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市場開放問題苦情処理推進会議 第7回報告書

平成14年3月18日
市場開放問題苦情処理推進会議

本報告書は、「基準・認証制度等に係る市場開放問題への対応」(平成5年5月27日、市場開放問題苦情処理推進本部決定)等に基づき、外国人事業者等からの問題提起を受け、我が国の基準・認証制度等に関する問題の所在を明確化し、必要な対応を意見として取りまとめたものである。

市場開放問題苦情処理対策本部におかれては、速やかに本報告書を最大限尊重した対応を決定し、それに基づく措置をとられたい。

I.平成13年度問題提起プロセスの考え方

はじめに

経済・社会への先行きに対する国民の閉塞感が高まる中、日本経済が本来持っている潜在力を十分に発揮させるため、時代の要請に応えられなくなった各般のシステムを変革し、構造改革を推進することは、喫緊の課題となってきている。政府は、平成13年6月に「今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針」を公表し、構造改革を強力に推進している。構造改革とは、変革を阻むような障壁、既存の枠組みを積極的に取り除くことであり、透明で公正な市場に作りあげ、我が国経済を競争を通じて活力あるものにしていくものである。特に、市場アクセスの改善は、世界経済がますます一体化する中で、人、物、資金、情報の流れを容易にさせ、我が国経済を国際的に開かれたものとすることによって、経済の活性化を促すものである。市場アクセスの改善を推進する市場開放問題苦情処理体制(OTO)の活動は、個別具体的問題に対応して、このような構造改革の実現に取り組んでいくものである。

1.平成13年度問題提起プロセスの傾向

市場開放問題苦情処理推進会議は、平成5年度以降、基準・認証制度等に関する問題の所在を明確化し、必要な対応を意見として表明しており、今般、7回目の報告書を取りまとめた(問題提起プロセス)。今回の問題提起プロセスにおいて提起された案件は37件である。過去6回の問題提起プロセスでは、平均すると52.5案件であったことから、案件数は減少している。しかし、今回の問題提起において、過去OTOで取り上げられた、あるいは類似の案件は依然として多く、市場アクセスの一層の改善努力が求められている。

分野別でみると、動植物・食品関係10件、医薬品・医療用具・化粧品関係が2件、工業関係等が3件、運輸・交通関係が2件、建設関係が2件、情報通信関係が1件、輸入手続関係が16件、その他1件である。省庁別にみると、財務省13件、厚生労働省10件、農林水産省9件、経済産業省5件、国土交通省3件、総務省1件である。過去のOTOの案件をみると、厚生労働省、経済産業省、財務省、農林水産省が主要な担当省庁であり、傾向の変化が見られなかった。

また、各省庁が各々の行政目的から、個別に規制をかけており、結果として、同一の対象に複数の規制がかかっていることが多い。今回の案件においても、それぞれの規制の中身は異なっているため、規制が互いに相反する場合も生じ、その結果、事業者に混乱と不利益をもたらしている例があった。

構造改革、規制改革を推進していく上で、今回の問題提起プロセスで特に指摘するべきと考える点は以下のとおりである。

(1) 経済活性化の効果

市場アクセスの改善によって、人、物、資金、情報の流れを容易にさせ、経済を活性化させるとともに、海外からの輸入や投資が増加すれば、従来なかったような財・サービスが我が国の市場に登場することによって消費者の選択の幅が広がっていくものである。また、同時に、我が国経済の高コスト構造の是正が図られ、内外の企業による多様な競争を通じて我が国経済が効率化・活性化し、ひいては雇用機会の創出にも資するのである。それはとりもなおさず企業が国を選ぶ時代の中で、国際的に魅力ある事業環境を整備し、経済の空洞化を阻止するという課題にも応えることになる。反面、市場アクセスの改善が進まなかった場合、我が国産業の空洞化や我が国経済の国際的地位の低下をもたらすことを意味する。さらに、情報を公開し、透明で自由な開かれた市場を形成しなければ、グローバル化の中で我が国の市場が取り残されることになる。

(2) 迅速な対応の必要性

今回の問題提起プロセスにおいては、過去類似した案件が提起されたものが多い。このことは、過去提起されたにもかかわらず、依然問題は解決されていないことであり、構造改革の迅速な推進が求められている中で、対応が余りにも遅いことを意味する。急速に進むグローバル化、IT化の中で、市場アクセス改善のプロセスはそうした国際的な環境の変化に見合ったものでなければならない。政策対応は「検討中」という形での結論の先送りは許されるものでない。改革プロセスは具体的な施策の実施、効果の評価にいたるプロセスが明確なタイムスケジュールの下に示されることが必要である。そのため、市場アクセスの改善についても、規制改革推進3か年計画やその他政府が行う構造改革の取り組みにしっかり位置付けられ、制度として確実に進行管理されることが必要である。

(3) 新しい制度の導入に当たって、市場アクセスの視点からの検討の重要性

IT化、循環型社会に対応した新しいシステムの設計に当たっては、市場の透明性、競争の確保が重要である。従来の制度の延長線上に新制度を作るのではなく、市場の透明性、開放性を確保し、構造改革を推進する観点から、改革を先取りするような先覚的な制度を作ることが求められている。新しい制度の導入に当たり、市場アクセスの観点から、参入機会、参入条件、参入への手続とそれに要する時間、情報の公開状況、国際的評価制度、評価基準への準拠性等、予め考えられる具体的なチェックポイントをリスト化し、これをクリアーする形で実施していくことが望ましい。

2.今回の問題提起プロセスにおいて指摘された事項

個別具体的な改善策を検討する上で、今回の問題提起プロセスにおいて以下の点についての重要性が改めて指摘された。

(1) IT化、電子政府(電子申請など)への対応、利用料金の情報公開

市場アクセス改善のためには、電子政府の実現は、避けては通れない重要な課題である。現在、政府は、5年以内に世界最先端のIT国家になるとの目標達成に向け、「e-Japan重点計画」、「e-Japan2002プログラム」に基づき、重点的かつ戦略的にIT施策を積極的に推進している。今問題提起プロセスにおいても、高コスト構造を是正し、経済の効率化等を図るとともに、利用者の利便性を向上させる観点からIT化の重要性が指摘された。例えば、インターネットが地球規模で急速に進展している中で、国民等と行政の間でインターネットを活用して国民等からの情報を収集し適確に対応できる体制整備を推進するべきである。さらに、実質的に全ての申請・届出等手続に関しては、2003年度までのできる限り早期にインターネット等で行えることとなっているが、申請・届出等手続を電子化する場合には、事務に係る行政経費の低減を図りつつ、利用料金の一層の低廉化を図るべきである。

輸出入関連手続に関して、各省庁のシステムを相互に接続、連携するに当たっては、ワンストップサービスを推進するとともに、利用料金の適正化を図るため、情報公開を積極的に推進し、利用料金の透明性を確保すべきである。また、中立的な立場から審査し、行政経費の削減及び利用者への負担の軽減等を図るため、有識者を含めた検討の場を速やかに設置する等、多角的な視点から利用料金を決定すべきである。

(2) 特殊法人、公益法人等を巡る検討

特殊法人等に関して、事業の徹底的な見直しを行い、その結果を踏まえ、民間で可能な事業はできる限り、民営化を推進することが重要である。

また、公益法人が行う検査等の事務・事業の中では、公益法人要件などの規制がかかり、民間の参入が制限されることによって、競争原理が働かず、効率的なサービスの提供が阻害されていることがある。このような業務に関しては、公益法人要件を撤廃し、民間への開放を推進するべきである。

さらに、政府による規制ではなく、公益法人、任意団体といった民間団体が、当該団体の構成員でない事業者に対して不利益を与えているという事例が事業者から指摘された。こうしたケースでは、所管省庁において、このような民間団体等の関与を受けないような環境整備を進めていくべきである。

(3) 透明性の確保

平成11年度の問題提起でも指摘されていたように、規制の存在自体もさることながら、規制に関して透明性に欠けることが問題を引き起こしている場合が多い。 実質的な規制が法令ではない通達や通知によってなされているものは、透明性の確保という大前提に立ち、基準などは極力法令により規定するよう改めるべきである。また、規制によって事業者に不利益を与える場合には、その規制を行う具体的な理由について、できる限り文書にて通知するべきである。

(4) 制度改正の実施時期の明確化、迅速化

急速に時代の変革のスピードが増している中で、問題提起された案件への対応をはじめ、政府が直面している諸課題に対して、検討や制度改正等の実施に必要な期間はできる限り短縮し、その実施時期を明記するべきである。今回の問題提起プロセスにおいても可能なかぎり実施及び検討の期限を明示させるように努めた。

また、規格・基準等の設定の必要性及びその内容は、社会的ニーズや国際的調和の観点から、所管省庁において見直しが必要であるが、国内の規格・基準等の設定に国際基準と連動していく仕組みを織り込むなど、制度改正に要する期間を短縮するための方策を検討すべきである。

(5) 安全に係る規格・基準の見直し

安全に係る規格・基準について、現在の技術進歩の進展、あるいは国際基準の観点から、問題となっている法規制が合理的な根拠がないもの、つまり、安全性という名のもとで合理性を有していないものに関しては、その対応が進んできていると考えられる。OTOの過去の事例で検索してみると、例えば、危険物の輸送に関わる規格・基準の見直しについては、個別苦情案件、あるいは問題提起された案件併せて10数件あり、そのうちの多くが「改善措置がとられた」案件として処理されている。今後、国際基準が存在する等安全性の確保について比較的方向性がはっきりしている案件から、確立された国際基準が存在せず、科学的検証を前提としてその方向性から検討を必要とするものが増えていくことが考えられる。その際には、平成9年度の問題提起プロセスで指摘しているように、国際基準の策定を待つといった消極的な対応ではなく、各国に働きかけ、自らが国際基準を策定するなど積極性を示すべきである。

むすび(フォローアップの重要性)

最後に、今回の問題提起プロセスにおいての特徴としては、過去類似した案件が提起されたものが多かったということである。このことは、構造改革が緊要となっているにもかかわらず、対応が余りに遅く、十分な速さで実施されてきたとはいえないことの証左である。さらに、過去類似した案件が多いということは、一度OTO案件として議論し、結論を出すだけでは十分ではないことを意味している。

OTO推進会議としては、案件の処理の状況を絶え間なくフォローアップをし、決められた対応が行われているかを検証し、その状況の如何によっては、更なる対応を求めていくことが重要である。このため、所管省庁においても、これまでの処理状況を定期的に点検し、必要に応じて改善を行っていくフォローアップ体制を整備することが重要である。

過去20年にわたって、OTOでは、個別苦情、問題提起プロセスあわせて1,000件近い案件を処理してきた。これらは、個別具体に時間をかけ一つ一つ吟味検討し、処理してきたものである。そうした過去の蓄積を活用し、構造改革の一層の推進を図ることが重要である。

II.意見

1 動植物・食品関係

1-(1) 植物検疫の透明化・合理化

1. 問題提起者:東京商工会議所

2. 所管省庁:農林水産省

3. 問題の背景

(1) 消毒命令等の理由の明示

植物を輸入した者は、遅滞なく植物防疫所に届け出て検査(輸入検査)を受けなければならず(法第8条)、この輸入検査の結果、「検疫有害動植物」があった場合は、発見された検疫有害動植物の種類により、消毒又は廃棄の措置が命ぜられる。(法第9条)

植物防疫法上、全ての有害動植物が消毒、廃棄等の措置対象となるものではなく、有害動植物のうち、1)国内に存在することが確認されていないもの、2)既に国内の一部に存在しており、かつ、国により発生予察事業その他防除に関し必要な措置がとられているもの、のいずれかに該当するものとして農林水産省令で定めるものが、「検疫有害動植物」として消毒等の対象となる。

(2) 消毒方法の改善

消毒方法の基準については、輸入植物検疫規程により、検疫有害動植物に応じて、青酸ガス倉庫くん蒸や臭化メチル倉庫くん蒸等の方法が規定されている。

くん蒸に使用される薬剤のうち臭化メチルは、オゾン層保護の観点からモントリオール議定書に基づき、不可欠なものとして合意された用途及び検疫用途を除き、2005年には廃止が決定されている薬剤である。

(3) 輸入検査及び消毒の実施方法の改善

ア 植物検疫協会は、輸入植物の検疫関連業務について委任を希望する輸入業者等から「植物防疫法に基づく検査申請手続、その他事務手続一切の業務」の委任を受け当該業務を行っている。

イ 植物防疫法に基づく検疫や防除に従事するものとして、植物防疫官が置かれている。(法第3条)

この植物防疫官は、1)法第6条(輸出国の政府機関により発行された証明書の添付等)の規定に違反しないかどうか、2)輸入禁止品であるかどうか、3)検疫有害動植物があるかどうかの検査を行い、その結果、検疫有害動植物があった場合は、その植物等を消毒若しくは廃棄し、または、植物防疫官立会いの下、その植物等を消毒すべきこと等を命じなければならないとされている。(法第8条、第9条)

なお、過去3年間の定員推移は、次のとおり。<>

平成12年度末:782人、13年度末:783人、14年度末見込み:798人

4. 問題提起内容

(1) 消毒命令等の理由の明示

ア理由の明示の徹底

消毒命令等に当たり、その具体的理由(輸入植物に付着している検疫有害動植物名等)が輸入業者に伝わらないまま、消毒等が求められている。

この点について、農林水産省は、「市場開放問題苦情処理推進会議第3回報告書(平成8年3月18日)」において、「輸入植物の検査の結果、消毒等所要の措置が必要な場合は、輸入者等から提出される輸入検査申請書に直接植物防疫官が理由(病害虫の名前を含む)を付し、輸入者若しくはその委任者に通知している。(略)本問題提起を踏まえ、輸入者への検査結果等情報の通知方法について、周知徹底を図っていく」としている。

しかし、現状は平成7年度当時と変わっておらず、消毒命令等の理由の明示についての周知徹底が図られておらず、改善がみられない。

したがって、農林水産省は、消毒命令等の理由を必ず明示し、不要な消毒等が行われないよう、所要の措置を講ずるべきである。

イ 「消毒(廃棄)命令書」の交付

輸出国事業者に生産行程の改善を促したり、損害賠償請求を行うために、「消毒(廃棄)命令書」を必要とする輸入業者が存在する。

しかし、この「消毒(廃棄)命令書」の交付を受けるためには、毎回、交付の要求をしなければならず、また、この命令書を仲介者を経て輸入業者が受けるには、数日以上の期間を要する場合があり、輸出国事業者に対する請求等に障害となっている。

したがって、「消毒(廃棄)命令書」については、別途の申請を求めることなく、命令と同時に、全件について交付すべきである。

(2) 消毒方法の改善

10万種もの膨大な種類の病害虫が存在すると言われているが、これらに対する植物検疫における消毒方法の基準は、臭化メチル又は青酸ガスによるくん蒸等、現在17種類となっている。

しかし、この臭化メチル及び青酸ガスは、人体、物資、地球環境に与える影響が懸念されている薬剤であり、消費者からも、人体、物資、地球環境に与える影響の少ない方法で消毒等を行うことが求められているところ。

農林水産省は、個々の病害虫に応じ、現行よりも人体、物資、地球環境に与える影響の少ない消毒方法を検討し、導入すべきである。

(3) 輸入検査及び消毒の実施方法の改善

ア 輸入検査開始時刻(目安)の通知

輸入検査の開始時刻について、現在、個々の事業者毎の検査開始時刻(目安)は示されておらず、場合によっては長時間の待機を余儀なくされる状況。

農林水産省は、事業者の利便性向上を図るため、予め個々の事業者毎の検査開始時刻の目安を示すべき。

イ 植物検疫協会による関与の排除

植物検疫協会が存する港においては、ほとんどの輸入業者は、同協会と委任契約を締結し消毒等に係る事務を委任している。

一方、非協会員が直接消毒(くん蒸)業者にくん蒸を依頼しても、くん蒸業者は同協会からの圧力を恐れくん蒸に応じないため、事実上、非協会員はくん蒸を受けられない例がある。

景気低迷が続く中、中小企業にとっては、同協会に係る経費も負担となっており、また、支払った経費に見合う事務代行もないことから、農林水産省は、くん蒸の実施について、同協会による関与を廃止し、防疫所、くん蒸実施業者、処置希望者の3者のみで完結するような環境を整備すべきである。

ウ 植物防疫官等の業務の見直しによる全件即日検査の実施

生鮮野菜類を中心とした輸入が急増している海港及び空港については、当該海港及び空港を担当する植物防疫所の検査処理能力(輸入の多い2か月の過去3年間の平均検査件数)を超える場合には、当日検査が行われず翌日以降の検査となる場合がある。

しかし、特に生鮮品について翌日回しとなった場合の経済的損失は大きく、全件について即日検査をすべきである。

これについて、農林水産省は、植物防疫官の体制が十分でないことを理由として挙げているが、行政のスリム化の中、植物防疫官の大幅な増員が見込めない以上、現在の植物防疫官等の業務を抜本的に見直し、増加する輸入量に対応する対処方策を至急確立すべきである。

5. 検討結果

(1) 消毒命令等の理由の明示

ア 理由の明示の徹底

消毒命令等の理由の明示に関しては、平成7年度にも同様の問題提起が寄せられており、OTO対策本部決定において、所管省は、消毒命令等の理由の明示について「周知徹底」を図ることが決定されている。

しかし、この平成7年度OTO対策本部決定に基づき、所管省が講じた措置内容は、検疫有害動植物名等消毒命令等の理由を、文書ではなく口頭で輸入業者等に通知するに止まっており、文書による通知を受けるためには、別途、「消毒(廃棄)命令書」の交付を要求しなければならない状況となっている。

さらに、この「消毒(廃棄)命令書」様式には、検疫有害動植物名等消毒命令等の具体的理由を明示する欄は設けられておらず、所管省は、運用上、消毒方法の種類を記載する欄に併せて病害虫名を記載しているとするに止まっている。

また、所管省は、消毒命令等の理由の通知については、複数の業務委任者が仲介するため、輸入業者まで確実に伝達されていない現状が見受けられるように思われるとしている。

しかし、複数の仲介者の介在により、口頭での伝達が不確実であるならば、なおさら、全ての場合において口頭ではなく文書による通知を実施し、輸入業者まで確実に伝達されるよう所要の措置を講ずべきである。

以上を踏まえ、所管省においては、消毒命令等の理由を明示するため、1)電算化を図ることにより検疫有害動植物名等を明記した文書の全件交付を実施できる体制を整備すべきであり、2)「消毒(廃棄)命令書」様式に検疫有害動植物名等消毒命令等の具体的理由を明示する欄を設け明確化を図るべきである。

イ「消毒(廃棄)命令書」の交付

所管省は、「消毒(廃棄)命令書」の交付を毎回必要としていない輸入業者等も多いとしているが、その交付を必要としている輸入業者等も存在し、その者の便宜を図るための措置を講ずる必要がある。

以上を踏まえ、所管省においては、「消毒(廃棄)命令書」の交付を必要とする者の便宜を図るため、毎回交付を希望する輸入業者等を事前登録し、当該輸入業者等については、個別の交付要求がなくとも「消毒(廃棄)命令書」を自動的に交付する制度を導入すべきである。

(2) 消毒方法の改善

所管省は、臭化メチルくん蒸等は、多種の病害虫に効果があり、大量の植物を、的確、容易かつ速やかに処理することが可能で他の代替剤も無いため、世界的に使用されているとし、また、そのため検疫用途の臭化メチルについては、モントリオール議定書の規制対象外とされているとしている。

しかし、臭化メチルは、モントリオール議定書の規制対象外であったとしても、可能な場合には他の代替方法を採用することが望ましい。

以上を踏まえ、所管省においては、消毒方法について、今後、更に新技術の開発に積極的に取り組み、対象植物等に与える影響の少ない消毒方法や、臭化メチルを用いない又は使用量の少ない消毒方法を確立し採用するよう努力すべきである。

(3) 輸入検査及び消毒の実施方法の改善

ア 輸入検査開始時刻(目安)の通知

所管省は、植物防疫所も検査現場に行かなければ検査場所におけるコンテナの蔵置状況が具体的には分からず、輸入業者等毎の検査開始時刻を予め決めることは困難としているが、例えば、検査場所に到着次第コンテナの蔵置状況を確認することにより、検査開始時刻の目安を把握し輸入業者等に通知することは可能である。

以上を踏まえ、所管省においては、輸入業者等の負担を軽減し、利便性の向上を図るため、輸入業者等毎の検査開始時刻の目安を輸入業者等の照会に対応して通知できる方策について検討すべきである。

イ植物検疫協会による関与の排除

所管省によれば、植物検疫協会は輸入関係者で構成される任意の団体であり、輸入業者と協会との委任契約等は民間の全く自由な経済行為で、国は関与しておらず、また、輸入業者とくん蒸業者間の民間契約に関しては、国は関与することはできないとしている。

しかし、植物に有害な検疫有害動植物の海外からの侵入を防止することは国の責務であり、そのための消毒等が円滑に行われる環境を整備することも国の責務と考える。

所管省は、民間事業者間の自由な契約関係に配慮しつつ、消毒等が円滑に行われる環境整備について、国として取り組めることを積極的に検討すべきである。

以上を踏まえ、所管省においては、植物検疫協会を介さないくん蒸を希望する者が制限を受けることなくくん蒸処置がなされるよう、くん蒸実施に当たっては植物検疫協会を介す必要がないことの周知徹底を図るべきである。

ウ植物防疫官等の業務の見直しによる全件即日検査の実施

生鮮農産物については、鮮度が重要であることから、迅速に輸入検査を実施し、輸入検査を翌日以降に繰り越さないことが求められている。

しかし、生鮮野菜類等の輸入が特に増加する時期においては、輸入検査が即日実施できず、翌日以降に繰り越されている場合がある。

この理由として所管省は、植物防疫所の検査処理能力には限界があることを挙げているが、輸入検査が翌日以降に繰り越される状況は、通年的なものではなく、生鮮野菜類の輸入が急増する毎年一定時期にみられることから、所管省は、この季節的に増加する輸入量に的確に対応するための措置を講じ、全件即日検査を実施するための対処方策を検討することが必要である。

以上を踏まえ、所管省においては、植物防疫官の業務の効率化を図るとともに、例えば、植物防疫官の補助的業務の実施に、民間技術者や非常勤職員を活用する等季節的な輸入量の変動に応じ全件即日検査を実施するための対処方策を検討すべきである。

1-(2) 食品検査機関の民間への開放

1. 問題提起者:名古屋商工会議所

2. 所管省庁:厚生労働省

3. 問題の背景

食品衛生法第15条3項の規定により、厚生労働大臣は、輸入届出された食品等のうち、生産地の事情その他の事情からみて、食品衛生法違反のおそれがあると認められる食品等に対し、厚生労働大臣が指定した検査機関の行う検査を受けるよう輸入者に命ずることができる。

検査命令を受けると、輸入者は自ら費用を負担して、指定検査機関で検査を受けなければならない。検査結果は、厚生労働大臣を経由して輸入者に通知され、その結果、輸入者は当該食品等を輸入することが可能となる。

検査手数料は、食品衛生法第15条6項の規定により、政令で定める額(検査の項目ごとに14万9,400円)を超えない範囲内において、指定検査機関が厚生労働大臣の認可を受けて定める額となっている。また、指定検査機関は、食品衛生法第19条の4の規定により、民法第34条の規定により設立された法人(社団法人及び財団法人)に限定されている。

4. 問題提起内容

検疫所から輸入食品の検査を求められた場合、厚生労働省の指定検査機関に依頼して検査を受けなければならないが、この指定検査機関は社団法人または財団法人に限られている。

指定検査機関は民間の参入が制限されているため競争原理が働いておらず、例えば検査にかかる期間や費用が検査前に提示されないなどサービスが低水準であり、また検査費用も高い。

したがって社団法人及び財団法人以外の民間を含む検査機関も指定検査機関として認めるべきである。

また、本件については、平成12年3月のOTO対策本部決定に基づき、公益法人以外の民間検査機関についても食品衛生法上の検査機関の指定対象とすることも含めた検査機関の在り方等について厚生労働省において検討が進められていると承知しているが、その検討状況を併せて御教示いただきたい。

5. 検討結果

平成12年3月のOTO対策本部決定においては、民間の検査機関を食品衛生法上の指定対象とすることについて、平成12年中に結論を得ることになっていた。しかし、平成14年2月現在においても、公益法人要件の撤廃という方向性は得られたものの、今後の対応については、抽象的であり、かつ具体性に欠けている。早急に民間の検査機関を参入させる措置を講じることにより、検査機関間の競争を促し、検査料金の低廉化、検査期間の短縮など検査サービスの質の向上を図るべきである。

以上を踏まえ、所管省においては、食品衛生法の指定検査機関について、以下の対応を取るべきである。

食品衛生法上の指定検査機関を民間にも開放するように、法律改正等必要な措置について具体的な内容を明らかにし、法律改正について、できる限り今国会中に、遅くとも次期国会では提案することを目指すべきである。

1-(3) 新たに導入された登録外国認定機関制度の活用(有機JAS)

1. 問題提起者:国内事業者

2. 所管省庁:農林水産省

3. 問題の背景

(1) 有機農産物及び有機農産物加工食品については、「農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律の一部を改正する法律」(平成11年法律第108号)等により、平成13年4月1日以降、JAS規格による格付の表示(有機JASマーク)が付されていない場合には、「有機」等の表示ができないこととなった。(法第19条の10)

(2)輸入農産物等の場合、この有機農産物等の格付を行う枠組みとして、登録外国認定機関※による認定を受けた外国の製造業者、生産行程管理者等が外国において格付を行うという枠組みが、改正法により新たに設けられた。

※「JAS制度と同等の格付制度を有する外国」において、日本国内の登録認定機関と同様の要件を満たす機関として農林水産大臣の登録を受けた法人

(3)しかし、この登録外国認定機関についてみると、上記(1)の表示規制が実施された平成13年4月1日以降も登録がなされず、法が当初予定していた枠組みを使うことはできない状況となっていた。

※改正法は平成12年6月10日から施行され、平成13年4月1日の表示規制の実施前に、登録外国認定機関の登録は可能となっていたが、現実には、法施行後1年2か月を経過し、本件問題提起がなされた後の平成13年8月27日に初めて1機関が登録された。(平成14年2月22日現在、オーストラリアの機関が5機関、オーストリアの機関が1機関登録されている。)

4. 問題提起内容

登録外国認定機関の登録の遅れにより、輸入業者等は、法が本来予定していた平成13年4月1日からの有機JASマーク貼付済み物資の輸入ができず、損害を被ったところであり、農林水産省は、新たに導入された登録外国認定機関制度の活用を図るため、以下の具体的措置を講ずるべきである。

(1) 標準処理期間の設定

ア 登録外国認定機関の登録に係る標準処理期間

登録外国認定機関の登録申請後、登録されるまでの期間については、何ら目安がなく、当該機関の利用を予定している者にとって、その事業計画等が全く立てられない状況となっており、また、登録に要する期間が長期化することを懸念し、申請を思い止まっている機関もある。

一方、行政手続法によれば、行政庁は、申請に対する処分をするまでに通常要すべき標準的な期間を定めるよう努めることとされている。

したがって、農林水産省は、行政手続法の趣旨を踏まえ、登録外国認定機関の登録申請から登録までの期間について、標準処理期間を設定すべきである。

イ 製造業者等の認定に係る標準処理期間

外国の製造業者等において有機農産物等の格付を行えるよう、外国の製造業者等が登録外国認定機関から認定を受ける期間についても、何ら目安となるものがなく、製造業者、輸入業者等の事業計画の策定及び実施に当たり、著しい支障となっている。(この問題は、日本国内の登録認定機関が行う認定についても同じ。)

したがって、登録外国認定機関(登録認定機関)が外国製造業者等を認定する期間について、標準処理期間を定めるよう各機関を促すべきである。

(2) 登録外国認定機関を増加させるための措置

ア英語等による申請を認めるなど申請を容易にするための措置

登録外国認定機関の登録申請を行おうとしたところ、申請に係る書類及び資料を全て日本語で提出するよう求められ、翻訳に要する費用だけでもかなりの金額になることが判明したため、登録申請に係る事務を中断している機関がある。

農林水産省は、登録外国認定機関の増加を図る観点から、登録外国認定機関の登録申請について、英語等による申請を認めるなど、登録申請を容易にするための具体的措置を講ずるべきである。

イ「JAS制度と同等制度を有する国」要件の緩和

この要件について、農林水産省は、「厳正・客観的・公平な認定の確保、そのための相手国政府を通じた当該外国法人の管理・監督の必要性」を理由に当該要件は必要とするが、「厳正・客観的・公平な認定の確保」のための外国法人の管理・監督は、農林水産省自らが「国際的に信頼性が確立している機関」とする機関(IOAS:International Organic Accreditation Services)を通じても可能であり、「JAS制度と同等制度を有する国」を要件とする合理的理由とはならない。

登録外国認定機関については、本来、当該機関が有する認定能力に着目すべきであり、農林水産省も「国際的に信頼性が確立している機関」とするIOASに登録されている外国法人については、例えば、輸入業者等からの要望が強いアメリカのOCIA(Organic Crop Improvement Association)等、現在「JAS制度と同等制度を有する国」に指定されていない国の外国法人についても、登録外国認定機関として登録される門戸を開くべきである。

5. 検討結果

(1) 標準処理期間の設定

ア 登録外国認定機関の登録に係る標準処理期間

所管省は、登録認定機関及び登録外国認定機関の登録に係る行政手続法(平成5年法律第88号)第6条に規定する標準処理期間について、平成13年9月17日付け13総合第2500号で一部改正した「登録認定機関及び登録外国認定機関の登録、登録の更新、認定手数料及び認定業務規程の認可その他の監督に関する要領」の第10(標準処理期間)において、3か月以内と定めた。

所管省は、今回の問題提起を契機として新たに登録外国認定機関等の登録に係る標準処理期間を定め、その期間を3か月以内と設定したが、その実行に当たっては、事務処理の効率化等を図り申請の迅速な処理に努めるべきである。

イ 製造業者等の認定に係る標準処理期間

所管省は、登録認定機関又は登録外国認定機関が外国製造業者等を認定するにあたっての標準処理期間について、平成13年10月15日付け13総合第2896号総合食料局長通知にて各登録認定機関等に対し、標準処理期間を定めるよう努めるとともに、その内容を申請者に対し周知を図るよう連絡を行った。

(2) 登録外国認定機関を増加させるための措置

ア英語等による申請を認めるなど申請を容易にするための措置

登録外国認定機関の制度は、平成11年の法律改正により新たに導入された制度であり、所管省は、この新たな制度の利用が円滑に進むよう積極的な対策を講ずるべきである。

そのための具体的方策の一つとして、登録外国認定機関の登録申請に当たっては、英語等による申請を認めることにより登録申請を容易にし、登録機関数を増やすことが考えられる。

この点について、所管省は、我が国政府に申請されるものについて、我が国の国語(公用語)である日本語を用いることは当然であるとして、英語等による申請を認めていない。

しかし、英語は既に世界の標準語となっており、また、EU諸国においては、母国語のほか、英語、仏語及び独語による申請を認めている。

以上を踏まえ、所管省においては、輸入業者等が円滑に登録外国認定機関を活用することができるよう登録外国認定機関の増加を図る観点から、登録申請に必要な書類等の一部について、英語による記載を認める等登録外国認定機関の登録を容易にするための具体的措置を検討すべきである。

イ「JAS制度と同等制度を有する国」要件の緩和

所管省は、厳正・客観的・公平な認定の確保、そのための相手国政府等を通じた当該外国法人の管理・監督等の必要性の観点から、登録外国認定機関となるためには、「JAS制度と同等制度を有する国」に属することが必要としている。

このため、例えば、アメリカのOCIA等輸入業者等からの要望が強い機関についても、アメリカが「JAS制度と同等制度を有する国」として指定されていないことから、登録外国認定機関として登録されることは不可能な状況。

しかし、「厳正・客観的・公平な認定の確保」は、「相手国政府」を通じた管理・監督だけでなく、所管省自身「国際的に信頼性が確立している機関」とするIOASを通じた管理・監督によっても可能であり、少なくともIOASに登録されている機関については、アメリカ等「JAS制度と同等制度を有する国」として指定されていない国の機関であっても、登録される門戸を開くべきである。

本来、登録外国認定機関は、その機関が有する認定能力に着目すべきであり、その機関が属する国の制度にかかわらず、その機関の能力に応じ、登録外国認定機関として認められるべきものである。「JAS制度と同等制度を有する国」であることは、登録外国認定機関の適正管理のための担保にすぎず、同等制度を有する国であることを必須の要件とすることは、極めて硬直的な考え方である。

また、建築基準法においても、国土交通大臣が承認する外国の「承認認定機関」に、外国の型式部材等製造業者の認定を行わせるスキームがあるが、JAS法と異なり、承認認定機関となるための要件として、我が国と同等制度を有する国に属する機関であることは必要とされていない。

なお、「JAS制度と同等制度を有する国」として指定されているのは、オーストラリア及びEU諸国のみとなっているが、IOASには、オーストラリア、ドイツ、イタリア等のほか、アメリカ、ニュージーランド、イスラエル、アルゼンチン、ボリビア、ブラジル等の機関が登録されている。

以上を踏まえ、所管省においては、輸入業者等がJAS制度と同等性を有する国として指定されていない国の機関についても登録外国認定機関として活用することを可能にし、登録外国認定機関の適正な運営・監督を確保するため、「JAS制度と同等制度を有する国」を要件としないこと、またその場合には、国際的に信頼性が確立している機関(例えばIOAS)に登録されている機関を活用すること等JAS法の改正について検討し、必要な措置を講ずるべきである。

2 工業関係等

2-(1) 家電リサイクル法に基づくリサイクル料金設定

1. 問題提起者:在日大韓民国大使館

2. 所管省庁:経済産業省、公正取引委員会

3. 問題の背景

(1) 平成13年4月1日に施行された特定家庭用機器再商品化法(家電リサイクル法)は、製造業者及び輸入業者が、特定家庭用機器廃棄物の再商品化等に必要な行為に関する料金(以下「リサイクル料金」という。)を、引取りを求めた者に対し請求することができると規定する。(第19条)

※「特定家庭用機器」としては、1)エアコン、2)ブラウン管式テレビ、3)電気冷蔵庫、4)電気洗濯機が政令で指定されている。

(2) 家電リサイクル法上、このリサイクル料金は、各製造業者等がそれぞれ独自に設定することが可能となっており(法第20条)、国は、各製造業者等が設定した料金が「適正な原価を著しく超えているとき」等の場合に、是正勧告・措置命令を行うことができるとされている(法第21条)。

(3) 例えば、電気冷蔵庫の場合、製造業者等が設定した料金は、4,600円〜5,600円となっている。(平成14年1月22日公表時点)

4. 問題提起内容

リサイクル料金は、エアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機の各品目毎に一律に決まっており、例えば、冷蔵庫の場合、製品のメーカーや大きさにかかわらず、日本の大手家電メーカーが設定した金額は一律4,600円である。

一方、韓国の家電メーカーは、主に小型の低価格製品を生産・販売しており、リサイクル料金として大型・小型を区分せず一律の料金が適用されることとなると、日本の製品に比べ付加価値の低い製品に同額のリサイクル処理コストがつき、これを消費者に転嫁する形となるため、これが結果的に韓国企業の価格競争力を弱めている。

また、1)例えば、韓国企業が独自に小型冷蔵庫について、日本企業よりも安い料金を設定しようとしても、一方で、日本の大手家電メーカーが共同で運営するリサイクル処理工場(以下「共同施設」という。)の処理料が上記日本の大手家電メーカーが一律に設定した料金を基に設定されているため、それを下回るリサイクル料金を設定することは事実上できない状況(注)となっており、また、2)本来、リサイクルに要する経費は小型の方が安いはずにもかかわらず、大小一律の料金設定となっていることは不合理なことから、日本政府は、当該リサイクル料金の設定については、民間レベルの問題とせず、むしろ、国(経済産業省)が、製品の大小を勘案した料金設定の基準を作成し、かかる不合理を是正すべきである。

(注)韓国をはじめとする外国家電メーカーは自ら日本国内でリサイクル処理工場を運営することが困難なことから、上記共同施設等に再商品化等の処理を委託せざるを得ない状況。

これに関し、経済産業省は、リサイクル料金は自由競争の原理によりメーカーが自主的に決めるものであり、制度的な介入は難しいと説明しているが、1)日本の大手家電メーカーが、本件対象の家電製品のリサイクル料金を一律横並びに設定しているのは、市場支配力を利用した一種の談合的料金設定に当たると思われ、自由競争に反すると判断される。2)このような料金設定行為は、省エネ型の小型家電製品を製造・販売している韓国メーカー等にとって、マーケットアクセスを妨げる要因として働いている。3)これは、結局、消費者販売価格に転嫁され、公害防止・省エネ・環境改善等家電リサイクル法の本来の目的を害する結果を招くおそれがあるものと思われる。

すなわち、製品の大きさを区分せずリサイクル料金を一律に設定することは、自由競争原理の阻害、家電リサイクル法の目的との乖離、消費者負担の拡大等の観点から問題があると思われ、家電リサイクル法第21条に従い、政府が積極的に介入し、指導・是正すべき事案であると考えられる。

したがって、リサイクル原価に応じてリサイクル対象品目(TV、冷蔵庫、エアコン、洗濯機)ごとに大小を区分して、リサイクル料金を設定するよう、日本国政府は指導・是正すべきである。

5. 検討結果

(1) 家電リサイクル制度は、平成13年4月1日に施行された新しい制度であり、施行後まだ1年を経ておらず、いわば制度の「立ち上げ」の時期である。

リサイクル・コストについても、法施行後の実績を踏まえたデータの蓄積は、未だ不十分であり、また、今後の製品の多様化や企業努力等状況の変化により、今後も変動がありうるものである。

また、リサイクル料金は、リサイクル・コストを適正に反映したものであり、かつ、その設定に当たっては、透明性が確保されたものであることが必要である。

以上を踏まえ、所管省においては、リサイクル料金の適正原価について情報の公開に努め透明性を確保すべきであり、また、これによりリサイクル料金が今後の製品の多様化や企業努力等の状況により生ずるリサイクル・コストの変化に見合うものとなるよう十分監視すべきである。

(2) リサイクル・システムの構築は、リサイクル市場を創出し、リサイクル市場において新たな取引機会を拡大するものである。

しかし、今回、問題提起者からは、リサイクル料金について、「市場支配力を利用した一種の談合的料金設定に当たる」との指摘がなされている。

問題提起者は、独占禁止法に違反するおそれがあると考える場合には、公正取引委員会に相談・指摘すべきである。

一方、公正取引委員会においては、事業者が共同して具体的なリサイクル料金の額を決定することや、新たなリサイクル・システムの構築が不当に制限されること等により、製品市場及びリサイクル市場における競争が制限されることのないよう注視すべきである。

3 運輸・交通関係

3-(1) 毒物及び劇物のタンクコンテナによる国内輸送容量に関する基準の見直し

1. 問題提起者:東京商工会議所、在日米国大使館

2. 所管省庁:厚生労働省

3. 問題の背景

無機シアン化合物たる毒物(液体状のものに限る。)及び弗化水素又はこれを含有する製剤を容器に収納して運搬する場合、その容器の内容積は、10,000リットル以下であることとされている(毒物及び劇物取締法施行令第40条の2)。

また、無機シアン化合物たる毒物(液体状のものに限る。)及び弗化水素又はこれを含有する製剤を容器に収納して運搬する場合、その容器の内容積が2,000リットル以上の場合には、その内部に防波板を設けることが義務付けられている(同法同条)。

4. 問題提起内容

(1)毒物及び劇物取締法施行令第40条の2では、無機シアン化合物たる毒物(液体状のものに限る。)及び弗化水素又はこれを含有する製剤を容器に収納して運搬する場合、その容器の内容積は、10,000リットル以下であることとされている。

一方、タンクコンテナによる毒物及び劇物の国際輸送では、容器に関する国際基準(IMDG CODEや欧州危険物輸送規則(ADR)等)においては容量規制がないため、10,000リットルを超える容量で輸送されていることが多々あり、これらの毒物及び劇物を日本に輸入する際に支障をきたしている。

ついては、日本国内においても欧米と同様、容器の容量規制なくタンクコンテナでの輸送が可能となるよう基準を改めるべきである。

(2)また、同法同条では、無機シアン化合物たる毒物(液体状のものに限る。)及び弗化水素又はこれを含有する製剤を容器に収納して運搬する場合、その容器の内容積が2,000リットル以上の場合には、その内部に防波板が設けることが義務付けられている。

しかし、容器に関する国際基準(IMDG CODEや欧州危険物輸送規則(ADR)等)においては、積載量が80%以上である場合には防波板が不要とされているため、防波板のない容器で日本に輸入する際に支障をきたしている。

ついては、日本国内においても、防波板の設置基準について国際基準との整合をとるべきである。

5. 検討結果

無機シアン化合物及び弗化水素等を輸送する際の、内容積及び防波板設置義務に関する規制は、国内輸送コストを上昇させ、輸入を阻害する原因となっている。所管省は、基準の見直しに向けた調査を速やかに終了させ、政令を改正することにより、輸送コストの低減化を図るべきである。

以上を踏まえ、所管省においては、毒物及び劇物をタンクコンテナにより運搬する際の基準について、以下の対応を取るべきである。

(1) 毒物及び劇物をタンクコンテナにより運搬する際の基準について、速やかに調査を終了させ、国内の基準が国際基準に整合するように見直しを行い、平成14年度の早期に政令改正を行うべきである。

(2) 政令の改正に当たっては、改正規定中に国際基準を引用するなど、国内の基準が、国際基準の変更に応じて、その整合性が維持されるような規定とすることを検討すべきである。

4 輸入手続関係

4-(1) Air-NACCSの料金体系の見直し

1. 問題提起者:在日米国商工会議所(ACCJ)

2. 所管省庁:財務省

3. 問題の背景

(1) NACCS(ナックス 通関情報処理システム:Nippon Automated Cargo Clearance System)は、貨物の輸出入通関手続及び関連民間業務(貨物の物流等)をコンピュータ・ネットワークにより迅速・確実に行うシステムで、海上貨物を扱うSea-NACCSと、航空貨物を扱うAir-NACCSの2種類からなり、財務省の認可法人である通関情報処理センターが運営している。

(2) NACCSは、通関情報処理センターと税関、通関業者、船会社・航空会社、銀行等が専用回線で繋がれており、その運営経費は税関及び民間利用者の利用料金で賄われており、これを利用しようとする者はセンターと利用契約を結び、センターが定める利用料金を支払う必要がある。

(3) NACCSは8年毎にシステムの更改を行っている。平成11年10月にSea-NACCSのシステム更改が、13年10月にはAir-NACCSのシステム更改が行われた。

4. 問題提起内容

今回、Air-NACCS更改に伴い料金体系が定額制から従量制に変更された結果、小口の多くの宅配便を扱う国際宅配便業者の費用負担が増加することになった。今回の変更に関しては、利用者に説明、情報提供が十分に行われずに形式的に手続が進められて変更された。したがって、Air-NACCSの料金体系については、多角的な視点から慎重に検討を行う中立的な機関を設置して、見直しを行うべきである。

NACCSの料金は、総経費を賄うように決められるため、コスト削減のインセンティヴが働きにくい。また、システム開発・運営が長年にわたり特定企業に固定されており、競争原理が働いているとはいえない。したがって、競争入札の活用や業務の外部化等により業務の効率化を図ることにより総経費を削減して、利用料金の低廉化を図るべきである。

NACCSの利用者は、NACCSを使用せざるを得ず、決められた料金を支払うことになる。通関情報処理センターは料金について説明責任を有しており、利用者等による不断の監視に資するためにも情報公開を進めて、料金に関する透明性を高めるべきである。

5. 検討結果

通関情報処理センターはNACCSを独占的に運営・管理している上に、総経費を賄うように利用料金が設定されるためコスト削減のインセンティヴが働きにくい。また、総経費の大半をシステムの開発・運営等の費用が占めており、特定企業が長年にわたりシステムの開発・運営を担当している。このような現状を踏まえれば、競争条件の整備を図る等、業務の効率化・適正化を進めて総経費を削減すべきである。

所管省によれば、センターは事前に意見の募集及び検討会の開催等利用者からの意見を踏まえてAir-NACCSの料金改定を行ったとしているが、問題提起者が指摘しているように十分納得できるような説明、情報提供が行われなかったことが今回の問題提起の一因である。センターは料金設定の考え方として、4年ごとに収支が均衡するように料金を設定し、5年目に全面的に見直し、経済動向等に合わせて弾力的に見直すとしているが、結果的に剰余金・引当金が多額に累積している点等を勘案すると、必ずしも見直しが弾力的に行われているとは言いがたい。また、今回のような料金体系の大幅な変更にあたって、4年ごとに収支が均衡するように料金を設定する中で3年間にわたる激変緩和措置を便法的に取らざるを得なかったのは準備不足と言われても仕方がない。したがって、料金体系について、総経費の削減方策、利用者における費用負担のあり方等多角的な視点から検討するため、中立的な検討の場を設ける等新たな料金体系の見直し方策を講じるべきである。その際には、規模の経済性を反映する等実際のコストに基づいた合理的な料金設定にすべきである。同時に、不断の監視に資するためにも利用料金に関する情報公開を一層推進し、透明性を高めるべきである。

また、利用者の利便性を高める観点等から、NACCS等輸出入関連手続に関して、各省庁のシステムを相互に接続、連携することによりワンストップサービスを推進することは重要であり、このことは「e−Japan」重点計画等電子政府を推進する上においても重要である。

以上を踏まえ、所管省においては、NACCSの料金体系に関し、以下の対応を取るべきである。

(1)NACCSについては、情報公開を一層進め、利用料金の透明性を高めるとともに、システム開発に係る競争入札の徹底、業務の外部化等について、平成14年度から速やかに講ずべき措置の具体化に取り組むことによって、業務の実施について更なる効率化・適正化を推進し、利用料金の一層の低廉化を実現するべきである。

(2)さらに、NACCSの利用料金のあり方については、総経費の削減方策、利用者における費用負担のあり方等多角的な視点から中立的な立場で審査等を行うため、有識者を含めた適切な場を速やかに設置する等新たな料金体系の見直し方策を講じるべきである。Air-NACCSについては、遅くとも激変緩和措置が終わる平成16年9月までに利用料金の体系を見直すべきである。その際には、規模の経済性に配慮しつつ合理的な料金設定のあり方について検討すべきである。

4 輸入手続関係

4-(1) Air-NACCSの料金体系の見直し

III.問題提起のあったその他の案件についての検討・対応状況(31案件)[PDF]PDF形式へのリンク