第2 分野別の基本的施策-2

2 健康・福祉

高齢期に健やかで心豊かに生活できる活力ある社会を実現し、長寿を全うできるよう、個人間の健康格差をもたらす地域・社会的要因にも留意しつつ、生涯にわたる健康づくりを総合的に推進する。

今後の高齢化の進展等を踏まえ、地域包括ケアシステムの一層の推進を図るとともに、認知症を有する人が地域において自立した生活を継続できるよう支援体制の整備を更に推進する。また、家族の介護を行う現役世代にとっても働きやすい社会づくりのため、介護の受け皿整備や介護人材の処遇改善等の「介護離職ゼロ」に向けた取組を推進する。

高齢化の進展に伴い医療費・介護費の増加が見込まれる中、国民のニーズに適合した効果的なサービスを効率的に提供し、人口構造の変化に対応できる持続可能な医療・介護保険制度を構築する。また、人生の最終段階における医療について国民全体で議論を深める。

(1)健康づくりの総合的推進

ア 生涯にわたる健康づくりの推進

健康づくりのための国民運動である「健康日本21(第2次)」において設定されている目標達成に向けた取組等により、生涯を通じた健康増進を図り、健康寿命の延伸を目指す。そのため、企業、団体、地方公共団体に対し、相互に協力・連携しながら、従業員、構成員、地域住民等が自発的に健康づくりに参画することができる取組の実施を促す。さらに、学校保健との連携などライフステージを通じた取組を推進する。また、医療保険者による特定健康診査・特定保健指導の着実な実施や、データヘルス計画に沿った取組など、加入者の予防健康づくりの取組を推進していくとともに、糖尿病を始めとする生活習慣病の重症化予防の先進的な事例の横展開を進める。

国民が生涯にわたり心身ともに健康な生活を営む基盤として、国民の誰もが日常的にスポーツに親しむ機会を充実することにより、高齢期も含めたライフステージに応じたスポーツ活動を推進する。2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催に当たっては、これを弾みとして、スポーツ・運動を通じた個人の主体的な健康増進の取組を促進することにより、健康寿命の延伸を目指す。

高齢期の健全な食生活の確保にも資するよう、子供から成人、高齢者に至るまで、生涯を通じた食育の取組を推進する。その際、単独世帯の増加など家庭生活の状況が多様化する中で、地域や関係団体の連携・協働を図りつつ、コミュニケーションや豊かな食体験にもつながる共食の機会の提供等を行う取組を推進する。

イ 介護予防の推進

高齢者の自立支援と生活の質の向上を目指すために、リハビリテーションの理念を踏まえた介護予防を推進する。心身機能の向上に加え、地域活動への参加を促すために、住民主体の「通いの場」を設置し、それらを活用しながら、高齢者が地域活動の担い手として、役割や生きがいを持てる地域社会の構築を行う。

(2)持続可能な介護保険制度の運営

介護保険制度については、高齢者が尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療福祉サービスを行う制度として定着しており、着実な実施を図るとともに、今後の人口動態の変化等を踏まえ、地域住民が可能な限り、住み慣れた地域で介護サービスを継続的・一体的に受けることのできる体制(地域包括ケアシステム)の構築により、持続可能な制度としての更なる充実を図る。地域包括ケアシステムを深化・推進するため、全市町村が保険者機能を発揮し、自立支援・重度化防止等に向けて取り組む仕組みの制度化等が盛り込まれた地域包括ケア強化法[5]の着実な施行に取り組む。

(3)介護サービスの充実(介護離職ゼロの実現)

ア 必要な介護サービスの確保

地方公共団体における介護保険事業計画等の状況を踏まえ、要介護高齢者の需要に応じた良質な介護サービス基盤の計画的な整備を進めるとともに、地域包括ケアシステムの構築を目指す。

このため、介護職員の処遇改善等により人材確保を図るほか、訪問介護、通所介護等の在宅サービスの充実や、認知症対応型共同生活介護事業所、特別養護老人ホーム、老人保健施設などの介護基盤やサービス付きの高齢者向け住宅等の高齢者の住まいの整備などを進める。

また、福祉用具・住宅改修の適切な普及・活用の促進を図る。あわせて、介護労働者の雇用管理の改善、公共職業安定所及び民間による労働力需給調整機能の向上などを図る。

イ 介護サービスの質の向上

高齢者介護サービスを担う介護支援専門員、訪問介護員、介護福祉士等の資質の向上を図るとともに、利用者が介護サービスを適切に選択し、良質なサービスを利用できるよう、情報通信等を活用した事業者の情報公開等を進める。介護職員の負担軽減のため、介護の職場における一層のICT化の推進を図る。

また、高齢者の尊厳の保持を図る観点から、特別養護老人ホームの個室ユニット化を進めるとともに、介護従事者等による高齢者虐待の防止に向けた取組を推進する。

ウ 地域における包括的かつ持続的な在宅医療・介護の提供

医療ニーズ及び介護ニーズを併せ持つ高齢者の増加に対応するため、地域において包括的かつ持続的に在宅医療及び介護が提供できるよう、医療・介護関係者の連携を推進するための体制の整備を図る。市町村が主体となり、医療と介護の関係団体と連携しながら、在宅医療と介護の関係者の連携を推進する事業に取り組むとともに、都道府県においては市町村支援を推進することによって、医療と介護の連携を推進する。

エ 介護と仕事の両立支援

家族の介護を理由とした離職を防止するため、「ニッポン一億総活躍プラン」(平成28年6月2日閣議決定)を強力に推進し、介護休業を取得しやすく職場復帰しやすい環境づくりや、介護をしながら働き続けやすい環境の整備などを進め、仕事と介護を両立することができる雇用・就業環境の整備を図る。

(4)持続可能な高齢者医療制度の運営

後期高齢者医療制度においては、後期高齢者支援金に対する全面総報酬割の導入に加え、制度の持続可能性を高めるため、70歳以上の高額療養費の上限額等の段階的な見直しを進める。

後期高齢者の窓口負担の在り方について、「経済・財政再生計画改革工程表2017改定版」(平成29年12月21日経済財政諮問会議決定)に沿って、70歳から74歳の窓口負担の段階的な引上げの実施状況等も踏まえ、関係審議会等において検討を進める。

(5)認知症高齢者支援施策の推進

高齢化の進展に伴い更に増加が見込まれる認知症高齢者やその介護を行う家族等への支援を図るため、「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」(平成27年1月27日策定、平成29年7月改定)を踏まえ、認知症への理解を深めるための普及啓発や認知症の容態に応じた適時・適切な医療・介護等が提供される循環型の仕組みを構築するために認知症初期集中支援チームの設置及び認知症疾患医療センターの整備等の施策を推進するとともに、認知症の人の介護者への支援や認知症の人を含む高齢者にやさしい地域づくりの取組を推進する。

(6)人生の最終段階における医療の在り方

人生の最終段階における医療は、患者・家族に適切な情報が提供された上で、これに基づいて患者が医療従事者と話し合いを行い、患者本人の意思決定を基本として行われることが重要である。このため、患者の相談に適切に対応できる人材の育成等による体制整備を行うとともに、国民向けの情報提供・普及啓発を推進する。

(7)住民等を中心とした地域の支え合いの仕組み作りの促進

一人暮らしの高齢者等が住み慣れた地域において、社会から孤立することなく継続して安心した生活を営むことができるような体制整備を推進するため、民生委員、ボランティア、民間事業者等と行政との連携により、支援が必要な高齢者等の地域生活を支えるための地域づくりを進める各種施策を推進していく。

地域住民が主体となって、住民相互の支え合いの仕組み作りを促進するため、福祉の各分野における共通して取り組むべき事項や福祉サービスの適切な利用の推進、社会福祉を目的とする事業の健全な発達、地域福祉活動への住民参加の促進、要援護者に係る情報の把握・共有・安否確認等の方法等を盛り込んだ地域福祉計画を策定するよう、都道府県と連携し、未策定の市町村へ働きかけを進める。

制度・分野ごとの「縦割り」や「支え手」「受け手」という関係、また、社会保障の枠を超えて、地域の住民や多様な主体が支え合い、住民一人一人の暮らしと生きがい、そして、地域を共に創っていく「地域共生社会」の実現を目指し、地域住民や福祉事業者、行政などが協働し、公的な体制による支援とあいまって、個人や世帯が抱える地域生活課題を解決していく包括的な支援体制の構築等を進める。


[5] 地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律(平成29年法律第52号)

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