三者機関を設置し、利用料金のあり方について検討を進めているところであるが、問題提起者等からは、経費削減や利用料金引き下げのための方策に関する課題が指摘された。

我が国の公共サービス分野において、事業を公的な関与の下で民間の非営利事業者にゆだねる場合が多い等のいわゆる「官製市場」の問題は、総合規制改革会議(「規制改革の推進に関する第3次答申」(平成15年12月22日))でも指摘の事項である。

我が国の市場開放を推進する観点からも、市場アクセスに密接に関連する事業への公益法人等の関与は必要最低限なものにとどめ、民間機関の活用を推進すべきである。

(3)対策本部決定の着実な実施

1)措置の実効性の確保

今般検証に際しては、対策本部決定に基づく措置の実効性が必ずしも確保されていないとみられる事項もあった。

平成14年度の対策本部決定において、措置の実効性を確保することとされていた港湾運送事業の規制緩和については、問題提起者等から、具体的成果がみえにくいとの意見が寄せられた。一方、平成7年度から徹底が不十分とされていた植物検疫の消毒命令等の理由の明示については、問題提起者等から、状況の改善を評価するとの意見が寄せられ、所管省の取り組みにより、措置の実効性が確保されたことが確認できた。

対策本部決定に基づく措置の実効性を確保するにあたっては、問題提起者等の評価を聴取することが不可欠である。今般検証に際して、推進会議は、検討の場に問題提起者等を招致して意見を聴取することの重要性を確認した。また所管省は、対策本部決定の実施にあたり、措置に対する問題提起者等の評価を聴取することにより、措置の実効性を確保するよう対応することが望まれる。

2)具体的な実施時期・目標の明示

今般検証に際しては、対策本部決定に基づく措置の実施が最終段階まで至っていない事項もみられた。

対策本部決定の着実な実施には、具体的な措置の実施時期を明示することが極めて重要である。今般、平成14年度の対策本部決定において速やかに行うこととされていた食薬区分の見直しについては、所管省より、3年計画で情報の整理・調査等行った上で見直しを行うとの方針が示された。一方、平成11年度に問題提起がなされ、検討に年月を要していた食品検査機関の民間への開放については、法改正の時期を明示した平成13年度の対策本部決定に基づき、措置が実施に移されたことが確認された。

このほか、対策本部決定に基づく措置に関して具体的な目標を明示することも、着実な措置の実施に資するものである。港湾運送事業の規制緩和等に関しては、今般、問題提起者等から具体的な目標の提示への要望が表明されたところである。また、検証に際して明らかにしたように、対策本部決定の実施にあたり、人員や費用等に関する措置が必要となる場合には、これらについても具体的な目標を明示することが望まれる。

なお、対策本部決定の実施が最終段階にまで至らなかった事項については、本年度と同様に、繰り返し検証を行うとともに、所期の成果が十分に上がっていない場合には、その成果が一刻も早く実現できるよう、積極的に働きかけることが重要である。

(4)市場開放問題の総合的把握

新たな法整備にともなう最近の苦情においても、提起される問題は、基準・認証制度の国際的な整合性など、過去の建議や意見でも指摘された内容であることが多い。本年度の苦情処理部会での検討に際しても明らかにしたように、苦情の検討にあたっては、過去の審議の経緯等との関係も踏まえた上で、類似案件への適用も念頭に置くことが重要である。

また、関連する市場開放問題を総合的に把握し、当該苦情の位置付けを明確にすることにより、苦情の抜本的解決を図ることも重要である。今般検証に際し、輸入手続きの簡素化・迅速化の検討に関連して我が国のFAL条約(国際海上交通の簡易化に関する条約)締結が遅れていることへの指摘を行ったところであるが、関連する苦情・問題を一体として取り扱うことの重要性は、平成10年の総点検作業においても明らかにしたものである。特に、このところ外国政府等がOTO以外の枠組み(総合規制改革会議やWTOの紛争解決手続・委員会審議等)を活用するケースが増えており、我が国の市場開放問題を総合的に把握する必要性は一層高まっている。OTOとしては、平成16年度の速やかな設置が予定されている「規制改革・民間開放推進会議」ならびに「規制改革・民間開放推進本部」(仮称)との緊密な協力を進めるとともに、OTO特有の機能を積極的に活用していくことが求められている。さらに、OTOの活動を通じた我が国の市場開放努力について、内外への周知徹底を図るべきである。

3.より効果的な苦情処理を目指して

平成6年にOTOの体制が強化されてから10年が経過したが、我が国の市場開放問題を取り巻く情勢にも変化がみられる。

OTOの体制が強化された翌年(1995年)にWTOが発足し、多国間の枠組みの下での紛争解決手続が強化されたほか、最近では世界的にFTAが重要な通商政策課題と位置付けられるようになっている。この間、我が国はOTOにおける取り組みをはじめとして、一貫して市場開放に向けた努力を続けてきた。こうした中で、関税や輸入制限等の伝統的な貿易障壁は農業等一部を除き大幅に削減されており、我が国をめぐる対外経済摩擦は全般的に沈静化している。しかしながら、基準・認証制度や輸入手続等に係る市場開放問題は依然として残っており、問題の解決に向けて取り組みを進めることは、引き続き重要なものとなっている。

問題とされやすい関税や輸入制限以外にも、一件一件精査しなければ、非関税貿易措置となっていることが分からない政府の措置が存在する。OTOにおける審議の結果、このような措置を発見することがあった。OTOの活動は、このような措置を減少させる効果がある。非関税貿易措置の問題は、日本だけではなく、世界各国共通の問題である。OTOの活動について、WTOの場等、機会を捉えて各国政府や関係諸機関に周知することが望ましい。

本年度の推進会議では、類似した案件が繰り返し苦情として寄せられていることに鑑み、苦情そのものが解決に至ったか最終段階まで確認するために、対策本部決定の検証を行ったが、過去の審議の経緯等が必ずしもその後に活かされていない事例のみられることは、継続的な課題となっている。こうした問題の抜本的な解決を図るためには、類似案件への適用も念頭に置いた対応が必要であるとともに、苦情の検討にあたっては、OTOに寄せられた苦情のみならず、OTO以外の枠組みで提起されている要望についても把握に努め、問題の所在の全体像を明らかにするよう努めることが重要である。体制強化から10年の節目を迎え、OTOとしても情勢の変化や課題への対応が求められている。

また、今般の検証作業を通じて、対策本部で決定した事項を着実に実施に移すことの重要性とともに、苦情を受け付けてから処理するまでの過程を一層迅速化させることの必要性も明らかとなった。本年度の苦情処理部会では、極めて短期間のうちに苦情の解決が図られ、処理の迅速化には同部会を活用することが有効であることも明らかとなった。迅速な対応の必要性については、平成13年度、平成11年度の問題提起プロセスに際しても指摘したところであるが、OTOへの信認を高めるためにも、一層の迅速化が必要となっている。

一方、OTOを取り巻く情勢が大きく変化する中で、OTOにおける市場開放努力の意義は再確認されるべきである。今般検証に際して、推進会議は、OTOにおける市場開放努力は、相互主義を超えて、我が国が自ら市場アクセスの改善に取り組むものであることを改めて強調した。我が国の市場開放を進めることは、特定の製品等の輸入や普及の促進により消費者の便益に資するばかりでなく、貿易・投資にともなう様々なコストの削減や国内市場における競争の高まりを通じて、我が国経済の活性化にも資するものである。OTOにおいて自主的な市場開放の努力を進めることは、我が国経済全体の便益に資するものであることは再認識されるべきである。

II対策本部決定の検証結果

1 動植物・食品関係

1-(1) 植物検疫の透明化・合理化(平成13年度問題提起プロセス)

○対策本部決定:平成14年3月20日

○問題提起者等:東京商工会議所

○所管省庁等:農林水産省

○問題提起内容

(1)消毒命令等の理由の明示の徹底

消毒命令等に当たり、その具体的理由(輸入植物に付着している検疫有害動植物名等)が輸入業者に伝わらないまま、消毒等が求められている。農林水産省は、消毒命令等の理由を必ず明示し、不要な消毒等が行われないよう、所要の措置を講ずるべきである。

(2)「消毒(廃棄)命令書」の交付

輸出国事業者に生産行程の改善を促したり、損害賠償請求を行うために、「消毒(廃棄)命令書」を必要とする輸入業者が存在する。しかし、この「消毒(廃棄)命令書」の交付を受けるためには、毎回、交付の要求をしなければならず、また、この命令書を仲介者を経て輸入業者が受けるには、数日以上の期間を要する場合があり、輸出国事業者に対する請求等に障害となっている。

したがって、「消毒(廃棄)命令書」については、別途の申請を求めることなく、命令と同時に、全件について交付すべきである。

(3)消毒方法の改善

病害虫に対する植物検疫における消毒方法の基準は、臭化メチル又は青酸ガスによるくん蒸等となっている。農林水産省は、個々の病害虫に応じ、現行よりも人体、物資、地球環境に与える影響の少ない消毒方法を検討し、導入すべきである。

(4)輸入検査及び消毒の実施方法の改善:輸入検査開始時刻(目安)の通知

輸入検査の開始時刻について、現在、個々の事業者毎の検査開始時刻(目安)は示されておらず、場合によっては長時間の待機を余儀なくされる状況。農林水産省は、事業者の利便性向上を図るため、予め個々の事業者毎の検査開始時刻の目安を示すべきである。

(5)植物検疫協会による関与の排除

植物検疫協会が存する港においては、ほとんどの輸入業者は、同協会と委任契約を締結し消毒等に係る事務を委任している。

景気低迷が続く中、中小企業にとっては、同協会に係る経費も負担となっており、また、支払った経費に見合う事務代行もないことから、農林水産省は、くん蒸の実施について、同協会による関与を廃止し、防疫所、くん蒸実施業者、処置希望者の3者のみで完結するような環境を整備すべきである。

(6)植物防疫官等の業務の見直しによる全件即日検査の実施

生鮮野菜類を中心とした輸入が急増している海港及び空港については、当該海港及び空港を担当する植物防疫所の検査処理能力を超える場合には、当日検査が行われず翌日以降の検査となる場合がある。しかし、特に生鮮品について翌日回しとなった場合の経済的損失は大きく、全件について即日検査をすべきである。

農林水産省は、現在の植物防疫官等の業務を抜本的に見直し、増加する輸入量に対応する対処方策を至急確立すべきである。

○対策本部決定(平成14年3月20日)

植物検疫の透明化・合理化に関し、以下の対応を取る。

(1)消毒命令等の理由を明示するため、1)電算化を図ることにより検疫有害動植物名等を明記した文書の全件交付を実施できる体制を整備し、2)「消毒(廃棄)命令書」様式に検疫有害動植物名等消毒命令等の具体的理由を明示する欄を設け明確化を図る。

(2)「消毒(廃棄)命令書」の交付を必要とする者の便宜を図るため、毎回交付を希望する輸入業者等を事前登録し、当該輸入業者等については、個別の交付要求がなくとも「消毒(廃棄)命令書」を自動的に交付する制度を導入する。

(3)消毒方法について、今後、更に新技術の開発に積極的に取り組み、対象植物等に与える影響の少ない消毒方法や、臭化メチルを用いない又は使用量の少ない消毒方法を確立し採用するよう努力する。

(4)輸入業者等の負担を軽減し、利便性の向上を図るため、輸入業者等毎の検査開始時刻の目安を輸入業者等の照会に対応して通知できる方策について検討する。

(5)植物検疫協会を介さないくん蒸を希望する者が制限を受けることなくくん蒸処置がなされるよう、くん蒸実施に当たっては植物検疫協会を介す必要がないことの周知徹底を図る。

(6)植物防疫官の業務の効率化を図るとともに、例えば、植物防疫官の補助的業務の実施に、民間技術者や非常勤職員を活用する等季節的な輸入量の変動に応じ全件即日検査を実施するための対処方策を検討する。

○対策本部決定への対応状況

(1)「基準・認証制度等に係る市場開放問題について」(平成14年7月10日付け農林水産省生産局長通知及び農林水産省生産局植物防疫課長通知)により対処方針を示したところ具体的な方策としては例えば以下のとおり。

1)「輸入植物検査電算処理システム運用事業」等電子政府を実現させる各種手続の電算化の中でも最優先で取り組む手続に位置づけ、現在、植物防疫所においてシステム開発中である。

2)植物防疫法施行規則(昭和25年農林省令第73号)別記第11号様式に消毒命令等の具体的理由を明示して交付している。

(2)植物防疫所毎に「消毒(廃棄)命令書交付希望登録簿」を備え付け、輸入業者等からの希望により、品目別、和文・英文別にあらかじめ登録し、当該登録業者の貨物が輸入検査で不合格となった場合は、その都度、個別の交付要求がなくとも消毒(廃棄)命令書を交付している。

(3)現在、国内外で開発研究(炭酸ガスによるくん蒸等)が進められており、各植物防疫所においても更に積極的に開発研究に取り組んでいるところである。

(4)輸入業者等が閲覧できるよう当日予定される検査の一覧を掲示している。当該掲示に当たっては、検査を実施する植物防疫官の事務所出発予定時刻及び検査順路を記載する。また、輸入者が直接検査に立ち会う場合には、可能な限り詳細な検査開始時刻を輸入者に対し通知している。

(5)「植物検疫協会を介さないくん蒸の実施に関する周知について」(平成14年6月10日付け農林水産省生産局植物防疫課長通知)をもって、関係団体に周知するとともに、各植物防疫所長あてに適切な指導の実施及び植物検疫手続の透明化に努めるよう通知した。引き続き適切に対応する。

(6)季節的な輸入量の変動への対応として、繁忙期には、植物防疫官の補助的業務について非常勤職員の雇用等により業務の円滑化を図っている。また、コンピュータシステムの運用やデータベースの作成など民間の技術力を活用できる業務に関しては、外部委託等による効率的実施を図っている。

○問題提起者等意見

(1),(2)事前登録による「消毒(廃棄)命令書」の自動的な全件交付が実施された。また、商社名を登録することで自動的に不合格理由の通知が交付されるようになった。これらの状況の改善は評価できる。

(3)専門家による判断に基づき、国民が納得できる消毒方法が開発・採用されることを期待している。また、その判断基準や過程については、国民に適宜分かりやすい説明を行うようお願いしたい。

(4)輸入検査当日の予定が植物検疫事務所に一覧表示されるとともに、輸入者と業務委託関係にある管理者に確実に通知される事となった。立会い検査の時間を知ることで行動の無駄を無くすことができ、改善として評価できる。

(5)通関業者や輸入業者への普及が不完全な状態となっている。各植物防疫所やその関係団体、(社)全国植物検疫協会等へ通知するだけではなく、今後は通関業者や輸入業者への普及を図るためのより一層の改善が期待される。

(6)目下大きな混乱はないものの、夜間や土日の通関が実施された場合、人員の不足による検疫の遅れが懸念される。将来を考え、今から民間委託について検討する必要があるのではないか。植物検疫業務の透明性、競争原理の導入の面からも、植物防疫官の補助的業務(病害虫等の存在確認検査等)に民間技術者を活用するなど民間委託について検討していただきたい。

○検証結果

今回検証により、13年度に対策本部決定された事項のうち、消毒命令等の理由の明示、消毒(廃棄)命令書の全件交付、輸入検査開始時刻の通知については、農林水産省の取り組みにより、大幅な改善がみられたことが確認できた。その一方で、いくつかの事項については、問題提起者が、農林水産省に、より積極的な対応を求めていることも明らかとなった。

消毒方法の改善に関しては、問題提起者は、農林水産省の新技術開発への取り組み、あるいは新たな消毒方法を採用するための努力が不十分と認識しているようである。農林水産省におかれては、引き続き対策本部決定に従って、積極的な取り組み、更なる努力を続けることが求められる。

植物検疫協会による関与の排除に関しては、通知等による農林水産省の取り組みはある程度評価できる。しかしながら、審議の結果、周知は不十分であること、また実効性が十分に担保されていないことが明らかとなった。農林水産省は、審議の際に提示された問題提起者や委員の意見を参考としつつ、引き続き「周知徹底を図る」との対策本部決定に従い、周知徹底が実効を伴うものとなるよう、改善に努めることが求められる。

植物防疫官等の業務の見直しによる全件即日検査の実施に関しては、農林水産省から、非常勤職員の雇用や外部委託の実施等を行っている旨説明があったが、問題提起者からは、夜間や土日の通関の際に検疫が遅れる可能性への懸念とともに、より本格的な民間委託が必要との意見も表明された。なお、検疫業務の体制に関しては、平成14年度の総点検の際に、通関・検疫業務の24時間、365日体制の実現に向けて、所管各省が密接に連携を図ることや、業務の更なる効率化・省力化を推進すること等が、別途対策本部決定されており、農林水産省は同決定への対応も求められているところ。

このことも踏まえ、農林水産省は、問題提起者の意見を参考としつつ、対策本部決定の方針に基づいて、引き続き植物防疫官の業務の効率化を図るとともに、全件即日検査を実施できるよう対処方策を検討することが求められる。

1−(2) 食品検査機関の民間への開放(平成13年度問題提起プロセス)

○対策本部決定:平成14年3月20日

○問題提起者等:名古屋商工会議所

○所管省庁等:厚生労働省

○問題提起内容

検疫所から輸入食品の検査を求められた場合、厚生労働省の指定検査機関に依頼して検査を受けなければならないが、この指定検査機関は社団法人または財団法人に限られている。

指定検査機関は民間の参入が制限されているため競争原理が働いておらず、例えば検査にかかる期間や費用が検査前に提示されないなどサービスが低水準であり、また検査費用も高い。

したがって社団法人及び財団法人以外の民間を含む検査機関も指定検査機関として認めるべきである。

また、本件については、平成12年3月のOTO対策本部決定に基づき、公益法人以外の民間検査機関についても食品衛生法上の検査機関の指定対象とすることも含めた検査機関の在り方等について厚生労働省において検討が進められていると承知しているが、その検討状況を併せて御教示いただきたい。

○対策本部決定(平成14年3月20日)
食品衛生法の指定検査機関に関し、以下の対応を取る。

食品衛生法上の指定検査機関を民間にも開放するように、法律改正等必要な措置について具体的な内容を明らかにし、法律改正について、できる限り今国会中に、遅くとも次期国会では提案することを目指す。

なお、これについては、3月末閣議決定予定の行政委託型公益法人等改革の実施計画を踏まえたうえで、適切に対応する。

○対策本部決定への対応状況検査命令に伴う食品検査を行う指定検査機関について、従来の公益法人に加え民間検査機関も指定の対象とすることや、検査機関の指定制を登録制に変更すること等の措置を、食品衛生法の抜本的改正の中で講ずる。

指定検査機関の民間への開放等を盛り込んだ改正食品衛生法は、第156回国会において可決・成立し、平成15年5月に公布されたところである。

指定検査機関の民間への開放については、改正食品衛生法に基づき平成16年2月27日から施行されている。

○問題提起者等意見
「食品検査機関の民間への開放」については、時間がかかったが民間機関への窓口開放が実現され、感謝している。

○検証結果
今回検証の結果、検査機関の民間への開放等を盛り込んだ改正食品衛生法が本年5月に公布され、年月を要したものの、対策本部決定された方針が実施に移されたことが確認できた。

今後は、民間検査機関の参入を通じて競争原理が働き、より効率的な検査、輸入業者の負担の軽減が実現することが期待される。

厚生労働省には、今般の改正により民間参入が円滑に進むよう必要な措置を講じるとともに、改正法施行後の動向についても、所期の効果が上げられているかとの観点から、十分監視することを期待する。

なお、平成11年度の対策本部決定から年月を要した経緯に関し、厚生労働省の対応に不十分な点があったことは留意されるべきである。

1−(3) 外国で流通する食品添加物の開放(OTO案件の総点検)

○対策本部決定:平成15年3月19日

○問題提起者等:NNFAジャパン

○所管省庁等:厚生労働省

○提起された課題
 外国から食品を輸入する場合、その成分に厚生労働大臣が指定した以外の食品添加物が入っていると輸入が認められない。外国で安全が確認された食品添加物の入っている食品については、輸入を認めるべきである。

○対策本部決定(平成15年3月19日)

外国で流通する食品添加物の扱いに関し、以下の対応をとる。

(1)広く海外で流通し、安全が確認されているような一定の条件にあった食品添加物については、事業者等からの具体的申請を待つことなく、行政主導で、海外の安全データなどを参考に内部調査等必要な審議・検討を行い、日本で流通できない明確な理由がないものについては積極的に指定していく。また、審議・検討にあたっては、その内容について一層の情報開示を図る。

(2)具体的に審議・検討が予定されている46品目の未指定添加物については、行政主導で速やかに審議・検討を行い、その結果に基づき指定を行う。また、46品目以外の未指定添加物についても、一定の条件にあった要望の多いものについては、行政主導で引き続き審議・検討を行い、その結果に基づき積極的に追加指定を行っていく。この追加指定に際しては、具体的な対象品目、指定基準、スケジュール等について事前周知する。

○対策本部決定への対応状況
(1)食品添加物の指定に関しては、
1)JECFA(FAO/WHO合同食品添加物専門家会議)で国際的に安全性評価が終了し、一定の範囲で安全性が確認されているものであり、かつ、
2)米国及びEU諸国等で使用が広く認められており、国際的に必要性が高いことが予想されるもの
については、事業者等からの要請を待つことなく、指定の方向で、個別品目毎に安全性及び必要性を検討するという方針決定を行い、平成14年7月、薬事・食品衛生審議会においても了承を得ている。現在、本方針にそって、資料が整備できたものから食品安全委員会にその評価を依頼している。

情報開示については、食品添加物の指定の可否を検討する薬事・食品衛生審議会は公開で開催され、その資料は公表される。なお、食品健康影響評価を行う食品安全委員会も原則公開で運営されているものと承知している。

(2)食品安全基本法の施行に伴い、資料の整ったものから食品健康影響評価を食品安全委員会に依頼することとし、平成16年3月25日現在、8品目について既に評価を依頼した。

食品安全委員会の食品健康影響評価の結果を受けた後に、薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて指定を行うこととしている。

46品目以外の未指定添加物については、46品目についてまず対応することが第一であるが、上記条件に合致するものについては引き続き対応を図る所存である。また、香料についても上記条件に合致する6品目について、食品安全委員会に食品健康影響評価の依頼をしたところであり、その他の品目については必要なデータの収集等を進めているところである。食品安全委員会の評価、薬事・食品衛生審議会の意見を踏まえて、適切に対応する所存である。上記の1)、2)の条件に適合する香料についても、46品目の添加物と同様に対応を進めていく所存である。

○問題提起者等意見
(1)食品安全委員会への評価依頼の経緯、評価依頼品目、評価結果の取り扱いなどに関しては、情報公開の面での透明性が確保されていないように思われる。また、どのような食品添加物が調査の対象になり、審議・検討の過程での判断の基準、結論に至った理由などについても、情報開示されることが望まれる。さらに、これらの審議・検討の過程での業界・学会・消費者との密接なコミュニケーションがあってもよいと思われる。

(2)過去のほぼ1年間の間に幾つかの食品添加物が指定されているが、その大部分は業界からの指定申請に基づいて審議され決定されたものだと理解している。しかも、指定された食品添加物の使用が、主として「保健機能食品」に限定されているために、一般の食品・栄養補助食品には使用できないことになっている。今後も、食品添加物の指定が保健機能食品に限定した形で行われると考えられるところ、一旦このような形で指定された食品添加物を一般食品に適用拡大するためのルールを決めて、実行可能にして頂く必要があると考える。これらの指定に関しての、具合的な対象品目、指定基準、スケジュールについての透明性の確保にも留意して頂きたい。

○検証結果
平成14年度の対策本部決定の後、食品安全委員会が発足し、食品添加物の指定にあたってのリスク評価を担うこととなった。今回検証の結果、厚生労働省はいくつかの添加物については行政主導で同委員会にリスク評価を依頼しており、対策本部決定の方針に沿った対応を行っていることが明らかとなった。

しかしながら、審議において、食品安全委員会にリスク評価を依頼するまでの検討状況に関する情報開示が不十分との指摘があった。厚生労働省は、対策本部決定の方針に従い、検討内容について一層の情報開示に努める必要がある。

また、具体的に審議・検討が予定されている46品目の未指定添加物については、引き続き対策本部決定に従い、行政主導で速やかに審議・検討を行い、その結果に基づき指定を行うよう、一層の努力が求められる。

さらに、46品目以外の未指定添加物については、対策本部決定に従い、積極的な追加指定を行うにあたり、具体的な対象品目、指定基準、スケジュール等について事前周知する必要がある。

なお、検証に際して指摘があった食品添加物指定のスピードアップ、ならびにそのための民間企業の活用等の課題は、対策本部決定とも関連する重要な問題である。問題提起者等は、今後の扱いについて事務局に相談し、事務局は所要の対応を図られたい。

1−(4) 食薬区分の見直し(OTO案件の総点検)

○対策本部決定:平成15年3月19日

○問題提起者等:NNFAジャパン

○所管省庁等:厚生労働省

○提起された課題
L−カルニチンは、栄養補助食品、乳幼児用食品、スポーツドリンク等の成分として、ヨーロッパ各国やアメリカにおいて製造・販売されている。このL−カルニチンを含む健康食品を輸入したいが、L−カルニチンは、日本では薬事法上、専ら医薬品として使用されるべき成分として扱われているため、この成分を食品に使用することは認められず、この成分を含む食品は日本に輸入できないものとなっている。

しかし、L−カルニチンは、牛乳、牛肉、アスパラガス、米等様々な食品にも入っている天然の栄養素であり、これが専ら医薬品として取り扱われるのは納得できないので、食品としても扱われるようにして欲しい。

○対策本部決定(平成15年3月19日)
食薬区分の見直しに関し、以下の対応をとる。

(1)今回食品として流通できるようになったL−カルニチンと同様、通常海外で食品として流通・販売されているにもかかわらず我が国では「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」に収載されている成分本質(原材料)については、当該成分の食品成分としての含有量、安全性、機能に関する情報等を整理し、科学的な見地から必要な検討を行った上で、行政主導で食薬区分の積極的な見直しを行う。また、リストについては、速やかに見直しの具体的な対象品目、スケジュール等について明示する。

(2)食薬区分の見直しと併せて、それらの物質が食品添加物として指定を受ける等、食品として支障なく流通・販売できるように措置する。

○対策本部決定への対応状況
(1)平成15年度新規採択の厚生労働科学研究「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)の有効性及び安全性等の評価に関する研究」において、「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」に収載されている全ての成分本質(原材料)について、3年計画で、含有成分、安全性、生理活性等に関する情報を整理し、あわせて海外での状況を調査する。また、平成16年度予算として、食薬区分国際的整合性確保事業費を要求しており、海外における食薬区分の状況、健康被害情報、安全性等に関する科学的な情報について収集し、3年計画でデータベース化を図る予定。

上記の厚生労働科学研究の結果やデータベースの情報等を基に、科学的な見地から学識経験者の意見を聞いた上で、食薬区分の判断基準の見直しも含めて必要な検討を行い、上記の検討の結果、食薬区分を見直すことが適当と判断された成分本質(原材料)については、見直しを行う。

リストについては、上記の厚生労働科学研究において、「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」に収載されている全品目について、情報等を整理しているところであり、その結果を踏まえ、見直しの検討対象品目を選定することとしている。

(2)L−カルニチンについては、平成14年12月25日に都道府県等へ通知したところであり、今後とも、食薬区分の見直しにあわせて、個別に対応して参りたい。

○問題提起者等意見
(1)L−カルニチンの食品成分としての指定以後、新たな食薬区分の見直しに関する公表は行われていないように思われる。食薬区分の見直しに関する作業は進んでいると思われるが、いまだ公表には至っていないようである。

「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」に収載されている成分本質(原材料)の見直しに関しては、見直しに必要な判断基準、見直しのために必要とされる根拠の範囲等に関して明確なルールが定められていないように思われるので、これらの点について明らかにして頂くことが必要であると思慮する。

なお、食薬区分の見直しの対象となる品目のリスト、作業スケジュール等も明らかになっていないように思われる。

(2)食薬区分の見直しにより、「食品」のリストに収載されているにもかかわらず、食品添加物としての指定がない等のために食品製造に使用できない成分について、 食品添加物として指定するなどにより、食品添加物としての流通販売が可能になる措置は未だとられていないように思われる。

○検証結果

今回検証の結果、厚生労働省からは3年計画で情報の整理・調査、ならびにデータベースの整備を行い、その上で見直しを行うとの方針が示された。

しかしながら、政府としては「速やかに見直しの具体的な対象品目、スケジュール等について明示する」との対応を決定したのであるから、厚生労働省は対策本部決定に従い、速やかにこれを実施する必要がある。

さらに、「食薬区分の見直しと併せて、それらの物質が食品添加物として指定を受ける等、食品として支障なく流通・販売できるように措置する」との対策本部決定の趣旨に照らせば、ミネラルのように過去に食品と認められたものについても、食品として支障なく流通・販売できるように措置することが求められる。

厚生労働省には、対策本部決定された事項を着実かつ速やかに実施に移すよう所要の対応に努めること、さらに、その進捗状況について適宜事務局を通じて推進会議に報告することを求める。

1−(5)JAS制度の見直し/新たに導入された登録外国認定機関制度の活用(有機JAS)(OTO案件の総点検/平成13年度問題提起プロセス)

○対策本部決定:平成15年3月19日(OTO案件の総点検)
平成14年3月20日(平成13年度問題提起プロセス)

○問題提起者等:国内事業者

○所管省庁等:農林水産省

○問題提起内容等
・標準処理期間の設定(平成13年度問題提起プロセス)

登録外国認定機関の登録申請後、登録されるまでの期間については、何ら目安がなく、当該機関の利用を予定している者にとって、その事業計画等が全く立てられない状況となっており、また、登録に要する期間が長期化することを懸念し、申請を思い止まっている機関もある。したがって、農林水産省は、登録外国認定機関の登録申請から登録までの期間について、標準処理期間を設定すべきである。外国の製造業者等が登録外国認定機関から認定を受ける期間についても、何ら目安となるものがなく、標準処理期間を定めるよう各機関を促すべきである。

・登録外国認定機関を増加させるための措置(OTO案件の総点検(同旨、平成13年度問題提起プロセス))

(1)英語等による申請を認めるなど申請を容易にするための措置

登録外国認定機関の登録申請を行おうとしたところ、申請に係る書類及び資料を全て日本語で提出するよう求められ、登録申請に係る事務を中断している機関がある。農林水産省は、英語等による申請を認めるなど、登録申請を容易にするための具体的措置を講ずるべきである。

(2)「JAS制度と同等制度を有する国」要件の緩和

登録外国認定機関については、本来、当該機関が有する認定能力に着目すべきであり、国際的に信頼性が確立している機関(IOAS)に登録されている機関を活用することにより「JAS制度と同等制度を有する国」を要件としないこと等具体的措置を講ずるべきである。

○対策本部決定
(OTO案件の総点検:平成15年3月19日)

JAS制度の見直しに関し、以下の対応をとる。

(1)登録外国認定機関の申請に必要な書類について、外国機関等の申請負担の軽減を図り、登録申請を促進するため、英語での提出を認める書類についての検討結果を速やかに出し、直ちに実施する。

(2)「JAS制度と同等制度を有する国」を要件としないこと、またその場合には、国際的に信頼性が確立している機関(例えばIOAS)に登録されている機関を活用すること等JAS法の改正についての検討結果を出す。また、その際には、JAS制度見直しの中で、JAS制度と同等制度を有する国として指定されていない国の認定機関等であっても、十分な認定能力を有する認定機関については、登録外国認定機関として登録されることが可能となるための方策についての検討結果を示す。

(平成13年度問題提起プロセス:平成14年3月20日)

有機農産物等について、農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律(JAS法)に定められる登録外国認定機関制度の活用に関し、以下の対応を取る。

今回の問題提起を契機として新たに登録外国認定機関等の登録に係る標準処理期間を定め、その期間を3か月以内と設定したが、その実行に当たっては、事務処理の効率化等を図り申請の迅速な処理に努める。

(1)輸入業者等が円滑に登録外国認定機関を活用することができるよう登録外国認定機関の増加を図る観点から、登録申請に必要な書類等の一部について、英語による記載を認める等登録外国認定機関の登録を容易にするための具体的措置を検討する。

(2)輸入業者等がJAS制度と同等性を有する国として指定されていない国の機関についても登録外国認定機関として活用することを可能にし、登録外国認定機関の適正な運営・監督を確保するため、「JAS制度と同等制度を有する国」を要件としないこと、またその場合には、国際的に信頼性が確立している機関(例えばIOAS)に登録されている機関を活用すること等JAS法の改正について検討し、必要な措置を講ずる。

○対策本部決定への対応状況
 申請の迅速な処理に努めており、平成16年2月現在、欧州15機関、豪州7機関、米国4機関、カナダ3機関及びインドネシア1機関を登録したところである。当方からの照会に対する回答提出までの期間を除外すると平均的な処理期間は3か月以内となっている。

(1)登録外国認定機関の申請書類のうち、翻訳上の誤解が生じる可能性が少ない事項(下記1))及び添付書類(下記2)〜4))については、外国機関等の負担軽減を図るため、15年4月から英語による書類の申請を受け付けている。

〔英語による申請を認める書類〕
1)申請機関の名称及び住所並びに個人の氏名及び住所
2)役員の氏名及び住所
3)直近の財産目録又は貸借対照表
4)構成員の氏名又は名称

このことについては、「登録外国認定機関の登録申請書類について」(平成15年3月農林水産省消費・安全局長通知)をもって、関係国、関係団体に通知している。

(2)登録外国認定機関の登録における同等性の考え方については、登録認定制度全体との関連での検討が不可欠であるため、行政改革の観点から平成17年までに行うこととされているJAS制度における登録認定制度の見直しの一環として検討することとしている。

JAS制度における登録認定制度の見直しについては、現在、「JAS制度のあり方検討会」(第1回:15年10月開催)において検討が進められている。登録外国認定機関の登録における同等性の考え方については、本検討会において、「新たな社会ニーズに応えたJAS規格の在り方」の検討の一環として、本年の春頃を目途に議論することを考えている。

○問題提起者等意見
(特段の意見なし)

○検証結果
今回検証の結果、翻訳上の誤解が生じる可能性が少ない事項については英語による記載も認めるなど、農林水産省は概ね対策本部決定の方針に沿った対応を行っていることが確認できた。

農林水産省は、引き続き対策本部決定に従い、英語による登録申請を認める書類のさらなる増加が可能であるか等につき検討を進めるなど、登録外国認定機関の増加を図るための措置に取り組むことが求められる。

なお、対策本部決定された事項は、所管省自らが実施の義務を負っているものであり、農林水産省には、同等性要件の検討に関し、本年春頃までに対策本部決定を実施に移すための所要の対応に努めることを求める。

2 工業関係

2−(1) 家電リサイクル法に基づくリサイクル料金設定(平成13年度問題提起プロセス)

○対策本部決定:平成14年3月20日

○問題提起者等:在日大韓民国大使館

○所管省庁等:経済産業省、公正取引委員会

○問題提起内容
リサイクル料金は、品目毎に一律に決められており、小型の家電製品を製造・販売している韓国家電メーカーの価格競争力を結果的に弱めている。

製品の大きさを区分せずリサイクル料金を一律に設定することは、自由競争原理の阻害、家電リサイクル法の目的との乖離、消費者負担の拡大等の観点から問題があると思われ、家電リサイクル法第21条に従い、政府が積極的に介入し、指導・是正すべき事案であると考えられる。

したがって、リサイクル原価に応じてリサイクル対象品目(TV、冷蔵庫、エアコン、洗濯機)ごとに大小を区分して、リサイクル料金を設定するよう、日本国政府は指導・是正すべきである。

○対策本部決定(平成14年3月20日)
特定家庭用機器再商品化法(家電リサイクル法)に基づくリサイクル料金設定に関し、以下の対応を取る。

(1)リサイクル料金の適正原価について情報の公開に努め透明性を確保する。また、これによりリサイクル料金が今後の製品の多様化や企業努力等の状況により生ずるリサイクル・コストの変化に見合うものとなるよう十分監視する。

(2)事業者が共同して具体的なリサイクル料金の額を決定することや、新たなリサイクル・システムの構築が不当に制限されること等により、製品市場及びリサイクル市場における競争が制限されることのないよう注視する。

○対策本部決定への対応状況
(1)平成13年11月14日開催の産業構造審議会廃棄物・リサイクル小委員会パソコン3Rワーキンググループ及びパソコンリサイクル検討会の第4回合同会議の資料4−4に添付された参考資料2において、東京都及び横浜市の家電4品目の処理費用と主要家電メーカーが設定したリサイクル料金を比較した情報を提供した。更に、経済産業省のホームページにおいて本資料を公開しているところ。また、平成14年12月に自治体を通じて一般向けに配布した広報パンフレット「みんなで未来へ、家電リサイクル法」において、前記の料金比較情報を掲載し、リサイクル料金の情報公開に努めた。

家電リサイクル制度の着実な定着及び円滑な施行が図られるよう監視するとともに、新技術を採用した製品のリサイクル技術の研究開発、リサイクル容易設計や再生プラスチックス利用技術の調査研究等を支援し、製品の多様化等によるリサイクルコストの高騰の抑制を図っている。[経済産業省]

(2)事業者が共同して具体的なリサイクル料金の額を決定することや、新たなリサイクル・システムの構築が不当に制限されること等により、製品市場及びリサイクル市場における競争が制限されることのないよう引き続き注視している。[公正取引委員会]

○問題提起者等意見
(特段の意見なし)

○検証結果
 今回検証の結果、リサイクル料金の適正原価の情報公開に関して、経済産業省からは、適正原価の把握は継続的な課題となっている旨説明があった。この点については、粗大ゴミ処理費用との比較は、当面の対応としては評価できるものの、経済産業省は、リサイクル料金が適正原価を著しく上回っていないことを確認することが必要であり、適正原価の把握に向けて一層の努力が求められる。

その上で経済産業省は、対策本部決定に従って、リサイクル料金の適正原価について情報の公開に努めるとともに、これを十分監視することが引き続き求められる。本対策本部決定を着実に実施することは、リサイクル料金に大小区分を導入すべきとの問題提起者の申立てに対する措置となる。

公正取引委員会においても、引き続き対策本部決定に従って、製品市場及びリサイクル市場における競争が制限されることのないよう注視することが求められる。

経済産業省には、適正原価の把握に向けた取り組みについて、進捗状況を適宜、事務局を通じて推進会議に報告することを求める。

3 運輸・交通関係

3−(1) 毒物及び劇物のタンクコンテナによる国内輸送容量に関する基準の見直し(平成13年度問題提起プロセス)

○対策本部決定:平成14年3月20日

○問題提起者等:東京商工会議所、在日米国大使館

○所管省庁等:厚生労働省

○問題提起内容
毒物及び劇物取締法施行令第40条の2では、無機シアン化合物たる毒物(液体状のものに限る。)及び弗化水素又はこれを含有する製剤を容器に収納して運搬する場合、その容器の内容積は、10,000リットル以下であることとされている。

一方、タンクコンテナによる毒物及び劇物の国際輸送では、容器に関する国際基準(IMDGCodeや欧州危険物輸送規則(ADR)等)においては容量規制がないため、10,000リットルを超える容量で輸送されていることが多々あり、これらの毒物及び劇物を日本に輸入する際に支障をきたしている。

ついては、日本国内においても欧米と同様、容器の容量規制なくタンクコンテナでの輸送が可能となるよう基準を改めるべきである。

また、同法同条では、無機シアン化合物たる毒物(液体状のものに限る。)及び弗化水素又はこれを含有する製剤を容器に収納して運搬する場合、その容器の内容積が2,000リットル以上の場合には、その内部に防波板が設けることが義務付けられている。

しかし、容器に関する国際基準(IMDGCodeや欧州危険物輸送規則(ADR)等)においては、積載量が80%以上である場合には防波板が不要とされているため、防波板のない容器で日本に輸入する際に支障をきたしている。

ついては、日本国内においても、防波板の設置基準について国際基準との整合をとるべきである。

○対策本部決定(平成14年3月20日)

毒物及び劇物をタンクコンテナにより運搬する際の基準に関し、以下の対応を取る。

(1)毒物及び劇物をタンクコンテナにより運搬する際の基準について、速やかに調査を終了させ、国内の基準が国際基準に整合するように見直しを行い、平成14年度の早期に政令改正を行う。

(2)政令の改正に当たっては、改正規定中に国際基準を引用するなど、国内の基準が、国際基準の変更に応じて、その整合性が維持されるような規定とすることを検討する。

○対策本部決定への対応状況
(1)タンクコンテナの国際的な技術基準である国際海事機関(IMO)が定める国際海上危険物輸送規程(IMDG Code)についての調査を行った上で、国際基準に適合するタンクコンテナの国内使用を可能とすることについて、薬事・食品衛生審議会に諮問し、平成14年11月5日、必要な措置を講ずることが適当であるとの答申を得た。

毒物及び劇物取締法施行令及び同規則を一部改正し(平成14年12月27日政令第406号、平成15年1月31日省令第5号)、国際基準(国際海事機関(IMO)が定める国際海上危険物輸送規程(IMDGCode))に適合するタンクコンテナの国内使用を可能とする措置を講じた。

(2)毒物及び劇物取締法施行規則において、輸送容器の基準の特例となる国際基準の容器について、「国際海事機関が採択した危険物の運送に関する規定に定めるポータブルタンクに該当するもの」と定めており、国際基準の変更に応じて、その整合性は維持されるよう定めた。

○問題提起者等意見

厚生労働省の毒物劇物取締法の政令が2002年12月27日に、省令が2003年1月31日に改正されたことにより、当該製品に関しては容量の制限無く輸送することが可能となった。
本年から国際的な原料の需給関係が変わり、冷媒ガスやフッ素樹脂の原料であるフッ素が中国から大量に輸入されることとなっていたが、非常によいタイミングで改正が行われたことにより、貨物の輸入がスムーズに行われることになった。[東京商工会議所]

厚生労働省医薬局長より、本政令第40条の2において、無機シアン化合物又は弗化水素若しくはこれを含有する製剤を運搬する際の容器の基準につき、国際輸送における運搬基準との整合性の観点から、本基準に適合する容器と同等以上と認められる国際海上危険物輸送規程に適合している容器であって厚生労働省で定めるものについて、国内使用を可能とする旨の通知を頂いた。
OTOの多大なるご努力により、毒物及び劇物取締法の一部改正ができた事、厚く御礼申し上げる。[在日米国大使館]

○検証結果
今回検証の結果、平成14年度の政令改正において、国際基準に適合するタンクコンテナの国内使用を可能にする規定が設けられ、対策本部決定が着実に実施に移されたことが確認された。

取り分け、当該規定において国際基準を引用することにより、国際基準の変更に応じて整合性の維持が図れるよう措置が講じられ、平成13年度の専門家会議における議論を反映した形で改正が行われたことは評価される。

本措置により、我が国への毒物及び劇物の輸入が円滑化されるとともに、国内輸送コストの低減化が実現することが期待される。

3−(2) けん引自動車及び被けん引自動車に係る車検制度の改正等(OTO案件の総点検)

○対策本部決定:平成15年3月19日

○問題提起者等:在日米国大使館

○所管省庁等:国土交通省

○提起された課題
キャンピングトレーラ(被けん引自動車)は、高額で、保管場所の確保も容易でないことから、レンタル利用の要望が多い。

しかし、我が国の現行車検制度では、キャンピングトレーラはけん引する自動車と連結した状態での検査が求められ、キャンピングトレーラをけん引できる自動車は、予め個別に車検証に記載された車名・型式の自動車に限定されていることから、自己の保有する自動車に、レンタルしたキャンピングトレーラを連結させて走行することは、事実上、不可能となっており、輸入キャンピングトレーラの普及が阻害された状況となっている。

一方、欧米においては、けん引自動車に当該自動車のけん引能力を表示するという方式が導入されており、利用者は、その自動車のけん引能力に応じて被けん引自動車を自由に選択することができる制度となっている。

以上を踏まえ、国土交通省は、現行車検制度を改正し、けん引自動車のけん引能力に応じ、被けん引自動車を自由に選択・利用できるようにすべきである。

○対策本部決定(平成14年3月20日)
けん引自動車及び被けん引自動車に係る車検制度の改正に関し、以下の対応をとる。

けん引自動車及び被けん引自動車に係る車検制度の改正について、パブリックコメントの募集時期やWTO通報等の手続き時期等実施に向けた具体的な作業工程を公表し、遅くとも平成15年度中には確実に実施するよう、迅速な対応をとる。

○対策本部決定への対応状況

キャンピングトレーラ等を牽引する自動車の自動車検査証に、当該自動車が牽引可能な重量の上限を記載し、当該自動車がキャンピングトレーラ等を牽引する場合は、キャンピングトレーラ等の自動車検査証に当該自動車の車名・型式が記載されていなくても(注)運行できるよう、現在、省令改正等必要な手続きを行っているところであり、年度末までに対応する予定(平成16年3月31日公布、平成16年7月1日施行)。

注)被牽引自動車(キャンピングトレーラ等を含む)の自動車検査証には牽引自動車の車名・型式を記載する必要があり(道路運送車両法施行規則第35条の3)、記載されている自動車以外で牽引する場合は、被牽引自動車の自動車検査証の記載事項を変更しなければならない。(道路運送車両法第67条)

○問題提起者等意見

今回の改正により、キャンピングトレーラ等については、けん引車の自動車検査証に「牽引可能なキャンピングトレーラ等の重量」若しくは「トレーラの車名及び型式」が記載されていれば、牽引車を特定しないトレーラでも牽引できるようになる。すなわち、ユーザーがキャンピングトレーラ等を牽引しようとして、自家用車に連結装置を取り付け、「けん引可能なキャンピングトレーラ等の重量」等をその検査証に登録、記載すれば、記載範囲内のならば不特定のトレーラをけん引出来るようになった。このように、トレーラの登録手続が簡素化されることにより、トレーラのレンタルや友人間での貸し借りも自由に行えるようになるなどから、キャンピングトレーラ等の普及はこれまで以上に期待できる。

しかし一方、今回の改正でも、連結登録自体が不要になった訳ではないので、キャンピングトレーラ等を牽引するには、簡素化されたものの一通りの登録手続を行わなければならず、依然としてユーザーには、そのための計算書作成の労力が強いられることに変わりない。よって、更なる普及のためにも、当方が従前より要求しているとおり、次の段階の緩和施策、すなわち、欧米と同様に「牽引できるキャンピングトレーラ等の重量」を自動車の型式ごとに公開し、これに基づいた牽引車、被牽引車の組み合わせならば、登録手続を一切不要とするような、更なる制度の改正を望みたい。そしてその時期としては、今回の改正による実施状況を見ながら、例えば1年後とし、その際に「牽引できるキャンピングトレーラ等の重量」数値を公開する機関として、例えば日本RV輸入協会等の関連団体が認められれば望ましい。

○検証結果

今回検証の結果、国土交通省からは、キャンピングトレーラ等の登録手続きを簡素化するための省令改正等必要な手続きを平成15年度末までに行う予定である旨報告があり、対策本部決定が実施に移されていることが確認された。

一方、検証に際して問題提起者等からは、国土交通省の対応への一定の評価とともに、欧米と同様に登録手続きを一切不要とするよう、更なる制度改正に向けた要望が表明された。

問題提起者等は、改正省令施行後の動向を踏まえた上で、要すれば事務局に相談し、事務局は所要の対応を図られたい。

4 建設関係

4−(1) 輸入建材等の検査での海外検査データの活用(OTO案件の総点検)

○対策本部決定:平成15年3月19日

○問題提起者等:東京商工会議所

○所管省庁等:国土交通省

○提起された課題
外国の建材を輸入する際には、外国の規格認証を得た製品であっても改めて日本国内の検査が必要となり、その検査に100万円以上の費用がかかる。建材の検査に当たっては、輸出国の検査データを活用するなど、簡略化を図るべき。

外国製木製防火戸について、欧州等輸出国における検査データを受入れ、それを基に日本における審査・認定を行うなど、簡便に日本の基準への適合が認められ、輸入が促進されるようにして欲しい。

○対策本部決定(平成15年3月19日)

建築基準法上の承認認定機関及び承認性能評価機関に係る外国検査機関等からの承認申請を促進するため、速やかに以下の措置を講ずる。

(1)承認申請に係る標準処理期間を設定かつ公示し、手続きの透明性を確保するとともに、迅速な処理を図る。

(2)承認申請に必要な書類について、外国検査機関等の申請負担の軽減を図り、承認申請を促進するため、英語での提出を認める書類を速やかに検討し、直ちに実施する。

(3)当該制度の有用性について、積極的かつ効果的なPR活動を行い、その際には、承認申請に係る申請手続きの流れ、提出書類(様式等を含む)、相談窓口等を記載した申請者にとって分かり易い申請手続きマニュアル(手引書)を英文で作成し、配布・ホームページ上等で公開する。
また、利用者の負担を軽減し、利便性を向上させることにより、一層の市場アクセスの向上を図るため、建築資材について、主要貿易国との間で相互承認を実現するための方策について検討する。

○対策本部決定への対応状況
(1)承認申請に係る標準処理期間を設定し、ホームページ等で周知(平成15年10月)するとともに迅速な処理に努める。(ホームページアドレス:http://www.mlit.go.jp/english/housing_bureau /recognition/index.html、以下同じ)

(2)承認申請に必要な書類のうち、英語での提出を認める書類について、ホームページで周知した(平成15年10月)。

(英語で提出を認める書類)
・財産目録等
・収支予算書
・役員等の氏名及び経歴を記載した書類
・事務所の所在地を記載した書類
・発行済株式総数の5/100以上を有する株主等の氏名、住所及び株式の数等を記載した書類
・評価員(認定員)の氏名・経歴を記載した書類

また、申請機関の名称及び住所並びに個人の氏名及び住所については、全ての書類について英語による記載も可としている。

(3)当該制度の概要及び有用性について在京大使館及び外国の試験機関等に対して、積極的に情報提供。その際、承認性能評価機関の承認申請に係る申請手続きの概要、提出書類等を記載した申請手続マニュアルを英文で作成、配布(平成15年6〜7月)するとともにホームページ上で公開(平成15年8月)。

承認認定機関についても同様の内容について、ホームページ上で公開(平成15年10月)。

また、二国間及び多国間の国際会議において、承認性能評価機関制度の概要と有用性についてPR。

承認性能評価機関等による評価実績、相手国の意向等を踏まえつつ、引き続き検討する。(例えば、日・EU規制改革対話(平成15年11月)において、ホルムアルデヒドに係る双方の規制の要求条件について専門家による継続的な情報交換を提案。)

(その他)オーストラリア建築基準評議会(AustralianBuildingCodesBoard/ABCB)を承認性能評価機関として承認(平成15年6月)。

○問題提起者等意見
(1)承認申請に係る標準処理期間が設定され、ホームページ上で公示されたことは評価できる。

(2)複数の書類について、英語での提出が認められるようになったことは評価できる。今後、対象となる書類が拡大されれば、申請者(外国検査機関)の負担はさらに軽減され、承認認定機関及び承認性能評価機関の数の増加につながるのではないか。

(3)申請手続きに関する英文マニュアルがホームページ上で公開されたことは評価できる。英文マニュアル中に、問い合わせへの連絡先も掲載すれば、一層申請者(外国検査機関)にとっての有用性が高まるのではないか。

主要貿易国との相互承認については、実現に向けた継続的な取組みをお願いしたい。

○検証結果
今回検証の結果、承認申請に係る標準処理期間の設定・公示、英語での提出を認める承認申請書類の検討、当該制度のPR活動、に関し、国土交通省は概ね対策本部決定の方針に沿った対応を行っていることが確認できた。

なお、問題提起者等からは、英語での提出を認める書類の対象の拡大や、相互承認の実現に向けた継続的な取り組みへの期待が改めて表明されたところ、国土交通省は、引き続き対策本部決定に従い、外国検査機関等からの承認申請を促進するための措置に取り組むことが求められる。

5 輸入手続関係

5−(1) 港湾業務への市場原理の導入(OTO案件の総点検)

○対策本部決定:平成15年3月19日

○問題提起者等:東京商工会議所

○所管省庁等:国土交通省

○提起された課題
日本の港湾業務の荷役料や運送料は高く、その処理速度は遅い。日本の港湾業務のコストが高すぎるために、輸入品が国産品に比べて価格競争の点で不利となっている。また、夜間荷役、日曜荷役等が不十分であることによる貨物引取の遅延が見られる。港湾業務に市場原理を導入し、港湾の荷役・輸送コストを縮減し、業務の迅速化を図るべきである。コストの削減は、一刻を争う問題であり、規制緩和の早急な実施を要望する。

国による規制ではなく労使間の問題とのことだが、荷役業務等が24時間対応でなければ意味がなく、国土交通省から事業者団体等に対し、利用者の立場に立った指導をしてほしい。

○対策本部決定(平成15年3月19日)
港湾業務への市場原理の導入に関し、以下の対応をとる。

(1)主要9港以外の地方港の規制緩和について、確実に平成15年度中に検討の結論を出し、その結論を直ちに実施するための措置を講ずる。

(2)引き続き、規制緩和の実効性を確保するため、新規事業者の参入を妨げることのないようにする。

(3)我が国の港湾が国際競争力を有する国際物流拠点としての地位を取得するよう、港湾の24時間フルオープン化の早期実現に向けて、1)港湾ゲートの24時間フルオープン化についての検討結果を出す時期を明示し着実に実施されるものとし、2)官民関係者が連携して港湾ゲートのフルオープン化の早期実施に取り組むための具体的措置を講ずる。また、3)通関・検疫業務との連携を強化し、利便性の向上を図る。

○対策本部決定への対応状況
(1)主要9港以外の港(地方港)の規制緩和については、平成15年3月28日に閣議決定された「規制改革推進三か年計画(再改定)」において、「平成15年度中に結論を得て、以降速やかに措置を講ずる。」とされた。

これを受けて、国土交通省としては、平成15年5月に関係者で構成される「港湾運送事業の在り方に関する懇談会」を設置し、議論を重ね、平成16年2月19日に開催された第8回懇談会において、1)事業参入について免許制から許可制へ、2)運賃・料金認可制について事前届出制へと規制緩和することを主な内容とする報告が取りまとめられたところである。

上記の報告でも述べられているが、総合規制改革会議「規制改革の推進に関する第3次答申」において、「平成16年度中に港湾運送事業法の改正案を国会提出」とされたところであり、これに従い、今後、港湾運送事業法の改正作業に取りかかり、平成16年度中の国会へ提出することとしている。

(2)引き続き、規制緩和の実効性の確保に努めてまいりたい。

(3)国土交通省は、平成15年4月にコンテナターミナルゲート24時間フルオープン化に向けた実証実験に取り組んだ港湾物流効率化推進調査委員会のとりまとめを公表した。

これを受けて、現在、主要港においては、ゲートの24時間フルオープン化に向けて、官民一体となった取組を行っている。

税関においては、平成15年7月から全国の主要港湾を中心として、一定の時間帯に職員を常駐させる税関の執務時間外における通関体制を本格的に整備(本格実施)。

これらの動きに対応した検疫業務の24時間フルオープン化に向けた対応が望まれる。

○問題提起者等意見
(1)(特段の意見なし)

(2)港湾荷役・ドレー運送業者が新規事業者の参入を受け入れているのか疑問である、あるいは受け入れているとしても市場原理の競争が導入されているとは見受けられないとの声もある。

(3)ゲートが閉まっていることにより、荷役効率が低下するほか、搬出入待ちのトラックによる周辺道路の渋滞という問題も生じており、港湾業務を円滑に行うためには、ゲートの24時間オープンによる荷役作業時間の拡大が必要である。

引き続き、港湾の24時間フルオープン化の早期実現を目指してもらいたい。

また、制度上は、時間外、休日の通関や検疫が可能となってはいるものの、1)その都度要請が必要なため実際の依頼をためらう場合もある、2)臨時開庁手数料が負担となるなど使い勝手が悪いことから、民間事業者の事業活動も時間外、休日は例外的なものに留まっており、結果として時間外、休日の物流には時間外手当が必要となるなどコスト高となっている。

(全体)規制緩和やフルオープン化は進んでいるとしても、事業者の立場からみると具体的成果が見えにくい。具体的な目標を提示するなど方策を工夫し、更なる着実な推進を図ることを希望したい。

○検証結果
今回検証の結果、主要9港以外の地方港の規制緩和については、国土交通省から、平成16年度中に港湾運送事業法の改正案を国会に提出することとしている旨報告があった。

また、対策本部決定されたそのほかの事項に関しても、国土交通省は概ね対策本部決定の方針に沿った対応を行っていることが確認できた。
一方、問題提起者等からは、港湾の24時間フルオープン化の早期実現への強い期待が改めて表明されたほか、政府の対応の具体的成果がみえにくいなどの意見が寄せられた。

国土交通省は、引き続き対策本部決定に従い、規制緩和の実効性の確保に努めるとともに、関係省庁と連携して我が国の港湾が国際競争力を有する国際物流拠点としての地位を得られるよう、港湾の24時間フルオープン化の早期実現に向けて取り組むことが求められる。

5−(2) NACCSの利用料金の低廉化/Air-NACCSの料金体系の見直し(OTO案件の総点検/平成13年度問題提起プロセス)

○対策本部決定:平成15年3月19日(OTO案件の総点検)

平成14年3月20日(平成13年度問題提起プロセス)

○問題提起者等:在日米国商工会議所

○所管省庁等:財務省

○問題提起内容等
平成13年10月のAir-NACCS更改に伴い料金体系が定額制から従量制に変更された結果、小口の多くの宅配便を扱う国際宅配便業者の費用負担が増加することになった。Air-NACCSの料金体系については、多角的な視点から慎重に検討を行う中立的な機関を設置して、見直しを行うべきである。

NACCSの料金は、総経費を賄うように決められるため、競争入札の活用や業務の外部化等により業務の効率化を図ることにより総経費を削減して、利用料金の低廉化を図るべきである。

NACCSの利用者は、NACCSを使用せざるを得ず、通関情報処理センターは利用者等による不断の監視に資するためにも情報公開を進めて、料金に関する透明性を高めるべきである。

○対策本部決定

(OTO案件の総点検:平成15年3月19日)

NACCSの利用料金の低廉化に関し、通関情報処理センターにおいて、以下の措置が講じられるよう適切な対応をとる。

(1)情報公開を一層進め、利用料金の透明性を高めるとともに、システム開発に係る競争入札の徹底、業務の外部化等を通じて速やかに講ずるべき措置の具体化に取り組むことにより、業務の実施について更なる効率化・適正化を推進し、さらに、システムの開発・運営において費用対効果の視点から十分に検討を行う等、一般管理費を含め一層の総経費削減策を図る。

また、利用料金について、時々の経済事情、財務事情に応じて柔軟に料金の見直しを行い、その際、剰余金・引当金を利用者に還元するためのルールを明確にするとともに、諸経費の削減の成果を速やかに利用料金に反映させ、利用料金の一層の低廉化を実現する。

(2)Air-NACCSの利用料金に関する有識者及び利用者による第三者機関を平成15年度のできる限り早い時期に設置する。その第三者機関において、コスト削減の方策、規模の経済性に配慮しつつ合理的な料金設定の在り方等、今後の検討内容、見直しの方向性等について検討を行う。その検討を行う際には、広く情報を公開し、例えば議事録の公開や必要に応じてオブザーバー参加を認めるなど、中立性、透明性を確保する。

さらに、Sea-NACCSに関しても、多角的な視点から中立的な立場で利用料金の在り方について検討するため、Air-NACCSと同様な有識者及び利用者による第三者機関をできる限り早期に設置する。

(平成13年度問題提起プロセス:平成14年3月20日)

NACCSの料金体系に関し、以下の対応を取る。

(1)NACCSについては、情報公開を一層進め、利用料金の透明性を高めるとともに、システム開発に係る競争入札の徹底、業務の外部化等について、平成14年度から速やかに講ずべき措置の具体化に取り組むことによって、業務の実施について更なる効率化・適正化を推進し、利用料金の一層の低廉化を実現する。

(2)NACCSの利用料金のあり方については、総経費の削減方策、利用者における費用負担のあり方等多角的な視点から中立的な立場で審査等を行うため、有識者を含めた適切な場を速やかに設置する等新たな料金体系の見直し方策を講じる。Air-NACCSについては、遅くとも激変緩和措置が終わる平成16年9月までに利用料金の体系を見直す。その際には、規模の経済性に配慮しつつ合理的な料金設定のあり方について検討を行う。

○対策本部決定への対応状況
(1)従来から、利用料金改定の際に所謂パブリックコメントを実施し、算定根拠・理由等の情報を提供するなど、情報公開を通じた利用料金の透明性の向上に努めている。

また、業務の実施に係る効率化・適正化については、独立行政法人化に伴って策定された中期計画において、組織の再編や、職員数並びに一般管理費及び業務経費の削減に係る数値目標を設定しているほか、次期システムの調達にあたっては、競争入札の範囲の積極的な拡大を行うこと等により、経費の削減を図ることとしている。

平成14年4月に、システムの安定的な稼動が確保され利用者の増加も見込まれたことから、それまでに累積された剰余金の利用者への還元の視点も踏まえ、パブリックコメント等必要な手続きを経て、主要な業務の料金を半額以下とする利用料金の大幅な値下げを実施したところである。今後も、経済事情の変動その他の理由により必要と認める場合は、利用者の意見を聴取しつつ、料金改定等必要な措置を講ずることとしており、本部決定の趣旨については中期計画にも明示している。

(2)Air-NACCSの利用料金のあり方について、中立的な立場で審査等を行うために、利用者及び有識者による「Air-NACCS利用料金検討会議」を設置し、平成15年12月16日に第1回会合を、平成16年1月30日に第2回会合を開催したところである。第3回会合は平成16年3月11日に開催することとしている。

本会議にはオブザーバーも参加しており、また、議事録もセンターのホームページで公表するなど中立性、透明性の確保に努めている。

Air-NACCS利用料金検討会議の検討結果を踏まえ、Sea-NACCS利用料金に関する第三者機関を設置することを予定している。

(その他)Air-NACCSの料金体系の見直しに係るOTO本部決定がなされた平成14年3月以降、通関情報処理センターは、組織の見直しや、職員数等の削減による一層の総経費の削減策の検討・実施に努めてきたところであり、独立行政法人化に際して策定した中期計画には、第三者機関である独立行政法人評価委員会における審議を経て、これらの削減策等について具体的な数値目標を設定している。

通関情報処理センターでは、これまでにもNTTデータとの間で電気料金や回線使用料等の引下げ交渉を行い、実現してきたところであり、また、引き続き現在においても、更なる引下げ等に向けて協議を行っているところである。

なお、利用料金は、総経費の総額のうち、輸入申告等の官手続に係る国が行うべき部分は、国が経費を負担する一方、入力された貨物情報の利用者間における相互利用、輸入許可情報の保税地域等への自動通知、輸入申告のための税額計算等、利便性の向上等の受益を享受する民間利用者から、センターが応分の利用料金を徴収するとの考え方に基づき、算出している。従って、例えば、国の負担割合を増やし民間利用者の利用料金を引き下げることは、民間業務を処理するために必要なコストを一般国民の租税負担に求めることとなり、利用者負担の原則を根底から覆すものであるため、適切ではない。

○問題提起者等意見
対策本部決定では、第三者機関において、規模の経済性等に配慮しつつ検討を行うこととされたが、第三者機関である「Air-NACCS利用料金検討会議」では、「従量料金制は公平でリーズナブルな料金体系で、非常に満足している。また公平な料金設定であり、利用料金が安くなる場合にはそれを(大・中・小の利用者にかかわらず)公平に分配すべき。」との意見が大勢を占め、当方が主張する「大口割引制、キャップ制、上限料金制」はいずれも認められない方向にある。

通関情報処理センターは平成15年10月より独立行政法人となり、中期目標において、一般管理費の13%削減と事業費の8%削減を掲げている。しかしながら我々としては、NTTデータに8年間という長期の契約でシステムの開発、運用を任せ、その支払いに収入の80%以上を充てていることが問題であると考えている。再契約交渉を通じて、同社への支払金額を削減し、経費削減を図るべきである。

また、輸入貨物の場合、関税・消費税の支払いは通関許可と同時に行われており、利用者はそれらを立て替えるなどの負担を強いられる一方、財務省はNACCSを通じて自動的に徴税できるというメリットを享受していることから、国の分担金を増やし、NACCSの輸入業務利用料金の単価の引き下げを図るべきである。

○検証結果
今回検証の結果、財務省から、NACCSの運営・管理を行う通関情報処理センターの中期計画において経費削減に係る数値目標を設定している等、利用料金の低廉化に向けた取り組みに関する報告があった。

また、Air-NACCSの利用料金に関する第三者機関として、Air-NACCS利用料金検討会議を設置し、検討を進めているとのことであり、財務省は、概ね対策本部決定の方針に沿った対応を行っていることが確認できた。

他方、検証に際して問題提起者等からは、経費の削減や利用料金引き下げのための方策に係る要望が表明された。

財務省には、問題提起者等の要望、ならびに関連する委員からの意見について検討するとともに、本会議での検証に際しての議論を検討会議に報告の上、引き続き対策本部決定の実施のための適切な対応に努めること、ならびに利用料金に関する最終的な検討結果等について、適宜事務局を通じて推進会議に報告することを求める。

5−(3) 輸入手続の簡素化・迅速化(OTO案件の総点検)

(簡易申告制度の改善)

○対策本部決定:平成15年3月19日

○問題提起者等:広島商工会議所

○所管省庁等:財務省
(ワンストップサービス(シングルウィンドウ化)の推進)

○対策本部決定:平成15年3月19日>

○問題提起者等:―― *

○所管省庁等:財務省
* 東京商工会議所を問題提起者とする「インターネットを活用したNACCS等通関手続の改善」(平成11年度問題提起プロセス)等複数を踏まえたもの。

○提起された課題

我が国における物流面の効率化を促し、時間的、経済的コストを削減するためには、輸入手続の簡素化・迅速化を図ることは重要である。

・簡易申告制度の改善

簡易申告制度は、承認された者が指定された種類の貨物について法令遵守の確保を条件に、引取申告と納税申告を分離し、納税申告を貨物の引き取り後に行える申告手続であり、平成13年3月から導入された。この制度の適用対象貨物は、「継続的に輸入される貨物」との指定があり、具体的には過去1年間24回以上輸入している貨物となっている。この回数では相当頻繁に輸入を行わなければ、この制度は利用できない。指定対象とすべき貨物の輸入回数を例えば3年で30回などに改善すべきである。

・ワンストップサービス(シングルウィンドウ化)の推進

輸入手続の簡素化・迅速化を促す観点から、輸入の諸手続に関する電子化は重要な要素であり、過去のOTO案件においても、「インターネットを活用したNACCS等通関手続の改善」等、輸入手続の電子化に関連した苦情が多く提起されている。特に、今般、政府において、輸出入・港湾関連手続のワンストップサービス(シングルウィンドウ化)の運用開始に向けた準備を進めているが、ワンストップサービスに関してできる限り早期の運用を図るともに、利用者の利便性の観点から、既存システムの相互接続にとどまらず、重複業務の見直し、手続の簡素化等全ての手続を徹底的に見直すべきである。

○対策本部決定(平成15年3月19日)

輸入手続の簡素化・迅速化に関し、以下の対応をとる。

(1)多くの輸入業者が簡易申告制度を利用できるようにするため、貨物の指定、担保の提供等に係る要件を速やかに見直し、特に輸入許可の要件に関しては、「直近1年間に24回以上輸入許可を受けた貨物」との指定を「直近1年間に6回以上」に見直す。

(2)輸入手続の簡素化・迅速化を図るため、行政手続の電子化の観点から、関係府省の連携、協力を図りつつ、輸出入・港湾関連手続のワンストップサービス(シングルウィンドウ化)を積極的に進める。ワンストップサービス(シングルウィンドウ化)の供用開始を少しでも繰り上げて早期に実現する。遅くとも平成15年7月中には供用を開始する。さらに、既存システムの相互接続にとどまらず、利便性の観点から、重複業務の見直し、手続の簡素化等全ての手続の徹底した見直しを行うとともに、システムの供用開始後も、引き続き、利用者の視点から見直しを行う。

○対策本部決定への対応状況
(1)平成15年度関税改正により措置をしたところである。(関税法施行令第4条の8:平成15年3月31日政令第143号)平成15年4月より施行。

(2)関係府省は、平成13年秋以降、輸出入港湾関連手続に係るシングルウィンドウシステムの構築に向けた検討体制(輸出入・港湾手続関連府省連絡会議)を整備し、仕様等の検討を行い、平成15年7月23日にシングルウィンドウ化が実現したところである。

シングルウィンドウ化実現後も、民間利用者の意見を輸出入・港湾関連府省連絡会議等を通じて適宜聴取することとしている。

○問題提起者等意見
・簡易申告制度の改善

簡易申告制度の利用条件が緩和されたことは、輸入者にとっては歓迎すべきことである。

○検証結果
今回検証の結果、平成15年度関税改正において簡易申告制度の継続的輸入要件が見直され、また、平成15年7月にはシングルウィンドウ化が実現するなど、対策本部決定が着実に実施に移されていることが確認された。

財務省には、引き続き対策本部決定の方針に沿って、さらなる輸入手続の簡素化、迅速化につながるよう、今後とも利用者の利便性の観点から重複業務見直し等輸入・港湾関連手続の見直しに積極的に取り組むことを期待する。また、既存システムの相互接続にとどまらず、関係省庁が連携して速やかにワンストップサービスの一層の推進が図られることを期待する。

なお、検証に際して指摘のあったFAL条約の締結をめぐる問題については、できる限り早期に対応がなされることを期待する。

5−(4) 通関・検疫業務の24時間365日営業の実現(OTO案件の総点検)

○対策本部決定:平成15年3月19日

○問題提起者等:東京商工会議所

○所管省庁等:財務省、厚生労働省、農林水産省

○提起された課題
輸入業者が輸入手続を税関の執務時間(8:30〜17:00)外の休日・夜間に行う場合、臨時開庁の承認を執務時間内に行わなければならないことに加えて、臨時開庁のための手数料を支払う必要がある。臨時開庁制度ではなく税関の執務時間の延長を行うことで、24時間輸入手続が可能となるようにすべきである。特にニーズの高い港、空港について24時間輸入手続が可能となるよう迅速に実施すべきである。

臨時開庁の申請には別途手数料が必要だが、臨時開庁となる時間の基準を明確にしてほしい。また、臨時開庁の業務内容は、通常業務と同じであることから、時間外手数料自体を廃止すべきである。

上記の問題提起内容に密接不可分な問題として、輸入手続の24時間・365日実施の効果を十分に発揮するため、通関業務のみならず検疫業務についても24時間・365日の実施を図るべきである。

○対策本部決定(平成15年3月19日)

通関・検疫業務の24時間、365日営業の実現に向けて、以下の対応をとる。

(1)我が国の通関検疫業務が国際的に遜色のない水準であるように、全国の主な港湾、空港において、通関・検疫業務の24時間、365日実施を検討し、的確に需要を判断し、できる限り速やかに必要な対応を行う。勤務時間・体制等の見直しを行うとともに、可能な限り業務の外部化や、IT化の一層の促進により、業務の更なる効率化・省力化を推進し、速やかに講ずるべき措置の具体化に取り組む。

(2)通関・検疫業務の24時間、365日実施の効果が十分発揮されるものとなるよう、密接に連携を図り、少なくとも恒常的に需要が見込まれる地域においては、積極的に対応する。

(3)15年3月末まで税関の執務時間外における通関体制の試行を実施している7港湾については、引き続き実施する。検疫業務については、通関業務と密接に連携を図る。

(4)執務時間外の手数料について、24時間、365日体制の整備に伴い、手数料の撤廃を含め、その額の軽減を検討し、所要の措置を講ずる。

○対策本部決定への対応状況

(1)平成15年7月より全国の主要港湾を中心とする執務時間外の通関需要がある官署において、一定の時間帯に職員を常時配置する税関の執務時間外における通関体制を本格実施したところである。また、それ以外の官署においても連絡体制を整備、周知することにより、執務時間外の通関需要に的確に対応している。
勤務時間・体制については、平成15年7月より全国の主要港湾を中心とする執務時間外の通関体制を本格実施したところである。IT化の一層の促進については、平成15年7月より、一回の入力・送信で全ての必要な輸出入・港湾関連手続を行うことを可能とするシングルウィンドウ・システムを導入したところであり、今後ともIT化等を通じた事務の効率化、利用者利便の向上に努めていくこととしている。[財務省]

現在、食品等輸入届出手続の窓口となる主要港湾の厚生労働省検疫所は、土・日・休日は閉庁となっているが、税関の執務時間外における通関体制の整備に合わせ、平成15年7月より検疫所においては、執務時間外連絡窓口(平日17:00〜21:00、土・日・休日8:30〜17:00)を開設するとともに、要望があれば適宜対応しているところである。
食品等輸入届出手続については、貨物到着7日前から届出を受け付けており、そのうち検査を要しないもので食品衛生上の問題を生じるおそれのない貨物については、搬入前に届出済証を交付しているところである。
現在の人員体制では、24時間、365日体制に対応したシフト勤務を実施することは困難であるが、今後も事前届出制度の活用等効率化を図りつつ適切に対応するとともに、平成16年度においても、24時間、365日に対応できるよう輸入食品監視支援システム(FAINS)の更改、主要港湾の食品衛生監視員の増員等、行政需要に見合った適正な人員配置を図ることとしている。
平成15年5月、食品衛生法の一部を改正し、公益法人に限定されていた命令検査の実施機関について、民間の参入を可能とした。
平成15年5月、食品衛生法の一部を改正し、モニタリング検査の試験事務を登録検査機関に委託できることとし、輸入食品等の検査体制の強化と効率化を図った。
輸出入・港湾関連手続のシングルウィンドウ化については、関係府省と連携、協力しつつ、平成15年7月にこれを実現した。[厚生労働省]

動植物検疫においては、これまでも、輸入者等から事前に要請があった場合には、執務時間外の検疫業務を実施している。なお、恒常的な執務時間の延長要望のある主要港湾については、執務時間外の対応に関する家畜防疫官及び植物防疫官の増員が認められたことから、平成16年10月までには、税関と同様の執務時間の延長を実施することとしている。
動植物検疫業務のうち検査手続きシステム管理等の事務について民間委託を進めるとともに、検査に必要な申請手続き等については、平成9年度からオンライン化するとともに税関手続きシステム、食品衛生システムともインタフェースにより連動させ、海空港における輸入手続きのワンストップサービスを実現してきたところ。さらに、平成15年7月より海港湾における港湾手続き(国土交通省、経済産業省、法務省、地方自治体等)のシステムを連携したシングルウィンドウ化を実施したところであり、今後、動植物検疫の手続き業務の迅速化、省力化を図ることによる業務の効率化を進めることとしている。[農林水産省]

(2)平成15年7月より全国の主要港湾を中心とする執務時間外の通関体制を本格実施したところである。[財務省]

現在の人員体制では、24時間、365日体制に対応したシフト勤務を実施することは困難であるが、今後も事前届出制度の活用等効率化を図りつつ適切に対応するとともに、平成16年度においても、24時間、365日に対応できるよう輸入食品監視支援システム(FAINS)の更改、主要港湾の食品衛生監視員の増員等、行政需要に見合った適正な人員配置を図ることとしている。[厚生労働省]

恒常的な執務時間の延長要望のある主要港湾については、執務時間外の対応に関する家畜防疫官及び植物防疫官の増員が認められたことから、平成16年10月までには、税関と同様の執務時間の延長を実施することとしている。[農林水産省]

(3)税関の執務時間外における通関体制の試行を踏まえ、平成15年7月より全国の主要港湾を中心とする執務時間外の通関体制を本格実施したところである。[財務省]

税関の執務時間外における通関体制の試行においては、検疫所も協力し、輸送便の遅延等による開庁時間の延長等の要請に対応した。さらに、税関の執務時間外における通関体制の本格的な整備に合わせ、平成15年7月より検疫所における執務時間外連絡窓口(平日17:00〜21:00、土・日・休日8:30〜17:00)を開設するとともに、要望があれば適宜対応しているところである。[厚生労働省]

恒常的な執務時間の延長要望のある主要港湾については、執務時間外の対応に関する家畜防疫官及び植物防疫官の増員が認められたことから、平成16年10月までには、税関と同様の執務時間の延長を実施することとしている。[農林水産省]

(4)臨時開庁手数料については、平成16年度の手数料改定において、7,800円から4,100円に引き下げることとした。なお、構造改革特別区域における臨時開庁手数料は、その額の2分の1となる。[財務省]

現在、手数料徴収は行っていない。また、今後、24時間、365日体制を整備する際においても利用者からの手数料徴収は考えていない。[厚生労働省]

現時点において、動植物検疫については、検査手数料は徴収していない。[農林水産省]

○問題提起者等意見

(1)、(2)時間外通関体制の整備や連絡窓口の設置が進められるなど状況の改善は見られるが、引続き「24時間・365日体制」の実現に向けた取組みを推進していただきたい。

(4)平成15年4月より構造改革特別区域において税関の臨時開庁手数料が2分の1に減額され、さらに、平成16年4月以降は手数料そのものも引き下げが予定されるなど、手数料を軽減するための措置が講じられていることは評価できる。引き続き、民間への業務委託等を活用することなどにより、さらなる減額・撤廃に向けた取組みの推進を期待したい。

(全体)24時間・365日体制の実現は、日本の港湾の国際競争力にも欠かせないものである。コスト削減のための取組みと同時に、24時間・365日体制の実現に向け、継続的な取組みをお願いしたい。

○検証結果

今回検証の結果、各所管省からは、執務時間外の対応や業務の効率化・省力化に向けた取り組み等に関する報告があり、概ね対策本部決定の方針に沿った対応が行われていることが確認できた。

各所管省には、問題提起者等から寄せられた意見も参考としつつ、引き続き対策本部決定に従い、通関・検疫業務の24時間、365日の実施の実現に向けて取り組むことが求められる。

その際、各所管省には、本当の意味での24時間、365日の実施の実現のために必要となる適切な人員や費用について、具体的に検討すべきとの本会議における指摘を十分踏まえることを期待する。

さらに関連して、「輸入手続の簡素化・迅速化」の検証作業においても指摘があったFAL条約をめぐる問題については、関係省庁が十分連携して早期締結に向けた取り組みを進めることを期待する。

III.個別の苦情案件のうち特に重要なものについての検討結果

OTO番号656 「住宅の品質確保の促進等に関する法律」における新技術(防蟻技術)導入の促進・円滑化

○受付年月日:平成14年12月12日

○苦情申立者:在日米国大使館(代理申立)

○所管省庁等:国土交通省

○苦情の概要
「住宅の品質確保の促進等に関する法律」(平成12年4月施行。以下「品確法」という。)に基づいて、「日本住宅性能表示基準」及び「評価方法基準」(以下「住宅性能表示基準等」という。)が建設省告示により定められ、住宅性能表示制度が創設された。

住宅性能表示制度は、住宅の性能に関する表示の適正化を図るための共通ルールを設けることで、消費者による住宅の性能の相互比較を可能にすることや、評価書に表示された住宅の性能が契約内容とされることを原則とすることで、表示された性能の実現等を図っている。

しかしながら、現行の住宅性能表示制度は、既存の技術に拘泥しており、新規に開発された技術を円滑に評価・採用する制度となっていない。

具体的には、劣化を軽減するための防蟻措置としては、薬剤による処理等既存の技術のみが評価の対象とされており、アメリカで近年急速に普及しているベイトシステムは評価対象とされていない。また国土交通省によれば、同システムは現行の住宅性能表示制度の対象外であり、評価対象とすることは不適切とのことである。

このため、ベイトシステムは新築住宅市場を中心に普及が妨げられ、同システム関連製品に対する事実上の輸入障壁となっているほか、同システムを取り扱っている米国企業子会社の日本での活動が妨げられている。

国土交通省は、ベイトシステム関連製品の輸入、ならびに同システムを取り扱う米国企業子会社の日本での活動を妨げないよう、同システムを住宅性能表示制度の評価対象とすることを検討するなどの必要な措置を講じるべきである。

○第20回苦情処理部会(平成15年9月25日)

(1)所管省見解

住宅性能表示制度は、いわゆる欠陥住宅問題を背景として、平成11年に制定された品確法に基づき創設した制度である。

住宅性能表示制度とは、住宅建築の専門家ではない消費者に対し、その建設又は購入をしようとする住宅が、求める水準の性能を有するものとして設計されているかを設計図書等により、また、住宅の建設工事が、設計のとおりなされているかを基礎配筋時、躯体工事完了時、内装工事直前、竣工時の工事の各段階の現場検査により、住宅建築について専門的能力を有する、国土交通大臣が指定する中立公正な第三者機関が審査し、住宅の性能に関する客観的情報を消費者に提供するものである。

このため、評価の対象となる「住宅の性能」とは、住宅建築の専門家ではない消費者に対し情報提供を行う必要性が高く、かつ客観的に第三者が審査できる設計段階で設計図書等に表現されるものと、設計評価を受けた設計図書等どおりに建設工事がなされうるもので、なされたか否かが客観的に確認できるものに限られる。

また、本制度は、消費者が専門的知識を有しないことを前提に、情報を提供する任意の制度であり、当然のことながら、表示の有無、等級の高低により建築可能か否かという差異を生じるものではない。

一方、ベイトシステムは、「シロアリの有無を随時調査し、その存在を確認した場合、薬剤を設置しシロアリを退治しようとするもの」と理解している。これは、住宅に関係のあるサービスであって、前述のような設計図書等の審査や建築工事の現場検査によって確認できる客観的な「住宅の性能」とは性格の異なるものである。

また、そのサービスは、住宅の引き渡し後、ベイトシステム提供者によりなされるものと理解しているが、そもそも住宅性能表示制度は、工事が的確になされたかどうかについて現場検査により第三者機関がその実施状況を確認することに意義があり(従って、設計図書どおり施工すると住宅事業者が約束するのは当然であって、その約束に対し判断を行うものではなく、あくまでも実際に行われた工事(事実)をチェックするものである。行われていない工事等について、何らの評価もなし得ない)、将来のサービスの提供により成り立つベイトシステムは、この観点からも、住宅性能表示制度になじまないものである。

(なお、住宅性能表示制度は、住宅に関係するサービス等あらゆるものを評価する制度ではない。また、その対象としないことをもってサービスの効能がないということを示す制度でもない。)

付言すれば、ベイトシステムについては、上記のとおり、当事者間の契約に依存するものであって、住宅性能表示制度の評価を行う第三者機関としては、そのシステムを採用したか否か把握できず、当事者が知り得る情報以上の情報を提供できるものではないことから、住宅性能表示制度に位置づける必要性・必然性もないものと考える。

(2)検討結果

本件申立の対象となっているベイトシステムは、アメリカでは近年急速に普及が進んでおり、また建築基準でも認められるようになっているとのことであり、信頼にたる有効な防蟻措置であると思われる。

加えてベイトシステムは、防蟻の確実性を確保しつつ、従来の薬剤散布に比べて薬剤の使用量を極微量に抑えることができ、人や周辺環境にやさしい防蟻措置でもあるとのことである。

このような特徴を有しているにもかかわらず、国土交通省からは、ベイトシステムが継続的なサービスの提供によって成り立っていることを理由に、住宅の設計・建設段階において客観的に確認できないものであるから住宅性能表示制度で認めることはできないとの説明があった。

しかしながら、住宅性能表示制度で評価されるか否かは、実際の住宅取引の場では非常に重要な意味を持ってきている。現状を防蟻措置のマーケットという観点でみると、薬剤散布が有利に取り扱われているとの見方があり得る。また、消費者の立場にたてば、特に新築住宅の購入に際して事実上選択の機会を奪われているとの苦情も当然生じ得る。

本来の立法趣旨にかかわらず、結果的に、国が設けた制度により、事実上不公平な取り扱いを受けている製品や企業があり、また消費者も潜在的に不利益を被っているということであれば、法律・制度が想定していない、あるいはなじまないからといって、対応しなくてよいということにはならない。

例えば、アメリカでは保守管理条件等を定めることにより、ベイトシステムを建築基準で認めているとのことであるから、このような認定方法も参考としつつ、国土交通省は、現行制度の解釈で対応するか、あるいは新しい制度づくりを検討するか、いずれにせよ不公平感のある現状を解消する何らかの対応を検討すべきである。

○第21回苦情処理部会(平成16年1月22日)

(1)苦情申立者意見

住宅性能表示制度でベイトシステムを認めるにあたっては、1)設計図書の評価段階において、建物周囲にベイトシステム用のシロアリ検知装置が埋設されることを確認するとともに、2)第4回目検査時点で餌木を備えたベイトシステムのシロアリ検知装置が設計図書通りに施工されていることを確認することが必要と考える。(この時点でベイトシステムのサービス会社がモニタリング作業を開始していることが確認される。)

また、ベイトシステムの性能評価に関しては、現在、日本木材保存剤審査機関において、ベイトシステムの技術評価基準の検討を始めているところ、当該基準の下で一定基準を満たすものが「建物を守るベイトシステム」として住宅性能表示制度で評価されるべきと考える。評価機関及び評価作業そのものに関しては、住宅性能表示制度における評価機関として認定されている機関で実施することが、現法制下では現実的と考える。

(2)所管省見解

ベイトシステムが1)設計図書等に位置付けられること、2)設計図書どおり施工されていることを現場検査により確認されることが確実に実行でき、併せて有効な防蟻性能を有しているという条件が満足されれば、住宅性能表示制度において評価を行うことが可能となる。詳細な事項については苦情申立者と調整する必要があるが、住宅性能表示制度におけるベイトシステムの評価に関する基本的骨格は以下のとおり。

1] ベイトシステムの評価方法基準上の位置付けについて

公平・中立性を有する機関により、学識者等の審査を経て、地盤の防蟻措置として有効な防蟻性能があると確かめられた場合、当該ベイトシステムは、評価方法基準(平成13年国土交通省告示第1347号)第5の3−1(3)イ1d(iii)に該当するものとする。

2] 設計住宅性能評価における評価方法について

設計住宅性能評価においては以下の3点について設計評価申請添付図書において確認することにより評価を行う。

1)地盤の防蟻措置としてベイトシステムを用いること
→ 設計内容説明書により確認。

2)当該ベイトシステムが有効な防蟻性能を有すること
→ 公平・中立性を有する機関により確かめられた旨(審査機関等)を仕様書に記載し、審査書の写しを添付することにより確認。なお、審査書の写しにベイトシステム用のシロアリ検知装置の配置ルールが明記されていること。

3)ベイトシステム用のシロアリ検知装置が配置ルールに基づき配置されていること
→ 審査書の写し及び配置図により確認。

3] 建設住宅性能評価における評価方法について

建設住宅性能評価においては次の2点について現場検査において確認することにより評価を行う。現場検査を行う時期は評価方法基準に定める検査を行うべき時期のうち次の2点が確認できる時期であればいずれでも構わない。

1)ベイトシステム用のシロアリ検知装置として所定の装置が用いられていること
→ 地盤に埋設されているシロアリ検知装置が審査書の写しに記載されている装置であることを目視により確認。

2)ベイトシステム用のシロアリ検知装置が所定の位置に埋設されていること
→ シロアリ検知装置が配置図どおり設置されていることを目視により確認。

(3)検討結果

前回苦情処理部会における審議、ならびにその後の苦情申立者提案に基づき、国土交通省から、ベイトシステムを住宅性能表示制度において評価することを運用面で認め得るとの方針が示されたことは、極めて迅速かつ前向きな対応として評価する。

国土交通省ならびに苦情申立者におかれては、今後お互いによく協力して、意思疎通を図り、ベイトシステムを住宅性能表示制度で評価する上で必要となる検討を進めていただきたい。

また、国土交通省におかれては、今回苦情処理部会で示された方針が早期に実現に至るよう、関係諸機関への連絡等、併せて必要な環境整備にも努めていただきたい。

国土交通省は、将来、適当な時期に随時、運用の実施等について、事務局を通じて当部会に報告されたい。

なお、国土交通省は、品確法の運用において、今後も諸技術の変化に十分対応できるよう努めていただきたい。

参考資料

  1.  OTO対策本部決定の検証について(PDFファイル)PDF形式へのリンク
  2.  対日投資に関わるOTOの取り組み(PDFファイル)PDF形式へのリンク
  3.  平成16年度以降のOTO活動について(PDFファイル)PDF形式へのリンク
  4.  OTO推進会議、専門家会議及び苦情処理部会の開催状況(PDFファイル)PDF形式へのリンク