内閣府 > OTOトップ > 平成17年度市場開放問題苦情処理推進会議報告書(第9回)

市場開放問題についての意見 -構造改革下における新たな政策要請への対応-

平成18年3月17日
市場開放問題苦情処理推進会議

本報告書は、「基準・認証制度等に係る市場開放問題への対応」(平成5年5月27日、市場開放問題苦情処理推進本部決定)等に基づき、我が国の市場開放問題について、必要な対応を意見として取りまとめたものである。

市場開放問題苦情処理対策本部におかれては、速やかに本報告書を最大限尊重した対応を決定し、それに基づく措置をとられたい。

I.平成17年度におけるOTOの活動について

OTO推進会議は、構造改革を通じての経済の活性化や国際経済および社会環境の急速な変化への対応が求められていることなど、我が国の市場開放問題を取り巻く情勢に変化がみられるとの認識から、平成16年3月、我が国市場アクセスについてのより効率的かつ効果的な改善を目指し、「平成16年度以降のOTO活動について」を取りまとめた。

本年度のOTOの「問題提起プロセス」においては、この新たな活動方針に基づき、EUを中心(北米案件も含む)に要望を受け付け、提起のあった問題のうち重要なものについて検討を進めた。

本年度、OTOが問題提起として扱った件数は4件であり、そのうち本年度問題提起プロセスで個別に検討を行った案件は、1案件(消費者にとってより判り易いサプリメントに係る情報提供の推進)である。

これらの件数はいずれも、平成5年に問題提起プロセスを開始して以来最低であり、個別苦情の件数の低下と併せ、OTOの在り方について見直すべき時期に来ていることを示唆していると思われる。

したがって、当会議としては本年度の活動として、問題提起プロセスを実施するとともに、OTOの在り方についても議論を行った。

II 意見

1 平成17年度問題提起プロセス提起案件

消費者にとってより判り易いサプリメントに係る情報提供の推進

○問題提起者:在日米国商工会議所(ACCJ)、在日米国大使館

○所管省庁:厚生労働省

○問題提起内容

健康に対する関心の高まり等を背景に、国民の多くが自らの健康維持のため、いわゆる「健康食品」(保健機能食品でないサプリメントなど)を摂取していると言われている。しかしながら、現在、サプリメントについては、商品に関する情報提供が十分にできない状況にある。例えば、サプリメントの容器包装等には、栄養成分を表示できるものの、栄養成分の生理機能等に関する情報を表示することは出来ない。その結果、消費者がサプリメントの有効性等を知る機会が阻害されており、また、曖昧な商品広告が用いられる等により情報が氾濫する中、消費者は何を指針として商品を選択して良いのか判断できない状況となっている。

基本的には、サプリメントの機能特性を商品に表示することが消費者にとって最も望ましいと考えるが、最低限の措置として、サプリメントの素材(成分)に係る情報を消費者に判り易く提供するための方策を講じるべきである。

具体的には、独立行政法人国立健康・栄養研究所(以下「国立健康・栄養研究所」という。)が厚生労働省の協力を得てホームページ上に設けている「「健康食品」の安全性・有効性情報」にある「「健康食品」の素材情報データベース」(以下「データベース」という。)を情報源として活用し、食品・食品成分に関する客観・中立的な情報を消費者に判り易いかたちで事業者側から提供することを提案する。なお、提供する情報の内容の是非については、国立健康・栄養研究所等の確認を受けるとともに、情報提供にあたっては、薬局・販売店、通信販売等で商品購入の際に、その場で消費者が入手可能な方法によるものとする。

現在、データベースに係る情報提供の方法はインターネットに限られており、厚生労働省としては、パンフレット等の作成を通じてデータベースの普及を図っているほか、「健康食品」の利用について正しく情報提供できる身近な助言者として、管理栄養士・薬剤師等のアドバイザリースタッフの育成・活用に努めている、としている。消費者に正しい情報を提供するうえで、こうした活動は評価できるが、国民の多くがサプリメントを利用している現状からすると十分とは言えない。

また、厚生労働省は、データベースは公益性・中立性を保つため商用目的の利用を禁止しており、また、商品の販売と結び付けることは、広告となり薬事法や健康増進法上認められない、としている。消費者に対して食品・食品成分に関する正しい情報を提供することを目的とし、個々の企業ではなく業界団体名による情報発信の形態を取り、さらに内容について公的機関の確認をとる方法によれば、公益性・中立性を確保することは十分可能であると考えられる。なお、データベースを利用した情報提供については、既に複数の業界団体が賛同の意を示している。

○問題の背景

(1)表示の規制

「食品」とは、すべての飲食物をいい、薬事法に規定する医薬品及び医薬部外品は、これを含まないとされている(食品衛生法第4条)。

また「医薬品」とは、人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されること、並びに身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされているものであって機械器具等でないものと規定されている(薬事法第2条第1項)。

医薬品の目的性を持たせれば、医薬品としての効果の有無に係わらず、薬事法上は医薬品に該当することになる。そして、医薬品の製造・輸入・販売等にあたっては、厚生労働大臣の承認・許可が必要とされるため、食品でありながら医薬品的効能効果を標ぼうする等、医薬品の目的性を持たせると無承認無許可医薬品となり、薬事法に違反することとなる(薬事法第55条第2項、第68条)。

人が経口的に服用する物が薬事法に規定する医薬品に該当するか否かの判定基準として、「医薬品の範囲に関する基準」(昭和46年6月1日薬発第476号厚生省薬務局長通知「無承認無許可医薬品の指導取締りについて」別紙)が定められている。同基準に掲げられている「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」に収載されている成分が配合又は含有されている場合は、原則として医薬品と判断されるが、これらの成分が配合又は含有されていない場合であっても、容器、包装、添付文書並びにチラシ、パンフレット、刊行物等の広告宣伝物に医薬品的な効能効果が標ぼうされているものは、原則として医薬品とみなされる。

なお、食品の表示規制については、厚生労働大臣が定めた基準に適合しない表示並びに公衆衛生に危害を及ぼすおそれがある虚偽又は誇大な表示又は広告の禁止(食品衛生法第19条、第20条)、栄養表示基準に従った表示の義務付け並びに健康保持増進効果等に関する著しく事実に相違又は誤認させるような表示の禁止(健康増進法第31条、第32条の2)、商品の品質・規格その他について公正な競争を阻害するおそれがある不当な表示の禁止(不当景品類及び不当表示防止法第4条)、飲食料品の名称、原料又は材料、保存の方法、原産地その他の品質の表示の義務付け(農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律第19条の8)等が関係する法律において規定されている。

(2) 保健機能食品制度

食品のうち一定の条件を満たしたものについては、「保健機能食品」と称することが認められ、表示する機能等の違いにより特定保健用食品と栄養機能食品の2つのカテゴリーに分類されている。特定保健用食品は、身体の生理学的機能や生物学的活動に影響を与える保健機能成分を含み、食生活において特定の保健の目的で摂取をする者に対し、その摂取により当該保健の目的が期待できる旨の表示をする食品である。特定保健用食品として食品を販売するには、個別に生理的機能や特定の保健機能を示す有効性や安全性等に関する国の審査を受け、その表示内容について許可等を得なければならない。また、栄養機能食品は、身体の健全な成長、発達、健康の維持に必要な栄養成分(ミネラル、ビタミン等)の補給を目的として、栄養成分の機能の表示をする食品である。栄養機能食品として食品を販売するには、国が定めた規格基準に適合する必要があり、規格基準に適合すれば国等への許可申請や届出の必要はなく、製造・販売することができる。保健機能食品でないサプリメントは、一般食品として栄養成分の表示はできるが、保健機能食品に認められている保健用途表示や栄養成分の機能の表示をすることはできない。

厚生労働省は、国民の健康に対する関心の高まりに対応し、平成15年4月から平成16年5月にかけて「「健康食品」に係る制度のあり方に関する検討会」を開催した。同検討会の提言においては、いわゆる「健康食品」の中に保健機能食品に準じた科学的根拠を持つ第3カテゴリーを作る方策と、従来の保健機能食品制度を拡げていわゆる「健康食品」を取り込んでいく方策とが考えられるが、消費者の混乱を招かないようにするためには、新たなカテゴリーを設けるよりは、保健機能食品制度を拡げるとともに表示の適正化を図ることが適当である、とされた。検討会の提言を受け、健康増進法施行規則、食品衛生法施行規則等が改正され、平成17年2月、「条件付き特定保健用食品制度」及び「規格基準型特定保健用食品制度」の導入を含む保健機能食品制度の見直しが行われたほか、「健康食品」全般について適切な情報提供を促進するため、国立健康・栄養研究所のデータベースの活用や、民間団体認定資格であるアドバイザリースタッフの育成・活用を図ることとされた。

(3) 国立健康・栄養研究所のデータベース

国立健康・栄養研究所のデータベースは、食品・食品成分に関する正しい情報の提供、健全な食生活の推進、いわゆる「健康食品」が関連した健康被害の防止を主な目的とし、利用されている素材について、現時点で得られている科学的根拠のある安全性及び有効性の情報を集め、市場にあふれる多くのいわゆる「健康食品」を、消費者が自主的に利用するか、しないか等の選択を行う際の指針となるようデータベース化したものである。なお、データベースの情報はあくまで素材に関する情報であり、個々の商品の安全性や有効性を示す情報ではないこと、参考情報として試験管内・動物実験の情報も掲載してあるが、この情報をヒトに直接当てはめることはできないこと等が、その利用上の注意に明示されている。また、データベースは、広く消費者にも理解されるよう取りまとめた概要情報と、専門家向けの詳細情報とで構成されている。

データベースにより一般に公開されている情報は、自由に閲覧することができるが、商品の販売促進に関連付けた利用は禁止されている。なお、食品・栄養の専門職等、国立健康・栄養研究所のサイトに登録した会員のうち、公共の機関(消費者センター、保健所など)や公的な団体(栄養士会、薬剤師会など)に所属する者が、データベース開設の目的と合致した考えで、消費者のために正しい知識や情報を提供する場合に限り、情報の利用を許可することとされている。

○ 検討結果

厚生労働省は、事業者や業界団体が適正な目的のもと、適切な活用方法によりデータベースを引用することや印刷して紙媒体の形式で使用することを禁止していないとしており、問題提起者の主張の目的や情報提供主体としての中立性、データベースの活用自体については特に問題としていない。

但し、その一方で、データベースは個別の商品の機能や安全性について評価したものではなく、データベースのみの情報をもって個別の商品の健康保持増進効果等について言及することは禁止しており、データベースを商品の販売と結びつけることは、広告となり薬事法や健康増進法上認められないとしている。

特定保健用食品や栄養機能食品に分類されず、特定の保健の用途や栄養素の機能を表示できないサプリメントが商品として市場に数多く存在している一方、不適切な広告が多く氾濫している中で、消費者は何を指針として商品を選択してよいのか判断できないまま、自らの健康維持のためにそれらを摂取しているのが現状である。消費者がサプリメントを適切に選択するための参考となる客観的・中立的な情報を、商品を購入する場において、いかに提供するかは重要な課題である。また、サプリメントに係る問題については、OTO推進会議において過去数度に渡り審議された経過等を踏まえ、その位置付けや情報提供の在り方については、より消費者に判り易いものにするよう努めるべきである。

サプリメントの有効性や安全性について消費者の誤解を招くことのないよう、データベースの情報を故意に加工することなく客観性・中立性を確保し、かつ個々の商品に添付せず特定の商品に関する広告その他の表示として利用しないことを担保した上で、業界団体が国立健康・栄養研究所のデータベースの情報を活用し、紙媒体等の形で消費者に対し情報提供することは認め得ると考えられる。

以上を踏まえ、厚生労働省は、消費者にとってより判り易いサプリメントに係る情報提供の推進について、以下の対応をとるべきである。

国立健康・栄養研究所のデータベースの情報を利用する業界団体が、当該情報を、個別商品の宣伝に利用しないことを担保した上で、消費者の求めに応じて紙媒体等の形で提供することを認めることとし、法令等が遵守された適切な情報提供を確保するため、その具体的実施方法については、平成18年度中に業界団体と調整を行い、必要に応じルール等を整備すべきである。

2 OTOの在り方について

OTOは、昭和57年の設立以来、輸入手続等を含む市場開放問題に関する具体的苦情の処理を行ってきた。こうした取組により、現在では我が国の市場アクセスは以前に比べ大きく改善している。我が国と諸外国との関係においても、WTOにおける紛争処理やEPA交渉といったOTO創設当初にはなかった枠組みが創設されている。また、国内においても、特区や規制改革等に関する各種要望を受け付け、検討するという枠組みが創設されている。

これらを背景とし、近年OTOに寄せられる苦情(苦情及び問題提起)は大幅に減少しており、その在り方を見直すべき時期に来ていることから、昨年7月以降、当会議においても議論を行ってきたところである。

これまでの議論の過程では、市場開放問題についての苦情を随時受け付ける機能自体の重要性についての指摘がある一方で、政府部内に類似の機能が存在するのであれば、効率化を図るべきであるとする指摘もなされている。

したがって、OTOの見直しについては、最近のOTOを取り巻く環境の変化にかんがみ、政府部内の類似の機能と統合することも含め、引き続き検討を進め、平成18年中に結論を得るべきである。

III.問題提起者意見及び所管省庁対処方針(全文)(PDFファイル)PDF形式へのリンク

1意見を付した案件(1案件)

2その他の案件(3案件)

1) 輸入食品等分析試験成績書の料金の軽減

2) 洗い上げ兎毛及び洗い上げカシミヤ製毛、洗い上げキャメル製毛の輸入時のくん蒸について

3) 税関検査(X線検査)に関係して発生する輸入者の負担について