内閣府 > OTOトップ > 市場開放問題苦情処理推進会議報告書

市場開放問題についての意見-構造改革下における新たな政策要請への対応-

平成17年3月18日
市場開放問題苦情処理推進会議

本報告書は、「基準・認証制度等に係る市場開放問題への対応」(平成5年5月27日、市場開放問題苦情処理推進本部決定)等に基づき、外国人事業者等からの問題提起を受け、我が国の基準・認証制度等に関する問題の所在を明確化し、必要な対応を意見として取りまとめたものである。

市場開放問題苦情処理対策本部におかれては、速やかに本報告書を最大限尊重した対応を決定し、それに基づく措置をとられたい。

I.基本的考え方

II.意見(4案件)

1北米地域からの要望

1-(1)パブリック・コメント手続等の改善

1-(2)外国大学の日本校に対する税制優遇措置の適用

1-(3)大量所有自動車の登録に係る手続の見直し

2特に重要な論点を含む個別事情

2-(1)外国人経営者の在留資格基準の明確化(OTO番号671)

III.問題提起者意見及び所管省庁対処方針(全文)(PDFファイル)PDF形式へのリンク

1意見を付した案件(4案件)

2その他の案件(3案件)

1)情報機器に付属するACアダプターの扱いに関する規制見直し

2)電子レンジ用圧力鍋に対するPSCマーク取得のための検査方法の改善

3)電波を利用した自動車関連装置に関する規制緩和

I.基本的考え方

OTO推進会議は、構造改革を通じての経済の活性化や国際経済および社会環境の急速な変化への対応が求められていることなど、我が国の市場開放問題を取り巻く情勢に変化がみられるとの認識から、平成16年3月、我が国市場アクセスについてのより効率的かつ効果的な改善を目指し、「平成16年度以降のOTO活動について」を取りまとめた。本年度のOTOの「問題提起プロセス」においては、この新たな活動方針に基づき、北米地域からの要望ならびに重要な論点を含む個別苦情への対応を中心に検討を進めた。

1.一層の市場アクセス改善に向けて

本年度、OTOが問題提起として扱った件数は7件だが、その内、本「問題提起プロセス」で個別に検討を行った4案件(パブリック・コメント手続等の改善、外国大学の日本校に対する税制優遇措置の適用、大量所有自動車の登録に係る手続の見直し、外国人経営者の在留資格基準の明確化、以下検討案件という)は、いずれも国内で活動している外国企業から寄せられたものであり、国際的な見地からみたわが国行政の現下の課題の一端が指摘されたものであった。

OTOは発足当初より、様々な貿易摩擦に対応して諸外国からのわが国への市場アクセスを大きく改善することを通じて輸入を促進すること等に大きな役割を果たしてきた。しかし、輸出入手続や制度の透明性や明確性を図ること、各種規制や規格・基準の国際的整合化あるいは国際化を図ること、手続の効率化や制度の合理化を図ること、諸外国の新しい投資やサービスを積極的にわが国に取り込むこと等、急速な経済・社会のグローバル化や経済・社会の構造変化が大きく進行しつつある現在では、わが国の経済活動を活性化し生産性を向上させるためにも大きな役割を果たしている。

(1)制度等の制定に際しての透明性・明確性の一層の向上

本年度の検討を通じて、我が国における規制等の策定過程が、外国企業にとって未だ不透明なものと受け止められていることがあることが明らかとなった。このような認識を払拭するため、パブリック・コメント手続等、その制定過程の透明性と制定されたルールの明確性を確保するため、各省庁の裁量的な判断を極力排除するものとする必要がある。

また、運用面の措置のみを講じるような場合においても、その検討の過程や議論の公開を基本とすべきである。本年度の検討においても、各省庁が業界関係者等と内々の検討会を行うことに対して懸念が表明され、公平な第三者も含めた検討機関を設置すべきとの指摘が行われた。

さらに、行政側が意思決定を行った際にアカウンタビリティ(説明責任)を果たすことも、決定過程の透明性を担保する上で不可欠である。パブリック・コメントとして受け付けた意見の取り扱いや在留資格申請に対する決定など、個々の意思決定を行う際には、特に当事者はもとより関係者に与える影響の大きさを認識すべきである。

(コンプライアンス(法令遵守)の重視)

近年、我が国でも企業活動におけるコンプライアンスの重要性に対する認識が広がりつつあるが、本年度の検討を通じて、わが国の行政とコンプライアンスを極めて重視する外国企業との間に未だ認識の違いがあることが明らかとなった。今後、わが国の行政は、いわゆる裁量的な不透明性を極力排する方向を目指し、企業等がコンプライアンスの義務を果たせるような経済活動の環境を確保すべきである。

また、法令が古く実態に合わないものとなっている場合には、積極的に改正すべきである。

(2)手続の効率化や規制の合理化を図ること

外国企業の進出は、新たな技術や経営手法をもたらすことや新たな競争市場の創出等を通じてわが国経済の活性化に資する。関連企業の要望や指摘に基づき、手続の効率化や規制の合理化等行政サービスの改善を絶えず検討し続けることは、グローバルな競争環境下に置かれている我が国を一層魅力ある進出先とすることはもとより、わが国経済・産業の生産性や収益性の向上を図る上で極めて重要である。

規制等の策定過程において、外国企業の意見を適確に反映するための仕組みを整備することは、単に外国企業の活動に便宜を与える措置としてではなく、将来の市場開放問題の発生の可能性を予め防ぐものと位置付けるべきである。

(3)新しいサービスや投資を積極的に取り込むこと

本年度の検討案件は、新たなサービスの効率的な展開に向けて、行政サービスの改善を求めるもの、そのための環境整備を求めるものなど、いずれもわが国における新しいタイプの経済活動の展開に関係するものであった。経済・社会のグローバル化や高度化に伴い、今後、我が国の市場アクセス問題もサービス分野に属するものが中心になると考えられる。成長可能性の高いサービス部門における行政サービスの適切な対応や支援が、わが国の構造改革の進展と経済の活性化や持続的な発展、さらには国民福祉の向上に大きく関係していることを関係行政機関はしっかり認識すべきである。

(4)その他

今般の一連の検討においては、検討案件に対する各省の問題解決に向けた取組みを評価しつつも、時代や環境の変化もあり抜本的な解決が必要ではないか、との意見が少なからず出されたが、時代や環境変化や目的に照らして新しい参入者から要望が提出される場合には、既存の枠組みの見直しについて開かれた対応を行うべきである。その際、問題解決に対して常に時間軸を決めて解決策を検討し、問題解決のスピードアップを図ることが重要である。

2.OTO機能について

OTOは、「市場開放問題に関して寄せられた個別の苦情や問題提起について検討を行い、対応策を講じる」という機能を有している。 本年度の検討案件のうち3件は、過去何らかの形で米国から日本政府に対して要望が表明されており、今般、改めてOTOでの解決が要請されたものである。
また、外国人経営者からの問題提起(1件)は、OTO事務局に対する個別苦情として寄せられたものであった。OTO特有の機能を積極的に活用していくことの重要性については、昨年度の報告書でも指摘したが、OTOでなければ解決に向けて進まない問題があることも再認識されるべきである。

近年、事務局に寄せられる個別苦情は減少傾向にあるが、本問題提起プロセスを実施する過程で、苦情そのものがなくなったわけではなく、その苦情内容も時代に応じて変化していることも明らかとなっている。昨年度の報告書において、我々は、市場開放問題への取り組みは、「貿易・投資にともなう様々なコストの削減や国内市場における競争の高まりを通じて、我が国経済の活性化にも資するもの」との認識を示したところであるが、本年度の検討を通じて、OTOの活動が我が国の行政システムの変革の必要性と大きく関係していることが明らかとなった。OTOは、これまでも個別苦情や問題提起への対応を通じて市場開放を推進してきたが、今後は、既存の制度や枠組みの見直しにおいても、主導的役割を果たすべきである。

II 意見(4案件)

1 北米地域からの要望

1-(1)パブリック・コメント手続等の改善

○ 問題提起者:在日米国商工会議所(ACCJ)

○ 所管省庁:総務省

○ 問題提起内容

日本におけるパブリック・コメント手続の制度は、平成11年の閣議決定(「規制の設定又は改廃に係る意見提出手続」)に基づいて導入されているが、その後の実施状況は、行政への国民の参加や透明性及び説明責任の面で、同制度の有効性への疑念を抱かせるものとなっている。具体的には、コメントの募集期間が不適切、あるいは、提出した適切と思われるコメントが反映されず、その説明がない、といった事例がみられるほか、現行の手続が必ずしも全ての立法過程において可能になっていないことや、コメントの機会が法令の策定の非常に遅い段階で行われ、またその期間が極めて短い時間に限られていることなどが、同手続の潜在的な可能性と効果を損なうものとなっている。こうした状況は、パブリック・コメント手続を介して国民が行政に参加する機会を増やすに当たっての障害の一因であり、同時に、日本国内で事業を営む国際企業の活動に対する潜在的障害でもある。

また、規制の設定や改廃に先だって、審議会その他の勉強会において基本的な枠組みが議論されることがあるが、その検討の結果を行政機関が取り上げてパブリック・コメント手続に付した段階では、当該規制の内容が実質的に固まってしまっていることも多く、このことも同手続の可能性と効果を損なう一因となっている。

総務省は、パブリック・コメント手続の本来の可能性と効果を実現するため、以下の点について改善を図るよう具体的措置を講じるべきである。

(1)パブリック・コメント手続の法制化及び例外の制限

日本の行政機関が規制の設定や改廃を行う際には、原則として全てをパブリック・コメント手続に委ねなければならないとする手続上の要請について、行政手続法を改正して、かかる要請に制定法上の根拠を与えるべきである。また、法制化に当たっては、その原則に対する例外を明記して制限すべきである。

(2)パブリック・コメント手続の実効性の確保

現行の手続のもとで、提出されたコメントが反映されない場合の説明がない、あるいは、故意に実質的な意見募集期間を短くするなど、手続が適切に実施されていない事例がみられることから、1)措置の実効性を確保するため、各省の実施状況について調査を実施し、問題がみられる場合には、勧告を行うなどして改善を図るべき、2)各省に苦情等の受付窓口を設けるべき、3)意見募集期間の計算にあたっては、国民の祝日、4月30日、5月1日、5月2日、お盆休暇となる5営業日、及び12月28日から1月5日までの年末年始休暇を含めないこととすべきである。

(3)英文によるコメントの提出

日本国内で事業を営む国際企業が、日本国内における当該企業の権益に影響を及ぼす事項に関して意見を提出する機会を得るために、また、日本において業務を営む企業の国際化による利益を日本の政策担当者が享受するためにも、コメント提出の時間的制約及び日本経済の国際化に鑑みて、当初英文でパブリック・コメントを暫定的に提出(和文は適宜追って提出)することを認めるべきである。

(4) 審議会その他の勉強会における議論への参加機会の拡大

審議会その他の勉強会が規制の基本的な枠組みを議論する場となっていることがあるが、外国企業(企業団体)には、こうした議論に参加する機会が十分に与えられていない。このような場である審議会その他の勉強会については、1)広く一般からの意見を受け付ける機会を設けるとともに、2)外国企業団体が出席して意見を表明する機会を与えるべきである。

○ 問題の背景

(1) 制度の現状

パブリック・コメント手続とは、規制の設定又は改廃に際して、国民等の多様な意見等を行政機関が把握するとともに、その過程の公正の確保と透明性の向上を図ることを目的とするものであり、我が国では、平成9年9月の行政改革会議中間報告において「パブリック・コメント制度の導入を図るべき」とされたのをはじめとして検討が進み、平成11年3月に「規制の設定又は改廃に係る意見提出手続」が閣議決定され、これに基づく手続が同年4月1日から適用されている。

同手続では、規制の設定又は改廃に伴う政令、府省令、告示等を策定する過程において、行政機関が最終的な意思決定を行う前に、その案等を公表し、1か月程度を目安として意見・情報を募集すること、さらに、案等を公表した行政機関は、提出された意見・情報を考慮して意思決定を行うとともに、これに対する考え方を取りまとめ、提出された意見・情報と併せて公表することが求められている。なお、迅速性・緊急性を要するもの、軽微なもの等についてはこの手続によらなくてもよいものとされている。さらに、同閣議決定において、各省庁は手続の実施状況を総務省に報告し、総務省はこれを取りまとめて公表することとされており、実施状況の調査結果は平成11年度以降毎年度公表されている。

その後、平成16年3月に閣議決定された「規制改革・民間開放推進3か年計画」において、「行政手続法の見直し作業において、パブリック・コメント手続の法制化についても検討を行う」とされたことから、同年4月に総務大臣の下に行政手続法検討会が設置され、パブリック・コメント手続を含む行政立法手続の法制化についての検討が行われた。同年12月の同検討会報告の公表を経て、本年3月11日に行政手続法の改正法案が今国会に提出されたところである。法制化後の手続では、意見提出期間が「30日以上」とされるほか、これを下回る期間を定める場合にはその理由の公示を求めるなど、現行の手続よりも規定が明確になる見込みである。

なお、総務省(行政評価局)では、パブリック・コメント手続の法制化に向けた動きをも踏まえ、平成15年8月から平成16年12月にかけて実施した行政手続法の施行及び運用に関する行政評価・監視において、パブリック・コメント手続についても同評価・監視を実施し、その実施の徹底を図ること、法制化に当たっては、意見・情報の募集期間の在り方を含めて検討すること等を関係府省に対して勧告している。

このほか、我が国の政策形成過程の透明化に関しては、平成10年6月に制定された中央省庁等改革基本法第50条第2項において、「政府は、政策形成に民意を反映し、並びにその過程の公正性及び透明性を確保するため、重要な政策の立案に当たり、その趣旨、内容その他必要な事項を公表し、専門家、利害関係人その他広く国民の意見を求め、これを考慮してその決定を行う仕組みの活用及び整備を図るものとする。」ことが定められている。

また、審議会については、平成11年4月に「審議会等の整理合理化に関する基本的計画」(以下、「基本的計画」)が閣議決定され、この中で、審議会等は、「その調査審議に当たり、特に必要があると認めるときは、当該調査審議事項と密接に関連する利益を有する個人又は団体から意見を聴取する機会を設けるよう努める」とされている。

(2) 市場開放問題に占める位置付け

我が国におけるパブリック・コメント手続については、平成9年9月に行政改革会議中間報告が公表された当初より、米国は関心を示しており、二国間協議の場(「規制緩和及び競争政策に関する日米間の強化されたイニシアティブ(日米規制緩和対話)」)等において毎年、手続を制度として導入すべきとの要望を表明している。

平成11年3月に手続が導入された後は、手続が適切に実施されていない事例がみられるのは制度上の欠陥によるものとして、同手続の法制化やその他説明責任等に関する要望が、引き続き二国間協議の場(平成13年以降は「日米規制改革及び競争政策イニシアティブ」)等で毎年、表明されている。

審議会その他の勉強会についても、当初はパブリック・コメント手続とは別項目の要望として透明性・客観性の強化を要望していたものが、平成11年以降は同手続に関する要望の1項目として、審議会その他の勉強会においてパブリック・コメント手続またはこれに匹敵する手続の採用が要望されている。

パブリック・コメント手続の法制化の検討にあたり、平成16年7月に総務省が意見募集を行った際、問題提起者は、本問題提起と同趣旨の意見を総務省に対して提出しているほか、平成16年11月には意見書(「より有意義な透明性のあるパブリック・コメント手続への変更を」)を公表している。また、米国政府としても、本要望と同趣旨の要望を「総務省の「行政立法手続等の論点」に対する米国政府のコメント」(平成16年8月)等において表明している。

我が国におけるパブリック・コメント手続には、EUも関心を有しており、平成16年11月の日・EU規制改革対話において、現行の手続のもとで適切でない事例がみられたこと等から、手続の実効性への懸念が表明されている。

また、対日投資会議においても、平成15年3月の専門部会報告において「パブリック・コメント制度の手続の活用を一層促進する」こととされ、これに基づく対日投資プログラムが実施されているところである。

なお、OTOにおいて規制の制定や改廃の過程の透明性そのものを過去に扱ったことはないが、OTO推進会議では、平成15年度の検証作業に際して、英文による書類申請の是非に関し、「OTOにおける市場開放努力は、相互主義を超えて、我が国が自ら市場アクセスの改善に取り組むものであることを改めて強調した」ところである。

○ 検討結果

(1) パブリック・コメント手続の法制化および例外の制限

総務省は、行政手続法の改正案について、行政機関が国民の権利・義務に関することを定める場合は原則としてパブリック・コメント手続の対象となることが明らかにされるとともに、内容が軽微であるものや緊急性を要するものなど、一般に理解が得られるものは適用除外とされる見込み、としている。また、法制化後は、意見提出期間がより明確に規定されるようになる、とのことである。

法制化により、手続の実効性が一定程度高まることが期待される。

(2) パブリック・コメント手続の実効性の確保

総務省は、現行のパブリック・コメント手続が適切に実施されていない事例が散見されるとする問題提起者の主張について、手続が適切か否かの判断は各省庁の政策判断と密接に関わるものであるとする一方、現在でも実態調査を実施しており、外形的にみて手続が適切でないものについては数値を公表している、また、必要があれば内容を具体的に公表することも考えられる、としている。このほか、各省庁に苦情受付窓口を設けることについては、検討が必要であり、また、休日が多くなる可能性のある時期を意見募集期間の計算から除外することについては、一律に義務づけることは困難、としている。

問題提起者は、現行の手続のもとで適切でない事例がみられることから、手続の実効性を確保するための制度面の対応を求めている。現行の制度下では、各省庁の裁量的な判断の余地は大きく、意見募集期間の設定が恣意的と受け止められるような状況も認められるほか、実態調査は各省庁の自己申告に基づく一方的なものとなっている。また、手続に問題があると思われたときに、そのことを指摘する窓口がないとの問題提起者の主張は理解できるものである。

(3) 英文によるコメントの提出

総務省は、英文によるパブリック・コメントの暫定的な提出を認めることについて、一律に義務付けたり推奨したりすることは適当でないとする一方、各省庁における意見募集の英文化への取組み状況等も踏まえつつ、電子政府の総合窓口において英文による情報提供を行うことについては検討したい、としている。

我が国経済における外国企業等の重要性の高まり等に鑑みれば、その便宜を図るため、必要に応じて当初英文で暫定的に提出することを認め、追って翻訳された和文を提出させることは、国際情勢にも整合的な、妥当な対応と考える。。

(4) 審議会その他の勉強会における議論への参加機会の拡大

総務省は、審議会等が利害関係者に意見を聴取する機会を設けることについては、現行の「基本的計画」で規定している、としている。また、審議会その他の勉強会への外国企業等の参加機会の問題は、各省において判断すべき問題であり、「審議会等」に含まれない「懇談会等」については、そもそも制度化になじまないもの、としている。ただし、「懇談会等」についても「審議会等」に準じた情報公開を行うこととなっているとのことである。

我が国における「審議会等」や「懇談会等」での議論が、実質的に政策形成の場となっており、対外的にその不透明さが問題とされているのであれば、こうした場への外国企業等の参加機会を拡大させ、透明性を確保することは重要と考える。

以上を踏まえ、総務省は、パブリック・コメント手続等について、以下の対応を取るべきである。

(1) 引き続き手続の法制化の早期実現に向けた取り組みを進めるとともに、法制化後の手続の周知に努めるべきである。
(2)
1)手続が適切に実施されていない事例がみられるという問題提起者の主張を踏まえ、各省庁の実施状況について調査を実施するなどして現状を把握するとともに、改善を促すための対応を検討すべきである。その際、意見募集を行った規制に係る意思表示が募集期間終了後期間を置かずに行われ、提出された意見について適切な考慮がなされていないなどの運用が行われないよう、制度の徹底を図るべきである。また、2)手続の適否に対する照会や苦情相談を受け付ける各省庁の窓口を確認し、これを公表するとともに、同窓口において、説明責任が果たされることを確認すべきである。さらに、3)問題提起者の指摘を踏まえつつ、関係省庁に対して、個々の案件に応じて、年末年始等、休日が多くなる可能性のある時期には、必要に応じて意見提出期間を長く設定する等、少なくともコメントの抑制を図っているといった誤解を与えることがないように対応すべきことを、改めて周知すべきである。
(3)各省庁における意見募集の英文化への取組み状況等を踏まえつつ、電子政府の総合窓口における英文によるパブリック・コメント情報の提供のあり方について検討すべきである。また、外国企業等が利害関係者と認められる場合には、極力、速やかに和訳の提出がなされる条件の下での英文によるコメントの提出を認めるべきであることを周知すべきである。
(4)「審議会等」について、「基本的計画」に基づく適切な対応が行われていないとする問題提起者の主張を踏まえ、調査を実施し、実態を把握すべきである。また、「懇談会等」についても、問題提起者の主張を踏まえ、適切な情報公開が行われているか、調査を実施し、実態を把握すべきである。

1−(2) 外国大学の日本校に対する税制優遇措置の適用

○ 問題提起者等:テンプル大学ジャパン、在日米国商工会議所(ACCJ)

○ 所管省庁:文部科学省、財務省、総務省

○ 問題提起内容

外国大学の日本校が、日本の学校教育法上の大学として認められるためには、大学設置基準等に定める多くの条件を満たす必要があるが、その多くは、外国大学の日本校がその特徴を活かした運営を行うには、実情に則していないものである。このため、テンプル大学ジャパン(米国ペンシルヴァニア州立テンプル大学の日本校、学生の6割は日本人)は、日本において本校と同様の教育を提供するため、便宜上、有限会社の形態をとっている。

こうした外国大学の日本校について、文部科学省は、平成16年12月に、当該外国の学校教育制度において位置付けられており、文部科学大臣の指定を受けたものについては、その卒業生に日本の大学院への入学資格を認めるなど、我が国の教育制度における取扱いを明らかにするための制度改正を行った。これを受けて、関係省庁においては、これまで学校教育法上の大学の学生に対して認めていた国民年金保険料の支払い猶予等の各種措置について、こうした外国大学の日本校の学生にも認める方向で検討を進めている。しかしながら、学校教育法上の(私立)大学の設置主体である学校法人に対する法人税や寄附金、同大学の授業料にかかる消費税等に関して認められている税制上の各種優遇措置については引き続き、外国大学の日本校には認められない、とのことである。

日本の高等教育の競争力が先進国の中でも低迷している理由のひとつは、提供する教育の質にかかわらず、学校教育法上の大学のみが税制優遇され、競争力を養う機会を失ったことにある。高等教育における対日投資がいかに困難であるかは、80年代に進出した外国大学の日本校のほとんどが、優遇措置に守られた日本の大学との競争に敗れて撤退したという事実が示している。税制の優遇措置を外国大学の日本校にも適用し、日本の大学とのイコール・フッティングを実現させれば、高等教育分野における市場アクセスが容易になり、日本の高等教育機関の競争力を高めることにつながる。これにより、日本の教育を求める学生・研究者を世界中から集客することが可能となり、教育・経済・文化のすべてにポジティブな影響をもたらすことが期待される。

関係省庁は、外国大学の日本校に対して、学校教育法上の大学と同様に以下の税制優遇措置を認めるための方策を検討すべきである。

(1)法人に対する課税、寄附金に係る優遇措置

学校教育法上の大学の設置主体である学校法人に対する課税、寄附金に係る優遇措置は、公益的性格を有する学校法人の組織形態に対して与えられているとのことであるが、以下の観点から、文部科学大臣の指定を受けた外国大学の日本校についても、同様の優遇措置を認めるべきである。

1)外国大学の日本校が文部科学大臣の指定を受けるにあたっては、当該外国の学校教育制度において位置付けられた教育施設であることが要件とされるため、教育活動の公益性は当該外国の教育制度のもとで担保されていると考えられる。

2)文部科学大臣の指定を受けた外国大学の日本校が行う教育活動は、我が国の教育制度において一定の質の保証が確保されているものであり、公益性は担保されていると考えられる。

3)外国大学の日本校に関する制度改正は、多様な教育の選択肢を提供し、高等教育の一層の国際化に貢献し得ることを目的の一つとしていることに鑑み、外国大学の日本校と学校教育法上の大学の競争条件を同一にするよう、税制面からも支援することが必要。

(2)学生、教授等に対する課税に係る優遇措置

学校教育法上の大学については、授業料等への消費税非課税措置、勤労学生控除、租税条約に基づく教授等受け入れに関する所得税の免税措置が認められているとのことであるが、以下の観点から、文部科学大臣の指定を受けた外国大学の日本校についても、同様の優遇措置を認めるべきである。

1)外国大学の日本校に関する制度改正に伴い、学校教育法上の大学に認められていた各種優遇措置(税制を除く)が、文部科学大臣の指定を受けた外国大学の日本校に対しても認められるようになっていることから、課税上の取扱いのみが、外国大学の日本校に対して差別的に働いている。

2)外国大学の日本校に関する制度改正は、多様な教育の選択肢の提供を目的の一つとしていることに鑑み、学校教育法上の大学との間で学生の選択を歪めることがないよう、また、その学生や保護者に税負担の格差が生じることがないよう、税制面から支援することが必要。

3)外国大学の日本校に関する制度改正は、高等教育の一層の国際化に貢献し得ることを目的の一つとしており、教授等受け入れを積極的に行っている外国大学の日本校に対し、同受け入れを税制面から支援することが必要。

○ 問題の背景

(1)制度の現状

学校教育法第一条に規定される(私立)大学は、私立学校法に規定される学校法人のみが設置することができ、設置にあたっては文部科学大臣の認可が必要とされる。学校法人は、私立学校の設置を目的として設立される法人であり、資産の保有のほか、収益事業に関する制限等が設けられている。

大学の設置に際しては、専任教員数、収容定員、卒業単位、運動場、体育館など校舎等施設、校地面積、校舎面積などに関して、大学設置基準が定める諸条件を満たさなければならない。

これらの諸条件等を満たさない外国大学の日本校は、法令に基づかない教育施設として、卒業生の大学院への入学資格や、他大学との単位互換が認められないなど、我が国の教育制度との接続がないものであった。その一方で、外国の大学に留学する場合や、外国の大学が行う通信教育を我が国において履修する場合については、こうした接続は学修歴に応じて認められていた。

文部科学省は、高等教育のグローバル化が進展しているとの現状認識に基づき、平成15年7月から平成16年3月にかけて学識経験者等の協力を得て、「国際的な大学の質保証に関する調査研究」を実施した。その審議のまとめにおいて、外国大学の日本校について「我が国の教育制度と接続するための措置を構ずるよう検討すべき」とされたことから、中央教育審議会の答申を経て、平成16年12月、学校教育法施行規則等を改正し、外国大学の日本校のうち、当該外国の大学の課程を有するものとして当該外国の学校教育制度において位置付けられた教育施設であって、文部科学大臣の指定を受けたものについては、その卒業生に日本の大学院への入学資格を認めるほか、日本の大学との単位互換を認める等の措置を講じている。

学校教育法上の(私立)学校、ならびにその設置主体である学校法人に対する税制上の優遇措置としては、1)法人税、住民税、不動産取得税、固定資産税、事業所税、都市計画税の課税免除(もしくは軽減)のほか、2)寄附金の損金算入ならびに所得控除、3)授業料等への消費税非課税措置、勤労学生控除、租税条約に基づく教授等受け入れに関する所得税の免税措置、がある。1)および2)の措置は、公益的性格を有する学校法人という非営利法人に対するものであることが適用の基準とされており、3)は、学校教育法第一条に規定する学校(いわゆる一条校)に係るものであることが基準とされている。

(2)市場開放問題に占める位置付け

問題提起者であるテンプル大学ジャパンは、平成15年に、学校教育法上の大学を設置する上での諸条件の緩和を求める複数の構造改革特区提案を行っており、文部科学省では、体育館の必置規制など、その一部について弾力的対応を行う方針を打ち出している。さらに、テンプル大学ジャパンは、平成16年に、本問題提起と同趣旨の提案を含む外国大学の日本校の認定とそれに伴う各種措置を求める複数の特区提案を行っている。これらの提案については、米国政府としても支持する旨を「日米規制改革および競争政策イニシアティブに基づく日本国政府への米国政府要望書」(平成16年10月)において表明している。

米国政府はまた、「日米投資イニシアティブ報告書」(平成16年6月)において、日本における外国大学日本校の位置付けが税制の取り扱いに影響を与える可能性に大きな関心を有している旨、表明している。さらに、米国通商代表部「2004年外国貿易障壁報告書」(平成16年4月)においても、日本における教育分野の過剰な規制が外国大学の進出を阻害していること、ならびに外国大学の日本校の位置付けにかかる米国の関心等が記述されている。

なお、平成16年の全国規模の規制改革・民間開放要望においては、経営形態の異なる学校間の競争条件の同一化を実現するよう、株式会社立の学校に税制優遇措置の適用を求める要望が提出されている。構造改革特区においては、地域の特性とニーズに応じた多様な教育を提供することを目的として、株式会社等、学校法人以外による学校教育法第一条に規定する学校の設置を認めたところであるが、設置主体に対する優遇措置(上記(1)の1)および2))については認められていない。

(参考)
外国大学の日本校は、自治体の誘致等により、1980年代後半に急増し、その数は約40校に上ったといわれているが、90年半ばに入るとその大多数が撤退している。在日米国商工会議所(ACCJ)の「対日直接投資タスクフォース政策提言書」(平成16年3月)によれば、過去に日本に進出した外国大学の中で現在も存続しているのはわずか3校で、その中でも完全な学位授与プログラムを提供しているのは1校(テンプル大学ジャパン)のみであるとされている。

○ 検討結果

法人に対する課税、寄附金に係る優遇措置に関し、財務省ならびに総務省は、テンプル大学ジャパンの運営主体は有限会社(営利法人)であり、公益性が制度上担保されていないため、同運営主体を学校法人と同等に取り扱うことはできない、としている。

また、学生、教授等に対する課税に係る優遇措置に関し、財務省は、優遇措置を適用する範囲を限定するためには、何らかの客観的な基準が必要であり、学校教育法上の学校であることをその基準として引用している、としている。

さらに、財務省は、税制は国家財政の裏づけとなる財源調達手段であり、輸入や対日投資の障壁となっている具体的政府規制等には該当しない内外無差別の仕組みである、とした上で、税制は中立を旨としており、個別の行政分野において、その中立性を排除して特別に優遇する必要があるかどうかを第一義的に判断するのは当該所管の省である、としている。また、有限会社を法人税法上、学校法人などの「公益法人等」に区分することはできず、外国大学の日本校が有限会社の形態を取らざるを得ない事情があるとしても、それは税制の問題ではない、としている。

また、総務省も、税制は規制等には該当しない内外無差別の仕組みである、とした上で、外国大学の日本校の教育内容の公益性と、法人の組織形態や監督内容を考慮して判断されるべき税制上の公益性とは別問題であるとして、政策目的のために何らかの特例措置を講じる必要があるのであれば、所管の文部科学省からしかるべき制度上の整理を行ったうえ税制改正要望をまず出すべき、としている。

他方、文部科学省は、外国大学日本校であっても、我が国の学校教育法に基づく大学として設置認可を受ける道は開かれているとしている。また、今回新たに制度化した外国大学の日本校の指定は、その教育内容について当該外国の本校と同等の質が確保されているとの判断を行っているものであり、運営主体や教育活動の公益性に係る判断を行ったものではない、さらに、外国大学の日本校であっても、設置基準等が比較的緩やかな専修学校として認可を得て、税制上の優遇措置を受けている例があり、テンプル大学ジャパンについても可能性があるのではないか、としている。しかしながら、問題提起者であるテンプル大学ジャパンによれば、同校が所在する東京都の認可を得ることは極めて困難、とのことである。

国境を越えた高等教育の提供が世界的に拡大する中で、外国の大学が進出しやすい環境を整備することは、我が国の高等教育の国際競争力を高める上で、重要な課題となっている。問題提起者であるテンプル大学ジャパンは、米国本校と同一内容の教育を提供しており、我が国の学校教育法上の大学にも決して引けを取らない実績をあげているとみられるところ、同校およびその学生が、等しく税制上の優遇措置を受けることについて、検討すべきである。なお、税制は、国際的な経済戦略としても活用される側面があり、規制等に該当しないと言い切るべきではない。規制等は、内外無差別であったとしても、市場開放問題となり得るものである。

文部科学省が、外国大学の日本校について新たな指定制度を設けたことは、高等教育の国際的な展開に対応するものとして、評価されるべきである。しかしながら、同指定制度は、指定された外国大学の日本校に新たな法人格を与えるものではなく、現行の税制下において、何ら税制優遇措置を与えるものとはなっていない。同指定制度に関する税法上の問題について、財務省ならびに総務省としては、文部科学省が政策的な位置付けを検討した上で税制改正の要望があった場合には、税制全体のバランスや財源との関係を考慮して検討する、としている。検討に際しては、仕組みをきちんと作るということが前提となるため、残余財産や利潤の分配ができるような形のままでは困難であることを踏まえ、文部科学省から仕組み方を聞いた上で判断する、とのことである。

以上を踏まえ、文部科学省は、外国大学の日本校に対する税制優遇措置について、以下の対応を取るべきである。

文部科学大臣の指定を受けた外国大学の日本校が、日本の大学に準じた税制優遇措置を受けることについて、現行制度との関係を整理しつつ、新たな仕組みの創設の必要性を含め、速やかに検討し、結論を得るべきである。

1−(3)大量所有自動車の登録に係る手続の見直し

○ 問題提起者:在日米国商工会議所

○ 所管省庁:国土交通省

○ 問題提起内容

自動車リース会社は、借主の希望などに基づいて自動車を購入して所有する一方、借主を使用者として登録し、有償で貸渡す事業を行っており、借主は比較的廉価なリース料を支払うのみで、購入した場合と同様に自動車を使用できることとなっている。

日本における自動車リースのビジネスは、近年急速に成長しており、リース車両も1980年の18万台から2003年には267万台へと劇的に増加 している。こうした中で、リース会社は事業の再編等による社名や住所の変更、事業資産の譲渡又は他の会社による買収もしくは他の会社との合併による所有権移転などの機会に直面することも多い。

道路運送車両法(以下、「法」という)は、自動車の所有者の名称や住所に係る変更登録ならびに所有権の移転登録(以下、「変更登録等」という)について、15日以内に申請を行うことを義務付ける一方、これらが自動車検査証の記載事項でもあることから、自動車検査証記載事項の変更申請と同時に行うことを義務付けている。

しかしながら、大量の自動車(会社によっては10万台超)を所有しているリース会社にとって、15日以内に、申請手続が必要となる全ての借主に対して自動車検査証原本の引渡しを求め、申請を行うことは、法が自動車の運行時に自動車検査証原本の備え付けを義務付けていることとも相俟って、事実上不可能であるとともに、極めて多大な負担となっている。

かかる法の要請は、自動車リース会社が、事業の再編等を通じて生産性の向上を図る上での障害となっており、この業界に参入している外国企業の活動や、この業界への対日直接投資の妨げとなっている。諸外国においては、自動車の所有者に関する事項の変更登録等の申請に際して自動車の運行を妨げることがないように制度が整えられており、日本においてもそのような制度とすることは可能なはずである。

国土交通省は、リース会社等、使用者が異なる自動車を大量に所有する者が、自らに関する事項の変更登録等の申請を行う際に、法の要請を遵守できるよう、また現在課されている多大な負担が軽減されるよう、使用者による自動車検査証記載事項の変更申請とは別途に行うことを可能にするための、何らかの方策を講じるべきである。

○ 問題の背景

(1)制度の現状

業として自動車を有償で貸渡すには、道路運送法の規定(第80条第2項)により、国土交通大臣の許可を得ることが必要とされており、借受人を自動車の使用者とする自動車リースの許可申請については、同法施行規則第51条に必要な事項が定められている(貸渡人を使用者とするレンタカーについては同法施行規則第52条)。なお、契約に基づいて自動車の所有者と使用者が異なるケースとしては、このほかに、ローンを利用して自動車を購入する際に所有権が信販会社等に留保される場合などがある。

1)自動車の登録

道路運送車両法は、自動車の運行にあたっては、これを自動車登録ファイルに登録することを義務付けている(第4条)。登録には、「所有権の公証」という民事登録と「自動車の所有実態の把握」という行政登録の2つの目的があるとされる。所有権を公証し、第三者対抗要件を与える(第5条)ことにより、ユーザーの所有権を保護し、自動車の法的安定性を確保するとともに、これをベースに、自動車の流通の安定と円滑化が図られている。また、登録に際して自動車登録番号票(ナンバープレート)を交付し、自動車の識別を可能にする(第11条)とともに、保有実態の行政的な把握が行われている。

自動車の所有者の名称や住所が変更された場合(変更登録)(第12条)や、自動車の所有権が移転された場合(移転登録)(第13条)には、(新)所有者は15日以内に申請することが義務付けられている。登録事項その他の自動車登録ファイルに登録されている事項については、何人もこれを証明した書面(登録事項等証明書)の交付を国土交通大臣に対して請求することができるとされている(第22条)。

2)自動車の検査

自動車の使用者は、自動車の検査を受け(第59条、第62条)、保安基準への適合性が認められて国土交通大臣より交付(返付)された自動車検査証を運行時に備え付けなければならない(第66条)とされている。また、自動車検査証記載事項に変更があった場合には、15日以内に当該変更について記入を受けなければならないとされている(第67条)。

3)自動車検査証

所有者の名称や住所は、自動車検査証記載事項とされており(法施行規則第35条の3)、変更登録ならびに移転登録に際して自動車検査証の記入の申請をすべきときは、これらの申請は、同時にしなければならない、とされている(第12条、第13条)。

なお、国土交通省のホームページでは、「自動車検査証は、土地や建物の「権利証」に相当する」とされているほか、自動車検査証記載事項は、所有権を公証するための「登録事項」(所有者の名称や住所等)と、自動車の諸元(大きさ、重量、排気量等)、構造・装置を定期的に確認するための「検査事項」及び「その他の事項」に大別される、としている。

(2)市場開放問題に占める位置付け

問題提起者である在日米国商工会議所は、平成16年9月に本要望と同内容の意見書(「大量所有自動車の登録に関する道路運送車両法改正について」)を公表している。

米国政府としても、「日米規制改革および競争政策イニシアティブに基づく日本国政府への米国政府要望書」(平成16年10月)において、同様の要望を表明している。

また、国内のリース会社・団体からも同様の要望が表明されている。(オリックス株式会社、社団法人リース事業協会「変更登録及び移転登録に係る特例措置の創設について」(規制改革・民間開放推進会議への規制改革要望(平成16年6月受付分))、「2004年度日本経団連規制改革要望」(平成16年11月))。

(参考)
我が国におけるリース車両台数は、1980年に18万3,638台(0.49%)であったものが、1990年に118万9,369台(2.15%)、2003年には267万1,997台(3.56%)と、近年急増している(括弧内は総保有台数に占める比率)。

○検討結果

国土交通省は、問題提起者主張のように、所有者に関する事項(氏名又は名称及び住所)の変更に際して、変更登録等の手続と車検証記載事項の変更手続とを別途に行うことを認めた場合、車検証を通して所有者に関する事項が把握できないことになり、中古自動車の取引や街頭検査等の取締りに支障を生じる、としている。この点については、自動車販売業の全国団体等から意見書が出されている、とのことである。また、自動車リース業者にだけ法令上の特例を認めることは、公平性の観点から問題がある、としている。その一方で、本問題提起の内容は、自動車リース業界全体が抱える問題でもあることから、昨年12月に業界代表者との検討会を立ち上げ、運用面で対応することを検討しているところ、とのことである。

これに対し、問題提起者は、登録手続を車検証記載事項の変更手続と別途に行うことを認めたとしても、中古自動車の取引や街頭検査等の取締りに与える影響は大きいものではなく、むしろ、現実に生じている登録手続の遅延が解消されることになるため、望ましいことではないか、としている。また、公平性の問題については、本問題提起は現行の登録手続が自動車リース業界に課している多大な負担の軽減を求めているに過ぎないのであって、便益を求めているものではない、としている。さらに、運用面の対応では本問題提起の本質的な問題を解決することには限界があると考えており、制度改正を求めたい、とのことである。

自動車リースの事業は近年、急成長を遂げている。現行手続がこうした業態を想定していなかったために生じている問題であることは明らかであり、何らかの対応が必要と考えられる。運用面での早急な対応が期待される一方、法律が守りづらい状況が続いていることは、この機会に改めるべきである。検討にあたっては、利害関係者のみならず、公平な第三者も含めた検討機関を設置することとし、検討の期限を定めておくことが肝要である。

以上を踏まえ、国土交通省は、大量所有自動車の登録に係る手続について、以下の対応を取るべきである。

自動車リース会社の負担を軽減するための当面の措置について、運用面でできる対応を平成17年度中に検討し、早急に結論を得るべきである。

また、何らかの制度面の措置を講じることについて、法令改正も含めて検討し、速やかに結論を得るべきである。検討にあたっては、有識者や利害関係者等からなる検討機関を、期限を明らかにして設置すべきである。

2 特に重要な論点を含む個別苦情

2−(1) 外国人経営者の在留資格基準の明確化

○ 問題提起者:外国人経営者

○ 所管省庁:法務省

○ 問題提起内容

外国人が日本で経営活動を行うためには、在留資格「投資・経営」を取得する必要があり、平成10年以降、同在留資格に基づいて事業活動を行っている。しかしながら、平成15年に、活動内容に大きな変更がないにもかかわらず、更新申請が不許可処分になるということがあった。その後、平成16年にも「投資・経営」への在留資格の変更申請が不許可処分とされたが、入国管理局からその理由について、当初は「経営不振、赤字」、次に「事業所の賃貸契約の名義が本人でないこと」、との異なる説明を受けた。こうした事例の背景には、「投資・経営」の在留資格の審査の基準が不明瞭で、各入国管理局において裁量的な審査が行われていることがある。また、審査の基準や結果に関する説明が不十分であるため、申請者の対応を困難にしている。

法務省は、今般の事例に基づき、「投資・経営」の在留資格の審査に関して、以下の点について改善を図るよう具体的措置を講じるべきである。

(1)事業の継続性に係る基準の見直し・明確化

「投資・経営」の在留資格の認定には、当該事業が継続して行われることが必要であり、赤字が継続していることは事業の継続性を考える上で疑問を生じせしめるもの、とされているが、今般の事例のように、当該事業が助成金や民間融資を得ているなど、将来性があることが客観的な事実から確認できるほか、融資の返済にも滞りがなく、また、赤字が研究開発投資の結果生じた一時的なものであるような場合には、事業の継続性は、こうした事情も加味して総合的に判断されるべきである。また、事業の継続性の要件は、法律や省令等から直ちに明らかとなっているものではなく、その考え方も必ずしも一般には浸透していないところ、具体的な解説を公表すべきである。

(2)事業所の確保に係る基準の見直し・明確化

「投資・経営」の在留資格に関して法務省令で定める基準の一つに「事業所として使用する施設が本邦に確保されていること」がある。この基準は、事業所が賃貸の場合には会社名義あるいは代表者名義で賃貸借契約が行われていることを原則として求めているもの、とされているが、こうした解釈について、申請者に対する事前の周知は必ずしも十分ではないところ、同基準の具体的な解説を公表すべきである。また、日本では現在、最低資本金規制の見直しが行われるなど、ベンチャー企業の創業を支援する政策をとっているところ、今般の事例のように、当該事業の内容がIT関連のベンチャーであるなど住居で起業することに合理性があり、また、事業を行うための設備を有することが確認される場合には、住居を兼ねていたとしても事業所が確保されているものと認めるべきである。そもそも今般の事例では、平成10年以降の事業活動において、事業所が住居を兼ねたものであったことに何ら問題は生じておらず、平成15年までは同事業所での事業活動に基づいて在留資格「投資・経営」が認められていたものである。

(3)不許可理由の明示

今般の事例では、不許可処分の通知書に理由が具体的に示されていない上、入国管理局における説明が一貫しなかったため、申請者の側で不許可処分の理由を把握することができず、対応が困難になるということがあった。こうした事態を回避するため、通知書には不許可の理由をより具体的に明示し、申請者本人が理解できるものとすべきである。

(4)OTO対策本部決定の実施の徹底

「投資・経営」の在留資格に関して法務省令で定める基準の一つに「二人以上の本邦に居住する者で常勤の職員が従事して営まれる規模のものであること」がある。この基準に関して、OTO対策本部としては、平成12年3月に「必ずしも現地人2人の雇用がなくとも「その程度の規模」の投資があれば、…上陸を許可するよう早急に各地方の入国管理局にその趣旨を徹底する」こと、ならびに「2人を雇用しない場合の合理的な審査上のガイドラインを平成12年中に作成する」ことを決定し、法務省では平成12年12月に「その程度の規模」を具体的な金額で示したガイドラインを作成している。しかしながら、今般の事例では、平成15年の不許可処分に際して、入国管理局は当該基準に関して常勤職員数の確認のみを行い、投資額の確認を行わなかった。また、入国管理局が申請 者に配布している「申請に必要な書類等一覧」でも、常勤職員数に関する資料は掲げられているが、投資額の確認に必要な資料は掲げられていない。平成12年3月に対策本部決定された事項の実施を徹底するため、各入国管理局に対して上記のガイドラインの内容を改めて周知するとともに、申請者に求める書類等についても、これに併せて見直しを行うべきである。

○ 問題の背景

(1)制度の現状

我が国に在留しようとする外国人は、「出入国管理及び難民認定法」(以下、「法」という)において、法の別表に掲げる在留資格のいずれかに該当する活動を行うこと(在留資格該当性)が求められている。法務省によれば、在留資格該当性を満たすためには、本邦在留中に在留資格に該当する活動を継続して確実に行うことができるものであることが客観的に認められる必要があり、在留資格「投資・経営」については、当該事業が継続して行われることが重要な要素になるとのことである。

また、在留資格「投資・経営」について、法は、外国人が法務省令で定める上陸許可基準に適合すること(上陸許可基準適合性)を求めており、具体的には、1)「当該事業を営むための事業所として使用する施設が本邦に確保されていること」、2)「当該事業が…二人以上の本邦に居住する者で常勤の職員が従事して営まれる規模のものであること」、のいずれにも該当することが必要とされている。

このうち、2)の基準については、本来、現地人2人を雇用する「程度の規模」を要求するものであるとの趣旨が徹底されておらず、また、規模を判断するためのメルクマールが存在しなかったことなどから、平成12年3月のOTO対策本部決定を経て、平成12年12月25日に「新規事業を開始しようとする場合の投資額が年間500万円以上であること。」とのガイドラインが作成され、各入国管理局長等宛てに通達が行われている。また同日、その運用において「投資されている額が500万円以上であり、かつ、500万円以上の投資額が継続して維持されることが確認される場合において、基準省令にいう「二人以上の本邦に居住する者で常勤の職員が従事して営まれる規模のものであること。」に適合するものとして取扱うこと」が、同じく各入国管理局長等宛てに通知されている。

なお、法の施行規則において、「投資・経営」の在留資格で本邦に上陸しようとする外国人、および同資格への在留資格の変更を申請しようとする外国人は、「事業計画書、商業・法人登記簿謄本及び損益計算書の写し」、「常勤の職員の総数を明らかにする資料、並びに、その数が二人である場合には、当該二人の職員に係る賃金支払いに関する文書及び住民票又は外国人登録証明書の写し」、「事業所の概要を明らかにする資料」及びその他参考となるべき資料を提出しなければならないこととされている。

(2)市場開放問題に占める位置付け

1)過去のOTOでの審議の経緯等

我が国の在留資格の審査等に関しては、OTOではこれまでに個別苦情として7件、外国人事業者等による問題提起として4件を取り上げており、そのつど基準の明確化等に努めてきた。特に、問題提起案件4件のうち3件についてはOTO推進会議として意見を取りまとめ、OTO対策本部ではこれを受けて審査の基準の明確化等の対応を決定している。

平成7年度の問題提起プロセスでは、外国の企業が在日の同国人を代表者として日本に事務所を開設しようとした際に、当該外国人の在留資格の変更が認められなかったとの事例に基づき、規定の解釈等を明確に示すとともに、当該外国人に在留資格を付与する方向で改善策を講ずることとした。

平成8年度の問題提起プロセスでは、在留資格「投資・経営」の審査の基準が通知されなかったとの事例に基づき、従業員数、事務所の大きさといった形式的な基準によるだけでなく、経営の実態をみて健全な運営が立証される場合には在留資格変更許可を柔軟に認めるように運用を見直すこととした。

平成11年度の問題提起プロセスでは、在留資格「投資・経営」の上陸許可基準が現地人2人の雇用義務を課しているとして同基準の削除を求める問題提起がなされたことを契機に、前述のとおり、同基準の本来の趣旨を徹底するとともに規模に関するガイドラインを作成することとした。

2)OTO以外の枠組みにおける検討状況

在留資格「投資・経営」の許可基準の一つである投資規模については、ガイドラインの作成後も解釈上疑義が寄せられたことがあったことなどから、平成15年12月の総合規制改革会議の第3次答申では「在留資格要件(「投資・経営」「人文知識・国際業務」等)の具体的事例等を解説し公表するなど、制度の周知徹底を図るべき」との意見が取りまとめられた。これを受けて、法務省は平成16年6月、「500万円以上の投資が行われている場合には…常勤の職員を2名以上雇用していなくても差し支えない」、「500万円以上の投資額は、毎年500万円の投資を行うことが必要であるわけではなく…回収されることなく維持されていれば差し支え[ない]」、などの解説をホームページ上で公表している。

また、規制改革・民間開放推進会議においても、平成16年10月の国際経済連携ワーキンググループにおいて、「500万円以上の投資額」の具体的な基準及び例についての確認を行っているほか、本年度末に予定されている「規制改革・民間開放推進3か年計画(改定)」の閣議決定に向けて、「投資・経営」の在留資格要件の緩和、見直しや、在留資格認定証明書の不交付理由の詳細な明示等についての検討が行われている。

このほか、対日投資会議においても、平成16年4月22日の第29回対日投資会議専門部会において、在留資格「投資・経営」の認定要件をめぐる問題が、外国人が会社設立に際し直面する諸問題のひとつとして取り上げられている。

(参考)
就労を目的とする在留資格(外交、公用及び興行を除く)による外国人の登録者数は、平成11年末には93,429人であったものが、平成15年末には120,914人となっている。このうち、在留資格「投資・経営」による登録者数はそれぞれ5,440人(5.8%)、6,135人(5.1%)となっている(括弧内は全体に占める比率)。(なお、在留資格「企業内転勤」による登録者数はそれぞれ、7,377人(7.9%)、10,605人(8.8%)。)

○ 検討結果

(1)事業の継続性に係る基準の見直し・明確化

法務省は、赤字の連続は投資・経営活動の継続性に疑義をもたらすものであるとする一方、単に赤字が継続していることのみをもって不許可とするものではなく、各種事情を考慮して判断している、としている。これに対し、問題提起者は、過去の赤字の連続は製品開発にともなう一時的なもので、現在は黒字に転化している、また、事業の継続性に関する要件が公表されていないため対応が困難、としている。

事業の継続性に係る基準については、その考え方や判断基準が申請者に十分周知されていないと思われる。また、本件問題提起者の事例をみると、事業の継続性を判断するにあたり、取引や融資の現状、事業の将来性等が十分考慮されているか、という点については疑問が残る。

(2)事業所の確保に係る基準の見直し・明確化

法務省は、本件事例について、本社の使用目的は住居であり、かつ賃貸借の契約も従業員名義であるとして、本邦における事業所の確保を求める上陸審査基準を満たしていない、としている。これに対し、問題提起者は、賃貸人の許可を得た上で住居を事業所として使用している、また、事業所の確保に際して名義が重要であることは公表されていないため対応が困難、としている。

事業所の確保に係る基準については、事業所が賃貸である場合には会社あるいは代表者名義の契約であることが原則とのことであるが、実態がむしろ重要との考え方もあり得る。また、本件事例のように、IT関連のベンチャーなどでは住居での起業が合理的と考えられる場合もある。

(3)不許可理由の明示

法務省は、申請人側から理由説明を求められた際には、不許可通知書に記載されていない事由も併せて口頭で説明を行っている、としている。しかしながら、問題提起者によれば、通知書に示された不許可理由が具体的でない上、口頭の説明では、当初は赤字のみが理由とされ、後に事業所の賃貸契約上の名義が理由とされた、とのことである。

本件事例において、不許可理由の把握が困難であったとされる点に関しては、申請者の便宜等を考慮して対応すべきもの、と考える。

(4)OTO対策本部決定の実施の徹底

問題提起者は、従業員数を目安とする事業規模の要件に関して、相当の投資額があれば右要件は満たされることについて、入国管理局からの説明はなかった、としている。

本件事例により、平成12年3月のOTO対策本部決定を受けて作成された投資規模に関するガイドラインの趣旨が、未だ各入国管理局に徹底されていないことが明らかとなった。また、入国管理局の指示書類にガイドラインの内容が反映されていない状況も認められた。ガイドラインについては、各入国管理局に対して通達がなされているにもかかわらず、これが無視されている状況にあることは、誠に遺憾である。なお、平成9年3月のOTO対策本部決定において、「投資・経営」の在留資格については、経営の実態を見て柔軟に認めるように運用を見直すこととしたが、これが裁量行政に力を与えるものであったすれば、不適当であったと省みざるを得ない。

以上を踏まえ、法務省は、外国人経営者の在留資格基準について、以下の対応を取るべきである。

(1) 「投資・経営」活動を行う上で当該事業の継続性が必要とされることについて、その具体的事例等を解説し、公表すべきである。
(2)
1)事業の継続性は総合的に判断すべきものである旨を各入国管理局に対して改めて周知徹底すべきである。また、2)法務省令で定める事業所の確保の基準について、どのような場合に事業所が確保されていると判断されるか、具体的事例等を解説し、公表すべきである。さらに、3)住居を兼ねていても事業所の確保を認める場合については、審査上のガイドラインを作成すべきである。
(3) 不許可(または不交付)処分にあたっては、より詳細な理由を通知書に記載することとすべきである。
(4)
1)再度各入国管理局に対して、平成12年3月のOTO対策本部決定を受けて作成された投資規模に関するガイドラインの趣旨を徹底するとともに、裁量行政を極力排除すべきである。さらに、同趣旨を徹底させるため、2)在留資格「投資・経営」の申請に際して提出を求める資料に、投資額を確認するための書類を含めるよう、速やかに施行規則の改正を行うべきである。