市場開放問題苦情処理推進会議 第5回報告書
平成10年3月17日
市場開放問題苦情処理対策本部
本報告書は、「基準・認証制度等に係る市場開放問題への対応」(平成5年5月27日、市場開放問題苦情処理推進本部決定)等に基づき、外国人事業者等からの問題提起を受け、我が国の基準・認証制度等に関する問題の所在を明確化し、必要な対応を意見として取りまとめたものである。
市場開放問題苦情処理対策本部におかれては、速やかに本報告書を最大限尊重した対応を決定し、それに基づく措置をとられたい。
Ⅰ.総括的所見
1.規制の抜本的改革の必要性
我々は、基準・認証制度等に関する問題の所在を明確化し、必要な対応を意見として表明するため、これまで平成6年以降、年1回報告書に取りまとめてきており、本報告書は第5回目の報告書になる。また、政府は「6つの改革」を最大の政策課題として推進しているところ、我々はその1つである経済構造改革に積極的に寄与すべく、与えられた機能を最大限活用して過去に扱った案件に共通する事項について審議し、市場アクセス改善のための共通課題について必要な対応を平成9年6月に建議したところである。
これらの意見を政府は、最大限尊重し、必要な対応をとる旨を表明するとともに、規制緩和の計画的推進等市場アクセスの改善に対して一連の努力を行ってきており、今後とも積極的にその努力を続けることを期待する。
他方、当推進会議に対し、外国人事業者等から、我が国市場へのアクセスに関する問題点として毎年のように類似した案件が提起されてきているのも現実の姿である。政府としては、提起された問題に対し必要な対応をとることも重要であるが、市場における企業や消費者の責任感や能力をより信頼し、規制をその存在意義からゼロべースで見直すという観点から、公平性及び透明性に立脚した規制の抜本的改革に取り組むべきである。
2.問題提起により明確化された政府が対応すべき諸課題
平成9年秋以降の問題提起に係る作業を総括して、我々としては各案件に共通する以下の事項について政府の適切な対応を求める。
(1) 規定等の策定過程・運用基準の明確化及びその公表
行政の透明性の更なる向上を図るとともに、その説明責任を明確化すべきである。
行政においては弾力的かつ臨機応変な対応も必要とされるが、その際、行政府による裁量の余地を可能な限り排除すべきである。行政手続法が制定されたにもかかわらず、その精神が活かされていない例が散見されるが、あらゆる規定についてその策定過程及び運用基準の明確化並びにその公表に努めるべきである。
また、地方支分部局によっては制度の運用が異なる旨の問題提起もなされているので、文書化された運用基準の窓口への徹底とともに、本省の政策や制度改正についても周知を図るべきである。
これらに加え、行政府内において、行政手続に係る業務のマニュアル化を推進すべきである。これは、行政手続に要する時間の短縮に資するのみならず、手続に遅延が生じた際の原因究明や問題解決の早期化に資するものである。<
また、1つの行政判断において、関係省庁が多岐にわたり、省庁間の調整過程が不透明なことにより、外国政府・事業者等に不信感を与えている場合がある。省庁間の連絡調整体制やその体制の運営要領を明文化することにより、責任の所在を明確化すべきである。
さらに、我々の意見等を政府が「検討する」際、その検討過程が明らかでなく、せっかくの取り組みにもかかわらず、あらぬ誤解(例えば、全く取り組んでいない等)が生じている場合があるので、中間報告等により、積極的にその検討過程を公開すべきである。
(2) 技術進歩等に対応した規格・基準等の見直し
規格・基準等の設定の必要性及びその内容は、社会的ニーズや国際的調和の観点から、所管省庁においては不断の見直しが必要である。
特に、技術進歩のテンポに合わせて諸制度を常に点検することが必要であり、技術進歩を行政サービスの向上に資せしめるとともに、諸制度が時代遅れとなった場合には新たな状況に即応していく姿勢が重要である。
また、国際基準が存在しない場合に、国際基準の策定を待つということではなく、むしろ我が国の基準を中心に国際基準を策定するよう各国に働きかけるような積極さを示すべきである。
今回の問題提起の中には、許可や承認等を得る際に満たすべき諸要件において、所管省が当該要件を求める論拠と制度として現実に求められている要件の内容とが、著しく乖離してしまっている例がみられた。例えば、事業を開始するための許可条件や機械設備を設置するための条件として、特定の資格取得者の設置を義務づけられている場合があるが、事業形態の変化や機械設備の性能・安全性の向上等により、当該資格の必要性が形骸化してしまっていると考えられるものもみられる。
消費者や企業の自己責任の確立を目指し、形式的要件は廃止するとともに、要件の必要性についても常に市場や技術水準等の実態を反映したものにするよう努めるべきである。
(3) 国際的に魅力ある事業環境の整備
規制の適用が内外無差別であることや外国における規制の方が厳しいことをもって問題なしとすべきではない。特に、外国人の就業・事業活動等のサービス貿易の活発化への対応や対日投資促進が求められる内外の状況においては、国際的に魅力ある事業環境の整備という観点から、主体的かつ積極的な対応を図るべきである。
(4) 相互承認の積極的推進
上記の建議において相互承認推進の必要性について指摘したところであるが、個々の分野で外国の検査データや適合性評価機関の積極的な活用を図るとともに、我が国市場に対するアクセスをより容易ならしめるため、主要国との間の話し合いを進め、相互承認の推進について包括的な枠組みの整備等も含め、積極的な対応が必要である。
その際、我が国と交渉相手国との間における諸制度の差異に伴う問題をどのように克服するかという点が重要なポイントとなると予想されるので、我が国の認証制度については国際的な視点でみても説得力のある説明に努めるべきである。
(5) 制度全般についての広報の強化と簡明な制度への転換
我が国の基準・認証制度や輸入手続等に関し、せっかく規制緩和が行われたにもかかわらず、そのことを外国人事業者等が認識していないために問題とみなされて提起された例が複数あった。
これらに対しては、その運用基準・方法や最近の規制緩和の状況を含め、制度全般について内外の理解を得られやすいよう様々な媒体を通じた広報を積極的に推進すべきである。
また、制度等への誤解に基づく問題提起に対しては、広報等を通じて誤解を解消するよう努めると同時に、誰からみても理解しやすい制度に変えていくように努めていく必要がある。
(6) 実施期限の明確化
ここで問題提起された案件への対応をはじめ、諸課題に対し政府としての対応をとる際には、内外の諸環境が急速に変化するという現代社会の特性に鑑み、検討や制度改正等の実施に必要な期間の短縮及びその明確化を図るべきである。
かかる観点から、本報告書においては、可能な限り実施及び検討の期限を明示するよう努めた。
3.政府によるフォローアップの実施
以上に指摘した考え方に基づいて、我々は、政府が市場アクセスの改善に一層努力することを期待したい。加えて、規格・基準等の制度・運用に関与する関係団体についても同様の対応を期待する。
これまでの報告書に盛り込んだ意見に対する政府の対応については、毎年フォローアップ会合を開催し、その実施状況に対して必要に応じ意見を述べてきたが、外国人事業者等からはフォローアップが不十分である旨の意見が表明されることがあった。しかしながら、先般、「21世紀を切りひらく緊急経済対策」(平成9年11月18日)により、過去のOTO案件の総点検を平成10年度中に行うことが決定され、その状況の如何によって、政府として更なる対応を行うこととなった。
今回の報告書に盛り込んだ意見については、当推進会議として適宜フォローアップを行うこととするので、政府においても、我々のフォローアップにおける検討結果に応じて必要な対応をすることを期待する。
Ⅱ.意見
2.医療品・医療用具・化粧品関係
2-(1) 医療用具の外国製造承認における手続の簡素化
○ 問題提起者:台北駐日経済文化代表処
○ 所管省庁:厚生省
○ 問題の背景
(1) 医療用具を輸入する際に必要な承認等
薬事法の規定により、医療用具(同法第2条第4項に基づく薬事法施行令第1条別表第1で定めるもの)を輸入するためには、輸入販売業の「許可」(同法第22条)に加え、品目ごとの「承認」(同法第14条)を厚生大臣から得る必要がある(厚生大臣の指定する医療用具を除く)。
また、医療用具の承認については、外国製造業者が医療用具等の製造承認を直接得ることができる制度(同法第19条の2)が昭和58年に導入された。
(2) 医療用具の承認
医療用具の承認を得るためには、当該用具の構造、効能・効果、性能等が、品質、有効性及び安全性の見地からみて支障がないか品目ごとに審査を受ける必要がある。ただし、厚生大臣が指定した品目については、承認は要しない。
なお、品目ごとの承認を要しない医療用具(省令第18条)としては、医療専門家が直接使用するもので、有効性、安全性及び品質が確認され、技術的にも定着しているものとされる82種類が定められているほか、既に広く用いられかつ有効なことが周知されたものであって、現代の医学・工学等の知識を総合してその品質及び性状を定めた日本工業規格(JIS)に適合する医療用具として128種類が定められている。
また、承認に要する標準的事務処理期間は、新規の医療用具については1年以内、その他の大部分の医療用具については4カ月以内とされている。
(3) 外国製造業者の承認要件
外国製造業者が厚生大臣から直接承認を得る要件としては、医療用具による保健衛生上の危害の発生の防止に必要な措置を採らせるため国内管理人の選任が定められている(同法第19条の2)。国内管理人の選任基準(省令第26条の5)には、国内製造業者等に設置義務のある製造所の責任技術者と同一の要件(省令第24条第3項)が必要とされている。
(4) 諸外国における制度
米国においては、医療用具(一部の低リスク品を除く。)は市販前に国の認証を必要としている。その場合、外国製造業者は直接認証を受けることができる。
EUにおいては、医療用具規制に関する新たなEU指令(医療機器指令)が、1998年6月に施行される予定であり、この指令においては第三者認証機関による認証(一部の低リスク品は自己認証)に基づくCEマーク表示が義務づけられる。CEマーク表示に当たっては、外国製造業者が直接、自己適合宣言をすることができる。
○ 問題提起内容
薬事法に基づき、医療用具(低周波治療器及び体脂肪計)を輸入しようとする際、その承認申請手続には、約1年間もの時間を要するとともに、国内管理人の選任・維持等に多額の費用が必要となるため、輸入数量が少ない業者にとっては相当の負担である。
また、国内管理人の選任基準が厳しく、海外の製造業者が製造承認を直接取得するのは、困難な状況にある。
そのため、国内管理人制度を廃止し、米国のFDAやEUのCEマークのように海外の製造業者が直接製造承認を申請できるよう承認手続の簡素化を行うべきである。また、FDAやCEマーク等をもって代替できるよう相互承認の導入を進めるべきである。
○ 検討結果
所管省によれば、外国製造業者が製造承認申請のために選任しなければならない国内管理人の具体的責務は、当該医療用具の不具合情報の収集や不良製品の回収等である。
他方、国内製造業者等に設置義務のある責任技術者は、製造所(輸入業者)に勤務する従業員の監督や製造設備・物品の管理等の責務を第一義的に負っており、国内管理人のように不具合情報の収集等の義務を直接負っているわけではない。
このように、国内管理人と責任技術者では、資格要件こそ同一であるが、薬事法において果たすことが求められている義務が異なっている。
薬事法が、外国製造承認という制度により、認証手続における内外無差別を法制度的に確保している点は評価できる。また、その際、国内における医療用具等の使用者の安全を何らかの方法により担保しなければならないという考え方も理解できる。しかしながら、国内管理人の責務である不具合情報の収集等のためには、それにふさわしい事務処理能力があれば十分であり、責任技術者と同一の要件がその責務の遂行に必要不可欠であるとは考え難い。
相互承認の導入については、所管省が外国試験データを原則的に受け入れている点は評価できる。当推進会議建議を受け、政府において「相互承認の推進について積極的に対応する」ことを決定していることもあり、さらに医療用具の種類に応じて、第三者機関の認証の相互承認についても積極的に推進すべきと考える。
以上を踏まえ、所管省においては、以下の対応をとるべきである。
(1) 外国製造承認の申請に必要な国内管理人の資格要件について、1)現実に課されている責務に適合した要件、2)医療用具のリスクの度合いに応じたランク分けをすること、を検討し、平成10年度中に結論を得るべきである。
(2) 家庭用医療用具における承認不要品目の拡大を図るべく既に検討を進めているということであるが、第4回報告書(平成9年3月17日)で意見を付したとおり、平成10年3月末までに検討結果を公表すべきである。また、製造承認が不要となれば、現行制度においても国内管理人を選任する必要がなくなるので、家庭用医療用具以外においても、人体にとってリスクの低い医療用具については、承認不要品目を拡大するべきである。
(3) 諸外国から医療用具に関する相互承認協議の要請があった場合には、その推進について積極的に対応すべきである。
5.建設関係
5-(1) 建設業の許可等に係る規制緩和
○ 問題提起者:駐日欧州委員会代表部
○ 所管省庁:建設省
○ 問題の背景
(1) 建設業に係る制度の現状
建設工事の適正な施工の確保、発注者の保護及び建設業の健全な発展のため、軽微な工事のみを請け負うことを営業とする場合を除き、建設業を営もうとする者は、建設業の許可を受けるものとされている。(建設業法第1条、第3条)
1) 建設大臣の許可と都道府県知事の許可
二以上の都道府県の区域内に営業所を設けて建設業を営もうとする者は建設大臣の、 一つの都道府県の区域にのみ営業所を設けて建設業を営もうとする者は当該都道府県知事の許可を得なければならない。
2) 一般建設業の許可と特定建設業の許可
発注者から直接請け負う一件の建設工事につき、その工事の全部又は一部について、一定額以上となる下請契約を締結して施工しようとする者は特定建設業の許可をその他の者は一般建設業の許可を受けなければならない。
3) 業種別の許可制度
28の建設工事の種類ごとの業種別の許可制度が設けられている。
4) 建設業許可の有効期間
許可の有効期間は5年であり、許可の更新が必要(平成6年6月の建設業法改正で3年から延長)。
5) 許可の主な基準(建設業法第7条及び第15条)
1] 常勤役員のうち、少なくとも一人は、許可を受けようとする建設業について、経営業務の管理責任者として一定の経験が必要。(外国における経験者を同等以上の能力を有するものとして建設大臣が認定することができる。:建設業法第7条第1号ロ、第15条第1号)
2] 一定の資格又は実務経験等を有する専任技術者の設置。(外国における有資格者を同等以上の能力を有するものとして建設大臣が認定することができる。:建設業法第7条第2号ハ、第15条第2号ハ)
3] 請負契約の履行に関する不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないこと。
4] 請負契約を履行するに足りる財産的基礎又は金銭的信用があること。
(2) 建築士に係る制度の現状
1) 外国の建築士免許を受けた者で、日本の建築士になろうとする者は、一級建築士については建設大臣が、二級又は木造建築士については都道府県知事が同等以上の資格を有する者と認める者は、建築士の試験を受けないで免許を受けることができることとされている(建築士法第4条第3項)。
2) なお、諸外国においても建築設計に係る資格制度を法又は民間制度として実施している例がほとんどである。しかしながら、日本のように外国の免許を取得した者に対する扱いを明示している例は少なく、二国間の相互承認により相互の資格の同等性を確認している例が多い。現在、各国の建築設計職能団体が相互承認を行うための基準づくりを行う動きがあり、日本の団体も参加している。
○ 問題提起内容
建設業の許可は、工事の種類ごとに28もの種類があり複雑な上に、特別な資格を持った従業員の雇用や、地方自治体が求める地方の営業所の設置等、それを維持するコストは高額である。また、一つの都道府県の区域のみに進出する場合には、都道府県知事から許可を得ればよいが、さらに他県等へ広域展開を行う場合には、もう一度、建設大臣許可を得直す必要があり煩雑である。
建築士資格取得の条件については、以前よりも改善されてきたが、依然として条件は厳しいままである。例えば、海外の同等の資格保有者に対する考慮もなく、建設省や地方自治体による日本語の試験に合格する必要がある。加えて、海外での業務経験に加えて3年間の日本での業務経験を求められる。
こうした現状を踏まえ、以下の措置を講ずべきである。
(1) 建設業の許可の種類の削減
(2) 建設業としての許可取得に係るコストの軽減
(3) 許可取得及び更新における手続の簡素化
(4) 欧州の建築の免許のうちいくつかの技術資格を日本の一級建築士と同等であると承認すること
○ 検討結果
(1) 建設業の許可
28業種区分のあり方については、本制度導入時から現在までの技術進歩にかんがみると、見直しを検討してもよい時期に差しかかっているといえる。また、現行制度において、建設業許可を受けた業種以外の業種に対応する工事であっても、一式工事における専門工事や付帯工事を請け負うことが可能であり、かつ、技術的要件を満たせば自らその施工を行うことも可能である。
しかし、外国企業によっては、各業種の定義や一式工事、付帯工事の意味等がなじみにくく、これが対日投資意欲をそぐことにつながる可能性も考えられる。
他方、建設業の許可を得るためには営業所に必ず専任技術者を置かなければならないが、その専任技術者に必要な要件を満たすことができる資格が業種によっては共通している。したがって、建設業許可に関する現在の業種区分を関連業種ごとに大括りすることにより、実質的に許可の種類を減らすとともに、許可を簡素化することが可能であると考える。この点については、中央建設業審議会においても、業種区分のグループ化に向けた検討を行うべきという建議が示された(10年2月4日)。
そもそも、建設業許可のような市場への参入規制は、必要最小限のものに留める必要がある。さらに、市場メカニズムを通じた選別の観点から、建設業者の技術力等に関する情報を公開することも重要である。
以上を踏まえ、所管省としては、以下の対応をとるべきである。
1) 英文パンフレットの作成等により、建設業許可制度の仕組みに関する広報活動の強化を平成10年中に行うべきである。
2) 建設業許可における業種区分の見直しにつき、総合的な検討を行い、早期に結論を得るべきである。併せて、建設業者に関する情報の公開についても、検討を行うべきである。
3) 建設業の許可取得及び更新等における手続については、許可の一本化運用や、許可の有効期間の延長、許可の更新時等における添付書類の一部省略等、各般の簡素化が実施された点は評価できるが、更なる簡素化を検討すべきである。
(2) 建築士の認定
建築士法において、外国の建築士免許を受けた者が我が国において建築士として認められるための方法に関する規定が明示してある点は評価できる。
しかしながら、その認定基準等運用基準が明文化されていない点は、外国からいわれのない批判を招く原因となりうる。例えば、問題提起者が見直しを求めている日本語による試験の必要性についても、所管省によれば、場合により外国語による論文提出も可能ということであるが、日本語試験免除の基準が所管省外に対して明確になっていない。
したがって、所管省においては、「行政の透明性の確保」という行政手続法の精神を活かし、以下の対応をとるべきである。
建築士法第4条第3項の運用基準を、平成10年中に作成・公表すべきである。
6.情報通信関係
6-(1) JPNICによるインターネット・ドメインネームの登録方針の改善
○ 問題提起者:駐日オーストラリア大使館、在日オーストラリア・ニュージーランド 商業会議所
○ 所管省庁:郵政省
○ 問題の背景
(1) JPNICの設立
我が国のドメイン名の登録、割当事務等に関しては、民間団体である社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)が一元的に行っている。
JPNICは、インターネットサービスプロバイダー及び学会の代表で構成されるJCRN(研究ネットワーク連合委員会)の支援により平成3年12月に設立されたJNICを前身として、平成5年3月に設立され、平成9年3月31日に郵政省、文部省、通商産業省、科学技術庁共管の社団法人として認められた。
(2) ドメイン名の登録要件
JPNICは、商標権に関わる問題の発生やドメイン名ブローカーの出現を未然に回避する目的で、ドメイン名の登録方針として、先願主義、一組織一ドメイン名、移転制限、地域関連性(日本国内で登記している企業等)の4点を挙げている。
また、必要に応じて、ドメイン名を登録する際に、登記簿謄本や代表者の印鑑証明といった身元を証明する書類の提出を求めることがある。
(3) 諸外国の登録要件等
オーストラリアにおいては、1企業に対して複数のドメイン名が認められていない。また、ドメイン名の登録申請には Business Registration の登録番号の記載が必要である。
ニュージーランドにおいては、複数のドメイン名が認められており、企業の所在地に関する制限もない。
○ 問題提起内容
(1) 一社につきドメイン名を一つに制限しているが、同一社内における各部署や各プロジェクト毎に独立したドメイン名を使用することが可能となるよう、一社につき複数のドメイン名を割り当てられるようにすべきである。
2) 日本で登記されていない法人に対して、日本のドメイン名(www.….co.jp)は与えられていないが、未登記の外国企業に対しても日本のドメイン名を与えられるべきである。
(3) 競争原理の導入等によるJPNICの登録料金の引き下げ、申請システムのオンライン化による申請手続の簡素化を図るべきである。
○ 検討結果
ドメイン名登録申請の数に関する制約及び申請者の地域要件には、国際的に統一された運営方法が存在せず、先進国間においてもその運営方法が様々であることから、JPNICの運営方針が国際的にみて特に市場閉鎖的であるとは必ずしもいえない。
また、ドメイン名登録申請手続については、オンライン登録申請が1991年12月より可能となっている。登録料は、国際的にみて高水準とはいえず、JPNICに直接登録する場合は現在2万円であるが、JPNIC会員であるインターネットサービスプロバイダーを通じた登録の場合は、各々の会員により登録料が設定されており、会員間で競争原理が働いているといえる。
しかしながら、米、英、独等、一組織複数ドメイン名や我が国よりも緩い地域要件を採用している国も既に多数存在することも考慮し、ドメイン名の登録方針の違いが、対日投資を含む我が国市場へのアクセスを阻害する可能性の有無についても留意すべきである。
JPNICのような公益法人については、民法上その業務が主務官庁の監督下にあり、必要な命令をすることができるとされており、本推進会議建議(平成9年6月18日)でも提言したとおり、たとえその内部方針であっても市場アクセスの観点から適切なものでなければ、主務官庁において所要の対応を行うべきである。
所管省としては、平成10年3月から、ドメイン名の管理のあり方について研究会を開催し、幅広い検討を開始しているとのことであるが、国際的動向を勘案しつつ市場アクセスや対日投資促進の観点からも検討し、平成10年中に結論を出すべきである。その上で必要があれば、JPNICに対しドメイン名の運営方針の改善を働きかけるべきである。
7.輸入手続関係
7-(1) 外国郵便物の課税に対する納税方法の改善
○ 問題提起者:日本貿易会、東京商工会議所
○ 所管省庁:大蔵省、自治省
○ 問題の背景
(1) 外国から送られてきた郵便物が関税を納付すべき内容であるときは、税関から郵政官署を経て、当該郵便物の名宛人に対し、課税通知書が送付される。郵政官署は当該郵便物を交付する前に課税通知書を名宛人に送達しなければならない。
その際、関税等(関税、内国消費税及び地方消費税)の課税額が1万円以下の外国郵便物については、課税通知書と同時に配達され、関税等の納付と引き換えに郵便物が名宛人へ交付される。
課税額が1万円を超える外国郵便物については、まずその課税通知書が名宛人に送付される。名宛人は、郵便物が留め置かれた郵便局に出向き、税額相当の金銭を納付した後、その郵便物を受け取ることができる。(関税法第77条、国際郵便規則第72条)
(2) 課税貨物に課される地方消費税は、当該課税貨物を保税地域から引き取る者に対し当該保税地域所在の都道府県(課税貨物を保税地域以外の場所から輸入する場合は、課税した税関長の所在する税関所在の都道府県)により貨物割(輸入取引について、課税貨物に係る消費税額を課税標準として課される)として課税される。
貨物割の賦課徴収は、国が、消費税の賦課徴収の例により、消費税の賦課徴収と併せて行うこととされている。
国に納付された貨物割は、国税収納金整理資金に一旦受け入れられた上で、同資金から保税地域所在の都道府県(課税貨物を保税地域以外の場所から輸入する場合は、課税した税関長の所在する税関所在の都道府県)に払い込まれる。(地方税法第72条の78、第72条の100 、第72条の103 、国税収納金整理資金に関する法律第2条)
○ 問題提起内容
従来、外国郵便物への課税は、収入印紙で納付していたが、地方消費税の導入により現金納付に変更となった。現金納付の場合、仮払いもしくは社員の立替え払いで現金化して納付しなければならないので、小型の外国郵便物は、この取扱いが非常に煩雑になっている。サンプル品等輸入時の租税納付の効率化のため、外国郵便の租税納付について、従前通りの収入印紙による納付も認めるべきである。
○ 検討結果
行政府が常に「納税者の利便」の最大化を図るべきことは言うまでもない。所管省は、地方消費税の導入に伴い、外国郵便物に課される関税等の徴収方法が収入印紙から現金へと変更となった理由として、(1)収入印紙に係る収入は国の一般会計の歳入に計上されるので、地方税である地方消費税分を収入印紙で納付することができないこと、(2)国税分を印紙、地方税分を現金というように異なる方法で徴収することは、納税者の利便の観点からも望ましくないため地方消費税は消費税と一体として納付することが税法上定められていること、を挙げている。
このように所管省が納税者の利便に配慮している点は評価できるが、残念ながら行政府の想定する納税者の利便と納税者の実感が必ずしも一致しない場合もあり、現に問題提起者は現金納付に不便を感じている。
また、所管省は、問題提起者に対して、社員の立替え払い等の問題は経理システムの工夫により対応できる旨指摘しているが、行政府の側も、既存の方法にとらわれることなく、納税者の利便を実質的に図るという姿勢が望まれる。
以上を踏まえ、所管省としては、以下の措置を講ずるべきである。
問題提起者からは、外国郵便物について、現金納付に加えて、収入印紙と都道府県が発行する収入証紙との組み合わせによる納付方法も認めるよう要望があったが、この方法の可否等につき、直ちに検討を開始し、平成10年度中にはその検討結果を出すべきである。
7-(2) 税関事後調査方法の改善
○ 問題提起者:東京商工会議所
○ 所管省庁:大蔵省
○ 問題の背景
(1) 消費税
1) 税関による事後調査
税関職員による消費税に関する事後調査は、消費税法やその他の法律で記録、保存が義務づけられている帳簿書類等(例えば、法人税や消費税については、約7年間の保存が義務づけられている)について、2)の質問検査権に基づき行われている。
2) 税関職員の質問検査権等
税関の職員は、消費税に関する調査について必要があるときは、課税貨物を保税地域から引き取る者等に質問し、又は課税貨物若しくは帳簿書類その他の物件を検査することができる(消費税法第62条第3項)。この質問に対して答弁せず、若しくは偽りの答弁をし、又はこの検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者は、十万円以下の罰金に処せられる(消費税法第68条)。
(2) 関税
1) 税関による事後調査
税関職員による関税に関する事後調査は、関税法以外の法律で記録、保存が義務づけられている帳簿書類等について、2)の質問検査権に基づき行われている。
2) 税関職員の質問検査権
税関職員は、職務を執行するため必要があるときは、その必要と認められる範囲内において、輸入された貨物について、その輸入者等に質問し、又は貨物若しくは貨物についての帳簿書類を検査することができる(関税法第105条第1項本文及び第6号)。この質問に対して答弁せず、若しくは偽りの陳述をし、またはその職務の執行を拒み、妨げ、若しくは忌避した者は、五十万円以下の罰金に処せられる(関税法第114条第5号)
(3) 加算税
税関の事後調査により把握された申告漏れ税額の動向にかんがみ、関税等の納税者間における課税の公平を維持し、より適正な納税申告を確保するために、平成9年10月から、輸入品に課せられる関税及び内国消費税に過少申告加算税及び無申告加算税が導入された。
過少申告加算税は、税関の調査により、納税申告が適正でないとして修正申告又は更正が行われたときは、原則として、当該修正申告等により増加した税額に10%(一定の場合には15%)を乗じた金額を課すものである(関税法第12条の2第1項)。無申告加算税は、納税申告が必要な貨物について、輸入時までに申告されずに、税関の調査により税額の決定が行われた場合及び決定後に更正が行われた場合、原則として、これらの決定又は更正により納付すべき税額に15%を乗じた金額を課すものである(関税法第12条の3第1項)。
(1) 消費税の事後調査の実施の必要性
消費税に係わる輸入申告について、税関事後調査が実施されているが、事業における輸出入のバランスからいって、修正申告を行ったとしても結局消費税が仕入控除又は還付される輸入者にとっては、調査の負担ばかりが大きい。したがって、消費税に関する事後調査については、調査対象企業の選定を適切に行うべきである。
(2) 税関の事後調査対象の絞り込み
税関の事後調査が、4年に1度本社を管轄する東京税関で一括して行われるが、その対応のために地方で通関した商品の通関関連書類を、すべて東京にて集中管理することになる。また、年度により調査の対象が変わるため、銀行の送金証明、為替レート証明、先方のインボイス、諸掛かり請求書等、膨大な書類の管理が求められている。全件を対象とせず、一定金額以上の案件に絞るべきである。
○ 検討結果
税務調査は、調査する側の都合だけでなく、調査される側、すなわち納税者がその準備に要するコストや作業能率を考慮した方法で行われるべきである。所管省によれば、調査の際、必要最小限の書類しか要請していないとのことである。
しかしながら、問題提起者の実感は、実際に調査する書類に比較して事前に用意させられる書類の量が非常に多いなど、納税者に必要以上の負担が強いられているというものである。
また、関税及び消費税については、平成9年10月より新たに加算税が導入され、納税者が適正な申告を行うインセンティブは以前にも増して高まっていることが予想される。したがって、税関の事後調査のやり方を緩和の方向で見直す余地が生じているものと考えられるとの意見もあった。
所管省によれば、現在でも、申告実績が優良な企業に対しては調査頻度を少なくする等の措置を講じているとのことである。このような対応は評価できるが、調査書類の明確化等、さらに適正申告を促すとともに輸入者の負担を軽減するための工夫をすべきである。
また、フロッピーディスク等で保管されている証拠資料も既に調査において活用しているということであるが、第4回報告書(平成9年3月17日)で付した意見に基づき法人税法において電子データによる保存が容認されることを踏まえ、電子データの活用を一層進めるべきである。
以上を踏まえ、所管省においては以下の対応をとるべきである。
調査の対象となる帳簿書類の利用のあり方や、そのうち電子データ保存されるものの活用、調査に関する広報の強化等、税関による事後調査のあり方につき、納税者の負担軽減と徴税事務の効率化の観点から直ちに検討を開始し、平成10年中にはその検討結果を出すべきである。
8.その他
8-(1) 関税見直しメカニズムの明確化
○ 問題提起者:駐日オーストラリア大使館、駐日ニュージーランド大使館、在日米国商工会議所
○ 所管省庁:外務省、大蔵省、農林水産省、通商産業省
○ 問題の背景
外国政府等の関税に関する要望については、これまで主としてGATTあるいはWTOの下における累次の多国間政府交渉の場で対応されてきた。個別要望については外務省が受付け、大蔵省及び物資所管省庁にも伝えており、外交ルートを通じ対応されている。
また、国内の事業者等からの要望については、物資所管省庁で受け付けている。物資所管省庁では、これら外国政府等や国内事業者等からの要望について、国内産業との関係を勘案し、その適否を総合的に検討の上、大蔵省に要望として提出している。
大蔵省は物資所管省庁からの要望を踏まえ、大蔵大臣が関税率審議会に諮問し、その答申も踏まえ、国会の議決をもって関税率改正を行っている。
○ 問題提起内容
日本政府に、関税率の見直し要望をした場合、制度所管省庁と物資所管省庁との間で窓口となるべき省庁が不明確であり、要望の取扱い方も不透明である。必要であれば、独立した、関税率に関する要望の窓口となるメカニズムを設立するなど、関税率見直しに係るメカニズムを文書にて明確化すべきである。
○ 検討結果
関税率の改訂についての他国との交渉は、多角的貿易体制を旨とするWTOの場で多国間の政府交渉を通じ、関税率譲許の形で外交交渉が行われるのが基本である。また関税率改訂の検討の際には、それぞれの国の国内産業や雇用に与える影響等も考慮する必要がある。このため、他国政府・企業から出された個別の要望の全てが実現されるとは限らないと考えられる。
一方、我が国では、行政の情報公開を推進し、政策決定の透明性の度合いを高めることが、国民からも求められており、政府が政策決定過程を分かりやすく説明する必要性は現在一層高まっている。これは関税率の決定過程についても当てはまるが、我が国が片務的にその決定過程の透明化を進めるあまり、かえって関税交渉において不利な立場に追い込まれてしまう可能性も否定できないので、その透明化には限界もある点に留意すべきである。
以上を踏まえ、所管省においては、諸外国における状況も参照しつつ、以下の措置を講ずるべきである。
(1) 所管省は、関税率見直しに係る手続きについて、政府部内で文書化することとしている。こうした対応は評価できるものであり、速やかに文書化を行い、公表すべきである。その際、文書化の内容は可能な限り詳細かつわかりやすいものとし、英訳も同時に作成・公表すべきである。
(2) 関税率審議会においては、従来から答申内容について新聞発表を行っているほか、平成7年度から議事要旨を公開するとともに、平成8年度より、これを答申内容とともにパソコン通信及びインターネットに掲載する等、運営の透明性の確保に努めてきている。こうした対応は評価できるものであるが、所管省は、引き続き関税率審議会の運営の一層の透明化に努めるべきである。
8-(2)外国銀行に対する源泉徴収免除証明書制度の廃止
○ 問題提起者:駐日韓国大使館
○ 所管省庁:大蔵省
>○ 問題の背景
(1) 外国法人へ国内源泉所得を支払う場合の源泉徴収義務
外国銀行等の非居住者・外国法人が我が国で受け取る利子は、日本の融資先等が利子を支払う際の徴収により課税されることが原則となっている(所得税法第212条第1項)。
(2) 国内に恒久的施設を有する外国銀行等の受ける国内源泉所得の課税の特例
国内に支店等(恒久的施設)を有する外国銀行等に支払われる貸付金利子に関しては、支店に帰属する所得は申告に基づき納税され、また、外国銀行等が所轄税務署長の証明書(源泉徴収免除証明書)の交付を受け、その証明書を借主に提示すれば、借主(国内源泉所得の支払者)は、特例として源泉徴収を行う必要はない(所得税法第180条、租税特別措置法第42条の2)。この源泉徴収免除証明書は、源泉徴収義務者たる融資先が利子を支払う際、その利子が 1)支店に帰属するものか(この場合、源泉徴収免除可)、2)本店に帰属するものか(この場合、源泉徴収必要)の区分を承知するために必要とされている。
なお、従前は、外国銀行等からの貸付利子に係る源泉徴収が免除されるためには、源泉徴収免除証明書を借主に提出する方式がとられていたが、平成7年3月に、外国銀行に対する源泉徴収免除制度の原則は維持しつつも、制度の簡素化を図る趣旨で、提示方式に改められた。
(3) 外国法人が課税の特例の適用を受けるための主な要件
・外国普通法人となった旨の届出書を提出していること。
・登記が必要な外国法人は、その登記をしていること。
・源泉徴収免除の適用を受けようとする国内源泉所得が、法人税に関する法令等に基づき法人税を課される所得のうちに含まれること。
・当該外国法人が不正に所得税又は法人税を免れたことがないこと。(所得税法施行令第304条)
○ 問題提起内容
源泉徴収免除証明書については、従来の交付方式から提示方式に変わったものの、外国銀行の在日支店は、所轄税務署から同証明書の交付を受け、それを融資先(利子支払者)に提示するために、実際は支店の判断で証明書のコピーを融資先に送付しており、当該外国銀行にとっては同制度による不便さは改善されていない。外国銀行の在日支店から貸出を受けた融資先が支払う利子に対し、所得税の源泉徴収義務免除を定めている「所得税法第180条」を改正し、外国銀行も日本の銀行と同様に、融資先に対して源泉徴収免除証明書を提示しないで済むようにすべきである。
○ 検討結果
所管省によれば、外国銀行の支店と本店とは法的に一体であり、税務上の所得の帰属は、費用との適正な対応関係等を考慮して決定される。このため、外国銀行在日支店から国内事業者への事業資金の貸付により発生した利子所得については、源泉徴収義務者である借主(国内事業者)が金銭貸借契約書を見ても、最終的に当該外国銀行の在日支店の所得となるのか、もしくは国外の本店の所得となるのかが不明であるといったことが、外国銀行等による源泉徴収免除証明書の提示義務の重要な根拠となっている。すなわち、同証明書の提示以外の方法では、借主には、自らが支払う利子が国内支店もしくは国外の本店のどちらの所得として帰属するかを判断する方法がなく、本制度抜きには源泉徴収課税の義務が果たせない場合があるということである。
したがって、本制度が有効に機能するためには、外国銀行等から同証明書の提示がない場合には借主に源泉徴収義務が生じるということを、外国銀行等から融資先への通知や政府の広報により、外国銀行等から借り入れを予定している国内の全事業者に周知徹底しておく必要がある。
源泉徴収免除証明書の有効期限は1年であるということであるが、そもそも「恒久的施設」を有することに加えて一定の要件を満たすことが同証明書交付の前提となっており、これらの要件は当該外国銀行等が日本国内に存在する以上変更のないものが多いことにかんがみれば、有効期限を1年のみに限る必然性は高くないとの意見があった。しかしながら、所管省によれば、この期限を延長すれば、源泉徴収漏れに伴う借主への負担(証明書が取り消された場合等、借主に源泉徴収義務が生じた場合の源泉税の納付と後日の外国銀行への求償)がそれだけ過重になるということや、源泉所得税の徴収権の消滅時効との兼ね合いの問題があるとのことである。
また、源泉徴収免除証明書の交付が1通しか行われない場合には、複数の融資先に機動的に対応しづらいという問題がある。
以上を踏まえ、所管省においては、以下の対応をとるべきである。
(1) タックスアンサー及びインターネットの活用等により、外国銀行等の貸付利子に関する源泉徴収免除制度及び源泉徴収免除証明書が交付されている外国銀行等の名称等に関する広報を強化する。
(2) 外国銀行等の事務負担にかんがみ制度の簡素化を図った平成7年の源泉徴収免除証明書提出方式から提示方式への変更の趣旨を一層徹底するため、金融分野における内外無差別原則及び外国法人に対する適正課税の確保に配慮しつつ、証明書の交付枚数や有効期間を含め具体的方策につき、直ちに検討を開始し、平成10年中に検討結果を出し、その後所要の措置を講ずるべきである。
8-(3) 外国企業の日本国内支店に対する住民税算出基準の改善
○ 問題提起者:駐日大韓民国大使館
○ 所管省庁:自治省
○ 問題の背景
(1) 法人課税の種類法人に対して課税される税の種類には、国税である法人税のほか、地方税としては地方税法に基づく事業税(道府県税)及び法人住民税(道府県民税、市町村民税)がある。
(2) 法人住民税の内訳
法人住民税の課税額は、法人税額を基準として課税する「法人税割」と「均等割」の合算額となる。このうち均等割については、「地域社会の費用についてその構成員である法人にも幅広く負担を求めるという性格を有するもの」(昭和59年1月 政府税制調査会答申)であり、法人に所得がない場合(収益事業の有無に関わらず、例えば企業の寮のみの所在等)でも、均等割分のみは課税される。
(3) 均等割の納税義務者
納税義務者は、都道府県及び市町村内に事務所、事業所又は寮等を有する法人及び法人格のない社団・財団で代表者又は管理人の定めがあるものとなる。外国法人の場合については、課税対象となる事業所等の範囲を地方税法施行令第7条の3の5で定めている。
(4) 算出基準と標準税率
均等割については、資本の金額・出資金額と資本積立金額の合計額に応じて、標準税率(地方公共団体が課税する場合に通常よるべき税率)に基づき課税される。
標準税率は、資本等の金額の多寡によって法人等の税負担能力に差があること、あるいは、中小法人等に対して負担の軽減を図る必要があること等の趣旨から、道府県民税は2~80万円の5段階、市町村民税では5~300万円(制限税率は6~360万円)の9段階で設定している。
この区分は道府県民税においては、資本等の金額の多寡によってのみ設定されているが、市町村民税においては、資本等の金額のほか、従業者数50人超・以下の条件を加えた区分を設定している。
(注)制限税率とは、超過課税をする場合でも、これを超えてはならないという最高限度の税率。超過課税とは、財政上の特別の必要があると認める場合に制限税率の範囲内でこれを超えて課税すること。
○ 問題提起内容
外国企業の支店から住民税を徴収する場合、地方税法上、税額算出の基礎となる資本金が本国にある本店の資本金規模を基準に定められている。支店の規模にかかわりなく、多額の地方税が課せられる場合がある。
以上のことから、住民税を計算する際に適用する外国法人支店の資本金算出基準を、接待費あるいは、寄付金限度額の計算時に適用する資本金算出方法(本店の資本金×支店資産/総資産)に変更するように要望する。
○ 検討結果
所管省によれば、法人住民税均等割の基本的な考え方は、地域社会の構成員である法人にも幅広く負担を求めるという性格を有するものであって、法人の税負担能力を考慮して、その資本金や従業員数に応じて段階的に定額により課税されているということである。これについては、道府県民税への従業員数基準の導入等、従業員数に応じた税率の設定について見直しを求める意見もあった。ただし、このような見直しにより、かえって増税となるケースが生じる可能性も考えられるので、法人住民税の税率の見直しは、他の地方税との関係等も含め、多面的に検討すべき課題である。
また、法人住民税均等割の税率等は、内国法人と外国法人の区別なく適用されていることから、内外無差別であるところである。これについては、さらに外国との税制の差異についても検討すべきではないかという意見もあった。
地方の法人課税については、今後、税制調査会において検討が進められるところであるが、所管省においても、公平・中立・簡素の観点を基本として、企業が活動しやすい環境の整備等にも配意しつつ、法人住民税均等割の税率のあり方等も含め、幅広く検討を行うべきである。
Ⅲ.問題提起のあったその他の案件についての検討・対応状況(45案件)
1.動植物・食品関係
1-(1) ベルギー産ピーマン及びトマトの輸入解禁
1-(2) 加工食品輸入検査の簡素化
1-(3) 海苔輸入手続きの改善
1-(4) ワカメ輸入事前確認制の廃止
1-(5) 食品添加物の国内基準の見直し
1-(6) 酒類の成分分析表に関する外国検査データの受入の拡大
2.医薬品・医療器具・化粧品関係
2-(1) 栄養補助食品の規制の緩和及びその迅速な実施
2-(2) 薬事法の適正な施行の確保
2-(3) 化粧品の成分規制におけるEU方式との同一化
3.工業関係等
3-(1) 非常用発電装置に関する基準の国際整合化
3-(2) LPGバルク容器輸入に係る検査の緩和
3-(3) 高圧ガスの輸入手続きの簡素化
3-(4) ショッピングセンターの電気主任技術者の選任基準の緩和
3-(5) 電気製品(業務用アミューズメント機器)の安全認証の簡素化
3-(6) TSCA等で承認を受けている化学製品の輸入許可
3-(7) 米国規格の電気製品輸入規制の緩和
3-(8) 電気用品の技術基準等の国際標準化
3-(9) 危険物等級の国際整合化
3-(10) ビル用冷凍機の取扱責任者選任基準の緩和
3-(11) 輸入衣料品の英文表示の拡大
3-(12) 毒物劇物・麻薬原料等のサンプル輸入の迅速化
3-(13) 電気製品の防爆基準に関する申請手続の簡素化
3-(14) 圧力容器等に関する規制緩和
4.運輸・交通関係
4-(1) 船舶用エンジンに関する認証手続きの明確化及び国際的整合化
5.建設関係
5-(1) 海外建築資材(公共工事用輸入資材)品質検査証明制度の改善
5-(2) 建築用ガラスに係るJIS証明手続の簡素化
5-(3) 建築資材等の認証事務の簡素化
5-(4) 海外建築資機材の輸入促進
7.輸入手続関係
7-(1) 副資材の申告方法の改善
7-(2) BP制度の整備等
7-(3) 加工再輸入手続きの簡素化
7-(4) 委託加工貿易制度の適正化
7-(5) 関税割当申請書の簡素化
7-(6) 貿易外支払報告書及び輸入報告書等の撤廃若しくは報告要件の緩和
7-(7) 輸入貨物検査人員の増員
7-(8) 輸入申請書類の簡素化
7-(9) 輸入住宅の通関手続きの簡略化
7-(10) 製品修理に係る輸入通関手続きの簡略化
7-(11) 輸入申告における現物確認の弾力化
7-(12) 輸入通関手続きにおけるEDI化の促進
7-(13) 24時間輸入申告処理の実施
8.その他
8-(1) 外国保険会社の供託金及び納入資本金限度規定の緩和
8-(2) 労働分野における規制緩和
8-(3) 日本における外国法事務弁護士に係る規制緩和等
8-(4) 著作権法の運用による楽譜コピーの禁止
1.動植物・食品関係
1-(1) ベルギー産ピーマン及びトマトの輸入解禁
○ 問題提起者:駐日欧州委員会代表部
○ 所管省庁:農林水産省
○ 問題提起内容
植物防疫法により、チチュウカイミバエ及びタバコベと病が発生しているため、ベルギー産ピーマン及びトマトの輸入は禁止されている。平成6年から日本ベルギー間でピーマン等の輸入解禁に関する協議が開始されており、所管省からは、輸入を禁止している理由、輸入解禁に必要な手続き、輸入解禁を検討するために必要な資料等について説明を受けた。
これに対して、ベルギーは科学的データの提出など、日本側の要求には可能な限り答えてきた。また、平成9年7月には、検疫措置の最終確認のための所管省の専門家による現地確認について実施要請をしたが、ベルギー産ピーマン及びトマトについては、調査の対象とはされなかった。所管省においては、現地確認等輸入解禁のための検討を進めて、ベルギー産ピーマン及びトマトの輸入解禁をすべきである。
○ 所管省庁における対処方針
ベルギーにおけるチチュウカイミバエ、タバコベと病の発生状況及びベルギー産ピーマン及びトマトの生果実の輸入解禁に必要な検疫措置については、既にベルギー政府との間で協議を開始し、以下についてベルギー植物検疫機関に明示した。
(1) 我が国が当該産品の輸入を禁止している理由
(2) ベルギーから提出が必要な資料
(3) 輸入解禁のために必要な手続き等
オランダ産ピーマン及びトマトを輸入解禁した際にオランダ政府に対して行ったのと同様の情報提供及び協力をベルギー政府に対して行った。その詳細は以下のとおり。
(1) チチュウカイミバエとタバコべと病がベルギーに発生しているため、その寄生植物であるピーマン及びトマトの生果実については輸入を禁止している。
(2) 輸入解禁を検討するためにベルギーから提出してもらう資料は次のいずれかである。
・チチュウカイミバエ及びタバコベと病の完全消毒技術
・当該病害虫の寄生を完全に防ぐための検疫措置
・ベルギーに当該病害虫が存在しないことの証明
(3) 輸入解禁に必要な手続きは次のとおり。
・検疫措置が有効であることを証明する科学的資料の提出
・当該資料の日本側による検討
・資料が日本側を満足するものである場合、日本側専門家による現地調査(資料に不足がある場合には追加資料の提出)
・現地調査が満足できる場合、関係者に説明会開催
・公聴会
・関係法規の改正(輸入解禁)
平成8年6月、11月にベルギー側から資料が提出されたことから、その内容を十分に検討した上で、平成9年5月にベルギー側に対してチチュウカイミバエの無発生を示す根拠資料の提出を求めるとともに、タバコべと病に係るベルギー側の検疫措置案が同病の我が国への侵入防止措置として不十分であったことから、受け入れられない旨回答した。これに対して、平成9年12月、ベルギー側から追加資料の送付があり、現在当方において内容を検討中であるが、平成10年3月中に回答する予定。
当該資料においては、以下の主張をしている。
・チチュウカイミバエについては過去の気象データから無発生と考えられる。
・タバコべと病については発生調査により発生地域を特定していくとともに、トマト及びピーマンに本病が寄生していないことを確認する試験を行う用意がある。
なお、平成9年7月のベルギーからの現地確認の実施要請に対しては、現地確認は検疫措置の最終確認として行うものであるから、検疫措置に係る検討が終了していない段階で調査を実施することは時期尚早である旨回答済。
1-(2) 加工食品輸入検査の簡素化
○ 問題提起者:駐日韓国大使館
○ 所管省庁:厚生省
○ 問題提起内容
加工食品を新規に日本へ輸出する際、食品衛生法に基づき、製造工程表、成文分析表等を添付して届出し、これを基に日本の検査機関(日本食品衛生協会)が行う成分内容等に関する再検査を受けなければならず検査のための時間や費用が過多にかかる。
加工食品の新規輸出の際にも、韓国内の公認機関(韓国食品衛生研究院)が行った検査結果があれば、この検査結果を受け入れ、日本での検査を省略できるようにすべきである。
○ 所管省庁における対処方針
販売又は営業上使用する食品等を輸入する場合は、輸入のつど届出を行い、必要に応じて検査を受けることとされている。
その際、一定の検査能力を有する検査機関であって、輸出国等直轄の検査機関又は輸出国等が認定、指定を行っている検査機関をあらかじめ厚生省に登録し、その公的検査機関で実施した検査結果(ただし、輸送途中に変化するおそれのある検査項目(細菌、カビ毒等)を除く。)が提示された場合は、輸入時の検査を省略する「輸出国公的検査機関制度」を昭和57年から実施しているところである。
なお、「韓国食品衛生研究院」は、平成7年に登録され、検査結果について受入れているところである。
1-(3) 海苔輸入手続きの改善
○ 問題提起者:駐日韓国大使館
○ 所管省庁:農林水産省・通商産業省
○ 問題提起内容
乾燥海苔は、「日本海苔輸入組合」が輸入業務を独占的に取り扱っており、複雑な輸入手続や高額な手数料等、事実上輸入制限的効果が生じている。したがって、以下の改善措置を講ずべきである。
(1) 同組合と締結した輸入海苔売買に関する基本契約書の原本及び写本を所管省庁に提出する義務を撤廃する。
(2) 両国政府が輸入量を決定し、両国の輸出入商社によって同範囲内での自由な取引ができるようにし、同組合は、全体的な輸入量の確認だけを行うようにする。
○ 所管省庁における対処方針
干し海苔については、国内生産量及び生産額が100 億枚、1,000 億円前後で推移するなど、我が国水産業において重要な地位を占めているところであり、このため、国内の海苔需給に混乱が生じないよう輸入割当制度の対象としている。この制度の下、毎年の商取引としての具体的な輸入については、輸入業者、流通業者、加工業者等の民間ベースで市場動向や品質、価格等を勘案しながら韓国側輸出業者と協議の上行われているところである。
したがって、このような状況の下、海苔の輸入が円滑に行われるためには、今後とも民間ベースでの議論を十分尊重していく必要があると考えている。
また、海苔の売買の方法についても、そもそも商取引慣行に属するものである。
さらに、本件については、民間ベースでの協議の場で議論されているとともに、駐日韓国大使館からの問題提起及びその後提示された見解の論点も含め、平成10年1月15~16日に開催された日韓水産物貿易協議の場で取り上げられ議論が深められたところであり、引き続き当該会合の場で議論を進めていくことで了解したところである。
1-(4) ワカメ輸入事前確認制の廃止
○ 問題提起者:駐日韓国大使館
○ 所管省庁:農林水産省・通商産業省
○ 問題提起内容
ワカメの輸入に関しては、日韓の民間会議による貿易量合意制の履行確保という理由から輸入事前確認制が施行されてきた。しかし、平成7年から、貿易量合意制が廃止となったにもかかわらず、事前確認制は継続されている。
輸入関連業務量の増大等、事前確認制は輸入障壁となっているため、事前確認制を廃止すべきである。
○ 所管省庁における対処方針
ワカメの事前確認制度は、季節的に集中して漁獲されるワカメについて、国内生産の状況と併せて輸入動向を早期かつ的確に把握することにより、関係者に対しワカメの需給状況を適切に提供する役割を担っているものであり、この機能は今後とも必要であると考えている。
税関からの報告は、事後のものであり、一定の期日を要することから本制度の代替とはなり難い。
なお、近年のワカメの輸入量については、3万5千トン前後で推移しているが、輸出国の状況をみると韓国が減少し、中国が大幅に増加している状況にある。これについては、両国間のワカメの品質・価格等によるものと考えられる。
また、本件に関しては、駐日韓国大使館からの問題提起及びその後提示された見解の論点も含め、平成10年1月15~16日に開催された日韓水産物貿易協議の場で取り上げられ議論が深められたところであり、引き続き当該会合の場で議論を進めていくことで了解したところである。
1-(5) 食品添加物の国内基準の見直し
○ 問題提起者:東京商工会議所
○ 所管省庁:厚生省
○ 問題提起内容
日本の食品添加物に関する規制、例えば、食肉製品の亜硝酸含有量が0.07g以下であり、安息香酸の使用については、キャビア、マーガリン、シロップ、醤油等の一部の品目に限定されていること等については、日本人の食生活の欧米化、多様化、また体格の発達等、食生活を取り巻く様々な変化を考慮して、緩和すべきである。
○ 所管省庁における対処方針
食品衛生法第7条第1項の規定に基づき、公衆衛生の見地から、「食品、添加物等の規格基準」(昭和34年12月厚生省告示第370 号)により食品添加物等の規格基準(使用基準、製造基準、成分基準)が設定されており、同条第2項の規定により、この規格基準に適合しないものの輸入、販売等は禁止されている。
また、食品添加物の使用基準改正の手続きについては、平成8年3月に食品衛生調査会の答申に基づき、「食品添加物の指定及び使用基準改正に関する指針」(平成8年衛化第29号生活衛生局長通知)を示しているところであり、本指針に従い、安全性等を示す資料を添えて、具体的な要請があれば、食品衛生調査会の審議を経て実施することとしている。
なお、食品添加物の使用基準改正の手続きについては、欧米諸国においても、関係事業者等からの具体的な要請に基づき、科学的評価を経て実施される。
(備考)
問題提起者の見解は以下のとおり。
「当面はこの対処方針で了解」
1-(6) 酒類の成分分析表に関する外国検査データの受入の拡大
○ 問題提起者:東京商工会議所
○ 所管省庁:厚生省
○ 問題提起内容
酒類の輸入では、酸化防止剤などの添加物の有無、品名、含有量等の食品衛生法への合致が要件である。その判定に用いる成分分析表は、厚生省認定の検査機関が発行したものに限られている。認定外の検査機関の発行した分析表が提出された場合、認定検査機関発行の分析表を取り直すか、日本で分析検査を受けなければならない。
厚生省認定外の公的検査機関が発行した成文分析表の受け入れや、一定の条件をクリアしたメーカーについては、そのメーカー発行の分析表も有効とするなど、外国検査データの受け入れ範囲を拡大すべきである。
○ 所管省庁における対処方針
食品等については、食品衛生法に基づき規格基準が定められており、それに適合していることを確認するため、輸入時に厚生大臣の指定検査機関又は輸出国公的検査機関における検査成績書の提示を求めているところである。
輸出国公的検査機関とは、一定の検査能力を有する検査機関であって、輸出国等直轄の検査機関又は輸出国等が認定、指定を行っている検査機関をあらかじめ厚生省に登録したものであり、この輸出国公的検査機関で実施した検査結果(ただし、輸送途中に変化のおそれのある検査項目(細菌、カビ等)を除く)が提示された場合は、輸入時の検査を省略するものである。従来より、この制度のもと、輸出国から登録の要請があった公的検査機関について登録を行い、輸入時における検査成績書の受け入れを拡大してきたところである。
なお、「メーカーの検査室等」であっても、一定以上の検査能力を有する検査機関であって、輸出国が認定、指定を行っている検査機関であれば、輸出国政府からの要請を受け、輸出国公的検査機関とすることは可能である。ただし、輸出国等直轄の検査機関又は輸出国等が認定、指定を行っている検査機関における検査結果を受け入れているのは、検査結果の客観性を確保する観点からであり、輸出国政府が認定、指定を行っていないメーカーの検査室等における検査結果を受け入れ、輸入時の検査を省略することは困難であると考えている。
(備考)
問題提起者の見解は以下のとおり。
「当面はこの対処方針で了解」
2.医薬品・医療用具・化粧品関係
2-(1) 栄養補助食品の規制の緩和及びその迅速な実施
○ 問題提起者:在日米国商工会議所、駐日米国大使館
○ 所管省庁:厚生省
○ 問題提起内容
平成8年3月26日のOTO対策本部決定とともに、それに続く規制緩和推進計画で閣議決定された栄養補助食品の規制緩和について、その進捗状況が明らかにされておらず、具体的に自由化がほとんど進んでいない。したがって規制緩和の進捗状況の透明化と、その迅速な実施が重要である。
新たな問題点として以下の2点を挙げられる。
(1) ハーブの検討委員会など、所管省における検討が非常に遅く、規制緩和の実現には多くの年月が見込まれる。
(2) 医薬品から食品として認められるようになった栄養補助食品に対しても、食品としての厳しい規制が深刻な輸入障壁ともなっている。
以上を踏まえ、以下改善措置を講ずるべきである。
(1) 栄養補助食品の剤型について、現状では7種類のビタミンに関する規制緩和と残りのビタミンが条件付きで規制緩和が行われたに過ぎないため、栄養補助食品全般にわたる剤型の自由化を促進すべきである。
(2) これまでのところ検討が行われていないと思える効能等の表示について早急に検討すべきである。
(3) 栄養補助食品を新しいカテゴリーとする対応について、所管省は省内横断的な検討を開始したとするのみであり、検討状況が不透明なため、具体的な進捗状況の透明化や採用方法、スケジュール等の明確化を図った上で早急に実施すべきである。
(4) ハーブ、ミネラル等、通常海外で食品として流通・販売されているものが、医薬品として規制されることなく食品として流通・販売されるよう規制緩和を早急に推進すべきである。
○ 所管省庁における対処方針
我が国において、成分、表示、形状等から、医薬品と食品を総合的に判断している。主要なビタミンについては、効能効果を標榜しない範囲において、カプセル等の医薬品的な形状を用いても食品として区分している。また、専ら医薬品として用いられ、かつ副作用等の安全性に問題のある一部のビタミンについては含量に制限を設けて、上記と同様に取り扱っている。
一方海外の状況は、食薬区分や、表示、形状の規制について状況はそれぞれ異なっており、我が国の状況が特異的であるとは考えられない。例えば、形状については、仏、スイス等7ヶ国以上において医薬品の判断基準の1つになっている。
現在、FAO/WHO合同食品規格計画(コーデックス)において、米国、欧州諸国、日本等の各国が参加して栄養補助食品についてその範囲、表示等のガイドラインの検討が行われているが合意には至っていない。
なお、米国の栄養補助食品については、品質、安全性について米国食品医薬品安全局から警告文が幾度か発出されているほか、本邦において全く経験のないものがあること等により、本邦での流通には科学的な検討が必要と考える。
(1) 問題点としている点については、以下のとおり。
1) ハーブの検討会においては、日本国内において未知であり安全性が現在のところ未確認であるハーブが数多く含まれるため、安全性を科学的に検討し、その検討結果を基にその他の要因(使用目的、表示等)を検討してどのようなハーブを医薬品の規制の枠から外していくべきかを決定することとしている。検討するハーブの範囲は、米国及び欧州の食品として販売されているものとし、優先順位は、米国の販売実績(売り上げ順)を基にして、必要な情報が得られたものから検討を行っているものである。
なお、平成9年9月のMOSSフォローアップ会合において要望のあった米国市場に存在する150 種類のハーブも検討対象に含まれており、これらについては、平成9年度中に必要な措置を行う。
2) 医薬品の該当性に関する規制緩和においては、検討会(ビタミンについては研究班)を設置して検討し、規制緩和を行っているものである。検討会においては、規制緩和推進計画に基づき、各国における市場、規制制度、用法、表示等及び国際的な動向の調査を行った上で、科学的な安全性の検討を行っている。そしてこれらの得られた検討結果を参考にして、規制緩和の実施を行っている。
なお、新たな食品添加物の指定等については、WTO通報等の手続きを経て平成8年3月に示した指針に基づき、欧米諸国と同様、関係事業者等からの具体的要請を受けて、食品衛生調査会の審議を経て実施することとしているところであり、医薬品の範囲の基準の見直しを議題に審議された平成8年2月のOTO専門家会議においても、問題提起者の一つとして出席した在日米国商工会議所関係者より「食品添加物の指定等については正当な方法が定められており、制度を変える必要はない」旨発言があったものである。
(2) 改善要望があった点については、以下のとおり。
今後も、日本としてはコーデックスにおける栄養補助食品のガイドライン策定の作業に関わっていくとともに、これらの国際的な動向を十分に勘案して検討を進めていくこととしており、国際的な動向が定まった際にはこれに遅れることなく、国際的にも調和した制度となるよう以下のとおり対応していく。
1) 剤型の自由化については、ビタミンの形状規制の緩和を既に行っており、ミネラル及びハーブについても、消費者において自ら正しい選択ができ、両者を混同しないように明確に食品としての適正な表示がなされていることを考慮しつつ、検討する。
2) 表示の制限については、適切な摂取方法や栄養補助的効能、注意表示等については、消費者が自分に必要なものを的確に選択できるような表示を考慮しつつ検討する。
3) 栄養補助食品を新たなカテゴリーとする対応を取ることについては、その措置の時期については、現在、省内関係部局による検討を以下のとおり行っており、国際的な動向をにらみつつ、必要に応じて本検討結果の報告等を行う。
・コーデックスの動向に注目するとともに、海外の法制度及び市場実態の調査。
・国内の薬事法、食品衛生法、栄養改善法等の法により規制されているものの特徴等についての意見交換。
4) 通常海外で食品として扱われている栄養補助食品の取扱については、平成9年3月にビタミンの規制緩和を行っており、ハーブは、平成9年4月に検討委員会の設置を行い同年度中に措置、ミネラルについては同年6月に検討会を設置し平成10年度中に措置を予定している。これらの検討会では在日米国商工会議所の代表は委員として、米国大使館職員は随行員として参加いただいている。
2-(2) 薬事法の適正な施行の確保
○ 問題提起者:在日米国商工会議所
○ 所管省庁:厚生省
○ 問題提起内容
ピアス処置後に使用する消毒液は、傷口に使用するものとして本来医薬品として輸入承認許可を受けなければならない。しかし、日本の一部の企業においては、この消毒液を薬事法第13条、23条及び59条に違反して医薬部外品として、輸入承認許可を得ないまま日本国内で輸入、販売されている。
また、耳への使用のみのものとして承認を受けた、セルフピアスをボディピアスとして販売している。
このような医薬品等の違法な販売に対しては、制裁が課せられるなど、適正な法の施行が行われるべきである。
○ 所管省庁における対処方針
薬事法は、医薬品、医薬部外品、化粧品及び医療用具の製造及び流通について規制する法律である。
例えば、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療用具を業として輸入しようとする者は、薬事法第22条により、厚生大臣(都道府県知事)の許可が必要である。また、この許可は営業所ごとに受けなければならず、政令で定める期間ごとにその更新を受けなければ、その期間の経過によって効力を失うものとされている。
厚生大臣(都道府県知事)は、医薬品、医薬部外品、化粧品及び医療用具の製造及び流通について、薬事法に違反する行為があったときは、この法令に基づき厳正に対処しているところである。
今回、指摘のあった業者については、当方としても違反実態の有無について調査を行い、その実態を踏まえて対処いたしたい。
(備考)
問題提起者の見解は以下のとおり。
「当面はこの対処方針で了解」
2-(3) 化粧品の成分規制におけるEU方式との同一化
○ 問題提起者:東京商工会議所
○ 所管省庁:厚生省
○ 問題提起内容
化粧品の成分規制について、種別ごとの承認制度の廃止、ネガティブリストを主体とした規制への移行など、規制緩和の方向性が出されたが、下記の内容をEU方式との同一化するとともに、適合性評価においてEUデータの受け入れを実施すべきである。
1) ネガティブリスト
2) ネガティブリストに移行する際のポジティブリスト
3) 新規配合成分の取扱い
4) 既存配合成分リスト
承認手続においては、日本独自の項目(届出方式、データの提出等)を作るべきではない。
○ 所管省庁における対処方針
我が国の化粧品規制については、平成8年12月に化粧品規制の在り方に関する検討会を設置し、消費者の安全性確保を最大限配慮した上で規制緩和と国際的ハーモナイゼーションを実現していくことが検討され、平成9年3月にその中間とりまとめにおいて今後の化粧品規制の方向性と課題が示されたところである。
この中で、化粧品の成分規制については、多様なニーズに速やかに対応し、かつ、安全性を確保する観点から、欧米と同様に、基本的にはネガティブリストに掲載された配合禁止・配合制限成分によって規制し、承認制は廃止するとともに、防腐剤、紫外線吸収剤、タール色素等の特定成分群については配合可能な成分をまとめたポジティブリストを作成して規制することが示されている。
現在、こうした欧米と同様の方式を取り入れるに当たっての具体的課題について検討会のワーキンググループにおいて検討しているところであり、米と欧州との間でのネガティブリストの掲載項目の違いやポジティブリストの成分群の違いも含めて検討し、欧米との国際的ハーモナイゼーションの実現へ向けて取り組んでいるところである。
なおワーキンググループを平成9年12月及び平成10年1月に開催し、その報告を受けて平成9年度中に検討会の場で議論する予定である。
検討会の最終報告については、平成10年5月に公表予定である。
(備考)
問題提起者の見解は以下のとおり。
「今回の対処方針に満足」
3.工業関係等
3-(1) 非常用発電装置に関する基準の国際整合化
○ 問題提起者:在日米国商工会議所
○ 所管省庁:通商産業省
○ 問題提起内容
通商産業省の規制の下にある、非常用予備発電設備に使用される発電装置は、エンジンの型式や等級、発電機の型式、コントロールパネルの型式等の認証が求められている。これらの個々の構成部品の組み合わせは、セットとして認証を受けねばならない。認証の際には、設計図や性能、販売歴、メーカーの品質管理や組織等の大量かつ詳細な書類を要求される。個々の構成部品及びセットは日本内燃力発電設備協会の実地検査を受けねばならず、それにはかなり費用がかかる。したがって、国際的に認められている基準を受け入れるべきである。
○ 所管省庁における対処方針
(1) 電気事業法に基づく電気安全のための技術基準は、平成9年3月27日改正し、保安上満足すべき機能のみで表現し、材料・構造等を具体的に規定することを可能な限り回避することにより、保安レベルが維持される限りにおいては、国内はもとより、米国機械学会(ASME)のような海外の公正な民間規格の適用を認めている。
よって、「国際標準がまだ認められていない」という指摘事項は誤りである。
(2) 電気事業法においては、保安上満足すべきものとして技術基準を設定しているが、発電設備等の規格認証制度を採用していない。
よって、「エンジンのモデルや等級、発電機のモデルやサイズ、コントロールパネルのモデルの認証がそれぞれ必要」として当省が規制しているという指摘は誤りである。
(3) 社団法人日本内燃力発電設備協会が実施している発電設備に関する認定制度は、民間自主認定制度であり、日本の電気安全に関する公的規制である電気事業法に基づく手続とは、何ら関係ない。
このような誤解を与えない取り組みとして、同協会では、パンフレットを作成(日本語版は平成9年5月完成、英語版は平成9年6月完成)し、本認定制度が民間自主認定制度であることを明らかにしている。
3-(2) LPGバルク容器輸入に係る検査の緩和
○ 問題提起者:日本貿易会
○ 所管省庁:通商産業省
○ 問題提起内容
米国製LPGバルク容器特認に関し、米国機械学会(ASME)の仕様は認められたが、輸入検査は日本の高圧ガス保安法関連諸規制に基づき行うものとされており、実質的に輸入できないため、輸入緩和策が講じられたとは言えない。輸入後日本で検査を行う方法があるが、膨大な費用がかかり、現実的ではない。
平成9年3月に見直された規制緩和推進計画に従い、外国優良メーカーについて自主検査・刻印を認める旨の法改正が平成9年4月1日付けで行われているが、LPGバルク容器については依然として日本の高圧ガス保安協会が米国に出向いての現地検査、もしくは輸入時の検査が必要となっており非常にコストがかかるので、LPGのバルク容器についても上記ASMEの検査・刻印をもって輸入を認めるべきである。
○ 所管省庁における対処方針
高圧ガス保安法では、平成9年4月、容器(ボンベ等の地盤面に対して移動する容器)について、自主検査及び自主刻印を認める外国容器等製造業者の登録制度を創設し、自主検査及び自主刻印を可能とした。同様に、特定設備(LPGバルク貯槽等地盤面に固定されるもの)についても外国特定設備製造業者の登録制度を創設し、既に自主検査を可能としている。なお、同制度における登録検査時の検査については、外国データの受入れを今後検討してまいりたい。
また、同法における特定設備の技術基準において、既にASME規格の材料を認めているところであるが、今後とも、バルク貯槽等特定設備の輸入の円滑化のための検討を行ってまいりたい。
3-(3) 高圧ガスの輸入手続きの簡素化
○ 問題提起者:日本貿易会、東京商工会議所
○ 所管省庁:通商産業省
○ 問題提起内容
(1) 高圧ガスの輸入届出について、陸揚地の都道府県知事のみならず輸入者所在の都道府県知事も受理できるようにすべきである。
[東京商工会議所]
(2) 平成9年3月の規制緩和推進計画の見直しにおいて高圧ガス輸入届出は廃止となっているが、都道府県知事宛に検査の実施依頼をする際に実態として届出が要求されるので、輸入届出の廃止を各都道府県に周知徹底すべきである。
[日本貿易会]
(3) 都道府県が実施することとなっている検査について、民間検査会社等に委託し、業務の迅速化を図るべきである。
[日本貿易会][東京商工会議所]
○ 所管省庁における対処方針
(1) 高圧ガスの輸入手続
高圧ガスの輸入届出は、平成9年3月に廃止したところであり届出を行う必要はないが、日本貿易会の指摘を踏まえ、都道府県担当官会議等において再度、周知徹底を図っていくこととする。
(2) 高圧ガス輸入時の検査
高圧ガスの輸入手続は、一般に保税地域内で行われるものであることから他法令の輸入検査の例や高圧ガスによる事故が発生した場合の被害の甚大性等高圧ガスの特殊性にかんがみ、高圧ガス保安法において検査主体が行政庁に限定されているものである。
(3) 他方、輸入手続の迅速化に向けては、平成9年4月より、検査職員印等を押印した輸入高圧ガス検査申請書の写しを検査合格証として扱うことにより、これまで検査後、数日を要していた通関が、検査の当日に行いうるような運用改善措置を講じてきたところである。また、安全と判断させるカテゴリー(ガスの種類等)を設定し、現在の検査制度を更に簡素化することによって輸入検査に係わる手間・時間を抜本的に低減させる方策について平成10年度中に結論を得るよう検討する。
しかしながら、指摘された検査の遅延に関しては、検査主体である都道府県に対して、遅延を発生しないように指導して参りたい。
(備考)
問題提起者の見解は以下のとおり。
(3)「当面はこの対処方針で了解」
3-(4) ショッピングセンターの電気主任技術者の選任基準の緩和
○ 問題提起者:東京商工会議所
○ 所管省庁:通商産業省
○ 問題提起内容
多くのショッピングセンターは、契約電力が1000KWを超えるため電気主任技術者を専任かつ常駐で配置せねばならない。
しかしながら、近年、施工技術の向上や使用機材の改良の結果、電気設備の信頼度が高まっていること等に鑑み、電気主任技術者を専任で配置する必要がある需要設備については、その基準となる契約電力の下限を1000KWから3000 KW に引き上げる等の措置を講ずべきである。
○ 所管省庁における対処方針
(1) 電気事業法の規定により、事業用電気工作物を設置する者は電気主任技術者を選任しなければならないこととなっているが、中小規模の需要家に対して主任技術者の選任を義務付けることは経済的に負担が大きいため、特定の要件を有する者に電気工作物の保安の監督に係る業務を委託することにより、電気主任技術者を選任している事業場と同等の保安が確保されていると認められる場合には、電気事業法施行規則により、当該義務を軽減(不選任承認)している。
また、電気主任技術者は原則1事業場に一人を選任することとなっているが、保安上支障がない場合には兼任が認められている(兼任承認)ところである。
(2) 不選任承認及び兼任承認の対象範囲の拡大については、平成8年3月の閣議決定に基づき、平成9年9月から不選任承認対象は受電電圧7,000V以下(高圧受電範囲全て)、兼任承認範囲は最大電力2,000KW まで緩和したところである。
(備考)
問題提起者の見解は以下のとおり。
「当面はこの対処方針で了解」
3-(5) 電気製品(業務用アミューズメント機器)の安全認証の簡素化
○ 問題提起者:東京商工会議所
○ 所管省庁:通商産業省
○ 問題提起内容
業務用アミューズメント機器(業務用TVゲーム機、ピンボールゲーム機等の機械式ゲーム機、定置式電気乗物)は、電気用品取締法の規制対象品目である。
このうち、業務用TVゲーム機と機械式ゲーム機は、平成7年に政府認証品目(甲種電気用品)から自己確認品目(乙種電気用品)に指定換えになったが、定置式電気乗物についても電気用品取締法施行令を改正し、乙種電気用品へ指定換えすべきである。
○ 所管省庁における対処方針
(1) 電気用品取締法の規制対象品目については、平成7年7月に、ほとんどの家電製品を含む甲種電気用品(政府による型式認可を必要とする)117品目について、乙種電気用品(事業者の自己確認でよい)に移行したところ。
(2) 電気用品取締法に定める「電気乗物」については、子供が使用するものであり、安全性が特に求められているものとして甲種電気用品(型式認可が必要)としているところである。
(3) 甲種電気用品(政府認証品目)から乙種電気用品(自己確認品目)への見直しは、規制緩和の観点から従来行っているところであり、引き続き検討していく。
3-(6) TSCA等で承認を受けている化学製品の輸入許可
○ 問題提起者:東京商工会議所
○ 所管省庁:厚生省・通商産業省
○ 問題提起内容
化学品中間体原料のジイソプロペニルベンゼンは、米国有害物管理(TSCA)に登録されているが、日本では「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」に基づく登録が行われていないため、輸入できず、より製造コストのかかる代替原料を使用している。
ジイソプロペニルベンゼンの輸入を無条件あるいは条件付きで認めるか、海外の検査データを受入れ、その活用により審査を簡素化すべきである。
○ 所管省庁における対処方針
米国の「有害物質管理(TSCA)」や欧州の「「危険な物質の分類、包装、表示に関する第7次修正指令」と我が国の「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)」では、その目的や制度の仕組み、あるいは事前審査に必要な安全性データ等が異なることから、仮に当該化学物質がTSCAインベントリーやEINECS(欧州既存商業化学物質インベントリー)に登録されていたとしても、我が国の化審法において求められる安全性が確保されていないのであれば、化審法の目的である「化学物質による環境を経由した人の健康被害の防止」を確保するため、化審法における事前審査等に基づく安全性の確認なしにその使用を認めることはできない。
なお、海外で取得された安全性に関するデータは、それがOECDにおける優良試験所規範(GLP)原則に準拠した試験施設で実施されたものと認められる場合には、化審法上の審査においても受け入れることとしており、海外で取得された安全性データの受け入れは既に実施済みである。
3-(7) 米国規格の電気製品輸入規制の緩和
○ 問題提起者:東京商工会議所
○ 所管省庁:通商産業省
○ 問題提起内容
米国規格であるULマークの表示のあるスタンドあるいはディマースイッチ等の輸入販売に際しては、ティーマークを取得しなければ販売できないとの規制があるが、変圧器による電圧の変更ができれば輸入を認めるべきである。
○ 所管省庁における対処方針
(1) 電気用品の安全基準については、各国の基準を国際規格であるIEC(国際電気標準会議)規格への整合化させることが重要と考える。我が国においても昭和58年以降、IEC規格は電気用品の技術基準として採用してきているところであるが、同技術基準については、平成9年度末までの間にIEC規格への一層の整合化を図ることとしている。したがって、米国の規格がIEC規格に整合化しているものであれば、問題は生じないと考える。
(2) なお、今回要望の電気スタンドのような光源応用機械器具は、乙種電気用品に区分されており、届出でよいこととなっている。
(備考)
問題提起者の見解は以下のとおり。
「今回の対処方針に満足」
3-(8) 電気用品の技術基準等の国際標準化
○ 問題提起者:東京商工会議所
○ 所管省庁:通商産業省
○ 問題提起内容
(1) 平成7年7月に電気用品取締法施行令が施行された際、同法の技術基準の国際規格(IEC規格)へのより一層の整合化が表明されたが、明確な行動計画が明示されないまま経過している。IEC規格と電気用品取締法の技術基準の整合化を期限を定めて早急に実現すべきである。
(2) 輸入検査の免除による経費削減等のため、工業用品の基準・認証の相互承認協定の早期合意を図るべきである。
(3) 日本の電源コンセントの多くは、アースなしの2線方式であり、海外からみると非関税障壁であるので、3線化を促進すべきである。
○ 所管省庁における対処方針
(1) 電気用品の安全基準については、各国の基準を国際規格であるIEC(国際電気標準会議)規格へ整合化させることが国際的な流れであると認識しており、各国が整合化への努力を図っていくことが重要と考える。我が国においても昭和58年以降、IEC規格を電気用品の技術基準として採用してきているところである。
電気用品の技術基準のIEC規格への一層の整合化については、平成9年3月改訂の「規制緩和推進計画」にも明記しているように平成9年度末までの間にIEC規格への一層の整合化を図ることとしており(通称IEC-J化)、これにより、一層の国際整合化が図られ、国際性と透明性を高める事になる。
(2) 現在、日・EU間では、相互承認協議をしているところである。通商産業省としてもEUと試験と認証の双方を含む相互承認協力を推進することは重要な課題と認識している。平成9年6月の日・EU定期首脳会談時に、「適切であるとされた分野において、相互承認協定の締結のための作業を加速化し、強化する」とされているところであり、可能な分野から可能な方式で順次相互承認を開始させるべく、EUとの協議を引き続き行うところである。
(3) 現状の2線式で安全面で問題がなく、3線化を強制すれば極めて大きな経済負担が生じることから、強制するような措置は行わず、需要家の自由な選択に委ねることが妥当。
(備考)
問題提起者の見解は以下のとおり。
「当面はこの対処方針で了解」
3-(9) 危険物等級の国際整合化
○ 問題提起者:東京商工会議所
○ 所管省庁:自治省
○ 問題提起内容
(1) 消防法の危険物等級の区分定義は日本独自のものであり、EU・北米先進国と乖離しているため、保管・輸送規制等がコストアップ要因となっている。特に引火点を有する液状物資を全て対象とすることは改正すべきである。
(2) 欧米先進国との協議により早急に統一基準を作成し、それを基に日本独自の細かい区分を再構築すべきである。
○ 所管省庁における対処方針
高引火点危険物の規制のあり方について検討することが規制緩和推進計画に盛り込まれ、これを受け、自治省消防庁では、平成9年3月から危険物委員会において調査検討を行っており、平成11年度を目途に結論を得る予定である。
また、同委員会の下部組織として産業界関係者を含むワーキング・グループ(高引火点危険物調査検討委員会)を設置している。
上記検討作業予定は以下のとおり。
・平成9年度:事故事例の分析や海外における規制状況の調査等
・平成10年度:危険性評価実験を行い引火点の違いによる着火拡大危険性の整理や各種規制の在り方等について検討
・平成11年度:試験方法及び判断基準、位置構造設備、貯蔵及び取扱い、運搬及び移送に関する具体的規制基準等について検討
(備考)
問題提起者の見解は以下のとおり。
「当面はこの対処方針で了解」
3-(10) ビル用冷凍機の取扱責任者選任基準の緩和
○ 問題提起者:東京商工会議所
○ 所管省庁:通商産業省
○ 問題提起内容
フロンガスの製造禁止により、ビル用冷凍機でも代替フロンガスが使用されている。従来、ビル用冷凍機は、特に冷凍保安責任者を選任しない機種が採用されていたが、上記理由により、資格者を必要とする冷凍機が増えてきた。指定設備として認定された新設の冷凍設備であれば、現在でも資格者は不要であるが、既存の設備に対しても資格者選任基準を300トン以上から600トン以上に引き上げる等の緩和措置を講ずべきである。
○ 所管省庁における対処方針
既存のビル用冷凍機は、高圧ガスに該当しないフロン11を冷媒として主に使用しているため、この場合高圧ガス保安法の適用を受けない。
なお、新設のビル用冷凍機は、製造禁止となったフロン11の代替として、その熱物性上高圧ガスに該当するフロン22・134aを冷媒として使用しているため、高圧ガス保安法の適用を受け、冷凍能力が50トン/日以上あれば冷凍保安責任者の選任が必要となってくる。
ただし、以下の場合には、冷凍保安責任者を選任する必要はない。
(1) 各種安全装置・制御装置などにより構造上・機能上の安全性を有すると通商産業大臣等が認めた冷凍機を使用する場合。
(2) 冷凍機製造工場において、一体的に組み立てられ、気密試験・試運転の実施により保安の確保が行われている、冷凍能力 300トン/日未満の冷凍機を使用する場合。
3-(11) 輸入衣料品の英文表示の拡大
○ 問題提起者:東京商工会議所
○ 所管省庁:通商産業省
○ 問題提起内容
輸入衣料品を国内で販売する場合、組成表示・家庭洗濯等取扱い方法などの表示のうち、組成の表示は、平成9年10月の告示見直しで英文表示が認められることになっている。付け替えに係わるコスト削減、輸入品の増加、取扱い絵表示のJIS規格のISO規格への整合化の観点から、取扱表示についても、消費者が、理解可能な英文の表示の場合は英文表示を認めるべきである。
○ 所管省庁における対処方針
(1) 組成表示
衣料品に関する品質表示については、家庭用品品質表示法に基づき、繊維製品品質表示規程により、具体的な表示事項(繊維の組成、洗濯取扱絵表示等)が定められている。
今般、家庭用品品質表示法の見直しにおいて、消費者の認識の度合いを勘案したところ繊維の組成表示については、COTTON、WOOL、SILKの用語表示を繊維製品全般に拡大するとともに、これらに加え、NYLON、POLYESTER、RAYON、ACETATE の用語を追加することにより、これら用語を用いた表示を可能としたところである。今後も消費者の認識の度合いを勘案して検討していく予定である。
(2) 取扱絵表示
家庭洗濯等の取扱い絵表示については、JIS L 0217(繊維製品の取扱いに関する表示記号及びその表示方法)があり、このJIS L 0217は、家庭用品品質表示法に引用され、これに従った表示が義務付けられている。一方国際規格としては、ISO3758(Textiles- Care labeling code using symbols) があり、絵表示だけが規定されているが、現在のところ、評価方法は規定されていないため、家庭用品品質表示法の適切な実施の観点から、国内でこれを導入することは適切でない。
JIS L 0217は、平成7年3月に「基布は白、記号は黒又は紺、禁止を示す×印は赤」という規定をISO 3758に整合させ、色の規定を削除したが、JIS L 0217の国際規格への完全な整合は、現在ISOで検討中の試験評価方法のISO規格ができた時点で速やかに行う予定としている。
なお、通商産業省は、平成7年度及び8年度に国際整合化に必要な作業として、関連する規格の国際規格との整合化状況について調査を実施するとともに、ISO規格に取り入れることが予想される試験方法と我が国の生活実体との調和を目指した調査研究を実施した。平成9年度は、これらの調査研究の成果を基にISOにおける審議に参加しているところ。
(備考)
問題提起者の見解は以下のとおり。
「当面はこの対処方針で了解」
3-(12) 毒物劇物・麻薬原料等のサンプル輸入の迅速化
○ 問題提起者:東京商工会議所
○ 所管省庁:厚生省
○ 問題提起内容
少量の毒物劇物をサンプルとして輸入する場合、登録済以外の毒物劇物に係る輸入業登録の変更申請後、許可が下りるまでに2ヶ月といった時間がかかるケースがある。
使用目的・使用場所(会社名)の明確化を前提に、少量のサンプルについては、登録の簡素化として、変更申請の受付をもって輸入を許可すべきである。
また、サンプル等の許可については、遅くとも15日以内とするなど迅速化すべきである。
○ 所管省庁における対処方針
いかに少量であろうとも、そもそも毒物劇物は少量で危害を及ぼすおそれのある化学物質であり、少量を理由に特例制度を設けることは毒物及び劇物取締法(昭和25年法律第303 号)の論理と合致しないことからご要望は受け入れられない。顧客による評価分析用やPRの見本用として他者に提供される毒物劇物の輸入は、当該他者や運搬等で関わる第三者をも危険にさらすものであり、毒物及び劇物取締法は登録を受けた輸入業者以外の者が行うことを禁じている。登録は当該輸入業者がこの毒物劇物を適切に管理できるかどうかを判断して行われ、少量やサンプルであることを理由に優先的に登録の事務処理を行うことは他の申請者の事業に影響し公平性が損なわれ、また、無用に登録事務を複雑化するものであることから不適当である。
なお、申請から登録までに全ての案件において必ず2ヶ月かかるのではなく、公平性を保ちつつ申請順に極力速やかに処理されるよう努めているところである。
他方、登録変更申請は当該毒物劇物の空港等への接到や現物の提示等を要しないので、十分時間的余裕を持って申請することにより登録をうけてサンプルの輸入を行うことが可能である。
なお、毒物及び劇物取締法では輸入業者自身による分析用、テスト用など自家消費のための輸入については、輸入業の登録を要しない。
3-(13) 電気機器の防爆基準に関する申請手続の簡素化
○ 問題提起者:東京商工会議所
○ 所管省庁:労働省
○ 問題提起内容
電気機械器具を輸入し、使用する場合、防爆基準に関し型式検定手続が煩雑であり、以下の措置を講ずべきである。
(1) EU諸国等の規格に合格した製品の受入れ。
(2) 外国の政府機関等の検査デー タ、外国メーカー作成データの受入れ。
(3) 申請手続の簡素化。
○ 所管省庁における対処方針
(1) 本件については、「市場開放問題苦情処理推進会議第3回報告書」(平成8年3月)において言及されており、現在、必要な調査及び検討を行っている。
(2) 「外国検査機関等の検査データの受入れ」については「市場開放問題苦情処理推進会議第3回報告書」(平成8年3月)において言及されており、既に指定外国検査機関の指定を積極的に行うとともに、本指定制度の広報に努めているところである。
また、問題提起者によれば、「外国メーカーの作成データの受入れ」とは、検定申請の際に提出を要する「当該型式の機械等の構造図等」の添付書類を和訳せずに英文のまま提出することを認めることである。これについては国際的に見ても、申請書類はその受理国の国語(日本においては日本語)によるのが基本であると考える。
(3) 申請手続について、検定機関では、同手続が迅速に行われるよう、同手続に係る相談の受付等を行うとともに、申請の手引きを作成してきたところであり、今後とも、ここの手引きの説明会を開催するなどによって申請者が迅速に申請することができるよう検定機関を指導して参りたい。
(備考)
問題提起者の見解は以下のとおり。
「当面はこの対処方針で了解」
3-(14) 圧力容器等に関する規制緩和
○ 問題提起者:東京商工会議所
○ 所管省庁:通商産業省、労働省
○ 問題提起内容
コンプレッサー、ボイラー、熱交換器などの圧力容器の設計・製造法・検査について、複数の官庁(通産省、労働省)が複数の法令により複雑かつ不明確な技術基準と煩雑な手続きで規制を行っている。現行のままでは、余分な時間、労力が必要となり、非効率である。規制により、海外品の持ち込みコスト、納期の点で、非常に不利となっているので以下の改善策を講ずべきである。
(1) 技術基準をJISに統一する。圧力容器に関しては、JISB8270 (圧力容器基盤規格) に統一する。
(2) 将来的には、技術基準の国際化を図る。
1) JISとASMEの相互承認制度
2) 国際基準であるASMEをベースとして、追加仕様の削減・明確化
3) 海外企業用の海外指定検査機関(ロイド等)を認定し技術基準、検査を国際化
(3) 海外品持ち込みに関する国際的な具体的・明確な手続きマニュアルを作成する。
(4) 検査項目、検査書類の削減・簡略化と検査書類等の日本語への翻訳最小化を図る。
(5) 検査業務・権限はすべて民間検査会社に委譲する。
○ 所管省庁における対処方針
(1) 圧力容器については、圧力容器関連のJIS規格の改正作業を平成9年度中に着手し、関係省庁が連携して可能な限り強制法規(高圧ガス保安法、ガス事業法、電気事業法、労働安全衛生法)との整合性を図ることとしている。
[通商産業省]
労働災害防止のための強制法規である労働安全衛生法と強制法規でなく品質の改善等まで含まれた工業標準化法では、法律の目的、内容、効力等が大きく異なるので、労働安全衛生法の技術基準である構造規格と工業標準化法の技術基準であるJIS規格を同一にすることは適切でないが、JIS規格との整合化については、今後とも努めてまいりたい。
[労働省]
(2)
1) 圧力容器については、工業標準化法上、認証制度がない場合があるため、検討を要する。
[通商産業省]
圧力容器の分野については、JIS規格に認証制度が無く、ASME規格との相互認証制度にはなじまない。
[労働省]
2) 高圧ガス保安法における技術基準については、現在、特定設備(高圧ガスの爆発その他の災害の発生を防止するため、設計の検査、材料の品質の検査又は製造中の検査を行うことが特に必要なもの)の材料として、ASME規格を認めている。
電気事業法における技術基準については、材料・構造等を具体的に規定することを可能な限り回避することにより、保安レベルが確保される限りにおいて、国内はもとより、ASME(米国機械学会)のような海外の公正な民間規格の適用を認めている。
ガス事業法における技術基準については、材料、構造等を規定化するに当たり、JIS規格を一部引用しており、さらに事業者の選択の幅を広げるため、材料に関しては、技術基準に適合するものと同等以上の機能的性質を有するものとして、通達によりASME、ISO等の海外規格を一部認めている。
なお、現在、技術基準を性能規定化する方向で平成10年度中に結論を出す予定で検討しているところであり、その場合は、審査基準に、JIS規格や海外規格等が取り入れられる予定である。
[通商産業省]
2) 労働安全衛生法においては、構造規格に定める標準的な基準を用いる圧力容器はもとより、標準的な基準と同等以上の安全性を明らかにした上でASME規格の圧力容器も認めている。
なお、同等以上の安全性を明らかにする資料については、案件に応じて具体的に示すとともに必要最小限のものに限っている。
[労働省]
3) 高圧ガス保安法においては、特定設備を輸入する場合、特定設備検査に必要な資料が提出されるときは、国内での試験を省略している。また、高度な品質管理体制を有しているものとして通産大臣の登録を受けた外国特定設備製造業者は、自ら特定検査設備検査を実施することが可能となっている。
電気事業法においては、輸入品の溶接検査は製造国における製造業者等の施工及び検査の記録を受け入れている。
ガス事業法においては、検査業務は国で行っているところであるが、現在、第三者検査機関の在り方について検討中であり、平成10年度中に結論を出す予定である。
[通商産業省]
労働安全衛生法においては、既にロイドを始め5機関が指定外国検査機関として認められている。
[労働省]
(3) 高圧ガス保安法においては、検査方法及び手続方法に関するマニュアルとして「輸入高圧ガス設備の申請と検査(高圧ガス保安協会発行)」(日英)を配布している。
電気事業法においては、「溶接検査申請書及び輸入品溶接検査申請書作成の手引き(財団法人発電設備技術検査協会発行)」により、手続を公表しており、透明性に配慮している。
ガス事業法においては、「使用前検査要領」、「定期検査要領」を作成し、各ガス事業者は購入できることとなっている。
[通商産業省]
圧力容器を輸入する際の労働安全衛生法上の手続については、法令等により明確になっていると考えられるが、必要に応じて関係団体とも連携を図りつつ、手続マニュアルの作成について検討し、平成10年度末を目途に結論を出す予定である。
[労働省]
(4) 高圧ガス保安法においては、特定設備の範囲を見直すとともに、特定設備ごとに工程中検査を削減することを検討中である。また、検査においては英文でも検査に必要な資料を受け付けている。
電気事業法においては、輸入品の溶接検査は、国内で溶接する耐圧工作物と比較して検査の簡略化が図られている。また、検査においては英文でも検査に必要な資料を受け付けている。
ガス事業法においては、検査項目、検査書類については必要最小限のものとなっている。また、検査等の対象設備については、技術進歩、保安レベルの向上等を踏まえ、順次、規制の合理化を図ってきたところであり、例えば、平成9年2月、工事計画の認可、届出、使用前検査の対象範囲の縮小化等を図っている。また、検査においては英文でも検査に必要な資料を受け付けている。
[通商産業省]
現行の検査項目等については、必要最小限のものと考える。
また、外国語の申請では、人の生命、身体に重大な影響を及ぼす安全に関する事項について、申請者の意図を誤って解釈してしまうおそれがある等適正な審査が期待できないので、労働安全衛生法においては日本語以外の外国語による申請が認められない。
[労働省]
(5) 高圧ガス保安法においては、民間の検査会社による特定設備検査を可能としている。
電気事業法においては、溶接検査を行う指定検査機関として民間企業を加えることを含め、制度の見直しを検討中であり、平成10年中に結論を出す予定である。
ガス事業法においては、検査業務は国で行っているところであるが、現在、第三者検査機関の在り方について検討中であり、平成10年度中に結論を出す予定である。
[通商産業省]
労働安全衛生法においては、昭和60年に指定外国検査機関制度を導入し、国外の製造地においてロイド等の指定外国検査機関による検査を受ければ、国内において改めて検査を受けなくてもよい取扱いを行っている。
[労働省]
4.運輸・交通関係
4-(1) 船舶用エンジンに関する認証手続きの明確化及び国際的整合化
○ 問題提起者:在日米国商工会議所
○ 所管省庁:運輸省
○ 問題提起内容
船舶エンジンの認証について、運輸省及び日本小型船舶機構の規制は、不明確かつ恣意的である。特に、船舶エンジンの認証に何が必要なのか、国際的に受け入れられている書類は受け入れられるのか、又は製造所の報告書のような附属書類は要求されるのか等、現行の規制及びその新製品に対する適用を明確化すべきである。したがって、国際的に認められている基準を受け入れるべきである。
○ 所管省庁における対処方針
舶用エンジンの検査については公開された規則及び検査の方法に基づきすべてのエンジンについて同じように行なっており、内外無差別に適用している。実際、平成8年度に検査したエンジンのうち、20%以上は外国製であった。国際条約等に基づき統一されたエンジンの基準がないために、現在は各国が独自にエンジンについて検査を行なっているが、平成8年3月18日及び平成9年3月17日の市場開放問題苦情処理推進会議報告書を踏まえ、平成10年3月ISO9000シリーズを活用した検査の合理化を実施した。
5.建設関係
5-(1) 海外建築資材(公共工事用輸入資材)品質検査証明制度の改善
○ 問題提起者:駐日韓国大使館
○ 所管省庁:建設省
○ 問題提起内容
公共機関発注工事用海外輸入資材に対する審査証明制度の運用においては、同審査が国際的に通用されるISO認証獲得会社資材と未獲得会社資材間に区別なく適用されている。現在、建設省の外郭団体が品質審査の認定事業を行っているが、工事ごとに審査機関が異なり、相当な時間及び経費が必要となっている。この規制により、韓国又は国際規格の基準は満たしていても、日本国内の公共工事には使用できない場合がある。
審査証明制度の趣旨に照らし、ISO認証を取得した全製品に対し、海外建築資材品質検査と同じ効力を認めるか。又は、品質基準に対する相互認証制度の導入を図るべきである。
○ 所管省庁における対処方針
(1) 公共工事においては、通常、JIS規格またはこれと同等以上の品質を有する資材を使用することが仕様書等で定められているが、本審査証明事業は、海外で生産された建設資材について、当該資材がJISを満足していること及びその資材を生産する工場又は企業の品質管理体制が製品の安定的な供給に対して信頼できるものであることを審査・証明し、これにより海外で生産された建設資材の円滑かつ有効な活用をしようとするものである。
また、平成8年には、審査証明の有効期間を1年間から3年間に延長する等、制度の改善に努めているところである。
(2) 一方、ISO認証(ISO9000シリーズ) は、供給者が需要者の要求事項を満足する製品やサービスを継続的に供給するための体制(品質システム)及びその実施状況等に係る事項を規定したものであることから、本証明事業においてはこの認証を受けた工場または企業で生産された資材について、重複する部分の審査を省略している。
(3) なお、セメントのようにJIS規格は存在するが、JIS製品として生産・納入されていない製品については、JIS規格または同規格と同等以上の品質であることを証明するミルシート(品質保証書)を添付して提出すれば、国内産と同様に使用に付することができる旨を関係機関に通知し、国内産資材の取り扱いとの整合性を図ってきたところである。
(4) JISに関しては、平成8年12月に工業標準化制度の見直しに関する答申の中で、国際規格との整合化の推進が謳われており、現在、JISと国際規格との整合が進められているところである。
(5) なお、下記の項目について、事実と異なる部分もあるので、問題提起者に意見を照会しているところである。
1) 「ISO(9000シリーズ) 認証獲得会社資材と未獲得会社資材間に区別なく適用されている。」と指摘されたが、従前よりISO9000シリーズ認証取得企業の製品については、品質管理体制に関係する項目の審査を省略しており、さらに、平成8年9月より省略する審査項目を拡大している。
2) 「工事毎に審査機関が異なり」と指摘されたが、土木工事に関する資材については、(財)土木研究センター及び(財)建材試験センターで審査を行っており、工事毎に審査機関が異なっていることはない。また、証明の有効期間(3年間)内であれば複数の工事で使用が可能である。
3) 「(審査)相当な時間及び経費がかかっている」と指摘されたが、時間については、審査期間は申請資料が受理された後原則として1ヶ月間である。
4) 「建設省の外郭団体が発注する工事に対しては相変わらず性能検査や品質検査等別途の品質確認手続を要求しているので」と指摘されたが、当方で調査した結果では、該当する外郭団体(公団等)はなかった。なお、要領にも明記されているとおり、建設現場における受入検査等については、当品質審査証明・事業の有無に関わらず発注者の仕様に基づいて行われるものである。
5-(2) 建築用ガラスに係るJIS証明手続の簡素化
○ 問題提起者:在日米国商工会議所
○ 所管省庁:建設省
○ 問題提起内容
公共建築工事に輸入ガラスを供給する際に必要となるJIS証明の手続き (以下、「JIS証明」という) に係る負担が市場アクセスの障壁となっており、以下の点を改善すべきである。
(1) 建築用ガラスを公共建築工事に供給する際、JIS証明を取得する必要があるが、サンプルとともに提出しなければならない書類が膨大であり、過度のコストを要するので、手続きを簡素化すべきである。
(2) JIS証明は短期間で更新する必要があり、その更新手続きに時間がかかり過ぎるのでこれを短縮すべきである。
○ 所管省庁における対処方針
建設省官庁営繕事業においては、品質の確保を図るため、建築資機材の現場搬入時に監督職員がそれらが設計図書に定める品質・性能を満たしているか否かを確認することとしている。
従来は、JISマーク等公的証明のない建設資機材については、個々の建設現場ごとに、監督職員が適合の確認を行うため、自らが試験データの照合を行い、設計図書に定める品質・性能に適合しているか否かを判断する必要があった。この手続きにおいては、試験データの整理及び照合に時間と労力を要すことから、それら建築資機材の円滑な使用を妨げる懸念があった。
このため、これら確認作業を効率化し、海外の安価で良質な建設資機材の利用を促進することを目的として、(社)公共建築協会及び(財)ベターリビングが建築資機材の品質性能評価事業を開始した。官庁営繕部では、前述の確認手続の他に、平成6年3月以降、上記の団体の「評価書の写し」を提出することにより、適合の確認ができることとした。評価書は、3年の有効期間中、官庁営繕事業のいかなる現場においても有効である。
また、上記の団体においては、信頼性等の観点から、評価の際に必要とするデータを国内外の公的機関試験機関の試験を経たものとしており、いずれの国の試験機関を選択するかは、申請者の判断に委ねられている。
さらに、3年後の評価の更新時においては、規格、材料等に変更がない限り、試験データの確認を行わないため、新たに試験を行う必要はない。
また、従来のように、個々の現場で、品質・性能の確認を求めることも可能である。
なお、この品質性能評価事業は、海外建設資機材の使用の促進に役立っている。
おって、米国商工会議所は、「品質・性能評価事業による証明」を「JIS証明」と表現しているが、両者は直接の関係はない。
5-(3) 建築資材等の認証事務の簡素化
○ 問題提起者:東京商工会議所
○ 所管省庁:建設省、自治省
○ 問題提起内容
外国メーカーが日本の建築資材等規格認証を取得するためには日数と費用を要する。したがって、ASTM等の海外規格の適合資材については、相互認証制度の活用や国内規定(建築基準法、消防法)の国際整合化等を図り、認証事務を簡素化すべきである。
○ 所管省庁における対処方針
現在、建築資材については、要請に応じ、規格の性能の確保、国際間における責任負担の確保等の諸条件が整えば、その円滑な受入れ方法を検討することとしており、特に、諸外国の規格基準に適合し、我が国の枠組壁工法(ツーバイフォー工法等)の要求性能を満たす建築資材については、これを通則的に受け入れることとしている。これまでに米国及びカナダの製材を通則的に受け入れている。
また、認証事務の簡素化として、平成6年10月に「試験結果取扱要領」を策定し、建築基準法に基づき適正に行われた建築資材、工法等の性能試験について、試験実施体制等の一定の要件を満たす試験機関が行った試験結果については内外を問わず受け入れることとした。これに合わせて、建築分野の基準・認証において内外無差別性を確保するとともに基準・認証制度の国際的調和を図る観点から、国際基準(ISO/IECガイド25)を参考として「試験機関指定要領」を策定し、試験機関の指定基準及び指定手続きを明確化した。これまでに平成7年12月にカナダの試験機関の指定を行っている。
なお、受け入れられた試験結果等については、平成10年7月にインターネット等による公開を予定している。
[建設省]
国際規格への対応としては、ISO(国際標準化機構)の専門委員会のうちTC21(消防器具)、TC38/SC19(繊維の燃焼挙動)、TC92(防火試験)、TC94(防護服)及びTC145 (安全標識等)のISO会議等に積極的に参画している。
また、消防用設備等に使用される海外の材料等については、国内規格(JIS等)と同等以上と認められるものについて適宜受け入れを行っている。
[自治省]
(備考)
問題提起者の見解は以下のとおり。
「当面はこの対処方針で了解」
5-(4) 海外建築資機材の輸入促進
○ 問題提起者:東京商工会議所
○ 所管省庁:建設省
○ 問題提起内容
建築基準法の仕様規定から性能規定への早期転換及び適用範囲の拡大及び相互承認制度の適用拡大を図るべきである。
○ 所管省庁における対処方針
建築基準法は、国民の生命、健康及び財産の保護を図ることを目的として、建築物の敷地、構造等に関する最低の基準を定めているが、そのうち、建築物単体の基準は、工法、材料、寸法等の仕様を具体的に規定するいわゆる仕様規定が中心となっている。このため、「規制緩和推進計画の再改定」(平成9年3月閣議決定)において、「建築基準法の基準体系について、素材・仕様・規格を詳細に指定する基準から、性能を指定する基準への見直しを行うこととし、新たな制度的枠組みを策定する。」こととしている。
現在、平成9年3月の建築審議会答申に基づき、建築基準への性能規定の導入を柱とする建築基準法の改正作業を行っており、平成10年の通常国会に法案を提出する予定としている。
海外建築資材の輸入については、「規制緩和推進計画の再改定について(平成9年3月28日閣議決定)」を受け、地方公共団体等が行う公共住宅建設事業において、公共住宅建設工事共通仕様書を平成9年9月に改定し、我が国において容認される諸外国の規格基準については、JIS、JASと同等に取り扱うことを明確にしたところである。
(相互承認制度に関する対処方針については、「5-(3) 建築資材等の承認事務の簡素化」の項を参照。)
7.輸入手続関係
7-(1) 副資材の申告方法の改善
○ 問題提起者:日本貿易会、東京商工会議所
○ 所管省庁:大蔵省
○ 問題提起内容
数種類の製品の製造(加工)契約を行い、その副資材を数種類輸出または第三国から無償にて供給する場合、すべての製品にすべての副資材が使用されているものとは限らず、そのためその製品ごとの副資材をそのつど計算し、供給全数量からの引落管理を最終船積みまで行わなければならない。このため、輸入時の手続きが煩雑となり、管理上において申告でのミスが懸念される。副資材の申告方法は、一括加算方式にて可能とすべきである。
○ 所管省庁における対処方針
副資材の課税価格への加算方法については、従来から工具に要する費用等の加算を除き、個々の輸入貨物に関連する額を按分して輸入貨物の課税価格に算入することとなっており、一括して加算する方法は認められていない。
これら輸入貨物の課税価格の決定方法は、「平成6年関税及び貿易に関する一般協定第7条の実施に関する協定」(関税評価協定)に基づき、国際的な統一ルールの下で実施しているものであり、我が国だけが特別な取扱いをすることはできない。
なお、貨物の輸入が同一の継続した輸入取引である場合には、輸入申告に先立ち、課税価格の決定方法を記載した「包括評価申告書」を提出すれば、原則として2年間は個々の輸入申告の際に、評価申告の提出を省略できる取扱いとなっている。
(備考)
問題提起者の見解は以下のとおり。
「当面はこの対処方針で了解」
7-(2) BP制度の整備等
○ 問題提起者:日本貿易会、東京商工会議所
○ 所管省庁:大蔵省
○ 問題提起内容
(1) 品質分析揚地ファイナルのためBP(輸入許可前引取)通関を行ったが、契約書のカウンターサインがないため、BP通関できないとのことであった。近隣国からの輸入の場合、契約書の送付は、貨物到着に間に合わないことが不可避となりがちな点にかんがみ、事後提出で処理できるよう改善すべきである。
(2) 電力用石炭の輸入通関に際し、輸送費(Freight)が低価格のためほとんど毎回BUNKER清算が発生する。一部の地方港・税関ではBP通関を受け付けてくれないため、BUNKER清算が発生した時は修正申告を行い、延滞税まで支払っている。Freight の価格が決定していない場合の取扱い(BP通関を認めること)を各税関で統一すべきである。
(3) BP通関を行う場合、数量を実測して課税標準が決定すると、税関から「輸入許可前引取承認貨物に係る関税納付通知書」を受け取り、納税するが、この納付は現金又は小切手に限られており、日数と手間がかかる。したがって、IBPにおける租税の納付は、輸入者が各税関の指定金融機関に直接振り込むことを可能とすべきである。
○ 所管省庁における対処方針
(1) 貨物を輸入しようとする者は、必要な事項を税関長に申告し、貨物につき必要な検査を経て、その許可を受けなければならない(関税法第67条)が、関税額等に相当する担保を提供して税関長の承認を受ければ、輸入申告後輸入の許可前に当該貨物を国内に引き取ることができる(関税法第73条)。
この「輸入許可前引取制度」は、関税行政の円滑な運営と輸入者の利便を図るために設けられた規定であり、例えば、課税標準の決定に日時を要する場合など、申告者側の事情により輸入許可が遅延する際は、関税法の規定に基づき、輸入許可前の引取を承認している。
したがって、輸入許可前引取の承認に当たっては、課税標準等が未確定であることを契約書等で確認する必要がある。しかしながら、契約内容を確認することが目的であるので、契約書原本でなく、その写し(ファクシミリで送付されたものを含む)を事前に確認することにより、承認を与えることは可能である。
(2) 「BUNKER清算が発生するため輸入申告時に課税標準が確定しない場合」は、課税標準の決定に日時を要する場合に該当し、輸入許可前引取の承認を受けることが可能である。指摘のあった税関に確認しても、このようなケースについては、輸入許可前引取が認められるとしており、税関により、その取扱いが異なることはない。
(3) 関税等の納付は、輸入許可前引取(BP)承認を受けた貨物に限らず、納付すべき税額に相当する金銭又は小切手により、日本銀行若しくは歳入代理店又は関税等の収納を行う税関職員に納付することとされている。
問題提起者の問題意識が必ずしも明らかではないが、ほとんどの金融機関は歳入代理店となっているところ、最寄りの歳入代理店を通じて直接現金又は小切手で納付することができることとなっており、税関が関税等を納付できる金融機関を指定することはかえって納税者の利便を損なうものと考えられる。
(備考)
問題提起者の見解は以下のとおり。
(1) 「今回の対処方針に満足」
(2)、(3) 「当面はこの対処方針で了解」
7-(3) 加工再輸入手続きの簡素化
○ 問題提起者:日本貿易会、東京商工会議所
○ 所管省庁:大蔵省
○ 問題提起内容
(1) 輸入時における減税計算は、輸出時に申請する加工・組立輸出貨物確認申請書に表記する金額を基にして行われる。加工・組立輸出貨物確認申請書は、契約ごとにスタイルの加工明細を添付して申請している。各契約は複数のスタイルを加工契約するのが常である。輸入時における減税計算は、スタイルごとに行われているため、その計算に時間がかかり、通関の遅延につながっている。したがって、契約ごとの数量で按分するなど簡便な計算方式を導入すべきである。
(2) 外衣類等の海外委託加工貿易について、当該商品の輸出時に、当該商品の輸入に至るまでの一切の資料提出が必要(例-マーキングシート、生地サンプル、原価計算の過程を示す計算書類等) だが、提出書類の縮減等、簡素化を図るべきである。
(3) 加工の手直しのため、一度海外へ返品し再輸入する場合、該当商品の立証が困難なため結果的には関税を2回払うことになる。輸入時のI/D、インボイスを活用して関税の二重徴収を回避すべきである。
○ 所管省庁における対処方針
(1) 加工再輸入減税制度(関税暫定措置法第8条)は、我が国から原材料を輸出して外国で加工又は組立ての上、製品として我が国に輸入される場合に、その製品に使用された輸出原材料相当分の関税を製品の関税から軽減する制度である。
したがって、本制度の適用に当たっては、同一の税番・税率の製品について、使用された輸出原材料分の課税価格と製品の課税価格とを比較して減税額を計算する必要があるため、原則として製品のスタイルごとに減税計算をする必要がある。(通常、スタイルによって税番・税率が異なるほか、使用される輸出原材料の割合等も異なる。)
しかしながら、スタイルが異なっても同一税番に分類される製品で、加工賃が同一かつ用尺の差が当該製品のサイズ違いによるものである場合は、複数のスタイルのものについては、一括して減税計算できる簡易な取扱いを認めており、その旨改めて税関に文書にて周知徹底することとしたい。
(2) 加工再輸入減税制度に係る減税額の計算に当たっては、使用された輸出原材料の数量等を的確に把握する必要があることから、原材料の輸出申告に際し、貨物(製品)の加工又は組立ての明細等を記載した「加工・組立輸出貨物確認申告書」の提出を求めている。また、外衣類等の場合には、製品の輸入の際に、原材料の確認が迅速にできるよう、あらかじめ原材料輸出の際に、生地見本の提出を求めているものである。
また、マーキング仕様書についても、未裁断の生地から製品一着を製造するために何メートルの生地が必要かを迅速に確認できるので輸入申告の際に提出を求めているものである。
いずれにせよ、製品と輸出原材料の同一性を迅速に確認したり、適正な減税額の計算に資するために資料の提出をお願いしているものであって、減税額を計算する際に必ずしも必要不可欠でない資料(例えば、「原価明細表」)については、提出を求めることのないよう改めて税関に文書にて周知徹底することとしたい。
(3) 関税定率法第20条の違約品に係る戻し税の規定は、関税を納付して輸入された貨物であって、品質又は数量等が契約の内容と相違するため返送することがやむを得ないと認められるものを輸出するときは、当該貨物をその輸入の許可の日から6カ月(1年以内において延長可)以内に保税地域に搬入することにより、その関税を払い戻すことができるとしている。
したがって、この規定が適用されれば、輸入した製品を修理・補修のため輸出し、再輸入する際に再度関税を納付することとなるものの、当初納付した関税については、払い戻されることとなり、関税の二重払いは、解消される上、再輸入時に我が国から輸出されたものであることを立証する必要はないことから、具体的事例に基づいて最寄りの税関に相談していただきたい。
(備考)
問題提起者の見解は以下のとおり。
(1)、(2)、(3)「当面はこの対処方針で了解」
7-(4) 委託加工貿易制度の適正化
○ 問題提起者:東京商工会議所
○ 所管省庁:通商産業省
○ 問題提起内容
製品の委託加工ライセンスを申請・取得済にもかかわらず、製品輸入時に加工賃のみならず、内貨扱いであるはずの材料費に対しても関税が課せられる。
本来、内貨と認定された材料の輸入時に、関税が課せられるのは納得できないので、許可取得済の案件については、材料費に対して免税すべきである。国内産業の保護を目的に制定された委託加工ライセンス制度を廃止すべきである。
○ 所管省庁における対処方針
輸出承認が必要な委託加工貿易は、
1) 綿織物及び絹織物を原材料として輸出し、織物の絞り加工を委託する場合
2) 皮革及び皮革製品の半製品を輸出し、革、皮革製品及びこれらの半製品の製造を委託する場合
の二つである。
上記の輸出承認が必要な理由は以下のとおりである。
我が国織物絞り加工業は、近年の和装需要の伸び悩み等から生産額は減少傾向にあり、さらに、作業環境が厳しく、加工技術を習得するのに長時間を要することから後継者、新たな従業員の確保は困難な状況である。
また、我が国皮革・皮革製品製造業は、中小零細かつ生業的に営まれている事業者が多く、その経営基盤が脆弱であり、また、同産業が歴史的、社会的に困難な問題を抱えた地域の主力産業である。
以上のような状況から我が国産業活動の円滑な運営に悪影響を及ぼすことがないよう実施している承認制を廃止することは困難である。
なお、国内産業は依然として厳しい状況にあるが、関税の引き下げ等の措置を実施してきているところ。
7-(5) 関税割当申請書の簡素化
○ 問題提起者:東京商工会議所
○ 所管省庁:通商産業省
○ 問題提起内容
革製の履物の輸入に際し、関税割当申請書を提出する際の添付書類の用意が煩雑である。そこで実績のある申請者に対しては提出書類を軽減すべきである。
○ 所管省庁における対処方針
提出書類の軽減については、必要最小限の提出書類をお願いしているところであり、これ以上の簡素化は困難である。
なお、関税割当申請書を提出する際の添付書類のうち、輸入通関に係る書類(インボイス等)については、単に輸入実績として提出を求めているのではなく、「自ら契約し通関したもの」であるかどうかを確認するためのものである。
7-(6) 貿易外支払報告書及び輸入報告書等の撤廃若しくは報告要件の緩和
○ 問題提起者:東京商工会議所
○ 所管省庁:大蔵省、通商産業省
>○ 問題提起内容
現在、輸入報告書、貿易外支払報告書等を 500万円/件以上の該当案件すべてについて作成しているが、それらの撤廃、あるいは大幅な緩和(金額の引上げ)をすべきである。
○ 所管省庁における対処方針
(1) 貿易外支払報告書については、国際収支統計の作成等に必要不可欠であることから、廃止は困難である。また、報告下限金額の引上げについては、平成10年4月より実施される改正外為法下における、実施状況及び統計精度の水準を維持する観点等を踏まえ検討する。
なお、今回行われた外為法の改正においては、内外資本取引等に関する効率的かつ実効性のある事後報告制度を整備することとしており、この観点から、報告書様式や提出方法を工夫するなど、報告者の負担軽減に十分配慮するよう、現在検討中である。
[大蔵省]
(2) 輸入報告書について
当該報告書については、平成10年3月31日をもって廃止する。
(3) 貿易関係貿易外支払等報告書について
当該報告書については、平成10年3月31日をもって廃止する。
[通商産業省]
(備考)
問題提起者の見解は以下のとおり。
(2)、(3) 「今回の対処方針に満足」
7-(7) 輸入貨物検査人員の増員
○ 問題提起者:東京商工会議所
○ 所管省庁:大蔵省
○ 問題提起内容
国際郵便にて輸入する貨物量に比較し、検査する側の人員が全体的に不足している。早く販売したいと思い輸入しても、検査が入り、会社に商品が到着するまでに4~5日も掛かるのでは販売時期を逸する。税関における輸入貨物検査人員の増員を図るべきである。
○ 所管省庁における対処方針
近年、国際郵便物の量は増加しているが、その税関検査については、郵政官署から呈示を受けた日に基本的に終了している。
(備考)
問題提起者の見解は以下のとおり。
「当面はこの対処方針で了解」
7-(8) 輸入申請書類の簡素化
○ 問題提起者:東京商工会議所
○ 所管省庁:大蔵省
○ 問題提起内容
(1) 輸入申請書類について類似書類 が多いと感じる。申請書類の簡素化をすべきである。
(2) 輸入申告をする際、一部、署名のない仕入書は認められているが、EDI化を考慮すると法改正による全面実施をすべきである。
○ 所管省庁における対処方針
(1) 郵便物以外の一般貨物については、輸入者等が必要な事項を税関長に申告し、貨物につき必要な検査を経て、その許可を受けなければならないこととされている(関税法第67条)が、申告時の添付書類については、その簡素合理化に努めているところである。
また20万円以下の少額貨物については、申告書記載事項等を簡素化した簡易通関扱いを認めるなど、限度額に応じた簡易な通関制度を導入している。
個別には、主要官署に配置されている税関相談官が、輸入者等からの相談に対応している。
(2) 現在、各種輸入手続きのEDI化を検討しているが、仕入書については、各企業、業界ごとにその様式は異なっており、直ちにEDI化することは困難である。したがって、当面は、基本的には、仕入書を書面(コピーも可)により提出していただき、その署名を確認することが必要である。
(備考)
問題提起者の見解は以下のとおり。
(1)、(2) 「当面はこの対処方針で了解」
7-(9) 輸入住宅の通関手続きの簡略化
○ 問題提起者:東京商工会議所
○ 所管省庁:大蔵省
○ 問題提起内容
250㎡(75坪)位の高級アメリカンハウス一棟分の輸入量は(可能な限りの資機材を輸入した場合)40フィートコンテナーで4台になる。2台目までは、本体が主体ゆえ品物の種類が少なく通関に時間はかからないが、3、4台目になると品物が多種多様になり、通関に時間がかかり過ぎる。建物一棟分としてのコンテナーについては、税率を特別な率に定めた方法と、単品ごとに計算する方法とに分け、事前に協議していずれの方法を採用すべきである。
○ 所管省庁における対処方針
棟単位で契約されたプレハブ住宅(関税率表9406項のもの)については、仮に運送等の都合により数回にわたり分割して輸入申告される場合であっても、申告貨物が当該住宅の一部であることが、契約書、図面等により確認できる場合には、税関は、許可前引取制度の利用を認め、最終貨物の申告を待って、一括してプレハブ住宅として輸入することも、また、到着ごとにそれぞれ単品として申告等の輸入手続きをとることも可能である。
(備考)
問題提起者の見解は以下のとおり。
「当面はこの対処方針で了解」
7-(10) 製品修理に係る輸入通関手続きの簡略化
○ 問題提起者:東京商工会議所
○ 所管省庁:大蔵省
○ 問題提起内容
世界各国へゲーム機械を輸出しているが、修理等が発生した場合、P.C.B.基盤のみが修理のため返送され輸入することになる。その際、原産国の有無が問題となり、確認のため輸入手続きが遅れることがある。送り状などで原産国(この場合MADE IN JAPAN )が表示されている場合は税関検査の緩和をすべきである。
○ 所管省庁における対処方針
関税定率法第14条第10号(再輸入免税)は、我が国から輸出された貨物で輸出の際の性質、形状が変わってないものを再輸入する場合に、その関税を免除するものである。この再輸入免税制度は、輸出された貨物の部分品であっても、輸出した貨物の本体から分離されたものであることが確認される限り認められる。
したがって、輸出された貨物本体について、再輸入免税の適用を受けるためには、輸入申告に際し、輸出許可書又はこれに代わる証明書等を提示すれば足りるが、その部分品については、輸出貨物(製品)の品名、数量等が記載されている輸出許可書だけで当該部分品が我が国から輸出されたものかどうか確認できないため、カタログや製造証明等、当該部分品が我が国から輸出されたことを証する資料の提示を求めて当該部分品が輸出された貨物の一部であることを確認しているものであって、単に送り状に原産国の表示があることのみをもって免税適用することは困難と考える。
(備考)
問題提起者の見解は以下のとおり。
「今回の対処方針に満足」
7-(11) 輸入申告における現物確認の弾力化
○ 問題提起者:東京商工会議所
○ 所管省庁:大蔵省
○ 問題提起内容
税関から、事前教示は、到着貨物には適用されず、あくまで事前に入手した先行サンプルで行うことになっている旨の説明を受けた。しかしながら、サンプルが必ず事前に入手出来るものとは限らないため、数少ない確認であれば通関ラインにて実施すべきである。
○ 所管省庁における対処方針
税関は、輸入貨物の到着の前後にかかわらず、事前教示を行っている。ただし、到着後の貨物については、輸入予定税関官署の通関ラインで、また、未到着貨物については、本関関税鑑査官部門(ただし、東京税関においては、税関相談官室)において受け付けている。いずれにしても、事前教示については、可能な限りすみやかに回答するよう、改めて税関に対し文書にて指導徹底することとしたい。
(備考)
問題提起者の見解は以下のとおり。
「今回の対処方針に満足」
7-(12) 輸入通関手続きにおけるEDI化の促進
○ 問題提起者:東京商工会議所
○ 所管省庁:大蔵省
○ 問題提起内容
Sea-NACCS(海上貨物通関情報処理システム)更改計画におけるEDI化が不明確であり、システム更改時にEDI化を可能とする施策の実施をすべきである。
○ 所管省庁における対処方針
Sea-NACCS更改については、現行システムが平成11年に定められた運用期間を満了することを背景として、官民の利用予定者(通関業、船会社(船舶代理店を含む)、保税蔵置場業者、銀行、税関)及びシステム運営体(通関情報処理センター)の代表からなる開発組織である「次期海上システム開発推進協議会」において次期海上システムの対象業務、業務処理仕様及びEDI方式等について開発を進めているところである。
平成9年12月には、同協議会において次期海上システムの対象業務として、(1) 輸入にあっては、入港から貨物の船卸し、輸入申告・許可、国内への引取りまで、(2) 輸出にあっては、貨物の保税地域への搬入から輸出申告・許可、船積み、出港まで、の一連の税関手続き等161 業務及び管理資料等の業務詳細仕様(対象業務ごとの処理条件、入出力事項等の詳細な業務処理内容)が確定されるとともに、EDI基本仕様(利用者が次期海上システムと接続するに際しての基本的な技術仕様)及び運用時間等が確定された。
協議会において確定された業務詳細仕様等は利用予定者に公開されている。(インターネットホームページ: http://www.naccs.go.jp)
なお、輸出入者は同システムの検討には直接参加はしていないが、輸出入者が税関手続きを行うため、同システムとの接続を希望した場合の接続可能となる時期、方法等については、輸出入者を代行して税関手続きを行っている通関業者が、次期海上システムと接続可能となる時期、方法等と基本的には同様である。
(備考)
問題提起者の見解は以下のとおり。
「当面はこの対処方針で了解」
7-(13) 24時間輸入申告処理の実施
○ 問題提起者:東京商工会議所
○ 所管省庁:大蔵省
○ 問題提起内容
現在検討中である新電算システムにおいて、従来の臨時開庁制度とは異なる24時間輸入申告処理体制を確立すべきである。
○ 所管省庁における対処方針
24時間処理体制については、航空貨物について、Air-NACCS(航空貨物通関情報処理システム)により対応(注)しており、海上貨物についても、平成11年度に稼動予定の次期Sea-NACCS(海上貨物通関情報処理システム)においてシステム上対応可能となる見込みである。
(注)Air-NACCSは、24時間 365日の通年運用。ただし、システムメンテナンスのため、毎日午前4時30分より6時までの90分間運用を停止。
(備考)
問題提起者の見解は以下のとおり。
「当面はこの対処方針で了解」
8.その他
8-(1) 外国保険会社の供託金及び納入資本金限度規定の緩和
○ 問題提起者:駐日韓国大使館
○ 所管省庁:大蔵省
○ 問題提起内容
日本の保険関連法によると、外国保険会社は2000年4月1日までに供託金を現在の1億円から2億円に増額するようになっており、また、現地法人を設立する際には納入資本金を300 億円以上納入しなければならない。このような一律的な規制は、保険会社の流動資産を減少させ、資産運用の困難を招く恐れがあるので、会社の業績・人員数等に応じた等級別実施をすべきである。
○ 所管省庁における対処方針
問題提起事項については、事実誤認(2000年→2001年、1億円→1000万円、300 億円→10億円)の部分もあり、現在問題提起者に対して照会中である。供託金制度は日本における保険契約者等の保護の観点から、営業保証金として最小限の額を定めているものであり、また、資本金についても保険事業を円滑に遂行していくために最低限必要な額を定めているものであることから、一律的な制度として運用することが妥当であり、等級別実施を行うことは適当でないと考える。
8-(2) 労働分野における規制緩和
○ 問題提起者:在日米国商工会議所
○ 所管省庁:労働省
○ 問題提起内容
過度に規制された日本の労働環境は外資が望む人材の求人・採用を困難としていることから、対日投資の障害となっているため、以下の改善措置を講ずべきである。
(1) 労働諸法及び規制に関する新しい基盤の整備
1) 労働諸法及び規制は従業員と雇用者に等しく公正であるべきである。
2) 事務手続き等については公明・公正かつ窓口担当者の判断を必要としないものとすべきである。
3) 増え続け、複雑化する労働問題に関し、特別な裁判所を設けるか、労働問題の専門家を法廷に同席させるべきである。
4) 職業紹介等の労働省が行うサービスを民営化すべきである。
5) 日本企業が世界市場において競争できるようにするためにILO 条約の解釈をゆるめるべきである。
(2) 削除または改正すべき法律事項
1) 自由な年月で契約を可能とするために一年契約の制限を廃止すべきである。
2) すべての従業員が同時に昼食をとらなければならないとの規定。
3) 集団解雇の制限
(3) 労働諸法及び規制の緩和に含まれるべき事項
1) 女性の労働時間、残業時間等に関する制度を男性と同様にすべきである。
2) 有料職業紹介業及び人材派遣事業
1] 職業安定法の民間有料職業紹介業規制におけるネガティブリストには、違法活動に係るもの、社会的に保護されるべき者に関するものの他は含ませるべきではないので、原則としてネガティブリストは特定の業界や職業を含まないこととするべきである。
また、簡素化された許可制度、市場の需要・供給で決定される紹介手数料制度を設けるべきである。
2] 人材派遣業の対象業務の範 囲については、違法行為に係るものや社会的に保護されるべき者に関するものに限定したネガティブリストによって指定すべきである。
また、人材派遣業の通常業務への過度の監督をすべきでない。
3) 新技術導入に際し、従業員の契約期間に関する規則は臨機応変な対応を可能とすべきである。また、政府は従業員教育の支援や中小企業支援により対応すべきである。
4) 出向や転勤を規制等により妨げるべきではない。
5) 人事考課は雇用を決定する上で重要だという概念を法制化すべきである。
○ 所管省庁における対処方針
(1)
1) 労働諸法は、雇用者、従業員、国等の行うべき事項等を定めたものであり、従業員、雇用者のどちらか一方に過重な義務を課したり権利を認めているものではない。
2) 問題提起者の主張については、我が国の法制上、行政手続法及び行政不服審査法によって保護されている。すなわち、「申請に対する不承認処分を行う際には、原則として書面により理由を明示することが義務付けられている」(行政手続法第8条)、「申請に対する審査基準は公にしておかねばならない」(行政手続法第5条)と定められているので、労働基準監督署などの恣意的な判断により「不透明」に処分が決定されていることはない。また、処分に不服のある者は、行政不服審査法第5条に基づく審査請求を行うことができる。
3) 労働問題のみならず、現在の裁判では解決に時間を要しているとの指摘を受けているものがあることは承知しているが、裁判の改善に関しては司法の問題であり、回答できない。
4) 公共職業安定所の職業紹介は、憲法第27条に規定する勤労権を国民に対して保障するために、すべての国民が公平かつ無料で利用できるセーフティーネットとしての機能を担っている。これを国が維持することは、ILO第88号条約上の義務を履行するためにも不可欠である。
また、諸外国においても、国の機関が職業紹介及び関連するサービスを提供することが通例となっており、職業紹介をすべて民間に行わせている例はない。なお、平成9年10月に開催されたOECD労働大臣会合コミュニケにおいても、職業紹介及び関連するサービスの効率的な提供は、国家の機関の欠くべからざる一要素であると確認されたところである。
従って、今後も国は職業紹介及び関連するサービスを提供すべきであり、これを民営化すべきではないと考える。
5) 我が国においては、憲法第98条の「日本国政府が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。」という規定により、条約を批准するに当たっては慎重に国内法制との整合性を確保した上で誠実にこれを履行するとの方針をとっており、ILO条約についても、こうした厳格な方針で対応しているところである。
(2)
1)
1] 労働基準法第14条により、長期の労働契約による人身拘束の弊害を防ぐために、期間の定めのないものを除き、原則として1年を超える期間を定める労働契約を締結することはできない。
2] しかし、創造的な事業活動を行うために、内外の特別の専門的能力を有する者を一定期間活用したいという企業側の必要性や、価値観の多様化により特定企業に縛られることなく特別の専門的能力を発揮し続けたいとする者の増加に対応するため、現行規定を見直す必要が生じてきているところである。
3] 平成9年3月に閣議決定した規制緩和推進計画においても、労働契約期間の上限について、労働契約等法制全般の在り方に関する検討を踏まえ、特に専門的能力を有する者や定年退職後の高齢者、一定期間を区切ったプロジェクト等に携わる者については、労働契約期間の上限を3年から5年程度に延長するとされたところである。
4] 労働契約期間の上限については、昨年12月の中央労働基準審議会の建議を踏まえ、次に掲げる内容を含む労働基準法の一部を改正する法律案を今国会に提出したところである。
労働契約期間の上限について、以下の場合は3年とする。
・新商品、新役務若しくは新技術の開発又は科学に関する研究に必要な高度の専門的な知識、技術又は経験を有する者が不足している事業場において当該者を確保する場合
・事業の開始、転換、拡大、縮小又は廃止のための業務であって一定の期間内に完了することが予定されているものに必要な高度の専門的知識、技術又は経験を有する者が不足している事業場において当該者を新たに確保する場合
・60歳以上の労働者に係る場合
2) 「すべての従業員が同時に昼食をとらなければならない」との規定は存在しない。
3) 解雇は、合理的な理由を欠き社会通念上相当でないと解される場合は無効であるという判例法理が確立されており、また、企業が整理解雇を行う場合、
・人員削減の必要性
・人員削減の手段として整理解雇を選択することの必要性
・解雇対象者の選定の妥当性
・解雇手段の妥当性
の4つの要件を満たす必要があるという判例法理が確立している。この判例法理について、変更すべき特段の理由は見当たらないものと考える。
なお、労働基準法では
・解雇の際の予告手続とその適用除外(20条、21条)
・業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のため休業する期間とその後の30日間及び産前産後休暇とその後の30日間の解雇の禁止(19 条)
を規定している。
(3)
1) 女性労働者に対する時間外・休日労働及び深夜業の規制については、雇用の分野における男女の均等取扱いと女性の職域拡大を図る観点から、男女雇用機会均等法の改正と併せて、解消されることとなっている。これにより、平成11年4月から労働基準法の時間外労働等については、男女同一の枠組みとなる(「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等のための労働省関係法律の整備に関する法律」1997年法律第92号 公布1997年6月18日施行1999年4月1日)。
2)
1]
・有料職業紹介事業の取扱職業については、平成7年12月の行政改革委員会における意見を尊重し、平成8年12月の中央職業安定審議会における建議を踏まえ、取扱職業の範囲を大幅に拡大し、平成9年4月からネガティブリスト化した。なお、更なる取扱職業の拡大について、平成9年3月の規制緩和推進計画等に基づき、平成9年6月のILO第 181号条約等を踏まえ、平成9年度中に中央職業安定審議会で検討を開始することとしている。
・有料職業紹介事業の許可に関しては、手続、関係書類の簡素化について紹介責任者の経験要件の緩和等を平成9年4月から実施した。
・有料職業紹介事業の紹介手数料については、平成7年12月の行政改革委員会における意見を尊重し、平成8年12月の中央職業安定審議会における建議を踏まえ、紹介手数料の徴収額について、承認を受けることにより自由に設定できること(従前は就職後6か月間に支払われた賃金の10.1%が上限)等の措置を平成9年4月から実施した。
2] 労働者派遣事業については、適用対象業務として11業務を追加した(従前の16業務と合わせて計26業務)(労働者派遣法施行令の改正により平成8年12月施行)。
また、平成9年3月の規制緩和推進計画等に基づき、対象業務の範囲のネガティブリスト化、派遣期間、労働者保護のための措置等を中心とした制度の全般的な見直しが中央職業安定審議会において平成9年1月より進められ、平成9年12月にその基本的方向が取りまとめられた。現在この基本的方向を具体化するために更なる検討が同審議会において進められている。
3) 解雇については、使用者による解雇が合理的な理由を欠き社会通念上相当でないと解される場合は無効である、という判例法理が確立している。この判例法理について、変更すべき特段の理由は見当たらないものと考える。
なお、労働基準法では、
・労働者が突然の解雇から受ける生活困窮を緩和するため、使用者に対し、原則として30日前の解雇予告かそれに代わる解雇予告手当の支給の義務づけ(20 条)
・業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のため休業する期間とその後の30日間及び産前産後休暇とその後の30日間の解雇の禁止(19 条)
を規定している。
4) 判例によると以下のとおり。
1] 出向を命じるには就業規則や労働協約上の根拠規定や採用の際の同意等の明示の根拠が必要であり、また、出向命令の業務上の必要性、人選の合理性等を勘案して出向命令が権利濫用と認められれば無効であるとされている。
2] 配転については、当該配転命令について業務上の必要性が存しない場合、または業務上の必要性が存する場合であっても他の不当な動機・目的をもってなされたものであること若しくは労働者に対し通常甘受すべき限度を著しく超える不利益を負わせるものであるとき等特段の事情の存する場合でない限りは権利の濫用に当たらず、当該配転命令は有効であるとされている。こうした判例法理について、変更する特段の理由は見当たらないものと考える。
なお、労働関係法令上、出向や配転を制限する規定は存在しないものである。
5) 就業規則は、当該事業場における労働時間や賃金、解雇等に関する取扱いについて、事業主が労働者の過半数を代表する者の意見を聴いた上で定めるものであるが、労働基準法第89条は、常時10人以上の労働者を使用する使用者に就業規則を作成し所轄の労働基準監督署に届け出る義務を課しているにすぎない。解雇や配転、異動等を認めるかどうか、また、どのような能力評価基準とするか等についてはそれぞれの事業場の労使の話合いに委ねられるべきものであり、法律で一律に規定することは不適切であると考える。
8-(3) 日本における外国法事務弁護士に係る規制緩和等
○ 問題提起者:在日米国商工会議所
○ 所管省庁:法務省
○ 問題提起内容
日本の法務サービス市場では、外国の弁護士と日本の弁護士双方について、包括的なグローバルサービスを顧客に提供することが妨げられている。日本の市場開放が進むにつれて、こうした国際法務サービスの必要性が日本でも急速に高まっており、世界の他のビジネス・金融の中心地で容易に受けることができる国際法務サービスは日本でも受けられるようにすべきである。
ついては、以下の事項について措置すべき。
(1) 弁護士と外国法事務弁護士(外弁)のパートナーシップの自由を認めること。
(2) 弁護士が外弁を雇用することが認められているのと同様、外弁が弁護士を雇用する自由も認めること。
(3) 外弁が第三国の法律について弁護士と同程度の助言を行うことを認めること。
(4) 5年の実務経験要件を2年に短縮し、外弁の事務所であるか弁護士の事務所であるかにかかわらず、日本を含む全ての法域の国際法律事務所での実務経験年数を全てこの要件に加算すること。
(5) 最高裁判所司法研修所に受け入れる司法修習生の人数を少なくとも提案されている年間1,500 人まで増やすことによって弁護士を大幅に増員すること。
(6) 効果的な事業組織としてほとんどの先進商業中心国において広く認められ、使用されている専門家法人を法律専門家の組織形態として認めること。ただし、既に日本で業務を行っている国際法律事務所のパートナーシップと比べて差別的で不利なものとならないようにすること。
(7) ロイヤーの広告に関する過度に厳しい規制を緩和し、ロイヤーが自らのサービスについて一般大衆により合理的に知ってもらうことができるようにする。
○ 所管省庁における対処方針
(1) 弁護士と外国法事務弁護士(外弁)とのパートナーシップについては、平成7年1月施行の法改正により、弁護士と外弁とが共同の事業を営む道を開いているが、有識者等から構成される外国弁護士問題研究会(法務省及び日本弁護士連合会共催)は、平成9年10月30日、外国弁護士受入制度の在り方に関する報告書(以下「報告書」という。)を提出した。法務省は、報告書を踏まえ、今国会において、渉外的要素を有する法律事件に関し、この共同の事業の目的に関する制限を撤廃して、外弁と弁護士が、それぞれの職務範囲において包括的・総合的な協力関係に基づく法律サービスを、最終的な解決に至るまで、すなわち訴訟事務等に至るまで一貫して提供し得るような制度に改めるための所要の法改正措置を講ずる。
(2) 外弁による弁護士の雇用について、報告書は、我が国の資格制度との関連等において極めて困難な問題を生ずるとしており、(弁護士による外弁雇用にはこのような問題は生じない。)これをにわかに許容することはできないとしつつ、(1)により外弁と弁護士との総合的・包括的な協働を制度的に保障する事業形態を可能にすることで、実質的には雇用に関するニーズにこたえることができるものとしている。法務省はこれを踏まえ、雇用に関する問題の回答として(1)の措置を講ずる。
(3) 第三国法について、外弁は、依頼者保護等の観点から、これを取り扱うことを認められていないが、法務省は、報告書を踏まえ、今国会において、第三国法についても、当該第三国の外国弁護士であって、外国弁護士となる資格に基づき当該外国法に関する法律事務を行う業務に従事している者からの書面による助言に基づき取り扱うことができることとするための所要の法改正措置を講ずる。
(4) 実務経験要件について、法務省は、報告書を踏まえ、今国会において、これまで5年以上とされていた実務経験期間を3年以上とするとともに、これまで原資格国に限定されていた実務経験地を原資格国以外の外国において一定の条件の下で原資格国法に関する法律事務を行う業務に従事した期間も算入できることとするための所要の法改正措置を講ずる(米国は、外国弁護士制度を有するのは約20州にすぎないが、そのうち3年以上の実務経験要件を定めるものが2州であり、その余は、4年ないし5年以上の実務経験要件を設けている。また、原資格国以外の外国における実務経験を算入できる州も2州にすぎない。)。なお、我が国国内において、弁護士等に雇用されて補助的業務を行う者については、報告書を踏まえ、特に、通算して1年を限度として実務経験期間に算入することができるものとする法改正措置を講ずる。
(5) 法曹三者は、平成9年10月、司法修習制度を改革するとともに、現在700 人程度の司法試験合格者を平成10年度は800 人程度へ、平成11年度以降は 1,000 人程度へ増加させることを合意した。同合意に基づき所要の措置が講ぜられ、司法試験合格者の増加により弁護士数も増加することが見込まれている。また、司法試験合格者の1,500 人程度への増員についても、上記改革の結果や社会の法的ニーズの動向等を引き続き調査・検討した上で三者協議会において協議することが合意されている。
(6) 法律事務所の法人化については、平成9年3月に再改定された「規制緩和推進計画」に沿って、実態調査を行うとともに検討を続けているところであり、平成10年度中に結論を得て、これを踏まえ、速やかに所要の措置を講ずる。
(7) 弁護士の広告制限については、平成9年3月に再改定された「規制緩和推進計画」に沿って、実態調査を行うとともに検討を続けているところであり、平成10年度中に結論を得て、8これを踏まえ、速やかに所要の措置を講ずる。
8-(4) 著作権法の運用による楽譜コピーの禁止
○ 問題提起者:在日ドイツ商工会議所
○ 所管省庁:文部省
○ 問題提起内容
国内のミュージックライブラリーは購入した楽譜を無償で貸し出すサービスを行っているが、オーケストラ等に貸し出された楽譜は、コピーされ楽団員に配布されている可能性がある。
ドイツにおいては、楽譜の複写は著作権法により禁止されているが、日本ではまだ禁止にいたっていないようである。この現状はドイツの音楽出版関係者の間で非常に大きな問題となっており、これが解決されない場合は、日本市場に対する相応の対策を検討している。
○ 所管省庁における対処方針
著作権の保護については、各国国内法間のハーモナイゼーションを図るため関係国による詳細な交渉・検討を経た上で、ベルヌ条約、万国著作権条約及びTRIPS協定という多国間条約が制定されている。
我が国の国内における外国の著作物の保護は著作権法によって行われているが、我が国は上記の3条約のすべてを批准するとともに、その義務をすべて満たしている。
著作権法第30条の権利制限規定は、「家庭内その他これに準じる限られた範囲内において使用」するため、「その使用する者」本人が複製する場合にのみ適用されるので、ご指摘のような行為(コピーして楽団員に配布すること)が行われているとすれば、同条の対象とならず侵害となる。
著作権は私権であるため、個別の侵害事件については、権利者自身が条約の規定に従って整備されている民事・刑事の救済システムを活用して救済を求めるべきこととなる。
問題提起者が提起している「問題状況」は、上記のように現行の著作権法上も「違法」な行為であり、現行法上既に違法である行為を重ねて禁止する必要はないので、楽譜の複製を全面禁止する根拠にはならない。
仮に「現行の著作権法において禁止されていない行為」によって大きな損害が生じていると主張するのであれば、証拠を示されたい。また、他の欧州諸国など、ドイツのような禁止規定を持たない日本以外の国々に対してどのような要請をしているのか示されたい。
【市場開放問題苦情処理推進会議専門家会議構成員】
- 〔議 長〕
- 大河原 良雄 (外務省顧問)
- 〔議 長 代 理〕
- 行 天 豊 雄 (財団法人国際通貨研究所理事長)
- 久 米 豊 (日産自動車株式会社相談役)
- 佐々波 楊子 (慶応大学経済学部教授)
- 島 野 卓 爾 (学習院大学経済学部教授)
- 谷 村 昭 一 (日本商工会議所専務理事)
- 中 内 功 (株式会社ダイエー代表取締役会長兼社長)
- 眞 木 秀 郎 (生物系特定産業技術研究推進機構理事長)
- 増 田 實 (財団法人国際経済交流財団会長)
- 八 城 政 基 (シティコープジャパン会長(非常勤))
- 山 本 卓 眞 (富士通株式会社名誉会長)
- 米 倉 功 (伊藤忠商事株式会社相談役)
- 〔委 員〕
- 片 岡 一 郎 (慶応義塾大学名誉教授)
- 金 森 房 子 (生活評論家)
- 兼 重 一 郎 (財団法人日本自動車研究所顧問)
- 児 玉 一 彌 (社団法人東京穀物市況調査会理事長)
- 細 川 清 澄 (社団法人航空貨物運送協会顧問)
- 本 田 敬 吉 (日本サンマイクロシステムズ株式会社会長)
- 宮 智 宗 七 (産能大学大学院教授)
- 村 上 政 博 (横浜国立大学大学院教授)
- 〔オブザーバー〕
- >J.W.ビーグルス (在日米国商工会議所理事)
- ローラン・デュボア(ジェット ロワレット ノエル外国法律事務弁護士事務所代表)
- 朴 鍾 萬 (韓国貿易協会理事兼東京支部長)
専門家会議議題
第1回[平成10年1月23日]
(1) 個別に順次審議すべきとされた案件以外の案件の検討状況
○ 問題提起者:
駐日オーストラリア大使館、
駐日欧州委員会代表部、
駐日大韓民国大使館、
駐日ニュージーランド大使館、
駐日米国大使館、
在日ドイツ商工会議所、
在日米国商工会議所、
日本貿易会、
東京商工会議所
第2回[同年1月28日]
(1) 建設業の許可等に係る規制緩和
○ 問題提起者:駐日欧州委員会代表部
(2) JPNICによるインターネット・ドメインネームの登録方針の改善
○ 問題提起者:
駐日オーストラリア大使館、在日オーストラリア・ニュージーランド商業会議所
第3回[同年2月3日]
(1) 医療用具の外国製造承認における手続の簡素化
○ 問題提起者:台北駐日経済文化代表処
(2) 外国人又は非居住者に対する源泉徴収免除証明書制度の廃止
○ 問題提起者:駐日大韓民国大使館
(3) 外国企業の日本国内支店に対する住民税算出基準の改善
○ 問題提起者:駐日大韓民国大使館
第4回[同年2月10日]
(1) 外国郵便物の課税に対する納税方法の改善
○ 問題提起者:
日本貿易会、
東京商工会議所
(2) 税関事後調査方法の改善
○ 問題提起者:東京商工会議所
第5回[同年2月19日]
(1) 個別に順次審議すべきとされた案件以外の案件の検討状況
○ 問題提起者:
駐日オーストラリア大使館、
駐日欧州委員会代表部、
駐日大韓民国大使館、
駐日ニュージーランド大使館、
駐日米国大使館、
在日ドイツ商工会議所、
在日米国商工会議所、
日本貿易会、
東京商工会議所
第6回[同年2月25日]
(1) 建設業の許可等に係る規制緩和(再)